業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

国内の情報通信分野においては、2020年においてもインターネット普及率は83.4%と高水準で推移しており、その中でもスマートフォンを保有している世帯割合は86.8%と、パソコンを保有する世帯割合70.1%を大きく上回る状況となっています(※1)。また、2000年以降、若年層を中心にテレビ離れの動きが継続して進んでいるなか、2021年の日本の広告費はインターネット向け広告費が前年比21.4%増の2兆7,052億円となり、マスコミ4媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディア広告費の合算)の2兆4,538億円を上回りました(※2)。世界においてもその傾向は顕著であり、2021年の世界のデジタル広告費は前年比29.1%増の約40兆円(3,557億ドル)となり、デジタル広告費が構成比で初めて50%を超えました(※3)。

※1 出所:総務省 「令和2年通信利用動向調査の結果」

※2 出所:株式会社電通 「2021年 日本の広告費」

※3 出所:株式会社電通グループ「世界の広告費成長率予測(2021~2024)」

また、エンタテインメント市場においては、2021年の世界の音楽市場は特に有料サブスクリプションのストリーミングを中心に売上高は約3兆3,670億円(259億ドル)と前年比18.5%増加し、7年連続で拡大し、今世紀に入ってから最高の売上高を記録しています(※4)。日本においては、音楽ビデオを含む音楽ソフトの生産実績は1,936億円と前年からほぼ横ばいで推移したものの、依然としてパッケージ商品の縮小傾向が続いておりますが、有料音楽配信の売上実績は895億円と前年比14%増加いたしました。有料音楽配信売上のうち、ストリーミングの売上は744億円と前年比26%増加し、有料配信売上全体の83%まで伸長しています(※5)。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、大型イベントやライブ・コンサートは延期、中止を余儀なくされ、2020年のライブ・エンタテインメント市場は前年比82.4%減の1,106億円となりました(※6)。一方で、多くのアーティストはインターネットでライブ配信を行いつつ、会場に限定数の観客も入れる「ハイブリッド公演」を実施するなど、新しいライブ・エンタテインメントの楽しみ方が定着しつつあります。様々な動員観客規模のライブが配信され、2020年の有料型オンラインライブ市場規模は推計448億円となりました(※7)。2021年においては、政府の基本的対処方針に基づく感染予防対策ガイドラインに沿ったリアルな場での音楽イベントが再開され始め、1月~6月までに開催されたライブ総公演数は前年比216.2%、前々年比64.0%まで回復の兆しをみせています(※8)。

※4 出所:IFPI「Global Music Report 2022」

※5 出所:一般社団法人日本レコード協会「日本のレコード産業2022」

※6 出所:ぴあ総研「ライブ・エンタテインメント市場規模の調査速報値(2021年5月13日公表)」

※7 出所:ぴあ総研「国内オンラインライブ市場に関する市場調査」

※8 出所:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会 基礎調査2021年上半期

当社は1992年に創業され着信メロディを世界で初めて事業化するなど、携帯電話の普及とともに音楽配信事業を中核として順調に成長してまいりました。現在の音楽市場はスマートフォンの普及に伴い、ストリーミング、一般ユーザーが社会へ容易に情報発信できるユーザーアップロードコンテンツ(UUC)やソーシャルメディアといったメディアが多様化するなか、コンテンツの流通方法をはじめ、消費スタイルや、コンテンツの制作方法等、音楽業界のあらゆる活動が変化している状況にあります。

このような環境の下、当社グループは、創業以来コンテンツのデジタル流通に注力してきた取組みを活かし、引き続き『マルチコンテンツ&マルチデバイス戦略(様々なコンテンツを、必要なときに、必要な場所で楽しむことができる環境の創造)』を推進し、インターネット上に溢れる情報を収集、整理し、付加価値を高めてユーザーに提供するプラットフォームの開発など市場環境の変化に応じた新規サービス展開に取り組んでまいりました。

2020年6月にリリースした新感覚ライブ配信プラットフォーム「Thumva」(サムバ)は新たなライブ体験を提供するインターネット視聴サービスです。グループ視聴やコメント投稿のほか、アーティストに対するギフティング機能を有し、ライブ会場に参加しているような高揚感、一体感を共有することができます。数々のアーティストのライブやオンライン体験型アトラクションなど多様なラインナップの配信を実施し、今後も様々なコンテンツの配信を予定しております。サービスの開始以来、約340公演の配信を実施し、会員登録者数は17万人を超えました(2022年3月現在)。

2021年7月には「Thumva」のリソースを活用した新たな店舗向けサービスとして、Web上で問い合わせや相談を希望する顧客に対し、ワンクリックで商談が開始できるオンラインサービス「Thumva BIZ」(サムバビズ)を開始いたしました。デジタルトランスフォーメーション時代に即したオンラインでの店舗様式を提案し、様々な業種の企業に導入いただいております。また、9月には株式会社日本旅行とサービスの販売に関する業務提携をいたしました。同社が有する全国の営業ネットワークを通じて、今後は「Thumva BIZ」並びにフェイス・グループの様々なサービスが提供されます。また、2022年2月には株式会社エイチ・アイ・エスへの提供を開始し、同社のオンライン相談窓口を刷新いたしました。「Thumva BIZ」は対面接客業を中心に、様々な分野における新たな店舗DXサービスとして、今後も販路の拡大を目指してまいります。

当社が運営いたします都内最大級のミュージックラウンジ「PLUSTOKYO」(プラストーキョー)では、政府からの新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言、まん延防止等重点措置ならびにリバウンド防止措置などの東京都感染拡大防止ガイドラインに沿って必要な対策を講じたうえで、営業を継続しております。新たな試みとして、アーティストやアニメ作品とコラボしたメニューや展示企画を期間限定で開催いたしました。また2022年4月から、12Fメインフロアとルーフトップフロアを連動させて営業を再開し、音楽を軸にアート、フード、エンタテインメントの要素を融合したサービスを提供しております。今後も感染拡大防止と安全確保を最優先とし、行政の方針や行動計画に基づいて慎重に運営してまいります。

レーベル事業においては、音楽業界、映画業界へ永年に亘り革新的かつ多大なる貢献をし続けている依田巽氏(ギャガ株式会社代表取締役社長CEO、株式会社ティー ワイ リミテッド代表取締役会長)を2021年12月からレーベル統括最高顧問に迎えました。依田氏においては、2021年9月30日に完全子会社化した株式会社ドリーミュージックの取締役最高顧問として引き続きご尽力いただくとともに、レーベル事業の一層の強化にも寄与していただきます。

フェイス・グループはテレワーク勤務体制を恒久化しております。また、分散していた主要なオフィス機能を南青山オフィスに集約し、全面的にリニューアルいたしました。行動様式の変化や新たな価値観の定着を見据え、「アクティビティー・ベースド・ワーキング」(※9)の考えに基づき、多様で効率的な新しい働き方を実現してまいります。今後とも経営の効率化と収益性の向上を目指した事業活動を推進いたします。

※9 仕事内容に合わせて、作業するスペースやスタイルなどを選ぶことのできる働き方。

当社グループの当連結会計年度の業績については、ポイント事業においては前期に比べ物販売上が減少し、またレーベル事業の売上も減少したため、売上高は前期比23.4%減の15,311百万円、営業損失につきましては92百万円(前期は763百万円の営業利益)、経常利益は前期比83.3%減の136百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は333百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失26百万円)となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、従前の会計処理と比較して、当連結会計年度の売上高は3,409百万円減少し、営業損失は3百万円減少、経常利益は3百万円増加、税金等調整前当期純利益は3百万円増加しております。

 

一方、当社グループの当連結会計年度末における財政状態については、次のとおりであります。

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,410百万円減少し、前期比5.3%減の25,291百万円となりました。主として、現金及び預金、投資その他の資産の減少によるものであります。

負債は、前連結会計年度末に比べ900百万円減少し、前期比9.9%減の8,174百万円となりました。主として、資産除去債務の減少、繰延税金負債の減少によるものであります。

純資産は、前連結会計年度末に比べ509百万円減少し、前期比2.9%減の17,117百万円となりました。主として配当金の支払額及び親会社株主に帰属する当期純損失によるものであります。自己資本比率は67.7%となりました。

 

セグメントの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

<コンテンツ事業>

コンテンツ事業においては、既存配信事業の売上が減少を続けているため、新規性ある商品開発、多様化する収益機会の獲得に向けて各サービスの連動やプラットフォーム化を行い、今後も新たな成長分野への投資を行ってまいります。

「FaRao PRO」は、業務用BGMの提供のみならず、店舗のブランディングを提案するソリューションやアナウンス機能など、店舗運営に必要な機能拡充を中心とした営業活動を積極的に展開しております。今後とも、新たなBGM市場の創造と活性化を目指してまいります。

今後拡大が期待される「D2C」(※10)のビジネスモデルによるアーティスト向けプラットフォーム「Fans'」は、オフィシャルサイトの構築、楽曲・映像配信、アーティストグッズの販売、ファンクラブ運営などアーティスト活動に必要な機能の拡充を行っております。SNSとの連携強化によりファンがクリエイターの発信する情報を拡散することでコミュニティの創出に貢献できるシステムを導入しており、より多くのアーティストが作品や情報を自由に発信できるサービスとして、利用者の獲得、拡大を目指すとともに、利便性の追求等サービス品質の向上に努めてまいります。

※10 自社で企画・製造したサービス・商品を直接ユーザーに届けるビジネス形態。Direct to Consumerの略称。

業績につきましては、キャリア公式サイトサービスの売上減少および新型コロナウイルス対策による店舗の営業自粛措置に伴い、売上高は前期比23.0%減の2,255百万円、営業損失は641百万円(前期は営業損失599百万円)となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、従前の会計処理と比較して、セグメント売上高は554百万円減少しておりますが、営業利益には影響ありません。

<ポイント事業>

ポイント事業においては、ポイント発行サービスを小売店舗に提供するだけでなく、ポイント発行データ取得・分析・販促活用を一連のサイクルとして企画から運用までトータルでサポートし、小売業の販促効率を最大限に高めるアウトソーシングサービスを提供しております。

業績につきましては、物販売上および既存加盟店におけるポイント発行が減少したことにより、売上高は前期比83.4%減の579百万円となりました。営業利益は、前期比56.2%減の141百万円となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、従前の会計処理と比較して、セグメント売上高は1,867百万円減少しておりますが、営業利益には影響ありません。

<レーベル事業>

レーベル事業においては、音楽市場の変化に伴う音楽・映像関連業界の厳しい環境の下、パッケージ商品に依存している状況からの脱却を図るため、将来を見据えた新規事業の強化を進めております。

業績につきましては、日本コロムビア株式会社においてアニメ作品や利益率の高い音源使用にかかる売上の減少に伴い、売上高は前期比8.1%減の12,476百万円となり、営業利益は前期比60.7%減の407百万円となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、従前の会計処理と比較して、セグメント売上高は987百万円減少し、営業利益は3百万円増加しております。

※本文書に記載されている商品・サービス名は株式会社フェイスの日本またはその他の国における商標または登録商標です。

② キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,462百万円減少し、前期比11.3%減の11,484百万円となりました。

当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益8百万円、減価償却費198百万円、のれん償却額124百万円、法人税等の支払額620百万円等により、104百万円の支出(前期は1,243百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出637百万円、ソフトウエアの取得による支出154百万円、関連会社株式の取得による支出157百万円等により、970百万円の支出(前期は673百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出258百万円、配当金の支払額128百万円があったこと等により、387百万円の支出(前期は200百万円の支出)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

当社グループは、生産活動を行っておりません。仕入実績については、サーバー管理費及び労務費が売上原価の大半を占めるため、記載を省略しております。当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

コンテンツ(千円)

2,255,012

△23.0

ポイント(千円)

579,882

△83.4

レーベル(千円)

12,476,935

△8.1

合計(千円)

15,311,830

△23.4

 (注)  セグメント間の取引については相殺消去しております。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。これらの作成にあたり、以下の事項が当社グループの重要な判断および見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

a. 収益の認識

 当社グループでは、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用したため、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識することとしております。

 ポイント事業において、顧客にポイントを発行した時点で売上高を計上し、ポイントが使用された時点で売上原価を計上しておりましたが、当該取引が返品権付の買戻契約に該当するため、当連結会計年度より純額で収益を認識しております。また、主としてレーベル事業における著作権者への印税の分配について、従来は楽曲使用者等から受け取る対価の総額を収益として認識しておりましたが、代理人として行われる取引であるため、楽曲使用者等から受け取る額から著作権者に支払う額を控除した純額で収益を認識することとしております。さらに、レーベル事業におけるカラオケの音源使用許諾料等について従来は一時点で収益を認識しておりましたが、履行義務の識別及び充足時点について検討した結果、一定期間にわたり収益を認識することとしております。また、レーベル事業における返品権付きの販売については、従来は販売時に対価の全額を収益として認識し、過去の返品実績に基づき返品調整引当金を計上しておりましたが、返品されると見込まれる商品の対価を除いた対価で収益を計上することとしております。

b. 売上原価

コンテンツ事業につきましては、サービスをするにあたって必要なサーバー保守費用やシステム構築費用、楽曲等を制作するための費用及び著作権料等並びにそれらに係る労務費や諸経費を売上原価としております。

ポイント事業につきましては、加盟店から返却されるフルマークカード(交換済ポイント)ならびにポイント交換のための仕入商品、加盟店に販売する販促ツールの制作費等を販売原価としております。また、売上高と売上原価を期間対応させるため出荷ポイントのうち未交換ポイント残高を一定の計算方式により見積原価として計上しております。見積原価は、総未交換ポイント残高のうち4年(統計的分析結果に基づく最終的な未使用状態の固定化に要する年数)を経過した未交換ポイントは使用される可能性が低いことから当該見積原価より控除して計上しております。

レーベル事業につきまして、録音費、アーティスト印税、他社所有原盤権使用料などの原盤制作費は、関連作品に係る売上高を認識するまで資産計上し、同時点で原価に計上しております。関連作品の売上予定が無くなったと判断した場合、資産計上されていた原盤制作費は、その事由が判明した時点で全額原価として処理しております。前払費用にはアーティストに支払う契約金や前払印税が含まれております。契約金は契約期間に対応して償却を行っており、前払印税は売上高に対応して原価計上し、また個々のアーティストの過去の作品の販売実績等に基づく販売見込み額を勘案し、予想される将来の売上高に対応して原価計上しております。

c. 固定資産の減損

① 固定資産等の含まれる資産又は資産グループ(以下資産グループ)の識別

 減損が生じている可能性を示す事象(以下「減損の兆候」)は資産グループごとに識別しておりますが、当社グループではその決定にあたり、事業部門ごとに異なった事業を営んでいることから、原則として事業部門ごとにグルーピングしております。一方、のれんについては、のれんを含めた子会社ごとにグルーピングを行っております。

② 減損の兆候の識別

 当該資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、又は、継続してマイナスとなる見込みである場合や、経営環境の悪化を把握した場合等に、減損の兆候を識別しております。

③ 減損の認識

 減損の兆候があった資産グループについては中長期の事業計画等を基礎として割引前将来キャッシュ・フローを算定し、資産グループの帳簿価額を下回る場合には減損損失を認識しております。

④ 減損の測定

 減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失としております。

 なお。上述の見積りや仮定には不確実性があり、事業計画や市場環境の変化により、見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

d. 投資の減損

売買目的有価証券以外の有価証券のうち市場価格のない株式等以外のものについて、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、投資の減損を行います。この場合における「時価が著しく下落したとき」とは、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合をいいます。また、下落率が30%以上50%未満の銘柄については、過去の株価の推移や発行会社の業績等を勘案し、減損処理の要否を検討しております。市場価格のない株式については、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、投資の減損を行います。この場合における「実質価額が著しく低下したとき」とは、株式の実質価額が取得原価に比べ50%以上低下した場合をいいます。ただし、当該発行会社の財政状態及び経営成績、将来の事業計画等により回復可能性が認められる場合には、投資の減損を行わない場合もあります。

e. 返品制度と契約負債

著作権保護の観点から著作物であるCD等に関しては、レコード会社が市場での販売価格を定め、小売店が決められた定価で販売する再販売価格維持制度が定められております。これを背景として、一般にレコード会社と特約店等との販売契約において、レコード会社に製品を返品することができる旨約定されております。このため当社グループは将来の返品に備えて、過去の返品実績に基づく合理的な見積りにより算出した契約負債を計上しております。

f. 貸倒引当金

当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。なお、取引先の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる場合があります。

g. 退職給付に係る会計処理

従業員の退職給付に備えるため、当連結会計年度末における退職給付債務から年金資産の額を控除した額を退職給付に係る負債として計上し、未認識数理計算上の差異を退職給付に係る調整累計額として計上しております。

日本コロムビア㈱及び一部の子会社においては、受給者向けには確定給付企業年金制度を、従業員向けには退職慰労金支給規程に基づく退職一時金制度と確定拠出年金制度を併用した年金制度を採用しております。

当社及び一部の国内連結子会社は、退職一時金制度又は確定拠出年金制度を採用しており、退職給付に係る期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法を適用しております。

退職給付費用及び退職給付債務は数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率及び年金資産の期待収益率などが含まれております。割引率は日本証券業協会の「格付けマトリクス表」によるダブルA格相当以上を得ている社債の利回りを勘案して算出しており、年金資産の期待収益率は年金資産が投資されている資産の種類毎の長期期待収益率に基づいて算出しております。将来、年金資産の運用利回りが低下した場合や、退職給付債務を計算する前提となる数理上の前提・仮定に変更があった場合には、退職給付債務や退職給付費用が増加し、影響を及ぼす可能性があります。

h. 繰延税金資産

当社グループでは、一部の連結子会社において、繰延税金資産を計上しております。

現在の新型コロナウイルス感染症拡大に関する影響から、レーベル事業においては、将来の収益見通しが依然として不透明な状況にありますが、現時点では連結財務諸表に影響を与える会計上の見積り及び判断への影響は限定的と考えております。なお、不確実性が更に高まった場合には、将来における実績値に基づく結果がこの見積りとは異なる可能性があります。

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の業績については、売上高は前期比23.4%減の15,311百万円、営業損失は92百万円(前期は763百万円の営業利益)、経常利益は前期比83.3%減の136百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は333百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失26百万円)となりました。

a. 売上高

売上高は前期比4,679百万円減の15,311百万円となりました。これは主として、ポイント事業においては前期に比べ物販売上が減少し、またレーベル事業の売上も減少したためであります。

b. 売上原価、販売費及び一般管理費

売上原価は前期比3,116百万円減の9,495百万円、販売費及び一般管理費は前期比707百万円減の5,908百万円となりました。販売費及び一般管理費が減少した理由は、主として、新型コロナウイルス感染症流行に伴う活動減少で、広告宣伝費、旅費交通費、会議費及び接待交際費が前期に比べ減少したためであります。

c. 営業利益

営業損失は、92百万円(前期は763百万円の営業利益)となりました。これは主として、a.にて前述した売上高の減少によるものであります。

d. 経常損益

経常損益は、前期比684百万円減の136百万円の利益となりました。これは主として、営業損失92百万円、助成金収入234百万円、投資事業組合運用益153百万円、投資事業組合運用損201百万円を計上したことによるものであります。

e. 税金等調整前当期純損益

税金等調整前当期純損益は8百万円の利益となりました。(前期は462百万円の損失)これは主として、経常利益136百万円に、投資有価証券評価損104百万円並びに減損損失28百万円を計上したことによるものであります。

f. 親会社株主に帰属する当期純損益

親会社株主に帰属する当期純損益は333百万円の損失となりました。(前期は26百万円の損失)これは主として、税金等調整前当期純利益8百万円計上したこと及び法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額を341百万円計上したことによるものであります。

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

当社グループの当連結会計年度における資本の財源および資金の流動性については、従前より営業活動並びに投資活動においては、手元資金で賄っております。一方、財務活動におきましては、借入金の返済並びに配当金の支払について手元資金を充当いたしました。

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,462百万円減少し、前期比11.3%減の11,484百万円となりました。

 

当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益8百万円、減価償却費198百万円、のれん償却額124百万円、法人税等の支払額620百万円等により、104百万円の支出(前期は1,243百万円の収入)となりました。

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出637百万円、ソフトウエアの取得による支出154百万円、関連会社株式の取得による支出157百万円等により、970百万円の支出(前期は673百万円の支出)となりました。

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出258百万円、配当金の支払額128百万円があったこと等により、387百万円の支出(前期は200百万円の支出)となりました。

 

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