当社グループは、当社と連結子会社7社、持分法適用の関連会社5社等により構成されており、音楽・スポーツ・演劇・映画・各種イベント等のチケット販売、レジャー・エンタテインメント領域におけるムック・書籍の刊行及びウェブサイトの運営、コンサートやイベントの企画・制作・運営などを主たる業務としています。
(1)当社グループの事業概要
① チケッティングビジネス
当社の興行チケット予約販売システム「チケットぴあ」は、1984年にスタートした日本初のコンピュータオンラインネットワークによるチケット販売システムです。当システムでは、音楽、スポーツ、演劇、映画及びレジャーなど様々なレジャー・エンタテインメントのチケットが、年間で延べ約160,000公演分登録され、総発券枚数は約7,500万枚にのぼる、日本最大級の取扱規模となっています。
チケット販売ネットワークは、2017年7月からは、全国約38,000カ所(セブン-イレブン、ファミリマート及びチケットぴあ店舗を含む)を有することとなりました。さらに、コールセンターにて予約受付を行うほか、インターネットでは24時間販売を行い、ユーザーの利便性向上に努めています。
当社は、規模を問わない約37,000社にのぼる興行主催者と取引を行うとともに、大手興行主催者や、Jリーグ、プロ野球、ラグビーやバスケットボールなどのスポーツ団体等に「チケットぴあ」システムを提供し、チケッティング業務をトータルにサポートしています。
また、これまでのチケット販売によって蓄積されたノウハウを活用した票券管理業務も行っています。国際イベントへの協力も多く、1998年開催の長野冬季オリンピックでは、「チケットマネジメントのカテゴリーにおけるオフィシャルサプライヤー」としてチケット販売管理業務を受託し、以降夏季・冬季を通じすべての大会において、日本国内分の観戦チケット販売業務を行っております。2002年5月開催のサッカー「2002FIFAワールドカップ」においても、「2002FIFAワールドカップ日本組織委員会」よりチケット販売管理業務を受託し、チケットセンターの電話問い合わせ対応、申し込みガイドの製作、抽選処理、入金管理、チケット販売に関するコンサルティングなどで協力しました。「ラグビーワールドカップ2019日本大会」においては、「チケッティングサプライヤー」として、「東京2020オリンピック・パラリンピック」においては、同大会組織委員会からチケッティングサービスを提供する業務委託事業者(TSP※)として、公式チケットサイトの構築、運営等をはじめとする国内外のチケッティング業務、及びゲーティング業務を担いました。1年の延期を経て、無観客開催となりましたが、オリンピックでは約675万枚、パラリンピックで約190万枚の観戦チケットを世界各国に向けて販売、期間中の全会場におけるチケッティング、ゲーティング業務を一括受託し、ぴあ社従業員約250人体制で対応し、一連の業務を無事完遂しました。この経験とノウハウを活かし、今後の様々な国際大会、イベントへの参画に取り組んでいます。
これらのチケット販売を支えるプロモーション・メディアとしては、「チケットぴあ」をはじめとするウェブサイト、スマートフォンサイト、2020年10月にリリースしたスマートフォンアプリをはじめ、提携コンビニエンスストアが発行するフリーペーパー、提携クレジットカード会社が発行する会報誌があり、さらに新聞、ラジオ及びテレビ等マスメディアと提携して実施する興行告知および興行主催者が行う興行広告などもあり、「チケットぴあ」の販売展開をサポートしています。
※TSP … Ticketing System & Service Providerの略
② ソリューションビジネス
当社では、チケット販売だけでなく、「チケットぴあ」のシステムやノウハウを提供するとともに、プロモーションや販売サービス、顧客管理戦略の立案まで、法人向けに各種ソリューションビジネスを展開しています。興行主催者(スポーツ団体や劇団等)、ホールやスタジアムなどに対し、各業界のビジネスパートナーとして、収益拡大やマーケットの活性化に向け幅広い業務をサポートしています。
③ コンテンツビジネス
エンタテインメントのさらなる発展に向け、各種興行イベントの主催、企画、制作、運営に積極的に取り組んでいます。音楽フェスティバル、舞台、オリジナルイベントの単独主催にはじまり、話題のイベントや映画への出資参画、アジアマーケットへの進出などビジネス領域を拡大しています。また、物販や各種サービス・商品開発など、多面的な展開を図り、新たな収益の拡大につなげています。
④ ホール・劇場ビジネス
メディアビジネスやチケット流通事業、イベントの企画や主催等を通じて、私たちが培ってきたノウハウを活かし、1万人を収容する音楽専用ホール「ぴあアリーナMM」を、当社の創業記念日である2020年7月10日に開業しました。これにより、コンテンツ、ソリューション、チケット流通、プロモーションといった事業に加え、会場運営という最後のピースをはめることができ、当社が目指す“エンタテインメントビジネスのバリューチェーン”の実現に大きく前進しました。
「ぴあアリーナMM」は、民間ならではの視点から音楽業界のニーズを丁寧にくみ取り、コンサートを観る側と演じる側の双方にとって、その環境や使い勝手を音楽コンサートに最適化したアリーナです。地下1階、地上4階建ての縦に長いハコ型構造で、ステージと客席の距離が近い点が特徴。座席エリアでの飲食ができるので、飲食施設も充実させ、売店に加え、ホスピタリティラウンジやカフェを併設しています。
⑤ メディア・プロモーションビジネス
当社グループは、レジャー・エンタテインメント領域においてイベントやキャラクターと連動する等、話題の情報を満載した書籍やムック(別冊)等を刊行しています。こうした出版物は、チケット事業とのシナジーを高めています。さらには、リスクを抑えた受託型出版物である「月刊スカパー!」や、「セブン-イレブン」で配布するフリーペーパー「7(セブン)ぴあ」など、従来の出版業界構造とは異なる新しいメディア形態を開発し収益構造の安定化に注力しています。
また、デジタルネットワーク社会の浸透に伴い、エンタテインメント情報を紙メディアだけではなく、ウェブサイトや、スマートフォンアプリ、放送等の様々なメディアを用いたクロスメディア型事業も推進しています。
主な出版物は、以下の通りです。
(ムックス) |
季節限定ぴあをはじめとする様々なレジャームック、『SODA』などのエンタテインメントやスポーツ関連ムック等 |
(書籍) |
定期刊行誌連載企画のスピンアウト型書籍、書き下ろし書籍、写真集、 料理・グルメ関連書籍等 |
(受託型・ 有料情報型出版物) |
月刊スカパー! 7ぴあ(セブン-イレブン限定フリーペーパー)等 |
2018年11月末には、情報誌「ぴあ」の世界観やコミュニティをインターネットの環境に復活させるべく開発を続けてきた「ぴあ」(アプリ)が本創刊となりました。映画、ステージ、アート、音楽、クラシック、イベント&フェスタの網羅的な開催情報から、ニュース、エッセイ連載など、情報誌「ぴあ」で掲載していた各種コンテンツ・機能をひとつのアプリに凝縮しました。2020年10月にリリースした「チケットぴあ」のスマートフォンアプリとも完全連携し、よりスムーズにチケット購入ができるように改良。また、新たにスポーツジャンルを収録し、UIも刷新するなど、コンテンツの充実を図り、より日常的に活用できるアプリにバージョンアップしています。すでに約140万人の方々にご利用をいただいています(2022年5月現在)。
⑥ 会員サービス
当社は、「チケットぴあ」の開始と同時に会員制度もスタートさせました。会員にはクレジット機能を持つ「ぴあカード」を発行し、4,180円(税込み)の年会費により様々なサービスを提供しています。一般販売に先駆けてチケット販売を行うチケット先行予約、会員だけが利用できる専用電話番号、独自の通信販売や映画館、劇場、遊園地等アミューズメント施設の料金割引などのサービスにより、会員数は約24万人(2022年3月31日現在)となっており、その会費収入は当社グループの安定した収益源のひとつとなっています。さらに、「チケットぴあ」のウェブサイト上での様々なサービスが受けられる会員組織「ぴあ会員」(会員数約1,750万人/2022年3月31日現在)も運営し、インターネット上でのチケット販売や、会員限定の抽選チケット販売等のサービスを提供しています。
また、「チケットぴあ」システムと「ぴあカード」のノウハウを活用し、新国立劇場友の会「クラブ・ジ・アトレ」やサントリーホール「サントリーホール・メンバーズ・クラブ」をはじめとした他社の会員管理業務を代行するビジネスも展開しています。
2013年8月から、チケットぴあWEBサイトでの購入金額に応じて映画、演劇、コンサート、イベント、スポーツなど様々なジャンルのチケット等と引換えていただける「ぴあポイント」サービスをスタート。サービスは順調に浸透してきており、今後は交換商品の充実を図ってまいります。
⑦ totoビジネス
1999年12月、スポーツ振興政策の財源確保の手段として導入されたスポーツ振興くじ(toto)の販売・払戻し等の運営管理業務を目的として、日本スポーツ振興くじ株式会社が設立されました。当社は、専門業務を行う中核8社のひとつとして、会員組織の運営管理業務、店舗における販売促進のためのプロモーション活動及び販売店教育を担当してきました。
また、同社は2005年12月よりtotoくじの発売元である独立行政法人日本スポーツ振興センターに業務を承継しており、当社も同時期より同社に替わって独立行政法人日本スポーツ振興センターより委託を受け、チケット販売店舗などにおいてtotoの販売業務を担っています。2019年11月からは、「ぴあフィールドサービス株式会社」に一連の業務を委託する形で行っています。
⑧ グループ企業との関係
当社グループのレジャー・エンタテインメント関連事業は、首都圏・関西・中部・九州・北海道・中四国・東北をはじめ、全国に広がっています。全国各地の興行主催者から当社が直接チケットを仕入れ、販売を行っていますが、中部地区においては、地元の有力な興行主催者をはじめとした、地元有力企業と合弁で設立した「チケットぴあ名古屋株式会社」を通してチケットの仕入れを行っています。九州地区においても同様に、地元有力企業と合弁で設立した「チケットぴあ九州株式会社」を通じてチケットの仕入れを行っています。
2014年12月に設立した「北京ぴあ希肯国際文化発展有限公司(ぴあ希肯)」では、日本内外の優良コンテンツを中国各地域へ輸出入を行う事業をスタート。さらに、その展開を加速させるため、日本国内に「ぴあグローバルエンタテインメント株式会社」を発足させ、コンテンツ輸出を狙う日本のプロダクションやコンテンツホルダーに対して中国・東アジア地域での興行展開を提案し、中国でのビジネスをサポートする体制を強化しています。
(2)CSR活動
当社グループは創業時より、「ひとりひとりが生き生きと」「若くて新しいチャレンジをしている人たちを応援する」という企業理念に基づいた、CSR活動を積極的に展開しております。社会の「公器」として、社業を通じて社会貢献を行うとともに、企業価値の向上に努めます。
① ぴあフィルムフェスティバル(PFF)
PFFは、1977年12月東映大泉撮影所で開催された、映画、演劇、音楽の総合イベント「ぴあ展」での「自主製作映画展」からスタートしました。以降、「映画の新しい才能の発見と育成」を目指す活動として、自主製作映画を対象とした日本初の本格的なコンペティションをメインプログラムとした映画祭「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」を毎年開催しており、当期で43回目を迎えました。PFF出身のプロの映画監督は170名を超え、映画界における数少ないプロへの登竜門として日本映画界の活性化に貢献しています。2014年7月には、長年にわたるPFFの活動実績が評価され、第32回川喜多賞を受賞いたしました。(同賞は、日本映画の芸術文化の発展に寄与した個人・団体に贈賞されるもので、過去には黒澤明監督、市川崑監督、大島渚監督、淀川長治氏、三船敏郎氏など錚々たる映画人の方々が受賞しています。)
また、2017年4月からは、PFF事務局を一般社団法人化し、新たな体制となりました。株式会社ホリプロ、日活株式会社をはじめとする約60社もの企業や業界団体にも参画いただき、官民を含めた社会全体でこの活動を後押しできる環境を確立して、「新しい才能の発見と育成」のさらなる継続と発展を目指すこととなりました。ここには、当社からも10億円の基金を拠出しております。
本活動の柱となる「PFFアワード」は、この映画祭のコンペティション部門で、全国から応募された毎回約600本にも及ぶ作品の中から入選作品を選び、映画祭「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」において一般公開しています。映画祭最終日には、映画監督を含む5名のクリエイターで構成される最終審査員によって選ばれたグランプリのほか各賞の発表が行われます。そして、次のステップとなる「PFFスカラシップ」は、1984年からスタートした映画の製作援助システムで、PFFアワードの入選監督が次回作の企画をエントリーし、その中から「最も将来を期待できるフィルムメーカー」として選ばれた監督に対し、制作費の援助はもちろん商業映画の製作のノウハウから劇場公開までを事務局がサポートする、という一連の活動を展開しています。
また、新たな活動として「大島渚賞」を創設しました。PFFを長く応援してくださった大島渚監督がかつて高い志を持って世界に挑戦していったように、映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとしている、若く新しい才能を後押しする賞です。審査員長に坂本龍一氏、審査員には黒沢清監督が就任しています。「第1回大島渚賞」(2020年)には小田香監督、「第3回大島渚賞」(2022年)には藤元明緒監督が受賞し、それぞれ、授賞式及び記念上映会を行いました。
② チームスマイル活動
2011年3月に発生した東日本大震災直後に、社内の有志からの呼びかけにより震災復興のボランティア活動「チームスマイル」を発足し、チャリティコンサートやイベントの開催、義援金チケットの販売などエンタテインメントを通じた様々な活動を行ってまいりました。2012年10月には、一般社団法人チームスマイルを設立し、当社もCSR活動の一環として主体的な参画を続けています。チームスマイルでは、継続的な支援とその経済性を確保するため、東北三県と東京にライブ・エンタテインメント専用シアターを開設すべく準備を進め、2014年10月、1つ目の活動拠点として東京都江東区に「チームスマイル・豊洲PIT(ピット:Power Into Tohoku!の略)」がオープンし、順調に稼動しています。同ホールの事業収益金は、東北地区のPITの開設・運営、そしてエンタテインメントを通じた復興支援活動のためにその全額が活用されています。2015年7月には東北地区での初のPIT、「いわきPIT」、2016年1月には「釜石PIT」、2016年3月には「仙台PIT」がオープンし、4つのPITが揃いました。
東北地区のPITでは、被災地の若者や子供たちの創作活動へのチャレンジを応援する取り組み「チームスマイルpresents“わたしの夢”応援プロジェクト」を展開しています。「豊洲PIT」の観客の皆さんからお預かりしたドネーションを活用し、ワークショップや講演会などを行う活動で、2016年5月にその第1弾を実施して以降、各界の著名人の皆様のご協力をいただき、第24弾まで開催しました。本活動も、震災から11年目を迎えた2022年12月末をもって、社団法人としての活動を終了することとなりました。が、多くの方々にご利用いただいた豊洲・いわき・釜石・仙台の「PIT」は今後も存続し、当社も「仙台PIT(2022年4月~)」と「豊洲PIT(2023年1月~)」の運営を継承していきます。
当社グループの系統図について図示すると次の通りであります。
(注)上記3社の他に連結子会社として、「ぴあフィールドサービス㈱」、「ぴあネクストスコープ㈱」、「ぴあグローバルエンタテインメント㈱」、「ぴあ総合研究所㈱」及び「一般社団法人PFF」が、持分法適用関連会社として、「北京ぴあ希肯国際文化発展有限公司」、「TAプラットフォーム㈱」、「ダイナミックプラス㈱」及び「TAプラットフォームソフトウェア共同事業体」があります。
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