当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
あらゆる情報がデジタル化されビッグデータ化する中で、当社は「見える化プラットフォーム企業」のビジョンのもと、先進的なテクノロジー活用によるデータを可視化する技術を武器に、ビッグデータ活用による企業の業務効率化や意思決定を支援するサービスを展開しております。
当事業年度の経営環境においては、企業のデジタル化シフトや働き方の見直しに伴う業務の自動化・効率化などへの取り組みが続いており、それらを支援するソフトウェアについては高い需要が維持されております。特に当社が手掛けるSaaS型クラウドサービスは、イニシャルコストを抑えて短期での導入が可能であることや、システム更新などの運用負荷を軽減できることから導入へのハードルが低く、企業規模や業種を問わず投資意欲が高く、市場成長をけん引しております。
当社では、2008年5月にスタートした見える化エンジンにより高収益を確立しながら、2011年7月に立ち上げたカスタマーリングスでは安定成長を継続し、2016年9月に参入したタレントパレットは高成長を続けております。いずれも継続収益が大部分を占めるSaaS型サービスであり、それぞれの事業による収益が上乗せされる形で成長を継続しております。全ての事業は黒字化しておりますが、高収益の安定事業、安定成長事業、高成長事業の組み合せにより、全社ベースで高い成長率と利益率を同時に実現しております。
新規顧客を獲得するための活動としては、マス広告やWeb広告等によるオンラインマーケティング、展示会やWebセミナー等へのイベントへの参加により、当社サービスに関心をもつ顧客を集客し、導入を検討する企業にはサービス説明やデモを実施しながら受注を獲得してまいりました。またインサイドセールスやアウトバウンドなどの手法も活用し、潜在的な顧客に対して積極的に提案を行うことで、新たな顧客層の開拓を推進しております。
足元ではコロナ禍が収束に向かう中で、リアル会場での展示会やイベントなどの機会が増加してきており、参加者にデモや分析手法の紹介を行う機会を活用しながら顧客の導入意欲を高めております。
以上の取り組みの結果、当事業年度における売上高は7,910,662千円(前事業年度比29.3%増)となり、前年の高成長を継続しております。また将来の大きな市場獲得を見据えてマーケティング投資などの積極的な成長投資を継続した結果、営業利益は2,663,704千円(前事業年度比26.4%増)、経常利益は2,671,659千円(前事業年度比27.7%増)、当期純利益は1,796,230千円(前事業年度比25.7%増)となっております。
セグメント別の経営成績は次の通りであります。
a.見える化エンジン事業
見える化エンジン事業は、コールセンターやマーケティング部門に集まる顧客の声に加え、近年拡大してきたソーシャルメディア上での口コミを分析できるツールを提供しております。
当事業では「顧客体験フィードバック」のコンセプトのもと、企業が顧客に提供したい顧客体験と、顧客の感じ方のギャップを分析する仕組みを提供しており、企業の商品・サービスの改善に対するソリューションとして事業展開を図っております。
コロナ禍の状況下で一部の観光・レジャーなどの業界において受注が弱含む状況はあったものの、顧客の声をマーケティングに活かす取り組みは着実に浸透してきていることから、全体としては当サービスへの引き合いは堅調に推移しております。またツール単体としての提供だけでなく、分析ノウハウや分析結果の活用方法などをコンサルティングとして提供しつつ、顧客内の幅広い部門での活用を促す取り組みを強化した結果、受注案件の大型化が進んでいるほか、既存顧客についても活用シーンの拡大とともに顧客単価は上昇傾向にあります。
足元では、ソーシャルメディアでの消費者ニーズの把握やコールセンターやコンタクトセンターなどでの顧客の声の分析や、社内のナレッジ蓄積と業務効率化等を目的としたサービス導入が好調に推移しております。
以上の結果、当事業年度におけるセグメント売上高は1,710,269千円(前事業年度比2.0%増)、セグメント利益は939,607千円(前事業年度比5.6%減)となりました。
b.カスタマーリングス事業
カスタマーリングス事業は、主にEC事業者や通信販売事業者向けに、顧客の属性、購入履歴、メール配信への反応等の情報に基づき、最適なキャンペーンを実施できる統合マーケティング・ツールを提供しております。
当事業では「実感型デジタルマーケティング」のコンセプトのもと、データの効率的な活用にとどまらず、オンライン施策が顧客行動に与える影響を分析・見える化することで、次の施策決定を支援し、また分析した結果を直接マーケティング施策に活用できるソリューションとして事業展開を図っております。
電子商取引市場の拡大により、顧客とのデジタル接点から収集した情報をマーケティング施策に活かす取り組みが広がっておりますが、デジタル・マーケティング分野は成長市場であることから新規参入も多く、競争環境は厳しくなってきております。そのような環境の中で、当社は、多様な条件設定によりリアルタイムに有望顧客を抽出・可視化することで顧客に合わせたきめ細かなマーケティング・シナリオ構築と最適アクション実施を実現できるツールとして差別化を図っております。
当サービスへの引き合いは堅調に推移しており、顧客数の増加に加え既存顧客の利用度拡大に伴うプランアップにより顧客単価は上昇傾向にあり、収益拡大に寄与しております。
以上の結果、当事業年度におけるセグメント売上高は1,437,535千円(前事業年度比8.3%増)、セグメント利益は393,907千円(前事業年度比15.6%増)となりました。
c.タレントパレット事業
タレントパレット事業は、企業内に散在している社員スキル、適性検査結果、職務経歴、人事評価、従業員アンケート、採用情報などの人材情報を集約して分析・見える化できるプラットフォームを提供しております。 働き方改革や労働人口減を背景とした人材活用プロセス(採用、教育、配置、評価)の質的向上や効率化を目指した人材情報管理のソフトウェア市場は急拡大しております。当社では、顧客基盤の拡大に向け、先行的に積極的な人員採用やマーケティング投資を実施しており、導入社数は急速に増加しております。
当事業では、人材情報をデータで見える化し、分析的視点での人事戦略を実現する「科学的人事」のコンセプトのもと、継続的にサービスの機能強化を図っているほか、導入企業へのコンサルティングを通じて蓄積された分析ノウハウや活用方法などをサービス強化に結び付けております。足元では「ジョブ型雇用機能」「健康経営機能」「人的資本管理機能」などのサービス強化を図るほか、Webセミナーの積極開催などの施策により、引き合いが増加しております。新規に導入する顧客については、従業員数が多い大手企業が増えていることと、オプション機能の導入やプランアップによるアップセルが進んでいることから、全体の顧客単価が上昇傾向にあり、収益拡大に寄与しております。
以上の結果、当事業年度におけるセグメント売上高は4,762,857千円(前事業年度比52.9%増)、セグメント利益は2,125,353千円(前事業年度比41.5%増)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は6,598,799千円で、前事業年度末に比べ1,100,256千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が863,881千円、売上高が伸長したことにより売掛金が189,546千円増加したことによるものであります。
固定資産は1,345,971千円となり、前事業年度末に比べ709,286千円増加いたしました。これは主に有形固定資産が59,923千円、繰延税金資産が14,590千円、投資その他の資産に含まれる関係会社株式が538,093千円増加したことによるものです。
(負債)
当事業年度末における負債合計は1,480,705千円で、前事業年度末に比べ252,898千円増加いたしました。これは主に未払法人税等が73,434千円、未払費用が57,221千円、契約負債(前事業年度末は前受収益)が42,331千円、賞与引当金が30,354千円増加したことによるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は6,464,065千円で、前事業年度末に比べ1,556,643千円増加いたしました。これは主に利益剰余金が1,507,870千円増加したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、5,478,619千円と前事業年度末と比べ863,881千円の増加となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,810,223千円(前事業年度は1,548,165千円の獲得)となりました。これは主に、法人税等の支払額830,158千円による資金の減少があったものの、税引前当期純利益の計上2,685,282千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は707,868千円(前事業年度は59,170千円の使用)となりました。これは主に関係会社株式の取得による支出538,093千円、有形固定資産の取得による支出163,967千円、敷金及び保証金の差入による支出96,511千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は238,473千円(前事業年度は125,385千円の使用)となりました。これは主に株式の発行による収入49,000千円があったものの、配当金の支払額287,247千円による資金の減少があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
b.受注実績
当社は、受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載は省略しております。
c.販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
前年同期比(%) |
見える化エンジン事業(千円) |
1,710,269 |
102.0 |
カスタマーリングス事業(千円) |
1,437,535 |
108.3 |
タレントパレット事業(千円) |
4,762,857 |
152.9 |
合計(千円) |
7,910,662 |
129.3 |
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成に当たり、決算日における財政状態及び会計期間における経営成績に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、この見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項重要な会計方針」に記載のとおりであります。
また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(固定資産)
当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(関係会社株式の評価)
市場価格のない関係会社株式の実質価額が著しく低下した場合の減損処理の要否については、将来の事業計画に基づく回収可能性により判定しています。実質価額が著しく低下し、将来の不確実な経済条件の変動などによって将来の事業計画に基づく回復可能性がない場合には、関係会社株式評価損の計上が必要となり、翌事業年度の計算書類に重要な影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産)
当社は、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産及び法人税等調整額に影響を及ぼす可能性があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・結果内容
(売上高)
当事業年度の売上高は、7,910,662千円(前事業年度比29.3%増)となりました。セグメント別の売上高については下記のとおりとなっております。
見える化エンジン事業:コールセンターやマーケティング部門に集まる顧客の声に加え、近年拡大しているソーシャルメディア上での口コミを分析できるツールを提供しております。顧客の声をマーケティングに活かす取り組みが着実に浸透してきていることから、コンサルティングを行いつつ、顧客内の幅広い部門での活用を促す取り組みを強化しており、契約単価の上昇が売上拡大に結び付いており、当事業年度におけるセグメント売上高は1,710,269千円(前事業年度比2.0%増)となっております。
カスタマーリングス事業:導入企業が顧客属性、購入履歴、メール配信への反応などにより、最適なキャンペーンを実施できる統合ツールを提供しております。顧客とのデジタル接点から収集したデータを次のマーケティング施策に活かす取り組みが広がっており、顧客数の増加と既存顧客の利用度拡大による契約単価上昇が売上拡大に結び付いており、当事業年度におけるセグメント売上高は1,437,535千円(前事業年度比8.3%増)となっております。
タレントパレット事業:企業内に散在している社員スキル、適性検査結果、職務経歴、人事評価、従業員アンケート、採用情報などの人事情報を集約して分析・見える化ができるプラットフォームを提供しております。積極的なマーケティング投資により導入社数が急速に増加しているほか、導入企業の大型化に伴い契約単価も上昇していることが売上拡大に結び付いており、当事業年度におけるセグメント売上高は4,762,857千円(前事業年度比52.9%増)となっております。
(営業費用及び営業利益)
当事業年度の売上原価及び販売費及び一般管理費を合算した営業費用は、5,246,958千円(前事業年度比30.8%増)となりました。これは主に広告宣伝費の増加によるものであります。この結果、営業利益は、2,663,704千円(前事業年度比26.4%増)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当事業年度において、保険解約返戻金15,415千円を計上し、営業外収益が18,676千円、本社移転に伴う費用7,643千円、固定資産除却損2,606千円を計上し、営業外費用が10,721千円となりました。この結果、経常利益は、2,671,659千円(前事業年度比27.7%増)となりました。
(特別損益、法人税等及び当期純利益)
当事業年度において本社移転に伴う資産除去債務戻入益を計上し、特別利益が13,623千円となりました。法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合算した法人税等は889,052千円となりました。この結果、当期純利益は、1,796,230千円(前事業年度比25.7%増)となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、その大部分を運転資金が占めており、その内訳としては人件費、広告宣伝費等の営業費用となっております。当該資金需要に必要な資金は自己資金を中心としながら、必要に応じて金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としておりますが、今後の資金需要の額や使途に合わせて資金調達方法は柔軟に検討を行う予定です。
なお、当事業年度末において、現金及び現金同等物は5,478,619千円であり、十分な資金の流動性を確保しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針に関して
当社は、「プラスアルファの価値を生み出すことで『つきぬける感動』と『広がる可能性』を提供します。」を企業理念に掲げ、事業を拡大してまいりました。
当社がこの理念の下、長期的な競争力を維持し持続的な成長を図るためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対して、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、最善の経営方針を立案していくことが必要であると認識しております。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
⑦ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、主な経営指標として売上高、営業利益、営業利益率を重視しております。当事業年度における各指標の前年同期比の増減率は以下のとおりであり、引続き対処すべき経営課題の改善を図りながら、経営戦略を推進してまいります。
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2021年9月期 (前事業年度実績) |
2022年9月期 (当事業年度実績) |
前年同期比増減率 |
売上高 |
6,118,210千円 |
7,910,662千円 |
129.3% |
営業利益 |
2,106,977千円 |
2,663,704千円 |
126.4% |
営業利益率 |
34.4% |
33.7% |
△0.7% |
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