収益認識会計基準等の適用が財政状態及び経営成績に与える影響の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等注記事項 (会計方針の変更)及び(セグメント情報等) セグメント情報 2 報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法」をご参照ください。
(1)財政状態の状況
(単位:億円)
総資産は、売上債権及び契約資産、棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,049億円増加し1兆877億円となりました。売上債権及び契約資産の増加は、原燃料価格及び海外製品市況の上昇による販売価格の上昇等によるものです。棚卸資産の増加は、原燃料価格の上昇等によるものです。
負債は、有利子負債が減少した一方で、支払手形及び買掛金、その他負債が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ68億円増加し3,279億円となりました。有利子負債の減少は、短期借入金の返済を行ったこと等によるものです。支払手形及び買掛金の増加は、原燃料価格の上昇等によるものです。その他負債の増加は、未払法人税等の増加等によるものです。
純資産は、その他有価証券評価差額金の減少や配当金の支払い等がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、前連結会計年度末に比べ980億円増加し7,597億円となりました。
(2)経営成績の状況
① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
(単位:億円)
〈参考〉為替、海外製品市況
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中、ワクチン接種の進展や海外需要の回復により景気持ち直しの動きが続きましたが、感染者数の増減に伴い社会・経済活動の制限と緩和が繰り返され、不安定な状況で推移いたしました。世界経済についても、先進国を中心に経済活動の制限が緩和され需要が回復基調にあるものの、断続的に訪れる感染症拡大の波や資源価格の高騰、インフレ圧力の上昇・長期化、世界的な供給網の混乱などの景気減速要因に加え、足元ではロシアのウクライナ侵攻や中国上海のロックダウンなどが下押し要因となり、先行きは依然として不透明な状況にあります。
このような情勢下、当社グループの連結業績については、売上高は、ナフサ等の原燃料価格及び海外製品市況の上昇による販売価格の上昇に加え、需要の回復による販売数量の増加により、9,186億円と前連結会計年度に比べ1,857億円(25.3%)の増収となりました。営業利益は、販売価格の上昇が原燃料高の影響を上回ることで交易条件が改善し、1,440億円と前連結会計年度に比べ562億円(64.0%)の増益となりました。経常利益は、1,605億円と前連結会計年度に比べ653億円(68.7%)の増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益については、1,079億円と前連結会計年度に比べ447億円(70.6%)の増益となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
<売上高分析> (単位:億円)
<営業利益分析> (単位:億円)
石 油 化 学 事 業
プロピレン及びキュメンは、需要の回復や生産量の増加に伴い出荷が増加いたしました。また、ナフサ等の原燃料価格及び海外製品市況の上昇により、製品価格が上昇いたしました。
ポリエチレン樹脂は、需要の回復に伴い国内輸出ともに出荷が増加いたしました。また、ナフサ価格及び海外市況の上昇を反映して製品価格が上昇いたしました。クロロプレンゴムは、需要の回復に伴い国内輸出ともに出荷が増加いたしました。また、堅調な海外需要を背景に製品価格が上昇いたしました。
この結果、売上高は、前連結会計年度に比べ458億円(34.9%)増加し1,772億円となり、営業利益は、幅広い製品の出荷増加に加え、ナフサ等原料価格上昇による製品受払差の改善により、前連結会計年度に比べ80億円(103.2%)増加し157億円となりました。
ク ロ ル ・ ア ル カ リ 事 業
苛性ソーダは、輸出を中心に出荷が減少いたしましたが、海外市況の上昇を反映し製品価格は上昇いたしました。塩化ビニルモノマー及び塩化ビニル樹脂は、いずれも生産量の減少に伴い出荷が減少いたしましたが、ナフサ価格及び海外市況の上昇を反映し塩ビ製品の製品価格は上昇いたしました。
セメントは、国内輸出とも出荷が堅調に推移いたしました。
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)は、前期は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により稼働を停止していた中国の生産子会社が順調に稼働したことや需要の回復に伴い、国内外で出荷が増加いたしました。また、海外市況の上昇を反映し製品価格が上昇いたしました。
この結果、売上高は前連結会計年度に比べ868億円(31.6%)増加し3,616億円となり、営業利益は、塩ビ製品やウレタン原料の交易条件の改善により、前連結会計年度に比べ280億円(67.4%)増加し695億円となりました。
機 能 商 品 事 業
エチレンアミンは、需要の回復に伴い国内輸出ともに出荷が増加いたしました。また、海外市況の上昇により製品価格は上昇いたしました。
計測関連商品は、欧米及び中国向けで液体クロマトグラフィー用充填剤の出荷が増加いたしました。診断関連商品は、需要の回復に伴い国内、欧米及びアジア向けで体外診断用医薬品の出荷が増加いたしました。
ハイシリカゼオライトは、需要の回復に伴い自動車排ガス触媒用途を中心に国内外で出荷が増加いたしました。ジルコニアは、需要の回復に伴い歯科材料用途の輸出が増加いたしました。石英ガラスは、半導体需要の拡大に伴い出荷が増加いたしました。電解二酸化マンガンは、需要の回復に伴い乾電池・二次電池用途で出荷が増加いたしました。
この結果、売上高は、前連結会計年度に比べ456億円(25.3%)増加し2,262億円となり、営業利益は、主に需要の回復による販売数量増加の影響により、前連結会計年度に比べ200億円(85.0%)増加し435億円となりました。
エ ン ジ ニ ア リ ン グ 事 業
水処理エンジニアリング事業は、電子産業分野を中心に受注した国内外の大型案件の工事が順調に進捗したことから、売上高が増加いたしました。
建設子会社の売上高は増加いたしました。
この結果、売上高は前連結会計年度に比べ101億円(9.5%)増加し1,163億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ3億円(2.4%)増加し123億円となりました。
そ の 他 事 業
商社等その他事業会社の売上高は減少いたしました。
この結果、売上高は前連結会計年度に比べ25億円(6.4%)減少し373億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ0億円(0.6%)減少し31億円となりました。
2019年5月に公表した2019~2021年度 中期経営計画の最終年度である2021年度は、各事業において営業利益目標を達成し、クロル・アルカリ事業における市況上昇を追い風に、営業利益は1,440億円、営業利益率は15.7%、ROEは16.3%と数値目標を上回りました。
中期経営計画では「ハイブリッド経営による収益の安定・拡大」・「安全基盤の強化・安全文化の醸成」・「強固な財務基盤の維持」・「省エネ・CO2有効利用の推進」を基本方針に掲げ、これらの実現に向けて諸施策を実行してまいりました。
設備投資等については、スペシャリティ事業では石英ガラス素材をはじめとする電子材料やクロロプレンゴム、臭素等の成長分野の能力増強、コモディティ事業では発電設備の効率化投資等の基盤強化を中心に実施し、3ヶ年累計の設備投資額は1,598億円と計画を198億円上回りました。また、バイオ分野において、米国の連続クロマトグラフィー装置の製造・販売会社を完全子会社化しました。
当社グループでは、従業員の安全・健康の確保と安定操業が経営の重要課題であると認識し、安全基盤の強化や安全文化の醸成に取り組んでまいりました。ハード面では、運転支援システムや異常予兆検知システムの導入をはじめとするスマート保安の推進により、安全操業を支援する体制を順次整えております。ソフト面からは、プラント操作や事故を疑似体験・体感できる施設を拡充し、安全・安定運転に関する知識・技能の習得のための安全教育の拡充に取り組んでまいりました。
財務基盤については、当3ヶ年における事業活動の結果、2021年度末のネットDEレシオは-0.10、自己資本比率は65.2%に達しており、財務基盤の強化には一定の目途がついたものと判断しております。
当社グループは事業活動を通じて排出される温室効果ガスの削減が、グループの中長期的な成長における最重要課題と認識し、省エネルギーや燃料転換によるCO2排出削減、更にはCO2の有効利用に向けた技術検討を推進しています。当3ヶ年においては、苛性ソーダ電解槽の省エネ改造をはじめとする省エネルギー化投資やバイオマス燃料の混焼割合増加による石炭使用量削減を図るための設備投資を順次実施してまいりました。また、発電所から排出されるCO2の分離回収技術、回収CO2のポリウレタン原料化技術について開発に取り組んでおります。なお、当社グループは、“2050年に向けたカーボンニュートラルへの挑戦”を掲げ、その途中段階の目標として、“2030年度までに2018年度基準で30%のGHG排出量削減”を表明しております。
数値目標達成状況 (億円)
事業別営業利益 (億円)
③ 生産、受注及び販売の状況
(単位:百万円)
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 原則として、生産金額は、生産総量から自家使用量を差引いた販売向け生産量に、当連結会計年度中の平均販売単価を乗じて算出しております。
主として見込み生産であります。
(単位:百万円)
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
①当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況
(単位:億円)
現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ124億円増加し、1,608億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,086億円の収入となりました。税金等調整前当期純利益の増加等により、前連結会計年度に比べ135億円収入が増加いたしました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、435億円の支出となりました。設備投資による支出額の減少等により、前連結会計年度に比べ29億円支出が減少いたしました。
この結果、フリーキャッシュ・フローは前連結会計年度に比べ、163億円収入が増加し、651億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、579億円の支出となりました。短期借入金の返済等により、前連結会計年度に比べ595億円支出が増加いたしました。
なお、当連結会計年度の設備投資の資金調達は主に自己資本及び借入金により賄っております。
②資金の主要な使途を含む資金需要の動向
事業から創出される営業キャッシュ・フローを主な財源とし、コモディティ事業の基盤強化とスペシャリティ事業の能力増強を中心とした設備投資、M&A等の戦略投資、更には株主への還元等に資金を配分してまいります。
また、当社は2022年1月に2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、2030年度までに温室効果ガス排出量を2018年度比で30%削減する目標を表明しております。この目標実現のため、従来の設備投資に加えて2030年度までに累計で約1,200億円を投じて、省エネルギー化や自家発電の燃料転換等による使用エネルギーの脱炭素化、更にはCO₂の回収及び有効利用等の対応を進める方針です。
なお、設備投資額の中期見通しは、2022年8月に公表予定の新たな中期経営計画において公表いたします。
また、当連結会計年度末現在における今後1年間の資本的支出の予定及びその資金の調達源等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載しております。
③フリーキャッシュ・フロー
当社は、フリーキャッシュ・フローを営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動に支出されたキャッシュ・フローの合計として定義しております。当社はこの指標を戦略的投資又は負債返済に充当可能な資金の純額、あるいは、資金調達にあたって外部借入への依存度合を測る目的から、投資家に有用な指標と考えており、次の図のとおりフリーキャッシュ・フローを算出しております。
④財務の方針及び資金調達の状況
当社は、事業の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金と金融機関からの外部借入を活用しております。今後大型の設備投資やM&Aが発生する場合には、資金調達の多様化や資本効率の向上を踏まえ負債の活用を進めてまいりますが、タイムリーな資金調達が実行できるよう強固な財務基盤の維持に努めてまいります。
また当社は、資金需要に対する機動的な対応と金融情勢変化やコモディティ事業における原料や製品の市況変動の影響による財務の悪化に備え、一定程度の現預金の保有は必要と考えております。
2021年度末時点で当社の自己資本比率は65.2%、有利子負債は919億円、現金及び預金は1,615億円、ネットDEレシオは-0.10、信用格付けは「A+」となっております。
なお、ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格の高騰で、業績及び資金収支に対する悪影響が懸念されます。先々の運転資金の増加に備えるため2022年5月には銀行借入を実行し手元流動性を確保することといたしました。
※「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を2018年度の期首から適用しており、2014年度~2017年度に係る自己資本比率については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値となっております。
⑤株主還元の方針
株主還元の方針については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
※配当性向は連結財務諸表を元に算出しているため、「第1 企業の概況 1 主要な経営指標等の推移 (2)提出会社の経営指標等」に記載されている配当性向とは異なります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 4 会計方針に関する事項」に記載しております。
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載している在庫評価の影響、固定資産の減損、有価証券の評価、繰延税金資産の取崩し、退職給付関係、工事契約に係る一定期間にわたり収益を認識する取引の収益計上に関して、過去の実績や状況に応じて合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
新型コロナウイルス感染症の影響については、同感染症の収束時期を想定することは困難であるものの、固定資産の減損等の見積りにあたっては、当社グループの事業計画の進捗状況等の情報に基づき検討し、同感染症による当社グループの経営成績及び財政状態における通期への影響は限定的であると仮定して当連結会計年度の会計上の見積りを行っております。なお、新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動への影響については不確定要素が多く、上記の仮定に変化が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に少なからず影響を及ぼす可能性があります。
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