文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
1.経営方針
(1)中長期的な会社の経営戦略
「共創型化学会社」とは:
私たちの基盤は、川中から川下まで幅広く自在な最先端の機能材料テクノロジーである。
その上で、社会課題とその原因を鋭く可視化し、解決に向けてイニシアチブを発揮していく、
そのためには、化学業界に閉じた個社の事業活動にとどまっていては足りないと考えている。
化学企業としてグローバルにおける一流の実力を備え、
機敏かつ柔軟な行動と意思決定をもって、産業のキープレイヤーから生活者に至るまで
志を共にする仲間とよりよい社会を共創していく、
これが私たちの“共創型化学会社”の姿である。
2022年1月、昭和電工㈱と昭和電工マテリアルズ㈱は、両社の経営体制を一本化し、社長以下12名の両社共通の執行役員が両社のマネジメントを遂行する体制により実質的統合を実現した。また、新マネジメント体制と新経営理念の始動に伴い2020年12月発表の長期ビジョンを更新した。
両社統合のプロセスは、2023年1月の完全統合に向けて順調に進んでおり、長期ビジョンで示した統合新会社の存在意義(パーパス)「化学の力で社会を変える」に加え、社員が大切にすべき4つのバリュー(価値観)として、「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」「機敏さと柔軟性」「枠を超えるオープンマインド」「未来への先見性と高い倫理観」を定め、これらをパーパスと合わせて統合新会社の経営理念とした。今後この経営理念のグループ、グローバルでの浸透を図り、新生昭和電工グループが一丸となって事業に取り組むとともに、人材育成の強化、人事評価の透明性や実力主義の徹底等を進めていく。
また、お客様にご提供するソリューションについても、昭和電工の川中の素材技術と昭和電工マテリアルズの川下のアプリケーション技術、そして両社の評価・解析技術の融合によって、技術的なブレークスルーを実現し、幅広い機能の提供が可能になると考えている。
現在昭和電工グループでは、こうした両社の技術的な強みを活かしつつ、補完性の高い事業ポートフォリオ経営を進めている。成長市場にてトップシェアを誇る製品等を有し、今後の当社グループの成長を担う「コア成長事業」(半導体材料やモビリティ)や、次世代の柱へと育成していく「次世代事業」(ライフサイエンス)、「安定収益事業」(カーボン、石油化学、デバイスソリューション等)、さらに各事業のイノベーションを支える「基盤事業」(セラミックスや機能性化学品等)の4つの事業群がそれぞれの役割を発揮することで、持続的な成長を実現していく。
さらに両社の多岐にわたる技術を融合し、2050年のカーボンニュートラル実現等の環境問題をはじめとする様々な社会課題の解決を通じてサステナビリティを実現するための研究開発テーマを設定・推進していく「融合の舞台」や、最先端半導体パッケージを生み出すための協創型開発施設「パッケージングソリューションセンタ」等を活用しながら、お客様やパートナー企業等との協働・協創の下イノベーションを推進していくことで、「化学の力で社会を変える」という統合新会社の存在意義発揮に取り組んでいく。
こうした統合の着実な進展により、当社グループは、日本の化学メーカーとして培ってきた良さを活かしつつ、グローバル企業の高度な経営手法を取り入れることで様々な社会課題を解決する「世界トップクラスの機能性化学メーカー」を目指す。
<統合新会社の経営理念>
・Purpose/存在意義
化学の力で社会を変える
先端材料パートナーとして時代が求める機能を創出し、グローバル社会の持続可能な発展に貢献する
・Values/私たちが大切にする価値観
プロフェッショナルとしての成果へのこだわり
仕事に情熱と誇りを持つ
実力主義、成果にこだわる
結果、グローバルで認められる一流としての実力を持つ
機敏さと柔軟性
挑戦を称賛し失敗に寛容になる
思考と行動に柔軟性とスピードを持つ
結果、組織としての基本速度をあげる
枠を超えるオープンマインド
互いへの信頼と尊重を示す
オープンに、領域を定めず関わりあう
結果、内外のステークホルダーとの共創を実現する
未来への先見性と高い倫理観
化学と真摯に向き合う
数世代先の未来を見通す先見性を持つ
化学技術への自律した倫理観と全てのステークホルダーに対する誠実さを持つ
<統合新会社の目指す姿>
「世界トップクラスの機能性化学メーカー」を目指す中で、
質的な面、計数的な面それぞれを兼ね備えた「世界で戦える会社」、
イノベーションと事業開発力で「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」、
他企業からも注目されるような「国内の製造業を代表する人材輩出企業」
を実現していく。
<統合新会社の主要戦略>
「サステナビリティ」が全社戦略の根幹となる。
「世界トップクラスの機能性化学メーカー」に向け「プラットフォーム」を確立させ、サステナビリティが組み込まれた「グローバル水準の収益基盤の確立」、「ポートフォリオ経営の高度化」、「イノベーション」の各戦略を推進していく。
・グローバル水準の収益基盤の確立:世界で戦える会社のエントリーチケットとして、売上1兆円以上、EBITDAマージン20%以上という規模と収益性を追求していく。
・ポートフォリオ経営の高度化:重視してきた戦略適合性、ベストオーナーといった視点に加え、採算性・資本効率の視点をより一層取り込むべく管理指標としてROICを導入する。
これらの観点から引き続きポートフォリオの最適化に注力する方針であり、事業ポートフォリオの見直し・入替も継続することで、企業価値の最大化に取り組む。
「コア成長事業」(半導体材料・モビリティ部材等)に経営資源を集中し、成長を加速させる。全事業の画一的な成長ではなく、集中的な経営資源配分を行うコア成長事業が全社の成長をけん引し、世界で戦える会社の規模と収益性、資本効率を実現していく。
翌連結会計年度からポートフォリオ戦略に即した新たな開示セグメントへ変更する:
「半導体・電子材料」:半導体材料とHDそしてSiCエピタキシャルウエハーを含む電子機能材料
「モビリティ」:モビリティ材料
「イノベーション材料」:セラミックス・アルミ・樹脂等の基盤事業
「ケミカル」:石油化学・化学品・黒鉛電極等
「その他」:ライフサイエンス事業等
半導体材料への集中投資に代表されるポートフォリオ属性に応じたメリハリある経営資源配分やポートフォリオの見直し・入替と言った戦略の効果をより確認頂きやすい開示を目指していく。
・イノベーション:川中から川下までの幅広い材料・技術を有することで、川下の顧客ニーズを明確化すると共に複数技術の擦り合わせでイノベーションを発現し、顧客価値として提供していく。
・プラットフォーム:これらの戦略を実現するため、新たな経営理念の浸透、変革をリードする新経営陣、人材育成を主軸とする新人事制度の推進も合わせて進める。
<サステナビリティ>
パーパス「化学の力で社会を変える」に込められたサステナビリティの理念を経営の根幹におき、社会への価値提供を通じて持続的な成長と企業価値の向上を実現していく。そのために統合新会社としてのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を「責任ある事業運営による信頼の醸成」、「イノベーションと事業を通じた競争力向上と社会的価値創造」、「自律的・創造的な人材の活躍と文化醸成」と再定義した。今後もサステナビリティ・マネジメントを強化していく。
(2)長期数値目標
2020年12月発表の長期ビジョン(2021~2030)においてEBITDAマージン、ネットD/Eレシオ等を統合新会社としての長期数値目標として設定した。今回、規律を重視する観点でROEに代わり今回新たな数値目標としてROICを導入し、これらの数値を達成していくことで総株主還元(TSR)は中長期的に化学業界で上位25%の水準を目指していく。
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2021年実績 |
2022年予想 |
2025年 |
2030年 |
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売上* |
(兆円) |
1.42 |
1.35 |
1.6 |
1.8~1.9 |
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EBITDAマージン |
(%) |
14.3 |
14.4 |
20 |
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ROIC |
(%) |
4.3 |
4.8 |
中長期的に10% |
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ネットD/Eレシオ |
(倍) |
1.15 |
1.19 |
1.0倍を目指す |
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* 今後のM&A等を考慮しない場合の目安値
2.経営環境及び当社グループの対処すべき課題
新興国において急速な経済成長により生活水準が向上する一方で、カーボンニュートラルに向けCO2排出量などの地球環境への負荷増大を抑制するための取り組みが世界全域で求められている。社会動向を市場性の観点から見た場合、電子産業分野の一層の高品位化・高速化・高容量化・小型化の進展による利便性・快適性の向上、地球温暖化対策・環境保全の推進による健康で安全な社会の実現、化石エネルギー依存度低下・省エネルギー推進によるエネルギー供給保障等の人類共通の諸課題に対応するための新技術の開発と事業化が求められている。
当社グループは、2022年1月から始動したマネジメント体制のもと、“共創型化学会社”に向けて目指す方向性として、「化学の力で社会を変える」ことをパーパス(存在意義)に、「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」「機敏さと柔軟性」「枠を超えるオープンマインド」「未来への先見性と高い倫理観」の4つを当社グループ従業員が大切にすべきバリュー(価値観)とし、これらを統合新会社の経営理念と定めた。グローバル競争の激化や市場構造の変化が予想される化学産業において、今後とも顧客企業に新たな機能・価値を提供し続け、持続可能な社会の実現に貢献していく。
また、当社グループは、経営の健全性、実効性及び透明性を確保し、企業価値の持続的な向上により社会から信頼・評価される「社会貢献企業」を実現するために、2015年、「コーポレート・ガバナンス基本方針」を定め、その充実に取り組んでいく。特に、グループ全体のリスク管理機能強化を重要課題として捉え、多面的な施策を適時実施していく。 「コーポレート・ガバナンス基本方針」については当社ホームページを参照。
https://www.sdk.co.jp/ir/governance.html
なお、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大に対し、当社グループは、お客様、お取引先、従業員など関係する皆様の安全・健康を第一に考え、COVID-19の拡大防止に向けた多くの施策を実行している。具体的には、全社に在宅勤務制度を導入し、特に本社においては抜本的な業務の改善を併せて行うことで政府が求める水準を上回るテレワークを継続実施している。また、感染懸念時における特別休暇の付与、国内外出張の制限、完全フレックスタイム制度による時差出勤の励行など従業員の安全確保と感染拡大防止を最優先にした施策を継続している。同時に、生産拠点では感染防止策を徹底した上で生産活動の維持に努め、お客様に対する製品供給の継続など社会インフラ機能の維持に注力していく。
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