課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、企業理念「キョーリンは生命を慈しむ心を貫き、人々の健康に貢献する社会的使命を遂行します」を掲げています。その具現に向けて、長期ビジョン「HOPE100(Aim for Health Of People and our Enterprises)」のもと、中長期的な企業価値向上の視点をもち、健全かつ持続的に成長する「健康生活応援企業」への進化を目指しています。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略及び会社の優先的に対処すべき課題

当社グループは、中核子会社である杏林製薬㈱の創業100周年に当たる2023年を見据えた長期ビジョン「HOPE100」を策定し、対象期間(2010年度~2023年度)を3つのステージに分け、2020年度より長期ビジョンの総仕上げとして中期経営計画「HOPE100-ステージ3-(2020年度~2023年度)」を推進しています。

医療用医薬品事業を取り巻く外部環境は、医療費・薬剤費抑制策のさらなる強化、新薬の創出難易度の高まり、情報提供活動の変化とチャネルの多様化、新型コロナウイルス感染症拡大による受診抑制など、急速な変化により、一層厳しさを増しています。他方、当社グループの内部環境としましては、成長ドライバーとして期待する新薬群が予定通り上市されたことに加え、2022年度は主力製品の限定出荷(出荷調整)解除や新たな製品を上市する等、成長期を迎えたものと捉えています。また将来を見据え育成に取り組む診断事業等の新たな事業が芽吹きつつあります。このような状況下、中期経営計画「HOPE100-ステージ3-」では、ステートメントとして「オリジナリティーの追求による成長トレンドの実現」を掲げ、長期ビジョン達成に向けて、5つの事業戦略と組織化戦略を推進し、成果目標の達成に邁進しています。

 

①キョーリン製薬グループの目指す具体的な姿(Vision)

革新的新薬の創製で世界に認められる企業を目指すために、新薬事業、ジェネリック医薬品事業、感染関連事業(感染症の予防・診断・治療)を複合的に展開し、人々の健康を幅広く応援する企業を実現します。

 

②事業戦略(Strategy)

⒜ソリューション提供型への変貌と新薬群の成長加速

⒝中期的な成長を支える、パイプラインの拡充

⒞革新的新薬の創製を実現する、創薬力の強化

⒟コスト競争力の向上

⒠海外収益の拡大

 

③組織化戦略(Organization)

当社グループは、長期ビジョンにおいて、社員を大切にし人と組織を活力化することを、事業戦略として遂行し、また成果を具現するための最重要課題として位置付けています。「ステージ3」におきましても、社員にとって「働きがいNo.1企業」の実現を目指し、人材マネジメントの基本方針のもと、働き方改革を推進するとともに、次世代の人材育成・獲得の強化に取り組みます。

 

④目標とする経営指標(Performance)

⒜数値目標(連結ベース)

成長性:「売上高」年平均成長率+5%以上

収益性:「研究開発費控除前 営業利益(営業利益+研究開発費)」対売上高20%以上

⒝資本政策と株主還元

資本政策としましては、健全な財務基盤を維持しつつ成長投資と株主還元を通じて、資本効率の向上を図ることを基本方針とします。株主還元につきましては、DOE(株主資本配当率)を勘案して、安定した配当を目指します。詳細は、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」をご覧ください。

 

[中期経営計画「HOPE100-ステージ3-」の進捗と2022年度(2023年3月期)の取り組み]

中期経営計画「HOPE100-ステージ3-(2020~2023年度)」の2年目となる2021年度は、経営方針に「オリジナリティーの追求に向けた”見極め”」を掲げ、4つの重点項目として、①新薬群の成長加速、②開発パイプラインの拡充、③創薬スピード向上、④コスト競争力の向上に取り組み、成長トレンドへの転換を目指しました。

新薬群の成長加速では、主力製品である喘息治療配合剤「フルティフォーム」の普及の最大化とともに、持続性選択H1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療剤「デザレックス」、ニューキノロン系抗菌剤「ラスビック」の早期の市場浸透に注力しました。当該年度は、薬価改定等の薬剤費抑制策及び新型コロナウイルス感染症拡大による受診抑制の影響により、当社グループが重点領域とする呼吸器科、耳鼻科等の医療用医薬品市場がマイナス成長で推移したものの、効率的な製品の普及促進に努めたことにより新薬群が伸長し新医薬品等(国内)は前年度に対して横ばいとなりました。2022年度は、コロナ禍でのMR活動について、従来の訪問による面談に加えてデジタルチャネルを活用した情報提供活動を複合的かつ積極的に行い、新薬群4製品の成長加速に最大限、注力いたします。

開発パイプラインの拡充では、間質性肺疾患治療薬「開発コード:KRP-R120」の第Ⅰ相臨床試験入り、間質性膀胱炎治療剤「ジムソ膀胱内注入液50%」の新発売など、開発パイプラインの確実な相移行を達成できました。さらに日本国内における独占的販売権を取得した選択的P2X3受容体拮抗薬/咳嗽治療薬「リフヌア錠45㎎(一般名:ゲーファピキサントクエン酸塩)」について、導入元であるMSD㈱が製造販売承認を取得し、杏林製薬㈱が2022年4月より販売を開始しました。他方、「FPR2作動薬プログラム」については、導出先であるブリストル・マイヤーズスクイブ社(本社:米国)が開発戦略上の視点から開発中止を決定したため、同社に付与していた開発権等の返還を受けることになりました。2022年度は、「FPR2作動薬プログラム」の新たな導出先の探索に向けた活動を検討するとともに、積極的なパートナリング活動を推進し、開発パイプラインの拡充に取り組みます。

創薬プロジェクトの拡充では、わたらせ創薬センターとActivX社の連携による自社創薬に国内外の製薬企業、アカデミア、ベンチャー企業とのオープンイノベーションを加えることで、創薬プラットフォームの活性化を進めるとともに、核酸等の新技術の応用・育成に取り組みました。また、ルーメン社(本社:米国)とスピルリナ遺伝子組み換え技術に関する共同研究契約を締結しました。2022年度は、同社との共同研究により、重点領域において経口投与で安全性の高いバイオ医薬品の開発候補品の取得を目指します。今後も創薬テーマの選択と集中を進めるとともに、線維症研究及びキナーゼ研究における重層的なプログラム開発、外部創薬テーマの積極的な探索・導入を行い、ファースト・イン・クラス創薬に向けた活動を展開します。

コスト競争力の向上では、ジェネリック医薬品事業における新たな営業体制を構想するとともに、追補収載品の自社開発の強化に努めました。またキョーリン製薬グループ工場㈱は、新医薬品・後発医薬品の安定供給と低コストの実現に取り組むなか、医薬品の生産数量の増加に伴い、当社グループ全体として製品供給能力の強化が必要となったことから、高岡新工場の建設を決定しました。今後は、2024年4月(予定)の稼働に向け高岡新工場の建設を強力に推し進めるとともに、安定供給と低コスト生産を実現する製造体制の構築を目指します。

昨今、ジェネリック医薬品について品質や安定供給をめぐる問題が相次ぐ中、当社グループでは全ての子会社が一丸となって、GMPなどの法令遵守の徹底を図るとともに、品質管理体制のより一層の強化に努めました。今後とも、医療用医薬品に関わる製造・品質管理につきましては、信頼性の確保に最大限注力し、高品質で安心・安全な製品の提供を推進します。

※:医薬品等の製造管理及び品質管理の基準

売上高については、新型コロナウイルス感染症の拡大による受診抑制、MR活動の自粛等の影響はあったものの、主力製品「ラスビック」「デザレックス」等の伸長、長期収載品の売上増加、ジェネリック医薬品の続伸により、当該年度の当初予想を達成することができました。しかしながら、当中期経営計画における経営指標 「売上高」年平均成長率+5%については未達となっており、今後は、2023年3月期の数値目標達成に向けて積極的に取り組みます。

 

[杏林製薬株式会社の吸収合併及び商号の変更]

当社グループを取り巻く事業環境としましては、新薬創製の難易度が高まり膨大な研究開発投資が必要となるだけでなく、幅広い製品を対象とした薬価改定が毎年実施され、当社グループの経営に多大な影響を与えることが予想されます。

このような急激な環境変化と当社の置かれた状況に鑑み、事業推進機能及び経営効率の向上を図ることを目的として、当社グループが創業100周年を迎える2023年度にグループ体制の刷新を行うことにしました。当社は、2023年4月1日付で当社グループの主たる事業子会社である杏林製薬㈱を当社に吸収合併するグループ内再編により純粋持株会社体制から事業持株会社体制に移行するとともに、同日付で当社の商号を「杏林製薬株式会社」に変更します。当社グループは、新たに杏林製薬㈱を中心とする事業持株会社体制に刷新することで、新薬事業をグループ経営の中核に据えて強力に推進するとともに、ジェネリック医薬品事業、感染関連事業、医薬品製造受託事業を複合的に展開し、次の100年に向けて更なる飛躍を目指します。

 

[新型コロナウイルス感染症による影響]

当社グループでは、新型コロナウイルス感染症による事業環境の変化に対応すべく、在宅勤務・時差出勤の実施、営業活動の自粛等の対策を講じました。また出社が必要な生産部門等の業務では、従業員の健康に配慮した対策を取りつつ業務を継続し、製品の安定供給に努めました。今後とも、従業員の安心・健康に留意しつつ事業を行います。

当社グループの事業活動は、新型コロナウイルス感染症拡大による受診抑制等の影響により、杏林製薬㈱の重点領域とする医療用医薬品市場(呼吸器科、耳鼻科、感染症等)がマイナス成長で推移したものの、各医療機関の意向に沿ってMRによる訪問面談の自粛等を行う一方、デジタルチャネルの活用等、効率的な製品普及の促進に努めたことにより新薬群が伸長し、主要な長期収載品の売り上げが増加したため、連結売上高予想を達成しました。研究開発活動においては、一部の創薬プロジェクトに影響を及ぼしたものの、開発スケジュールに大きな遅延はありませんでした。生産及び原材料等の調達では、安定供給するため原材料、資材の調達管理を強化し、影響が出るには至っておりません。

なお業績予想について、新型コロナウイルス感染症の影響は一定程度、織り込んでおりますが、不透明な事業環境の中、各部門での動向・影響を注視するとともに業績予想の修正が必要になった際には速やかに公表します。

 

[ロシア・ウクライナ情勢による影響等]

当社グループは、中核事業である医療用医薬品事業を主に日本で展開しており、ロシア・ウクライナ情勢による業績への影響は軽微と見込んでおります。しかしながら、医療用医薬品の原材料を輸入している当社グループにとって、ロシア・ウクライナ情勢の継続は、原油高・エネルギー価格の上昇及び輸送費(航空貨物・船舶貨物等)の高騰による原材料費のコスト上昇、サプライチェーンの混乱による供給の遅延等、事業に影響を及ぼす可能性があります。引き続きグローバルな政治的、経済的な先行きにつきましては注視していきます。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得