業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が断続的に発生し、緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が発出されるなど、先行きの不透明な状況が続きました。ワクチン接種が進む中で消費マインドに持ち直しの兆しが見られるものの、一方で変異株への感染リスクに対する警戒感もあり、依然として予断を許さない状況が続いております。

 サイバーセキュリティ業界においては、コロナ禍を通じ進展しているテレワーク等働き方の変化やDXの進展に伴い、サイバーリスクの及ぶ範囲は大幅に拡大しており、その被害も個人・法人を問わず拡大を続けています。例えば、海外では2021年5月には米国大手石油パイプライン企業がランサムウェア攻撃によって操業を一時停止する事態となり、米国運輸省が燃料輸送に関する緊急措置の導入を宣言することが大きく報道されました。また、国内でも、2022年3月に大手自動車メーカーの取引先企業がランサムウェアに感染したことを契機として、メーカーの国内全14工場28ラインの稼働が一時停止する事態となりました。こうしたことからも、サイバーセキュリティ対策は国民生活や社会経済活動にとって益々重要な課題となっております。

 当事業年度における主な活動内容としては、DXやテレワークの進展により、ゼロトラストモデルの実現等、新たなセキュリティニーズへの対応を強化するために、取扱商品の販売活動に注力いたしました。オンラインセミナーではリモートワークにおけるセキュリティの在り方とその対策としてCheck Point社エンドポイントソリューション等について紹介いたしました。例えば、取扱商品の一つである「Harmony Endpoint」はランサムウェア対策ソリューションとして暗号化されたデータを直前のデータに復旧できるギャップレス・ロールバック機能を有しており、VOTIRO、IRONSCALESといった当社が取扱う他製品と組み合わせることで他には無い、プリ/ポスト・ランサムウェア対策を構築できます。こうした販売活動の成果の一つとして、「Check Point Partner Xchange 2022」(2022年2月26日開催)において、最も売上に貢献したディストリビュータとして「Distributor of the year」を受賞いたしました。なお、受賞は合計14回で最多受賞回数となります。また、当社が取扱う自治体向けファイル無害化ソリューション「VOTIRO Disarmer」がメール無害化/ファイル無害化市場において4年連続国内シェアNo.1を獲得したことも成果の一つとして上げられます。さらに、当社のIoT及びコネクテッドカーセキュリティのパートナーであるKaramba社については、国内IoT機器メーカーとセキュリティ強化を図るためXGuard Protectのライセンス契約を締結する等、徐々に成果が出始めております。その他複数のプロジェクトにおいてもコロナ禍の影響による交渉遅延が生じてはいるものの、概ね各プロジェクトとも進展しております。

 この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。

a.財政状態

(資産)

 当事業年度末における流動資産は2,032百万円となり、前事業年度末に比べ368百万円増加しました。これは主に現金及び預金が96百万円、商品及び製品が301百万円増加したことなどによるものであります。固定資産は493百万円となり、前事業年度末に比べ33百万円減少しました。これは主に工具、器具及び備品が42百万円減少したことなどによるものであります。

 この結果、総資産は2,525百万円となり、前事業年度末に比べ335百万円増加しました。

(負債)

 当事業年度末における流動負債は1,050百万円となり、前事業年度末に比べ468百万円増加しました。これは主に買掛金が249百万円、前受金が206百万円増加したことなどによるものであります。固定負債は121百万円となり、前事業年度末に比べ6百万円増加しました。

 この結果、負債合計は1,171百万円となり、前事業年度末に比べ475百万円増加しました。

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は1,354百万円となり、前事業年度末に比べ139百万円減少しました。これは主に「収益認識に関する会計基準」等の適用に伴い利益剰余金の当期首残高が228百万円減少したことなどによるものであります。

 この結果、自己資本比率は53.6%となり、前事業年度末比で14.6ポイント減少しました。

 

b.経営成績

 引き続き緊急事態宣言に伴う経済停滞の影響を受けており、当社商品やサービスの販売チャネルにおいてシステム構築や納入の遅延が一部で生じたものの、上述の地方自治体向けファイル無害化ソリューション「VOTIRO Disarmer」のリプレイス需要取込が堅調に推移いたしました。その他、Check Point関連での大型案件受注などもあり、売上高は3,167百万円(前年同期は2,795千円)となりました。一方、コストにつきましては、新型コロナウイルス対策として在宅勤務を推進していることやデジタルマーケティングによる販促活動が効率的に実施できたことにより営業活動関連経費が抑制されたことで販売費及び一般管理費1,099百万円(前年同期は1,202千円)となりました。さらに、投資育成事業では当社がリミテッドパートナーとして参加しているインキュベータにおいて、出資しているイスラエルのサイバーセキュリティ関連スタートアップ企業の買収が複数案件確定したことにより、当社への配当として58百万円の運用益を計上いたしました。その結果、各段階利益につきましては、営業利益23百万円(前年同期は52百万円の営業損失)、経常利益78百万円(前年同期は38百万円の経常損失)、当期純利益76百万円(前年同期は51百万円の当期純損失)となり、通期で黒字転換を達成いたしました。

 なお、当社では事業セグメントをネットワークセキュリティ事業のみとしております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前事業年度末に比べ96百万円増加し、993百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は119百万円(前事業年度は24百万円の獲得)となりました。これは主に、棚卸資産の増加168百万円、前受金の減少160百万円があった一方、税引前当期純利益74百万円の計上、減価償却費105百万円の計上、仕入債務の増加249百万円があったことなどによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は23百万円(前事業年度は100百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出48百万円、無形固定資産の取得による支出23百万円があった一方、投資事業組合からの分配による収入57百万円があったことなどによるものです。

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

自己資本比率(%)

69.0

66.3

64.2

68.2

53.6

時価ベースの

自己資本比率(%)

313.2

366.0

167.5

193.5

122.3

キャッシュ・フロー対

有利子負債比率(年)

0.7

4.3

1.0

8.3

1.6

インタレスト・

カバレッジ・レシオ

(倍)

225.6

33.3

133.7

17.2

85.2

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注)1.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

  2.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

  3.有利子負債は貸借対照表に記載されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象として

    おります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.商品仕入実績

 当事業年度における商品仕入実績を商品区分別に示すと次のとおりであります。

商 品 区 分

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

パッケージソフトウェア商品

(千円)

セキュリティ商品及び

運用関連商品

1,604,255

135.4

 

b.受注実績

 当事業年度における受注実績を商品区分別に示すと次のとおりであります。

商 品 区 分

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

パッケージソフトウェア商品

セキュリティ商品及び

運用管理商品

3,433,826

122.5

422,935

269.3

 

c.販売実績

 当事業年度における販売実績を商品区分別に示すと次のとおりであります。

商 品 区 分

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比

(%)

パッケージソフトウェア商品

(千円)

セキュリティ商品及び

運用管理商品

3,167,889

113.3

 (注)最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額 (千円)

割合(%)

金額 (千円)

割合(%)

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

285,718

10.22

 (注)当事業年度は販売実績が10%未満のため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績などの状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社は、事業活動に必要な流動性の維持と資金を確保することと、運転資金の効率的な管理による資本効率の最適化を目指しております。また、営業活動によるキャッシュ・フローを主な源泉と考え、さらに金融・資本市場からの資金調達、銀行との当座貸越契約等を必要に応じて行い、十分な流動性の確保と財務体質の向上を図っております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。

 当社の財務諸表の作成においては、損益又は資産の状況に影響を与える見積り、判断を必要としております。過去の実績やその時点で入手可能な情報を基に、合理的と考えられるさまざまな要因を考慮した上で、継続的に見積り、判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社では、特に以下の項目が、当社の財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに重大な影響を及ぼすと考えております。

a.収益の認識

 「第5 経理の状況 1.財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)5.収益及び費用の計上基準」に記載のとおりであります。

 

b.貸倒引当金

 貸倒引当金について当社では、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については過去の一定期間における貸倒実績から算出した貸倒実績率により、また貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。

 定期的に顧客毎の与信審査及び実績管理等の貸倒れ発生防止策を行っておりますが、将来顧客の財務状態が悪化した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

 

c.棚卸資産

 棚卸資産について当社では、商品は「移動平均法による原価法」、仕掛品は「個別法による原価法」により棚卸資産の評価を行っております。また、現在の市場価値と取得原価との間に大きな乖離が生じていると判断された場合は、評価減しております。実際の将来需要や商品の陳腐化により追加の評価減が必要となる可能性があります。売上高からみて、現状の在庫高水準は適正レベルにあると判断しております。

 

d.ソフトウェア勘定及びソフトウェア仮勘定

 ソフトウェア勘定及びソフトウェア仮勘定において、自社利用ソフトウェアについては、将来の収益獲得能力又は費用削減効果が認められないと判断された場合には一時の費用又は損失となる可能性があります。

④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得