課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営方針

当社は、企業理念に掲げるミッションである「ICTで世の中をもっと便利に」のもと「Update The World 変化し、変化させ、必要不可欠な会社に」を企業ビジョンとしており、インフラテック事業を推進することで、インフラ業界の抱えるデジタル化が遅れた非効率な現場作業や業界特有の多重下請けによる高コスト構造といった課題を解決し、より快適な社会の実現に貢献してまいります。

同時に、顧客へのサービス提供を通じて当社の社員が成長し続けることを支援し、結婚・出産といったライフステージの変化に合わせたテレワークやフレックス勤務の推進、多国籍な人材の登用などを促進するとともに、自律的でフラットな組織を構築し、顧客へ高い付加価値を提供できるプロフェッショナルの育成に努めます。

 

(2) 経営環境

 当事業年度におけるわが国の経済は、新型コロナワクチンの普及に伴い新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動への制限が徐々に緩和されたものの、2021年11月末以降に新たな変異株であるオミクロン株やその亜種が確認される等、依然として不透明な状況が続いております。モバイルエンジニアリングサービスにおきましては基地局設置予定の不動産への入場制限が発生したこと、IoTエンジニアリングサービスにおいては海外工場の稼働停止により、一部のIoT機器の生産遅延に加え、国際的な物流網の停滞により、サプライチェーンの影響が限定的ではありますが確認されております。加えて、2022年2月以降、ウクライナ情勢の動向、大幅な円安等、外部環境は更に急速に変化してまいりました。

 

 しかしながら、2019年4月に5G(3.7GHz帯、4.5GHz帯及び28GHz帯)周波数が各携帯キャリアへ割当てられ、2020年度以降の5Gに係る設備投資が本格化されていることや、2020年4月に第4の携帯キャリアが新規参入したことを受け、携帯電話料金の見直しに関する議論の活発化等、携帯キャリアの設備投資費削減のニーズが高まっております。モバイルインフラネットワーク構築の投資費用が約1.4兆円(2021年度 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの合算)(出典:株式会社MCA「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測2019年版」)、インフラネットワーク運用・保守費用が約1.6兆円(2021年度 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの合算)(出典:株式会社MCA「セルラーキャリアにおけるネットワーク運用・保守の現状と今後の展望」)であり、合計約3兆円の市場となっております。また、通信インフラ環境の充実化に付随する形で、いわゆるIoT エンジニアリングサービスが属する分野(以下、「リモートモニタリング関連市場」という。)においても市場が急速に拡大しております。リモートモニタリング関連市場が2019年は約1.4兆円、2025年は約1.8兆円(2019年比約130%)に伸長し、リモートモニタリングデバイス設置台数は2030年には1.89億台が見込まれております(出典:株式会社富士経済 2020年版 リモートモニタリング関連技術・市場の現状と将来展望 ※デバイス台数推移は40品目の数量を当社にて足し合わせて算出)。このような環境の下、当社としてはより一層のインフラテック事業の拡大によるIoT社会の実現を推進してまいります。

 

(3) 中長期的な経営戦略

① 成長市場に集中

 当社の取り組むべきマーケットは、まず、モバイルエンジニアリングサービスの領域において新しい通信方式(5G、ローカル5G、LPWA、Wi-Fi、BLE他)の進展により、今後大きく成長することが予想される5G、IoT関連等の分野になります。次世代通信規格では電波の届く距離が短く、その分、通常の基地局を補完する多くの小型基地局が新たに必要となります。

また、基地局建設だけでなく、新しい通信方式の通信網を構築するために通信事業者内で常駐する各種プロジェクトも増加が見込まれます。客先常駐型のプロジェクトはプロジェクト自体が数年続くこともあるため、1ヶ月~3ヶ月契約を継続的に更新するストック型のビジネスとなります。大手通信建設会社は基地局建設等のフロー型案件を主力事業としており、客先常駐型のストック型案件はあまり注力していない傾向にあるため、モバイルエンジニアリングサービスのストック型案件を拡大させていくことで安定収益基盤を強化していきます。

 IoT社会の実現には、フィールドに存在するフィジカルデータを収集するための各種センサーや小型通信機器の設置が必要となるため、IoTエンジニアリングサービスの領域におきましても成長市場と位置付けております。特にリモートモニタリング市場は導入期のため小型通信機器の設置案件が増加しており機器設置における市場シェアを拡大させていくとともに、その後の保守・運用を獲得していくことで安定収益基盤を構築していきます。

 このようにモバイルエンジニアリングサービスは5G関連の客先常駐型のプロジェクト拡大により既存市場内でシェア拡大を狙い、IoTエンジニアリングサービスは市場拡大に合わせ小型機器を大量に設置し、その後増加が予想される継続的な運用監視や保守を要する案件を獲得していくことで持続的な成長を実現してまいります。

 

▼当社が注力する事業領域

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② 「プラットフォーム」ビジネスの推進

 内閣府の提唱するSociety5.0の到来が将来的に見込まれるなか、通信インフラの構築・維持に関する課題として、多重下請構造、現場作業のデジタル化の遅れによる低生産性、若者が現場を敬遠することによる就労者の減少や高齢化、それらの要因に基づく低賃金化の傾向があります。当社の事業は、生活インフラ提供事業者(通信、電力、ガス等)やIoT機器メーカー等の上流、機器設置・工事など現地作業を担う協力会社という下流、その中流で業務を推進する当社という構造にあります。当社の経営方針を実現していくために、この構造にプラットフォームを導入し業務処理や作業情報などが一体的につながる仕組みの構築を推進しており、生活インフラ提供事業者とのさらなる取引拡大を図るとともに、IoT機器メーカー、その他IoT事業会社を新たな顧客として獲得を目指します。これらによりインフラ事業者には当社に全国規模の案件を一括で任せることで管理工数の削減、サービス品質の均一化が図られます。また、当社が作業会社、エンジニアを確保するため、インフラ事業者が自社でリソースを確保する負担が軽減されます。次世代通信インフラの整備遅れは産業競争力の低下につながることから世の中をUpdateしもっと便利にするべく、プラットフォームを構築し、5GやIoTの普及を促進していきます。

 

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③ テクノロジーの積極活用・DX推進

現場作業及び管理業務等の効率化を推進するという観点でRPA、AI(画像認識)、ドローン等最新の技術の導入を進めています。このため、最新テクノロジーの吸収を積極的に進め、既存システムの機能強化のみならず、新たな効率化システムの開発にも取り組んでいきます。これにより、生産性のさらなる向上と競争優位性の強化を目指します。

  事業年度におきましてはDX推進を支援する株式会社INDUSTRIAL-Xへの出資ならびに業務提携を実施し、本分野における推進を強化しております。

 

④ 他社とのアライアンスを加速

 当社は、現場作業のDX化を標榜しておりますが、その根幹には当社が物事に対する柔軟な発想力や変化を恐れない変革力を持っており、これが当社の強みであると考えております。一方、昨今のDX化やIoTの進展は著しく、様々なビジネスモデルやサービスが誕生しています。当社とは縁遠い業界、業種といえども思わぬ連携からダイナミックな変化を生む可能性に期待しており、業界の殻にとらわれない柔軟な発想でアンテナを張っています。そこで今後は、幅広い会社とアライアンスや資本提携、必要によってはM&Aなど他社との連携を強化したいと考えております。

▶アライアンスポリシー

①当社が保有していない技術やノウハウを保有している企業

②当社が保有する顧客母集団にサービスや製品をクロスセルできる企業

③当社が保有していない顧客層を保有している・増加できる企業

▶アライアンスパターン

①業務提携

②資本提携

③M&A

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断させるための客観的な指標等

 

 当社は売上高に影響する指標として下記を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な重要指標としています。

 

売上高に影響する指標

 ①稼働人員数(モバイルエンジニアリングサービス)

 ②平均単価(モバイルエンジニアリングサービス)

 ③設置台数(IoTエンジニアリングサービス)

 ④平均単価(IoTエンジニアリングサービス)

 

 当社の売上高は主にモバイルエンジニアリングサービスとIoTエンジニアリングサービスで構成されております。モバイルエンジニアリングサービスはストック型案件の売上高が大半を締めており、その売上高は稼働人員数×平均単価で形成されております。そのため、①稼働人員数と②平均単価を事業拡大に係る重要な指標としております。また、IoTエンジニアリングサービスはフロー型案件の売上高が大半を締めており、その売上高は設置台数×平均単価で形成されております。そのため、③設置台数と④平均単価を事業拡大に係る重要な指標としております。

 

過年度の実績は下記となります。

KPI

前事業年度実績

当事業年度実績

① 稼働人員数

4,452人

4,939人

② 平均単価

625千円

636千円

③ 設置台数

307千台

556千台

④ 平均単価

1,591円

1,585円

(注)1.ストック型案件とは顧客内でのプロジェクト支援など1ヶ月~3ヶ月の業務委任契約を継続的に更新する案件を指す。

2.フロー型案件とはIoT機器設置など単発契約の案件を指す。

3.稼働人員数とは、モバイルエンジニアリングサービスのプロジェクトに従事し、原価性のあるベイシス総稼働従業員数、パートナーエンジニアの総稼働人員数の合計を指す。

4.平均単価とは、モバイルエンジニアリングサービスではストック型案件の総売上高を総稼働人員数で割ったもの、IoTエンジニアリングサービスはフロー型案件の総売上高を設置台数で割ったものを指す。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 

① 新規顧客及び協力会社の開拓

 当社売上はソフトバンク株式会社に対する依存度が当事業年度において約49.9%となっており、その依存度を引き下げ安定的な事業基盤を構築するべく、5GやIoTの普及促進を前提とした新たな通信キャリアやIoT機器メーカーなど新規顧客との取引拡充が喫緊の課題と考えております。また、適正価格による高品質なインフラ構築・運用を全国規模へ拡大するため、国内を網羅するベイシスパートナーズの構築もあわせて拡充していく必要があると考えております。

 

② マーケティング強化

 今までは携帯電話業界という限られた市場の中で、当社が保有するネットワークを軸に顧客を開拓してきましたが、今後広範な業界への事業拡大を進めるためにはそれに応じたマーケティングが必要となります。2019年からマーケティングや広報活動をテスト的に進めており、少しずつ効果が出始めているため、今後は更にマーケティング活動を強化します。

 

 

③ テクノロジーの強化

 当社は、インフラテックによるビジネスモデルの変革を標榜しており、その根幹を担う業務のDX化を推進するため、自社内にシステム開発体制を保持しております。今後は、新しいテクノロジーを取り入れながらさらにDX化の対象となる領域を拡大し、競争優位なシステムの構築を図る必要があると考えております。

 具体的には、まずは自社システムBLASの継続的な機能拡充、また将来的にはBLAS以外にも新たなシステムの開発が必要であると考えており、社内開発体制強化や他社との業務提携などを行います。そのため、DXにおける中長期ビジョンの策定やその推進担当者の選任、作業の標準化、社内システムの見直しを行い社内のDX化を推進します。

 

④ 人材の確保と育成

 当社において、いかに人材を採用し育成するかは事業を拡大するうえでの重要な課題の一つであると考えております。安定的な採用を維持し人材の定着率を高めるために、積極的な採用を行っていくとともに、人事研修制度の充実、資格取得※の促進や多様な勤務形態の導入等により社員にとって働きがいのある働きやすい環境の整備も実施してまいります。また、生産キャパシティの拡大という観点より協力会社リソースの拡充も必要であり、ベイシスパートナーズの獲得と協力会社社員への指導、育成も進めてまいります。

 

※ 社内エンジニアの51.5%が国家資格を保有(2022年6月末時点)

 

⑤ 個人情報の取り扱い及び情報管理体制の強化

 当社では、個宅へのIoT機器設置をはじめ、各事業で提供するサービスの特性上、住所・氏名等の個人情報を取り扱うことがあります。そのため、情報管理体制をさらに強化することが課題であると考えております。これらの情報の取り扱いについては、情報セキュリティマネジメントシステム国際規格(ISO27001)認証を取得し、個人情報や機密情報に関する取り扱いを社内規程に定めておりますが、今後も社内研修の継続実施等により、セキュリティ意識の喚起や情報リテラシーの向上に努めて参ります。

 

⑥ 法令遵守の体制強化

 当社のサービスは、業務委託契約(準委任契約を含む)により事業を行う場合があります。その場合、労働者派遣事業との違いを明確に認識し、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(1986年4月17日 労働省告示第37号)に従って、事業を運営しております。また、一部の事業につきましては、建設業法、労働者派遣法の適用を受けており、法令遵守の体制をより一層強化することが必要であると考えております。社内においては、入社研修や講習を定期的に実施し、法令遵守の重要性につき継続的に周知徹底を行うなど、法令に則った事業運営に努めてまいります。

 

⑦ 内部管理体制、コーポレート・ガバナンスの強化

 当社が今後の事業環境の変化に対応し、また新たに事業拡大を進めるためには、内部管理体制とコーポレート・ガバナンスを強化していくことが重要であると認識しており、その体制を整備し実効性を高めることでリスク管理の徹底や業務の効率化を図ってまいります。

 

⑧ 顧客、パートナー、従業員のエンゲージメントの可視化・向上

 当社は顧客、パートナー、従業員のエンゲージメントや満足度の可視化を図るため各種サーベイを導入しております。まずは2019年より従業員エンゲージメントの可視化と改善アクションを開始しており、具体的にはサーベイの結果を従業員の様々な属性(雇用形態、所属部門、在籍年数、年齢層等)から多面的に分析し、従業員の期待度と満足度の乖離が高い事項を重点対策項目として改善活動に取り組んでおります。また、2020年からはネットプロモータースコアを導入し、顧客及びパートナーから自社の強み・課題並びにその要因をヒアリングして現場にフィードバックすることで日々の業務における改善へと繋げ、当社のステークホルダー全体に係るエンゲージメントの向上を図ってまいります。

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