(1)経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の国内経済を概観すると景気は、緩やかに持ち直しの動きが続いているものの、引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、ウクライナ情勢等による不透明感がみられる中で、原材料やエネルギー価格が上昇し、物価が上昇し始めるなど、予断を許さない状況となっております。先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動の正常化が進む中で、景気が持ち直していくことが期待されます。
世界経済につきましても一部に足踏みがみられるものの、持ち直しがみられます。ただし、世界的な金融引締めが進む中での金融資本市場の変動や物価上昇、供給面での制約等による下振れリスクに留意する必要があります。
環境関連の動向としては、世界的に環境課題への取り組みが急務であるなか、わが国でもカーボンニュートラルに向けたエネルギー政策の整備が進んでおり、さらなる政策の強化が期待されます。また東京電力福島第一原子力発電所事故で発生した汚染処理水を海洋へ放出する東京電力の計画について、原子力規制委員会は正式に認可しました。
このような状況の中、当社は新たなニーズに着実に応えるとともに、お客様の様々な課題に総合的に対応してまいりました。
東京電力福島第一原子力発電所事故に対しては、従前よりふくしま浜通りイノベーションセンターを設置し対応を進めており、処理水の海洋放出にあたってはトリチウムの分析体制の構築をしてまいりました。
脱炭素社会の実現に向けては、風力発電や太陽光発電施設建設に伴う環境アセスメント等、従来のコンサルタント業務だけでなく、MIRAI-LABO株式会社の自動車のリユースバッテリーを用いた、太陽光による独立電源の街路灯「THE REBORN LIGHT」等の環境配慮商品の販売に取り組むとともに、本年4月に株式会社サンエイテクニクスが当社グループ会社に参画し、設備工事関連のソリューションの強化とともに、脱炭素社会に向けた省エネルギー支援をお客様に提供できる体制を整えました。
当社は令和4(2022)年6月期を初年度とする中期経営計画を策定しており、重点施策として掲げた①成長分野の拡大、②基盤分野の強化、③新規事業の推進、④働き方改革と多様な人財の活用の推進、⑤社会貢献、の5点を確実に実行していくことで、持続的な事業の成長とさらなる企業価値の向上を実現してまいります。
当連結会計年度の受注高は46億82百万円(前期比1.4%減)でありました。官公庁からの受注高は13億94百万円(同13.8%増)、民間顧客からの受注高は32億88百万円(同6.7%減)になりました。受注高に占める官公庁の割合は29.8%であります。通期の売上高は47億48百万円(同8.1%増)でありました。官公庁への売上高は12億60百万円(同5.9%減)、民間顧客への売上高は34億87百万円(同14.3%増)になりました。この結果、翌連結会計年度以降に繰り越す受注残高は19億90百万円(同3.2%減)になりました。
損益面については、売上原価は37億5百万円(同4億52百万円増、同13.9%増)、販売費及び一般管理費は9億29百万円(同43百万円増、同4.9%増)になりました。その結果、営業利益1億13百万円(同1億38百万円減、同55.0%減)、経常利益1億13百万円(同1億43百万円減、同55.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2億22百万円(同8百万円減、同3.6%減)になりました 。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 令和2年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しておりますが、損益に与える影響はありません。詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更等)」を参照ください。
総資産は57億34百万円(前期末比9億91百万円増)になりました。
流動資産は20億42百万円(同3億86百万円増)となりました。流動資産増減の主な要因は、仕掛品の減少50百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の減少3億77百万円、現金及び預金の増加66百万円等であります。
固定資産は36億91百万円(前期末比6億4百万円増)となりました。うち有形固定資産は28億40百万円(同1億60百万円増)、当連結会計年度の減価償却実施額は2億43百万円(前期は2億46百万円)であります。また、当連結会計年度は2億5百万円(同1億91百万円)の設備投資を行いました。
繰延資産は0百万円(前期末比0百万円減)となりました。主な要因は、開業費の償却0百万円等であります。
負債は34億48百万円(前期末比7億75百万円増)となりました。増減の主な要因は、運転資金を使途とする短期借入金3億円増加、運転資金及び設備資金を使途とする長期借入金1億7百万円減少、契約負債の減少4億52百万円等であります。
当連結会計年度末の有利子負債残高は、18億88百万円(前期末比6億98百万円増)であります。内訳は、運転資金、設備投資目的の短期、長期借入金残高18億56百万円(同6億83百万円増)、リース債務の残高32百万円(同15百万円増)であります。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益2億22百万円計上により22億86百万円(前期末比2億15百万円増)になりました。この結果、1株当たり純資産は、465円86銭(同41円31銭増)になりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前期末に比べ66百万円増加し、5億42百万円になりました。営業活動により54百万円収入、投資活動により3億7百万円支出、財務活動により3億20百万円収入となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末の営業活動による収入は54百万円(前期は7億30百万円の収入)であります。主として、契約負債3億87百万円の減少、減価償却費2億43百万円(同2億46百万円)、税金等調整前当期純利益1億14百万円(同2億57百万円)、売上債権1億87百万円の増加(同2億67百万円の減少)、棚卸資産1億89百万円の減少(同2億88百万円の増加)によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末の投資活動による支出は3億7百万円(前期は1億60百万円の支出)であります。測定・分析機器など経常的な設備投資のため、有形固定資産に2億74百万円の支出(同1億36百万円の支出)等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末の財務活動による収入は3億20百万円(前期は4億52百万円の支出)であります。短期借入金の借入3億円(同3億円の返済)、社債の発行による収入1億80百万円、長期借入金の返済1億8百万円(同1億8百万円の返済)等によるものです。
③生産、受注及び販売の実績
当社は環境計量証明事業並びにこれら関連業務の単一事業であるため、開示対象となるセグメントはありませんが、分野別の事業内容を記載しております。
a.生産実績
b.受注状況
c.販売実績
(注)1.販売実績に占める官公庁向けの割合は、第52期1,340,376千円(30.5%)、第53期1,260,946千円(26.6%)であります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの事業領域である環境測定、分析、監視サービスの市場規模は環境省の推計によると1千3百億円程度という水準でここ数年変化はありませんが、過当競争により受注環境は厳しくなっております。
当社グル-プは、価格競争の激しい各種モニタリング業務等の環境調査分野については、作業の効率化により競争力を高め、利益率の良い案件を選別受注し、利益を確保するとともに、国の政策コンサルや開発に係るアセスメント、アスベスト、受託試験、放射能、環境対策工事を成長エンジンとして、経営資源を集中投下することで、対応力を強化し、売上利益の拡大を目指してまいりました。
また、新型コロナウイルス感染症について、感染拡大を防止しつつ、事業活動を継続していくための対策を講じることが重要ととらえ、従業員の衛生管理の徹底や在宅勤務等を進め、多少営業活動における制約を受けたものの、当連結会計年度における業績に与えた影響は軽微でした。
経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 受注高及び売上高
当連結会計年度の受注高は46億82百万円となりました。このうち、官公庁からの受注高は13億94百万円、民間企業からの受注高は32億88百万円であります。また、当連結会計年度の売上高は47億48百万円となりました。このうち、官公庁への売上は12億60百万円、民間企業への売上は34億87百万円であります。
当社は、計量法に基づいて水質汚濁・大気汚染・騒音・振動・悪臭・土壌汚染など、環境法規の規制数値を基準として、環境中の濃度等の調査・測定・分析を行い、その結果を濃度計量証明書や試験結果成績書として作成する「環境調査」事業を主業務としています。
これらの環境調査事業で培った調査技術と分析技術をもとに、環境影響評価(アセスメント)、自然環境調査などの「コンサルタント」事業、受託試験・研究業務、作業環境測定、アスベスト測定などの環境関連分野における「応用測定」事業、放射能測定を行う「放射能」事業を行っています。
事業別の概況は次のとおりです。
「環境調査」事業の当連結会計年度の受注高は28億31百万円、売上高25億14百万円、受注残高10億43百万円になりました。
当事業は業務内容により次の13種に区分しています。
「政策コンサル」事業は、国の環境政策に関わるコンサルティングを行います。当連結会計年度の受注高は 6億80百万円 (前期比1億39百万円増)、売上高 4億90百万円 (同63百万円減)、受注残高 4億28百万円 (同1億89百万円増)になりました。
「アスベスト」事業は、建材のアスベストの含有量分析等を行います。当連結会計年度の受注高は 4億44百万円 (前期比2億20百万円増)、売上高 2億83百万円 (同26百万円増)、受注残高 1億80百万円 (同1億61百万円増)になりました。
「受託試験」事業は、オーダーメイドの試験設計やコンサルティングを行い、特に臭気分野の試験を通じて製品の性能評価や開発支援を行います。当連結会計年度の受注高は 2億80百万円 (前期比21百万円減)、売上高 2億78百万円 (同35百万円減)、受注残高 49百万円 (同1百万円増)になりました。
「工事」事業は、土壌汚染対策、アスベスト除去工事を行います。当連結会計年度の受注高は 2億7百万円 (前期比4億7百万円減)、売上高 6億13百万円 (同4億15百万円増)、受注残高 16百万円 (同4億6百万円減)になりました。前期受注の大型工事案件の売上により、売上高が増加しております。
「アセスメント」事業は、環境影響評価、自然環境調査など主として民間事業者が開発行為に関連して行う環境保全への取り組みに関する業務です。当連結会計年度の受注高は 5億55百万円 (前期比70百万円増)、売上高は 5億32百万円 (同1億72百万円増)、受注残高 6億67百万円 (同23百万円増)になりました。
「農業」事業は、将来の食料自給率や生産性へ向上への貢献を目指し、農業分野での課題解決に向けた栽培試験・線虫試験等の農業関連試験を行います。当連結会計年度の受注高は 40百万円 (前期比20百万円増)、売上高 27百万円 (同14百万円増)、受注残高 29百万円 (同12百万円増)になりました。
「放射能」事業は、放射能の測定分析から廃炉に至るまで将来を見据えたコンサルティングを行う業務です。当連結会計年度の受注高は 1億39百万円 (前期比48百万円増)、売上高は 1億6百万円 (同33百万円増)、受注残高 55百万円 (同32百万円増 )であります。
「土壌・地下水」事業は、民間企業の工場跡地等の売買に伴う汚染状況の把握調査を主としています。当連結会計年度の受注高は 10億78百万円 (前期比1億52百万円減)、売上高 11億76百万円 (同43百万円減)、受注残高 1億35百万円 (同97百万円減)になりました。
「廃棄物」事業は、主として公営のごみ焼却施設・中間処理施設・最終処分場等の廃棄物関連の調査業務、ダイオキシン・PCB類の分析を主としています。当連結会計年度の受注高は 3億55百万円 (前期比24百万円減)、売上高 3億49百万円 (同75百万円減)、受注残高 1億64百万円 (同6百万円増)になりました。
「作業環境」事業は、官公庁並びに民間企業の各施設・事業場内の作業環境測定を行う業務です。当連結会計年度の受注高は 2億63百万円 (前期比52百万円増)、売上高 2億53百万円 (同21百万円増)、受注残高 33百万円 (同10百万円増)になりました。
「施設事業場」事業は、官公庁並びに民間企業の各施設・事業場からの排水・排ガス、騒音・振動、悪臭などの測定・分析を行う業務です。当連結会計年度の受注高は 4億28百万円 (前期比21百万円減)、売上高 4億30百万円 (同72百万円減)、受注残高 1億14百万円 (同2百万円減)になりました。
「環境監視」事業は、主として官公庁委託による公共用水域・大気環境の濃度計量証明業務を行う業務です。当連結会計年度の受注高は 1億78百万円 (前期比13百万円増)、売上高 1億76百万円 (同6百万円減)、受注残高 1億14百万円 (同2百万円増)になりました。
「出向・派遣」当連結会計年度の受注高は 29百万円 (前期比5百万円減)、売上高 29百万円 (同29百万円減)、受注残高 -百万円 (同0百万円減)になりました。
b. 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は37億5百万円となりました。売上総利益は10億42百万円、売上総利益率は22.0%であります。
販売費及び一般管理費は9億29百万円でありました。
c. 営業外収益と営業外費用
営業外収益は受取手数料、受取利息及び受取配当金など、合計21百万円となりました。営業外費用は、支払利息9百万円、固定資産除却損8百万円など、21百万円となりました。
d. 法人税等及び調整額
法人税・住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせて1億7百万円を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は2億22百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の事業は、受託した調査を4月に着手して3月に完了する契約が多く、3月末時の売掛金残高は年間売上高のおよそ3分の1になる傾向があります。それにより4~5月の売掛金回収までの間、毎月平均的に発生する人件費・外注委託費等の営業費用の支払を目的とする資金需要が生じます。
当社の資金計画は、現金及び預金の月末残高が各月の資金需要の1~1.5ヶ月相当を目安としており、安定した財務流動性を維持するため、取引銀行3行と総額15憶円のコミットメントライン契約を締結しております。
設備投資目的の資金は、分析測定機器等、経常的な更新の場合には手元資金またはリース契約に依っており、土地建物等の取得や高額の設備を導入する場合には長期資金を調達することを基本としております。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、開示に影響を与える判断と見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 〔連結財務諸表等〕(1)連結財務諸表 〔注記事項〕(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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