課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、「健全な価値観」「社会貢献」「個と組織の成長」を基本理念として掲げ、高付加価値情報を創造・提供し、顧客の発展ひいては社会の発展に貢献することにより「存在する意義のある組織」であり続けることを目指しております。

 当社グループでは「健全な価値観」に基づく組織風土を保持し続けることを最重要経営課題であると認識しており、その浸透に常に努めております。

 今後も健全な成長・発展を継続することにより「存在する意義のある組織」として社会貢献を目指してまいります。

 

(2) 経営戦略等(セグメント別の経営方針及び今後の見通し)

①経営コンサルティング事業

<経営コンサルティング事業(持続的成長、DX、組織戦略、コーポレートガバナンス)>

 顧客及び主要な紹介元である金融機関は、ともにコロナ禍におけるビジネスの進め方がさらに進展しており、受注環境はコロナ禍前と同様の状況に回復しております。

 成長戦略を実現するためのM&A戦略立案及び実行、カーボンニュートラルなどサスティナビリティ経営に関連したニーズが増加しています。また、働き方の変化や労働市場の変化に伴い、組織戦略コンサル及びDXコンサルの相談が増えております。変化する顧客ニーズへの対応を強化するべく役務の開発、また当該分野の社内におけるナレッジ共有のシステム開発と実装及び、人材採用・育成による人員増強を図ってまいります。特に、事業会社出身で経営経験を有する人材を採用して経営戦略コンサルの対応力を強化します。

 

<事業再生コンサルティング事業>

 コロナ禍に伴う制度融資等により企業の資金繰りは落ち着いておりましたが、第6波の影響等により、業況は一進一退で推移しています。加えて、一定の資金支援の後、追加の資金獲得も難しくなっていることから、過剰債務に伴う課題が深刻になりつつあります。

 企業の本業(PL)改善、及び財務安定化へのニーズの高まりに伴い、金融機関からの紹介件数は、堅調に推移しております。また、企業の資金繰り状況によっては、スポンサー型のM&A(事業再生型M&A)へのニーズも今後高まってくるものと想定しております。

 本業(PL)改善や事業再生型M&Aへの支援ニーズに応えるべく人員増強し体制を整えるとともに、顧客経営者に常に寄り添い、当社の強みである総合力を発揮したサービスを提供してまいります。

 

<M&Aアドバイザリー事業>

 M&Aをとりまく環境におけるコロナ禍の影響は一巡し、引き合い件数・契約件数ともにコロナ禍前と同程度の水準まで回復しております。また、ウクライナ情勢や中国でのゼロコロナ政策によるサプライチェーンへの打撃は、日本国内における中堅中小企業にも少なからず影響を及ぼすことが想定され、足元の引き合い件数も影響の大きい業種を中心に増えております。2023年3月期初時点の引き合い・受注件数は、2022年3月期初比約40%増と増加傾向にあり、今後は事業再生型M&Aや大手企業におけるノンコア事業売却ニーズもさらに増加していくものと見込まれます。

 M&Aアドバイザリーサービスの差別化・競争力向上のため、M&Aを単なる会社の売買と捉えることなく、経営コンサルティング役務の1つとして、会社の成長・生き残り、地域経済の活性化、業界の再編等、様々な形でM&Aアドバイザリー(コンサルティング)を提供しております。相談から実行に至るまで長期間を要するものの、当社の従来からの強みであるコンサルティング機能を発揮し、様々な選択肢を提供することで、経営者・企業に寄り添うM&Aアドバイザリーサービスを丁寧に実行してまいります。

 また、買い手企業向けの新しいサービスとして2022年3月期より開始した『Y-search(※)』の認知拡大を通し、さらに戦略的かつ能動的なM&Aサービスを提供してまいります。

 体制面においては、経営コンサルティングチーム・事業承継チームと連携し、経営コンサルティングや事業承継支援をきっかけとしたM&Aに取り組んでまいりました。事業・業界に知見の深い他部門のコンサルタントとの協働を通して、専門性を高めることを進めてきた結果、M&A役務に留まらずそこから派生する様々な相談が増えております。

 2023年3月期はこれに加えて、地方拠点と本社のM&Aチームとの一体運営を一層強化し、地方拠点におけるM&A役務の認知拡大・品質向上を図ってまいります。コンサルティング型M&A事業を当社の中核ビジネスに成長させるべく、引き続き中長期的な視点に立った事業運営に注力してまいります。

(※)買収希望企業(買い手)が、持ち込まれる「売り案件」の中から買収先を探すのではなく、経営戦略に基づいて買収先を絞り込み発掘することで、より効率的なM&Aを実現する、当社の提供する役務の名称

 

<事業承継コンサルティング事業>

 事業承継に関する相談及び受注件数は、コロナ禍前の状況まで回復し、堅調に推移しております。個別の顧客対応においては、対面・WEBの面談を併用することで、コロナ禍前と変わらない、あるいはより効率的で密度の高いコミュニケーションを行い、引き続き提案機会を増やしてまいります。

 事業承継はオーナー企業を中心とする企業経営者の根幹的な課題であり、事業承継の課題解決を通じて、持続的成長、M&A、事業・資産ポートフォリオとしての国内外における不動産活用、その他海外における事業展開などあらゆる経営課題の相談に繋がると認識しております。そのためには、本社及び各地方拠点に配置している事業承継に携わるコンサルタントが、高品質の事業承継支援役務を提供することと、事業承継以外の幅広い役務の知見を持つことが必須であり、全社横断的な人材採用・育成をすすめております。高品質の事業承継支援役務をきっかけとした顧客(経営者等)との密接な関係をもとに、経営やオーナー経営者の資産に関するあらゆる相談に対応し貢献することで、収益基盤を強化してまいります。

 

海外事業コンサルティングの状況

 上記の各事業分野における海外事業コンサルティングの状況について説明いたします。

 東南アジアや米国で入国時における隔離制限が緩和され渡航が可能になったことで、M&Aの検討・動きが活性化しております。各国拠点においてM&A業務が再始動し、ファイナンシャルアドバイザリー、トランザクションサービスの引き合い及び受注件数が順調に増えています。ただし、ウクライナ問題やそれに伴うインフレ加速、中国のゼロコロナ政策による営業活動・受注活動への影響は避けられず、中国においては既に引き合いが停滞している状況です。

 今後も引き続き日系企業の海外展開を図る際の成長戦略策定からM&A・トランザクションサービスに至るまで、一気通貫した役務を提供してまいります。クライアントの日本拠点(親会社等)と海外拠点のいずれからも支援できるよう、当社の各海外拠点のコンサルタントの連携と、均質サービスの提供を強化します。

 また、2022年3月期から開始した米国賃貸住宅投資に係る不動産アセットマネジメントサービスでは、事業規模の拡大を見据え人員体制を拡充しました。

 一方、懸念として、円安の進行がクロスボーダーM&Aや米国不動産投資に与えるマイナスの影響を注視してまいります。

 営業面においては、継続的に実施しているWEBセミナーやホームページでの情報発信に加え、当社の紹介元である金融機関に対して当社の海外業務を認識いただくべく営業活動をさらに注力してまいります。

 

②不動産コンサルティング事業

 実需向け不動産及び投資用不動産は、ともに活発な取引が行われています。一方で、先行き不透明な情勢に将来の不安を感じる顧客も多く、提携会計事務所から売却相談や不動産の総合的な相談が増加傾向にあります。短期間で受注に至るものがある一方で、案件相談から受注までに長期間要するものもあり、状況を見極めながら機動的に対応してまいります。場所柄流通しにくい小型案件等については受注の可否を含め慎重に対応し、効率的な運営を図ります。

 各コンサルティング部門との密な連携により、顧客の不動産に関する課題解決に注力してまいります。

 

③教育研修・FP関連事業

 集合研修・WEB研修ともに各企業の研修ニーズは多様化してきております。より効果的な研修を提供するために、研修方法やカリキュラムをカスタマイズすることにより、受注率を上げる営業活動を推進してまいります。また、研修効果の見える化を目的としたシステムによる学習サポート機能を拡充し、商品の差別化を図ってまいります。

 相続手続サポート業務(「相続あんしんサポート」)については、足元の紹介・受注件数はコロナ禍前の状況に戻りつつあります。既存の紹介元である金融機関に加えて、相続発生前の潜在顧客の囲い込みが見込める高齢者向け介護施設等との連携等、新規の受注チャネルの開拓にも注力し、売上拡大を図ってまいります。

 さらなる利用者の利便性向上を目指し、外部の高齢者向けサービス提供会社とのネットワークを構築することにより、相続発生手続き支援業務以外のサービスの拡充にも努めてまいります。

 

 

 

④投資・ファンド事業

 今後も、各企業における事業構造見直しの動きに連動した資本構成の再構築ニーズ、株式の資金化ニーズが増加するものと予想しております。このようなニーズの高まりを受け、当社は昨年7月に新設したキャピタルソリューション四号投資事業有限責任組合に続き、昨年11月に山田コンサルティング壱号投資事業有限責任組合を新設いたしました。引き続き、優良な未上場企業に対する新規投資案件の発掘に注力し、投資を検討してまいります。

 また、既投資先についても、定期的なモニタリング活動を継続してまいります。

 

(3) 持続的成長に向けた人材育成と働き方改革

 当社が持続的成長を果たしていくためには、優秀な人材の獲得と定着が不可欠です。そのために以下の改革に継続的に取り組んでまいります。

・「個と組織の持続的成長」の実現のため、人生のライフステージに応じて、「家庭」・「仕事」・「自身の成長」のバランスをとって働き続けられる環境を整備すること

・当社社員が当社の文化や価値観に共鳴・共感し、常に高いレベルの業務・新たな業務にチャレンジし、長期的に探究・追求できるフィールドを構築すること

 当社では、従来からの総合コンサルタント職の採用に加えて、女性を中心とした優秀な専門コンサルタント(データ分析やリサーチ業務に特化した専門職)の採用・育成を強化しております。また、事業会社出身の経営経験を有するシニア層の採用及び活躍の場の提供も積極的に推進しております。このような多様なメンバーが、安心して長期的に働き続けられる環境を整備し、定着率の向上を図ってまいります。2023年3月期において重点的に取り組む施策は以下のとおりです。

 

<バージョンアッププログラム(管理職向け取組み)>

 2022年3月期より管理職を対象として、『バージョンアッププログラム』を開始いたしました。各人が上司と相談の上、個別にテーマを設定し、業務時間のうち5%(年間100時間)を自己の能力開発のための時間に充てる取組みです。「自身の専門性を深化する取組み」・「自身の専門性とは異なる分野の知見を広げる取組み」等を常に継続することで、各社員が高いレベルの業務・新たな業務にチャレンジする環境を整え、顧客のあらゆる経営課題への対応、新たな事業・サービスの展開を図ってまいります。

 2022年3月期は、デジタルリテラシーなど基礎能力の向上、サスティナビリティ経営など新しい領域の役務につながった事例を社内表彰いたしました。今後もより質の高いプログラムに各人が取り組めるよう引き続き推進してまいります。

 

<生産性向上と労働時間の削減>

 生産性の向上及び労働時間の削減について、3年計画で改善に取り組んでまいります。

 チームで生産性向上について議論し、全員参加型による改善活動を実施します。社員一人一人が常に考え行動し続けるために、改善活動を当社の文化・風土として根付かせてまいります。

 加えて、生産性向上に資するための仕組みとして、昨年実施したオフィス改革(フリーアドレス制、WEB会議ブース・ミーティングエリア増設等)をはじめ、ナレッジ共有などITツールの積極活用など環境面の整備も引き続き行います。

 制度面・環境面の整備とともに、最大限に能力を発揮できるような働き方や職場環境づくり等を通じて、さらなる成長と持続的な発展に努めてまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 社員一人一人の成長が組織の成長につながりますので、「個の成長」を最重要課題と認識し経営してまいりました。この方針は今後も継続してまいります。

 また、中長期的には利益の極大化を図り当社グループとしての企業価値を高めることが重要と認識しておりますので、今後も資本運用効率を計る尺度としての「自己資本利益率(ROE)」20%を目標としております。

 なお、ROE20%は将来に関する経営目標ではありますが、将来の事象や動向に関する現時点での仮定に基づくものであり、当該仮定が必ずしも正確であるという保証はありません。様々な要因により実際の業績が本書の記載と著しく異なる可能性があります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループのセグメント別の対処すべき事業上及び財務上の課題は次のとおりであります。

 

①経営コンサルティング事業

 経営コンサルティング事業における戦略は、顧客生涯価値(LifeTime Value)を最大化することが事業モデルにおける強みであり、顧客のあらゆる経営課題に対応するため、総合的なコンサルティング事業のクロスセル等を行うことで顧客ロイヤリティの向上を図り、今後も新たな事業、サービスの展開を図ってまいります。重点戦略は次のとおりであります。

・個の自律的な成長と個の成果が生み出す組織の成長とを調和させることで当社の持続的成長を実現する仕組みである「持続的成長システム」の運用

・「個と組織の持続的成長」を実現するための人材戦略の実行(採用、育成・定着、評価・活躍)

・従来から行っていた「部拠点単位」での管理に加えて「事業単位」で全社的な戦略を立案・実行する「事業推進体制(マトリックス組織運営)」の実行

 

②不動産コンサルティング事業

 不動産コンサルティング事業における戦略は、営業拠点及び顧客からビジネスパートナーとしての認知を獲得し、不動産に関する総合的な提案ができる「不動産総合コンサルティング事業」を目指すことであります。重点戦略は次のとおりであります。

・富裕層のライフサイクルの各ステージにおいて資産運用(活用)の継続的パートナーとなれるサービス展開と認知獲得

・経営コンサルティング部門の顧客及び提携会計事務所に対する情報発信による提案型営業の強化

・資産管理部門の機能強化を通じて富裕層クライアントへのアプローチ拡充

 

③教育研修・FP関連事業

 教育研修・FP関連事業における戦略は、人材育成のソリューションを提案できる「人材育成コンサルティング事業」を目指すことであります。また、これまで蓄積してきたノウハウとネットワークを活かし、新規事業を実現することであります。重点戦略は次のとおりであります。

・顧客ニーズにあった商品への見直し・商品開発、人材育成に関する教育プログラムの提案

・経営コンサルティング事業との協業、中小企業向け人材育成ニーズに応える教育研修プログラムの開発・推進

・相続手続に関するサポート業務(「相続あんしんサポート」)の早期の事業的規模への拡大

 

④投資・ファンド事業

 投資・ファンド事業における戦略は、当社グループが手掛けるコンサルティング案件から発生する投資機会に積極的に関与し、コンサルティング案件にとどまらない新たな収益機会を創造していくことであります。重点施策は次のとおりであります。

・顧客ニーズに応じて、事業承継支援を目的とする非上場株式への投資に加えて、不動産投資事業や富裕層・機関投資家向けの様々な資産サポート事業への積極的取り組み

・投資規模の大型化に対応すべくガバナンス体制を強化

・総合的な管理運営体制の構築

 

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得