1.経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(2021年9月1日から2022年8月31日まで)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大対策の定着化に伴い、行動制限の緩和など経済活動の正常化への動きがみられるようになりました。一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、金融資本市場の変動による物価上昇の進行が企業収益や個人消費に与える影響など、景気の先行きは未だに不透明な状況が継続しています。
このような環境のもと、当社グループは「マーケティングの未来創造企業グループ」をテーマに、「ヒューマン営業支援」と「デジタル営業支援」を融合した「オムニチャネル営業支援企業」としての更なる機能強化に取り組んでいます。今般、コロナ禍における新常態(ニューノーマル)が定着し、従来の生活スタイルや働き方を変化させる必要が高まるなか、当社グループ各社が持つ専門性の高度化を図るとともに、外部リソースも活用した事業シナジーの最大化に取り組むことで、雇用機会や新たな事業を創出し、社会的な課題の解決を通じた持続可能なより良い社会の実現に向け貢献してまいります。
その実践として、政府や地方公共団体が推進するワクチン接種受付コールセンターや接種会場の運営支援など、新型コロナウイルス感染拡大対策関連業務を受託し、これらが業績を大きく牽引しました。また、ツーリズム・スポーツセクターにおいて東京2020オリンピック・パラリンピック大会をはじめ各種大規模スポーツ大会におけるイベント運営業務が好調に推移しました。一方で、販売系営業支援セクターにおいて通信モバイル分野では一部クライアントからの業務規模の縮小やホールセールセクターにおいて主要製造地である中国での不安定な生産体制の影響を受けました。
また、その他の取り組みとして、デジタル営業支援のアバター遠隔接客において、生産性向上や非対面・非接触など複数のニーズを背景に、地方自治体の受付案内業務及びホテルのアバターコンシェルジュサービスを受託するなど普及拡大に努めました。また、ESG/SDGsの取り組みにおいて、地域振興への貢献や開発途上国の発展に資する活動を行いました。加えて、TCFD提言を踏まえた世界的な気候変動にかかる長期的な事業機会やリスクの検討・評価等、サステナビリティを踏まえた当社グループの戦略策定や事業開発に取り組んでまいりました。
以上の結果により、当連結会計年度の売上高は64,130百万円(前年同期比23.9%減)、営業利益は5,739百万円(前年同期比19.9%増)、経常利益は5,759百万円(前年同期比12.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益においては3,227百万円(前年同期比16.3%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用したことにより、当連結会計年度の売上高は30,702百万円減少しておりますが、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益に与える影響はありません。
当連結会計年度末の総資産の残高は、現金及び預金の増加等により前連結会計年度末に比較して3,047百万円増加して、34,225百万円(前連結会計年度末比9.8%増)となりました。
負債の残高は、買掛金の増加等により前連結会計年度末に比較して60百万円増加して、16,305百万円(前連結会計年度末比0.4%増)となりました。
純資産の残高は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により前連結会計年度末に比較して2,987百万円増加して、17,920百万円(前連結会計年度末比20.0%増)となりました。
(単位:百万円)
当連結会計年度の現金及び現金同等物の残高は、営業活動による収入が投資活動及び財務活動による支出を上回ったため、前年度末比3,552百万円増加し、13,149百万円となりました。
なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの主な増減事由については、以下のとおりです。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度において営業活動による収入は5,332百万円(前連結会計年度比73.9%増)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益5,660百万円計上したことによるものであります。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度において投資活動による支出は644百万円(前連結会計年度比46.9%減)となりました。これは、主に投資有価証券の償還による収入があったものの、無形固定資産及び有形固定資産の取得、関係会社株式の取得を行ったことによるものであります。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度において財務活動による支出は1,155百万円(前連結会計年度比14.9%増)となりました。これは、主に長期借入金の返済による支払い、配当金の支払いを行ったことによるものであります。
(4) 生産、受注及び販売の状況
当社グループの行う事業は、販売業務受託を中心としたアウトソーシング事業、人材派遣事業、EC・TC支援事業、ホールセール事業、その他であり、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
生産実績の記載と同様に、受注状況の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 その他には、社会福祉サービス、富裕層向けリムジンサービス、教育研修及びシステム開発関連サービス等が含まれます。
3「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用したことにより、当連結会計年度の販売実績は30,702百万円減少しております
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
セグメント別の業績は、次の通りであります。
(アウトソーシング事業)
当連結会計年度においては、東京2020オリンピック・パラリンピック大会をはじめ各種大規模スポーツ大会におけるイベント運営業務、ワクチン接種受付コールセンターや接種会場の運営支援等、政府や地方公共団体の新型コロナウイルス感染拡大対策の関連業務及び非対面型の営業ニーズを背景にインサイドセールス業務の展開拡大に取り組みました。
その結果、売上高は35,021百万円(前年同期比30.1%増)、営業利益は3,955百万円(前年同期比34.6%増)となりました。
(人材派遣事業)
当連結会計年度においては、東京2020オリンピック・パラリンピック大会をはじめ各種大規模スポーツ大会におけるイベント運営業務及びワクチン接種受付コールセンターや接種会場の運営支援等、政府や地方公共団体の新型コロナウイルス感染拡大対策の関連業務に取り組みました。
その結果、売上高は8,771百万円(前年同期比14.8%増)、営業利益は972百万円(前年同期比31.9%増)となりました。
(EC・TC支援事業)
当連結会計年度においては、特にファッションやスポーツ分野でのEC需要の拡大を背景に、蓄積したノウハウを活用して既存クライアントの業績向上や新規運営サイトの拡大に取り組みましたが、一部サイトの業績の縮小がありました。
その結果、売上高は9,747百万円(前年同期比74.7%減)、営業利益は818百万円(前年同期比13.4%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用したことにより、当連結会計年度の売上高は30,702百万円減少しております。
(ホールセール事業)
当連結会計年度においては、有力コンテンツやインフルエンサーを活用した高付加価値商品の企画や販売等の各種業務が好調に推移したものの、主要製造地である中国での不安定な生産体制の影響を受けました。
その結果、売上高は9,367百万円(前年同期比4.4%減)、営業利益は137百万円(前年同期比80.1%減)となりました。
また、当連結会計年度の売上総利益につきましては、収益認識基準等を当連結会計年度の期首から適用したことによる減少があったものの、政府や地方公共団体が推進するワクチン接種受付コールセンターや接種会場の運営支援等の新型コロナウイルス感染拡大対策関連業務の受託、ツーリズム・スポーツセクターにおいて東京2020オリンピック・パラリンピック大会をはじめ各種大規模スポーツ大会におけるイベント運営業務が好調に推移したこと等により、売上総利益額が増加し15,227百万円(前年同期比3.5%増)となりました。
(2) 販売費及び一般管理費、営業利益
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、9,487百万円(前年同期比4.5%減)となりました。主な要因は、人件費及び広告宣伝費を中心とした増加がありましたが、収益認識基準等を当連結会計年度の期首から適用したことによる支払手数料の減少がありました。
この結果、営業利益については5,739百万円(前年同期比19.9%増)となりました。
営業外収益は108百万円(前年同期比84.3%減)となりました。主な要因は、受取補償金の減少によるものであります。
また、営業外費用は88百万円(前年同期比74.9%減)となりました。主な要因は、支払補償費の減少によるものであります。
この結果、経常利益については5,759百万円(前年同期比12.4%増)となりました。
特別利益の実績はありません。
また、特別損失は99百万円(前年同期比69.2%減)となりました。主な要因は、関係会社株式評価損、貸倒引当金繰入額の減少によるものであります。
この結果、税金等調整前当期純利益については5,660百万円(前年同期比17.8%増)となりました。
上記の諸要因により親会社株主に帰属する当期純利益は、3,227百万円(前年同期比16.3%増)となりました。
当社グループは「マーケティングの未来創造企業へ」をテーマに、ヒューマン営業支援とデジタル営業支援を掛け合わせたオムニチャネル営業支援体制を強化するとともに、先端テクノロジーを取り入れた高付加価値なソリューション提供能力に磨きをかけることで、変化する社会の要請に対応し自らが事業創造を行い、マーケティングパートナーとしてクライアントのニーズに成果で応える「成果追求型営業支援」の実践を継続してまいります。
セグメント別の経営戦略につきましては、以下のとおりです。
(アウトソーシング事業)
アウトソーシング事業につきましては、5G需要の高まりを受け、通信・モバイル分野を中心とした業務運営事務局の運営力強化・収益改善に取り組むとともに、今後拡大が見込まれるインサイドセールスや先端テクノロジーを有するスタートアップ企業との資本・業務提携によるデジタルマーケティング分野の事業拡大を推進してまいります。 また、オムニチャネル営業支援体制を強みに、パブリックビジネスなど新たな事業領域の開拓に取り組んでまいります。
(人材派遣事業)
人材派遣事業につきましては、スタッフの確保に努めるとともに研修制度の更なる充実により、スタッフの質的、量的な充実を図り、家電分野、ストアサービス分野、物流分野を中心に展開してまいります。コロナ感染拡大の落ち着きにより徐々に回復の傾向が見られる国内ツーリズム業界においては、添乗派遣、事務派遣及びコールセンター業務への対応を強化してまいります。
(EC・TC支援事業)
EC・TC支援事業につきましては、強みであるファッション分野以外の新規領域の受託・支援拡大により、事業基盤の強化に取り組んでまいります。また、当社グループ間における事業シナジーを一層強化し、オムニチャネル営業支援体制を活かした新たな事業創造に取り組んでまいります。
(ホールセール事業)
ホールセール事業につきましては、保有ライセンスを活用した営業を強化し、新規卸売先の開拓、自社企画商品のラインナップの充実に取り組んでまいります。
(その他)
その他につきましては、システムエンジニアリングサービスを強化するとともに、グループ間でのシナジー創出に向けた取り組みを継続してまいります。
これらの取り組みにより、次年度の見通しといたしましては、売上高59,000百万円(前年同期比8.0%減)、営業利益4,700百万円(前年同期比18.1%減)、経常利益4,720百万円(前年同期比18.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,650百万円(前年同期比17.9%減)を見込んでおります。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因や、当該要因への対応について
① 基本方針・資金需要の主な内容
当社グループは、「マーケティングの未来創造企業」を展望し、中長期的な高収益体制の確立・企業価値向上を図るべく、事業構造の構築を推進しております。これまでのBtoBtoCマーケティング支援を中心としたビジネスモデルの進化に加え、IT・AIを活用したBtoBマーケティング支援機能を拡充すべく、新規事業の開発およびM&Aの検討を継続的に行っております。
② 資金調達
当社グループの所要運転資金は、収支ズレ0.5か月程度で推移していることから、手元現預金にて十分に賄うことが可能です。また、設備投資につきましてはソフトウェア開発等に限定され、営業キャッシュ・フローを源泉とする自己資金の範囲内で対応しております。
比較的大型のM&A実行に際しては、必要に応じ外部資金を活用しておりますが、現状は金融環境等勘案のうえ銀行借入による資金調達を中心としております。主要取引金融機関とは良好な取引関係を維持しており、また健全な財務体質を維持しておりますことから、必要な資金調達に関しては問題なく実施可能と認識しております。
なお、当社グループの2022年8月末時点における有利子負債が4,152百万円であるのに対し、現金及び現金同等物は13,149百万円と有利子負債を上回る水準となっております。
③ 経営資源の配分・株主還元に関する考え方
手元現預金水準については厳密な目標水準は定めておりませんが、安定した運転資金の確保、及び十分なイベントリスクに対応するためには、売上高の1か月から2か月分が適正な手元現預金水準と考えております。それを超える分については、企業価値向上に資する適切な経営資源の配分に努めます。
株主還元については、連結業績・財務状況、M&A等の戦略的投資に備える内部留保などを勘案したうえで、業績拡大に応じた配当の増額を図りたいと考えております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注)1 各指標の算出基準は以下のとおりであります。
2 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2018年8月期以前の期につきましては株式会社ヒト・コミュニケーションズの連結ベースの財務数値により計算しております。
3 株式時価総額は(期末株価終値)×(期末発行済株式総数(自己株式控除後))により計算しております。
4 有利子負債は連結貸借対照表に計上されている有利子負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象にしております。
5 キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
6 利払いは連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっての重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
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