(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における資産は、前事業年度末と比較し745,186千円増加し、1,234,877千円となりました。これは主に、売上債権の回収に伴い売掛金が28,059千円、減価償却に伴いソフトウエアが21,871千円減少したものの、現金及び預金が762,396千円、繰延税金資産が41,004千円増加したことによるものです。
(負債)
当事業年度末における負債は、前事業年度末と比較し44,373千円増加し、93,737千円となりました。これは主に、未払金が9,055千円、未払法人税等が28,562千円増加したことによるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、前事業年度末と比較し700,812千円増加し、1,141,140千円となりました。これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が44,433千円、公募増資により資本金及び資本剰余金がそれぞれ328,189千円増加したことによるものです。
② 経営成績の状況
当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響は継続しているものの、経済活動については緩やかな回復基調にあります。一方、ウクライナ情勢の影響、原材料価格の上昇等、先行きについては不透明な状況が続いております。
当社は、「分断なき持続的な社会を実現するための手段を提供する」ことを企業パーパスとし、個人が持つ多面的な能力を科学的に評価するシステムや、評価データにもとづき成長を支援する教育コンテンツ、そして個人がデータを安全かつ主体的に活用するためのプラットフォームを学校法人、企業、自治体などのコミュニティに対して展開し、個人と組織のエンパワーメントを支援するSociety5.0時代の産業基盤となるべくサービスを提供しています。
HR事業におきましては、AI搭載エンジンにより社員や採用候補者の気質・コンピテンシー・スキルを科学的に測定して能力を可視化する「GROW360」を利用したサービスと、組織のDX推進における課題を解決すべく、Digitalへの感情バイアスの可視化とDXに関する教育を行う「Dx GROW」を利用したサービスを主に大企業向けに提供しております。新規事業といたしましては、慶應義塾大学とともに、ブロックチェーンを用いて個人情報の管理・活用を実現するための「STARプロジェクト」が2期目を迎え、登録学生数が順調に増加しました。
教育事業におきましては、生徒の能力と教育効果を可視化する評価システム「Ai GROW」、生徒の非認知能力(コンピテンシー)育成のための動画コンテンツおよびシミュレーション型起業家トレーニング教材を備えた「GROW Academy」、オンライン英語学習プラットフォーム「e-Spire」を提供しております。また、経済産業省の「未来の教室」に採択されているデータ利活用による教育DXの原資創出システム「ONGAESHI実証事業」を行いました。
コスト面におきましては、「STARプロジェクト」のプラットフォームの追加機能開発、「GROW360」「Ai GROW」のAI精度向上や機能拡充、UI/UX改善等のソフトウエア開発及び研究開発活動に積極的に取り組んでおります。また、業容拡大のための人材採用にも継続して取り組んでおります。一方で、テレワークを推奨し、コスト最適化に努めております。
この結果、当事業年度の売上高は720,710千円(前年同期比40.1%増)、営業利益39,864千円(同365.5%増)、経常利益21,287千円(同133.3%増)、当期純利益44,433千円(前年同期は3,690千円)となりました。
セグメント別の経営成績を示すと、次のとおりであります。
HR事業
HR事業におきましては、既存顧客との継続的な取引及び取引の拡大とともに、大手企業を中心とする新規顧客の開拓に努めました。重点顧客との関係深化、働き方の変化に伴う新たなニーズの発生等により、組織全体・多階層でのサービス利用や、DX人材育成に係る売上高が増加しました。また、新規事業の「STARプロジェクト」につきましても、参画団体が増加し、2022年3月末現在で12団体となりました。
この結果、当セグメントの売上高は437,247千円(前年同期比38.2%増)、セグメント利益は121,322千円(同7.0%増)となりました。
教育事業
教育事業におきましては、コロナ禍での教育のデジタル化が追い風となっております。学校・教育機関向け「Ai GROW」につきましては、非認知能力の重要性が高まる中、採用校も全国に拡大し、自治体単位の契約も獲得するなど、受注活動も引き続き順調に推移しました。また、EdTech導入補助金につきましても、ほぼ交付決定額どおりに確定しました。また、経済産業省の「未来の教室」に採択されているデータ利活用による教育DXの原資創出システム「ONGAESHI実証事業」では、持続可能な形で教育資金を援助する新しいシステムを開発し、さいたま市教育委員会、三重県教育委員会、および複数の出稿企業とともに、社会人が広告を見ることで、企業の広告出稿費の一部が教材費として、学校・生徒・社会人に配分される仕組みを実証しました。
この結果、当セグメントの売上高は283,463千円(前年同期比43.2%増)、セグメント利益は102,692千円(同129.0%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比較し762,396千円増加し、966,034千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの変動要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は、115,356千円(前事業年度は121,336千円の使用)となりました。これは主に、税引前当期純利益の計上21,287千円、減価償却費21,871千円、売上債権の回収に伴う売上債権の減少額30,051千円があったこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により獲得した資金は、8,890千円(前事業年度は55,681千円の使用)となりました。これは本社オフィスの移転に伴う敷金及び保証金の回収による収入によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は、638,149千円(前事業年度は資金の使用及び獲得はありません)となりました。これは主に、新規上場に伴う株式の発行による収入649,996千円によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|||
受注高 (千円) |
前期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前期比 (%) |
|
HR事業 |
410,823 |
100.5 |
100,471 |
79.2 |
教育事業 |
302,016 |
141.4 |
56,161 |
149.3 |
合計 |
712,840 |
114.5 |
156,632 |
95.2 |
(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。
c.販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
金額(千円) |
前期比(%) |
|
HR事業 |
437,247 |
138.2 |
教育事業 |
283,463 |
143.2 |
合計 |
720,710 |
140.1 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額 (千円) |
割合 (%) |
金額 (千円) |
割合 (%) |
|
株式会社ボストン・コンサルティング・グループ |
61,525 |
12.0 |
19,998 |
2.8 |
経済産業省 |
62,939 |
12.2 |
134,973 |
18.7 |
日本郵便株式会社 |
19,805 |
3.8 |
82,473 |
11.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
売上高は720,710千円(前年同期比40.1%増)となりました。セグメント別の売上高については次のとおりとなっております。
HR事業
HR事業におきましては、既存顧客との継続的な取引及び取引の拡大とともに、大手企業を中心とする新規顧客の開拓に努めました。重点顧客との関係深化、働き方の変化に伴う新たなニーズの発生等により、組織全体・多階層でのサービス利用や、DX人材育成に係る売上高が増加しました。また、新規事業の「STARプロジェクト」につきましても、参画団体が増加し、2022年3月末現在で12団体となりました。
この結果、当セグメントの売上高は437,247千円(前年同期比38.2%増)となりました。
教育事業
教育事業におきましては、コロナ禍での教育のデジタル化が追い風となっております。学校・教育機関向け「Ai GROW」につきましては、非認知能力の重要性が高まる中、採用校も全国に拡大し、自治体単位の契約も獲得するなど、受注活動も引き続き順調に推移しました。また、EdTech導入補助金につきましても、ほぼ交付決定額どおりに確定しました。また、経済産業省の「未来の教室」に採択されているデータ利活用による教育DXの原資創出システム「ONGAESHI実証事業」では、持続可能な形で教育資金を援助する新しいシステムを開発し、さいたま市教育委員会、三重県教育委員会、および複数の出稿企業とともに、社会人が広告を見ることで、企業の広告出稿費の一部が教材費として、学校・生徒・社会人に配分される仕組みを実証しました。
この結果、当セグメントの売上高は283,463千円(前年同期比43.2%増)となりました。
(売上原価及び売上総利益)
売上原価は、減価償却費は18,226千円、人件費は13,236千円増加したものの、外注費が32,621千円減少し、150,287千円(前年同期比5.4%増)と若干の増加にとどまりました。この結果、売上総利益は570,423千円(前年同期比53.4%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、テレワークを推奨し、効率化を図る等のコスト最適化に努めた一方、業容拡大により人件費が61,738千円、「STARプロジェクト」、「GROW360」及び「Ai GROW」等のソフトウエア開発及び研究開発活動に積極的に取り組んだことにより研究開発費が55,526千円、それぞれ増加したこと等により、530,559千円(前年同期比46.0%増)となりました。
この結果、営業利益は39,864千円(前年同期比365.5%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益は、主に雑収入47千円の計上により94千円(前年同期は1,055千円)となりました。
営業外費用は、主に株式公開費用11,846千円及び株式交付費6,383千円の計上により18,671千円(前年同期は495千円)となりました。
この結果、経常利益は21,287千円(前年同期比133.3%増)となりました。
(特別損益、法人税等合計、当期純利益)
特別利益は、発生しておりません(前年同期は発生なし)。
特別損失は、発生しておりません(前年同期は事務所移転費用として5,143千円の計上)。
法人税等合計は、法人税、住民税及び事業税17,858千円、法人税等調整額△41,004千円の計上により△23,146千円(前年同期は290千円)となりました。
この結果、当期純利益は44,433千円(前年同期は3,690千円)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の人件費、ソフトウエア開発に係る外注費、販売費及び一般管理費の営業費用であります。現在、運転資金は自己資金で賄っている一方、資金流動性確保のため、金融機関と当座貸越契約を締結しております。今後、更なるサービス開発や優秀な人材の採用等を通じ、事業規模の拡大を図る方針であり、資金調達手段の多様化を検討してまいります。
なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は966,034千円であり、当社の事業を推進していく上で十分な流動性を確保していると考えております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この財務諸表の作成にあたっては、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社の財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、持続的な成長と企業価値の向上のための客観的な指標として、売上高、営業利益の成長性を重視しております。
HR事業では、売上高を「顧客企業数」×「顧客あたりの売上」と捉え、高い売上高成長率の継続に向けて、「顧客数の最大化」と、「複数階層・全社利用や複数のサービスの提供による顧客あたり売上の増大」に積極的に取り組んでまいります。
教育事業では、売上高を「採用学校数」×「顧客あたりの売上」と捉え、売上高と営業利益の両方で高い成長率を継続するべく、特に「採用学校数の積み上げ」と、「複数のサービスの提供による学校あたり売上の増大」に積極的に取り組んでまいります。
セグメント別の各指標の推移は以下のとおりであります。
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|||
売上高 (千円) |
増減率 (%) |
営業利益 (千円) |
増減率 (%) |
|
HR事業 |
437,247 |
38.2 |
121,322 |
7.0 |
教育事業 |
283,463 |
43.2 |
102,692 |
129.0 |
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因
当社の将来の経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、今後更なる業容拡大と成長を遂げるには、様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。また、当社を取り巻く外部環境及び内部環境を適宜適切に把握し、市場におけるニーズを識別して経営資源の最適化に努めてまいります。
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