(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、収益認識会計基準等の適用が財政状態及び経営成績に与える影響の詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (会計方針の変更)及び(セグメント情報等) セグメント情報 2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法」を参照ください。
① 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により依然として厳しい状況ですが、一部に弱さを含みつつも持直しの動きが見られます。
また、世界経済につきましても持直しの動きが見られますが、引続き新型コロナウイルス感染症の感染再拡大に加え、ウクライナ情勢・原油高・インフレ等の影響による先行き不透明感がある中、景気の下振れリスクに十分留意する必要があります。
情報サービス業界におきましては、産業を問わずデジタル化・リモート化を前提にクラウド化・仮想化へと徐々にシフトしていく中、IT活用及び情報セキュリティ対策の需要はこれまで以上に高まっております。また、ロボティクス技術による自動化及び開発プロセスのローコード化・ノーコード化をはじめ、IoT・ビッグデータ・AI・メタバース等デジタル技術の活用が一層加速していくことが想定される一方で、各種先端技術の担い手不足は引続き顕著な問題となっております。
このような状況の中、当社は、社員・顧客・協力会社・株主等あらゆるステークホルダー及び地域社会・環境等に対して生み出した付加価値を分配し、事業を通じて社会に貢献し続ける会社を目指しております。今期においては、産学連携の共同研究及び「Beyond TheBook」「指向性受信機」といった自社製品の開発と販売等、事業領域を新たに広げる取組みを実現しました。また、既存事業においては取扱製品の拡充や従業員の増強等を推し進め、全ての事業セグメントで成長基調を維持しました。
この結果、当事業年度の業績は、売上高26,278百万円(前事業年度比11.9%増)、営業利益1,640百万円(前事業年度比13.1%増)、経常利益1,600百万円(前事業年度比9.0%増)、当期純利益1,066百万円(前事業年度比4.0%増)となり、売上高・各利益共に過去最高を更新しました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
公共関連事業
公共関連事業では、主な最終ユーザーが官公庁及び地方自治体となるマイナンバー関連システム、財務システム、貿易システム、航空管制システム、自動車関連システム、健康保険及び年金に関するシステム等社会インフラのシステム実現に向けた提案、設計、製造、試験からシステム稼動後の運用、保守に至るまで総合的な技術支援を行っております。
当セグメントにおきましては、積極的に新規案件を積上げたことが奏功し、前年業績に貢献した大規模案件の反動減を吸収しました。
その結果、売上高は7,669百万円(前年同期比0.8%増)、セグメント利益(営業利益)は1,374百万円(前年同期比3.8%増)となりました。
エンタープライズ事業
エンタープライズ事業では、主に法人企業の基幹業務システム・Webアプリケーション・クラウドアプリケーションの開発、ネットワークインフラ設計・構築、RPAソリューション、付随する運用・保守、ICTに係るコンサルティングを行っております。
当セグメントにおきましては、ネットワークインフラ案件と基幹業務システムを成長ドライバーに、RPAと新たなセキュリティソリューションも奏功しました。
その結果、売上高は6,587百万円(前年同期比18.5%増)、セグメント利益(営業利益)は803百万円(前年同期比18.3%増)となりました。
広域ソリューション事業
広域ソリューション事業では、東京・名古屋・大阪地域における、通信制御・組込み・法人企業及び行政機関向けの各システム開発、AIソリューション、付随する運用・保守、ICTに係るコンサルティングを行っております。
当セグメントにおきましては、入札案件の獲得等、新規既存問わず旺盛なシステム投資需要の着実な取込みにより、組込み系の鈍化を補いました。
その結果、売上高は4,970百万円(前年同期比10.5%増)、セグメント利益(営業利益)は622百万円(前年同期比10.8%増)となりました。
イノベーション事業
イノベーション事業では、法人企業向けのインフラ設計・構築、メインフレーム業務、システム開発、付随する運用・保守、IoT及び情報セキュリティ分野における自社製品の製造・ソリューション提供を行っております。
当セグメントにおきましては、インフラ設計・構築の堅調な伸びに加え、新たに獲得した大規模案件を取込みました。
その結果、売上高は7,050百万円(前年同期比21.2%増)、セグメント利益(営業利益)は702百万円(前年同期比26.6%増)となりました。
② 財政状態の状況
当事業年度における資産は、前事業年度末に比較し5,564百万円増加し、23,372百万円となりました。これは主に投資有価証券の増加4,439百万円、売掛金及び契約資産の増加613百万円等によるものであります。
負債は、前事業年度末に比較し1,863百万円増加し、8,608百万円となりました。これは主に社債の減少360百万円、1年内償還予定の社債の減少150百万円があった一方で、繰延税金負債の増加1,298百万円、買掛金の増加332百万円、長期借入金の増加219百万円等によるものであります。
純資産は、前事業年度末に比較し3,700百万円増加し、14,764百万円となりました。これは主にその他有価証券評価差額金の増加3,056百万円、繰越利益剰余金の増加629百万円等によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比較し380百万円増加し、4,352百万円(前事業年度比9.6%増)となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローでは、1,249百万円の収入がありました。これは主に、売上債権の増加額686百万円、法人税等の支払額456百万円があった一方で、税引前当期純利益1,612百万円、仕入債務の増加額332百万円、減価償却費131百万円、未払金の増加額123百万円等によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、277百万円の支出がありました。これは主に、保険積立金の解約による収入28百万円があった一方で、有形固定資産の取得による支出97百万円、貸付けによる支出61百万円、保険積立金の積立による支出60百万円、無形固定資産の取得による支出45百万円、投資有価証券の取得による支出35百万円等によるものであります。
財務活動におけるキャッシュ・フローでは、590百万円の支出がありました。これは、長期借入れによる収入800百万円、短期借入金の純増額100百万円があった一方で、長期借入金の返済による支出545百万円、社債の償還による支出510百万円、配当金の支払額435百万円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)当事業年度に受注実績に著しい変動がありました。これは、「イノベーション事業」におきまして比較的
長期大規模の受注があったことによるものです。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
※ キンドリルジャパン㈱は、2021年9月に日本アイ・ビー・エム㈱より分社しております。そのため、前事業年度のキンドリルジャパン㈱については、記載しておりません。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載されているとおりであります。
この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
(ア)コスト総額の見積りに基づくインプット法による収益認識
当社のシステム開発に係る収益の計上基準のうち、受注制作のソフトウェアに該当する一部の案件について、一定の期間にわたり充足される履行義務として、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を認識しております。履行義務の充足に係る進捗度の見積りは、コスト総額の見積りに対する発生コストの割合(インプット法)で算出しております。
当事業年度に当該インプット法に基づき認識した収益の金額1,563,478千円のうち、当事業年度末現在において完全に履行を充足していない案件は68,565千円であります。
インプット法の適用に当たっては、当事業年度末におけるコスト総額の見積りに基づき、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積る必要があります。
インプット法による収益認識の基礎となるコスト総額の見積りは、契約ごとのプロジェクト実行予算計画を作成して見積りを行っており、コスト総額の見積りの妥当性については、受注決裁にあたり、独立した事業部においてその合理性について検証を行うとともに、プロジェクト実行予算と実際発生コストのモニタリングによるコスト総額の見積りの見直しについて検証を行っております。
プロジェクト実行予算の作成にあたり、過去の類似案件の経験等を基に、社内で掛かる工数及び協力会社への外注委託する工数を契約ごとに見積っており、開発のために必要となる作業内容及び工数の見積りに不確実性を伴うため、見積りの変動を生じさせるような事象が発生した場合、当社の業績を変動させる可能性があります。
また、損失の発生が見込まれる契約について、将来の損失に備えるため、その損失見込額を計上しております。なお、当事業年度末においては損失見込額がないため計上しておりません。
(イ)投資の減損
当社は、所有する有価証券について、決算日の市場価格等に基づく時価相当額で計上しております。時価のある有価証券については、市場価格等が取得価額に比べて50%超下落した場合に、原則として減損処理を行っております。また、下落率が30%以上50%以下の有価証券については、過去2年間の平均下落率においても概ね30%以上50%以下に該当した場合に減損処理を行っております。時価のない有価証券については、その発行会社の財政状態の悪化により実質価額が取得価額に比べて50%超下落した場合に原則として減損処理を行っております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
(ウ)繰延税金資産の回収可能性
当社は、繰延税金資産の回収可能性があると考えられる金額まで減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を検討するに当たっては、将来の課税所得見込み及び税務計画を検討しておりますが、繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、繰延税金資産の取崩しが必要となる可能性があります。
(エ)貸倒引当金
当社は、売上債権等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。取引先の財務状況が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加で引当金が必要になる可能性があります。
当社の当事業年度の経営成績等は、以下のとおりであります。
(ア)経営成績の分析
当事業年度の経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」をご覧ください。
(イ)財政状態の分析
当事業年度の財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」をご覧ください。
(ウ)キャッシュ・フローの分析
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。
当社の資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
当社の資金需要の主なものは、ソフトウェア開発を下請け外注するための協力会社への支払及び人件費の支払であります。
当社は、必要な運転資金について外部借入により賄っております。外部借入の場合、短期借入金、長期借入金、無担保社債の発行を行っており、当社では、今後とも営業活動によって得る自己資本を基本的な資金源としながら、必要に応じて銀行借入により資金調達を行っていく考えであります。
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