(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における世界経済は、先進国を中心として新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が進んだことにより、段階的な行動制限緩和とともに経済活動が正常化に向かいつつあります。一方、米中の貿易摩擦が依然として継続していることや資源価格が上昇傾向にあることに加え、ウクライナへ侵攻したロシアに対する経済制裁により世界経済の分断化が懸念されるなど、先行きの不透明感は一層高まりました。
国内経済においては、緊急事態宣言が解除されたことにより回復の兆しが見られるようになりましたが、半導体等の供給不足が各業界の生産体制に大きな影響を及ぼしているほか、資源価格の高騰が大きな懸念材料となっております。さらに、新しい変異株の感染再拡大により再び行動が制限されるなど、本格的な景気回復には時間がかかるものと見込まれております。
このような状況下において、当社グループは「環境ニーズを創造する」を事業コンセプトとし、ESGやSDGsといった考え方に対する意識の高まりを背景に、環境を軸とした事業をさらに加速させることで、企業価値の向上に努めてまいりました。その中でも今後の成長ドライバーとなる産業廃棄物の有効利用や電子材料向け製品の供給等には特に注力し、設備投資も概ね計画どおりに進捗しました。
この結果、当連結会計年度における業績は、売上高15,537百万円(前期比3,076百万円増、24.7%増)、営業利益1,629百万円(前期比568百万円増、53.6%増)、経常利益1,629百万円(前期比548百万円増、50.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,259百万円(前期比531百万円増、73.1%増)となり、いずれも過去最高の業績となりました。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)の適用により売上高は1,072百万円減少しております。営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益に与える影響はありません。
当社グループは、環境関連事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載を省略しておりますが、主な事業は5つに区分しており、事業種類別の業績は次のとおりです。
(リユース事業)
当事業は、再資源化に対する社会的ニーズが年々高まる中、有機溶剤、リン酸及び希少金属といった主要な取扱品目の全てにおいて、廃棄物原料の収集から当社工場での製造、再生製品の販売まで堅調に推移しました。特に、リン酸リサイクルにおいては、半導体業界の高稼働により廃棄物原料を多く収集することができ、また再生リン酸の拡販も進んだことから持続的に成長しております。その結果、売上高は2,849百万円(前年同期比416百万円増、17.1%増)となりました。なお、収益認識会計基準の適用により売上高は16百万円減少しております。
(リサイクル事業)
当事業は、顧客の廃棄物処理需要が堅調に推移したことに加え、2020年11月より稼働開始したサンワ南海リサイクル株式会社(連結子会社)の運用が軌道に乗り始めたことにより、当社グループの廃棄物取扱数量を増加させることができました。また、アライアンス先との協力体制強化により、遠方顧客及び特殊な廃棄物の処理需要にも柔軟に対応することができました。その結果、売上高は4,692百万円(前年同期比487百万円増、11.6%増)となりました。なお、収益認識会計基準の適用により売上高は424百万円減少しております。
(化学品事業)
当事業は、次世代自動車の台頭やIT技術・情報通信技術の高度化に伴い、半導体・電池等の電子材料業界の拡大が期待される中、電子材料向けの高純度溶剤販売や受託製造の獲得に注力してまいりました。特に、当社茨城事業所に新設した電池向け副資材製造設備が稼働開始したことに加え、一部溶剤の市況価格が大幅に上昇したことを受け、タイムリーに販売価格へ転嫁できたことから、当社グループの売上高を大きく押し上げる状況となりました。その結果、売上高は4,762百万円(前年同期比2,297百万円増、93.2%増)となりました。なお、収益認識会計基準の適用により売上高は159百万円減少しております。
(自動車事業)
当事業は、次世代自動車などの新しい可能性が広がる一方、従来からの部品加工分野は需要が縮小していくことが見込まれる難しい事業環境であるほか、半導体不足による自動車生産台数の頭打ち等が懸念されますが、新型コロナウイルス感染症の影響により大きく減産となった前年同期と比較すると、顧客工場の稼働は回復しております。その結果、売上高は2,258百万円(前年同期比39百万円増、1.8%増)となりました。なお、収益認識会計基準の適用により売上高は187百万円減少しております。
(PCB事業)
当事業は、PCB特別措置法で定められた2027年の処理期限に向けて徐々に市場が収縮していくことが見込まれる中、適切に処理を進めるためのソリューション提供を通じて顧客の信頼を獲得し、他の事業での取引へ展開していく活動に注力してまいりました。また、前年は新型コロナウイルス感染症の影響により業績悪化した顧客がPCB廃棄物の処理を先送りする傾向が多く見られたのに対し、国内経済の緩やかな回復基調を背景として、前向きに検討する顧客が増加してまいりました。その結果、売上高は975百万円(前年同期比164百万円減、14.4%減)となりました。なお、収益認識会計基準の適用により売上高は285百万円減少しております。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末の当社グループの資産合計、負債合計及び純資産合計を前連結会計年度末と比較すると以下のとおりとなりました。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、21,382百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,265百万円増加いたしました。流動資産は8,177百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,204百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が1,720百万円増加したことによるものであります。固定資産は13,205百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,060百万円増加いたしました。これは主にサンワ南海リサイクル株式会社混練工場建設、茨城事業所混合エマルジョン設備購入等により有形固定資産が1,037百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は11,613百万円となり、前連結会計年度末に比べ125百万円増加いたしました。流動負債は6,482百万円となり、前連結会計年度末に比べ719百万円増加いたしました。これは売上高増加による買掛金が421百万円、設備投資による営業外電子記録債務が258百万円増加したこと等によるものであります。固定負債は、5,130百万円となり、前連結会計年度末に比べ593百万円減少となりました。これは主に長期借入金が559百万円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は9,769百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,140百万円増加いたしました。これは主に増資により資本金及び資本準備金がそれぞれ1,468百万円増加、親会社株主に帰属する当期純利益1,259百万円増加したこと等によるものであります。この結果、自己資本比率は45.7%(前連結会計年度は32.9%)となり経営基盤を強化することができました。
当連結会計年度の当社グループの売上高、売上総利益、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益を前連結会計年度と比較すると以下のとおりとなりました。
(売上高、売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上高は15,537百万円(前年同期比24.7%増)、売上原価は10,934百万円(前年同期比26.4%増)、売上総利益は4,603百万円(前年同期比20.8%増)となりました。主な要因としては、主要材料費が2,213百万円増加したものの、化学品事業の売上高が2,456百万円増加したこと等によります。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は2,973百万円(前年同期比8.2%増)となり、営業利益は1,629百万円(前年同期比53.6%増)、売上高に対する比率は10.5%となりました。主な要因としては、人件費が95百万円増加したものの、売上総利益が793百万円増加したこと等によります。
(営業外損益、経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は62百万円(前年同期比8.7%増)、営業外費用は61百万円(前年同期比69.6%増)、経常利益は1,629百万円(前年同期比50.7%増)となりました。主な要因としては、営業外収益として受取配当金が3百万円増加したものの、営業外費用として株式交付費15百万円増加したこと等によります。
(特別損益、税金等調整前当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は1,841百万円(前年同期比61.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,259百万円(前年同期比73.1%増)となりました。これは、特別利益として受取保険金229百万円等が計上されたことによります。
当連結会計年度の当社グループのキャッシュ・フローを前連結会計年度と比較すると以下のとおりとなりました。
当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額)は税金等調整前当期純利益や減価償却費を源泉とした収入を固定資産等の取得や法人税等の支払いなどによる支出が上回り、571百万円のマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローでは株式の発行による収入が長期借入金の返済による支出を上まわり2,291百万円の収入となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加1,063百万円、法人税等の支払484百万円、棚卸資産の増加469百万円等があったものの、税金等調整前当期純利益1,841百万円や減価償却費860百万円を源泉とした収入等により、1,272百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入58百万円等があったものの、有形固定資産の取得による支出1,900百万円等により1,844百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済額2,039百万円等があったものの、株式の発行による収入2,921百万円、長期借入れによる収入1,400百万円等により、2,291百万円の収入となりました。
当社グループは「環境関連事業」の単一セグメントであります。当連結会計年度における生産実績は以下のとおりであります。
(注) 1.金額は、製造原価によっております。
2.第53期連結会計年度の期首より「企業会計基準第29号:収益認識に関する会計基準」を適用しておりますが、改正会計基準の適用をしていない「従来基準」での金額は9,417百万円、前年同期比は146.9%となります。
当社グループは「環境関連事業」の単一セグメントであります。当連結会計年度における仕入実績は以下のとおりであります。
(注) 1.金額は、仕入価格によっております。
2.第53期連結会計年度の期首より「企業会計基準第29号:収益認識に関する会計基準」を適用しておりますが、改正会計基準の適用をしていない「従来基準」での金額は8,367百万円、前年同期比は161.2%となります。
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
当社グループは「環境関連事業」の単一セグメントでありますが、主な事業は「リユース事業」「リサイクル事業」「化学品事業」「自動車事業」「PCB事業」の5つに区分されます。また、売上高の性質の違いを踏まえ、産業廃棄物処理などの役務提供に係る売上を「処理費売上」、製品・商品等の販売に係る売上を「一般売上」として区分することができます。これらの区分での当連結会計年度における販売実績は以下のとおりであります。
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合
が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
2.第53期より「企業会計基準第29号:収益認識に関する会計基準」を適用しております。
当社グループは、本書提出日現在において、工場5ヶ所(愛知県3ヶ所、茨城県1ヶ所、和歌山県1ヶ所)を保有し、営業所5ヶ所(北海道、東京都、大阪府、香川県、福岡県)を展開しております。
グループ会社の増加に伴い人員も増加し、本書提出日現在において412名体制まで拡大しました。
今後におきましても、事業地域の拡大を成長戦略の1つとして捉え、営業エリアの更なる拡大を目指していく方針であります。
一方で、環境関連事業を営む当社グループは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」を始めとした環境関連法規制の遵守は経営上最も重要な課題と位置付けており、法令遵守に対する一層の意識向上と体制強化を図るため、社内教育や継続的な施策の実施を図り、社会的信用をより一層得ることに努めてまいります。
財政状態及び経営成績の状況につきましては、「(2)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
キャッシュ・フロー状況の分析につきましては、「(3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
また、当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、運転資金に関しては、手許資金(利益等の内部留保金)を勘案のうえ、不足が生じる場合には短期借入金による調達で賄っております。設備資金に関しては、手許資金、長期借入金による調達を基本としております。ただし、設備資金の不足が生じる期間が短期間である場合には、短期借入金による調達で賄っております。
長期資金の調達に際しては、金利動向等の調達コストを総合的に検討しております。
資金の流動性については、総務部経理課が適時に資金繰り計画を作成・更新するとともに流動性の維持等により流動性リスクを管理しております。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたって、重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成にあたっては、固定資産の減損、繰延税金資産の計上等の重要な会計方針に関する見積り及び判断を行っております。これらの見積りは、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる方法に基づき行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
また、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は売上高営業利益率及び取扱数量(産業廃棄物の引取数量と商品・製品の販売数量の合計であり、商品・材料の仕入数量等は含まない。)を重要な経営指標として取扱っております。最近2連結会計年度の推移は以下のとおりであります。
(注)第53期連結会計年度の期首より「企業会計基準第29号:収益認識に関する会計基準」を適用しておりますが、改正会計基準の適用をしていない「従来基準」での売上高営業利益率は9.8%となります。
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