業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)  経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2021年1月1日〜2021年12月31日)における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の普及等により経済活動及び社会生活は年中盤にかけて復活の様相をみせたものの、後半にかけて蔓延したオミクロン株により引き続き先行きの不透明な状況が続いております

 

当社グループは、「Every Life Deserves Attention(すべての命に、光を)」を経営理念として掲げ、そのほとんどが希少疾患に属する遺伝子疾患に対して画期的な新薬を提供することを目標とし、研究開発を行っております。技術的基盤となるCRISPR-GNDM®プラットフォームを元に、世界初のCRISPRを用いた遺伝子制御治療を開発する会社として2016年の設立から6期目に当たる当連結累計期間にいたるまで、リーディングカンパニーとして最先端の研究をリードし続けてまいりました。この成果を結実させるべく当期は臨床試験に向けた取り組みを本格化させた期となりました。

これまでにも当社グループは自社及びパートナーとの提携によりCRISPR-GNDM®技術を用いたプログラムの開発を進めてまいりましたが、より効率的でスピーディーな研究開発と、開発ノウハウの水平展開を目指して当社機能の幅を広げる取り組みを開始いたしました。これにより自己資金で治療薬の開発を行う「自社モデルパイプライン」の推進のみならず、パートナーと共同で治療薬の開発を行う「協業モデルパイプライン」に対しても自社で確立したノウハウを供与することにより、より高い付加価値を提供できるようになったと考えます。

当連結会計年度においては、MDL-101を中心とした各協業モデルパイプライン及び自社モデルパイプラインの研究開発は順調に進捗しました。リードプログラムであるMDL-101は、複数のパートナーと契約に向けたディスカッションを継続しながら、並行して最速で臨床試験入りを実現すべく開発を継続しております。特に、プロセス開発、GLP試験に向けた準備を行っており、世界でまだ臨床試験が行われたことのない遺伝子制御治療薬となることから、当局との間で試験開始に必要なハードルの確認を行っていくことが重要になると考えております。当社グループでは、2022年第1四半期内にFDA(米国食品医薬品局)に対してINTERACTミーティングを申請し、2022年中にはPre-INDミーティングの申請を行う予定で準備を進めております。

また、当連結会計年度内においてパイプラインの再編成を行っております。8月にはエンジェルマン症候群を対象としたMDL-206をアステラス社からの権利の返還を受けて、研究に必要な材料の各種ライセンスを独自に再取得し、自社として研究ができる体制を再構築いたしました。一方、MDL-204はアステラス社の中止判断に伴い、当社でもプログラム継続を行わない判断を行いました。このように研究段階から費用と期間のかかる開発段階に移行する時点でステージゲートを設けて適切なGo/No Go判断を行う事は、限りあるリソースのアロケーションを最適化し、その後の成功確率を高めるために重要であると考えます。一方で、当社は新たなターゲット領域の設定とプログラムのインキュベーションを行っており、これらが一定のクライテリアを達成した段階でプログラムとして昇格し、リソースを投入して開発を進めていく予定です。

当社グループは2020年4月にEditas社とCRISPR/Cas9の基本特許に関するライセンス契約を締結しておりますが、2021年4月には本ライセンスについてアステラス社とMDL-201及び202のターゲット遺伝子に対するサブライセンス契約を締結しました。当社グループでは、自社特許とともに製造販売に必要となる外部特許の導入を行っており、これにより当社グループのパイプラインのFTO(Freedom to Operate)を確保し、重層的な知財によるプロダクトの保護を行うことで、パートナリングに必要な知財をワンストップで提供できるパッケージ化を実現しています。

10月には当社の研究開発拠点である米国子会社を、マサチューセッツ州ケンブリッジ市から近郊のウォルサム(Waltham)市に拡張移転を行いました。これにより、当社は前述の製造関連の機能を擁するとともに、研究開発の機能をさらに拡大する基盤を手にすることができました。床面積にして3倍の拡大となり、近接するケンブリッジ市を中心とするボストンエリアの優秀な人材を吸引する機会となることを期待しています。移転から現在までの間にさらに研究員を増員しており、米国子会社は約30人の態勢になりました。なお、米国は完全雇用に近い状態になっており、人材の獲得競争は激しさを増していますが、その状況下にあっても当社グループは有能な人材の確保と高いリテンションを維持することができております。

また、当社グループはCRISPR-GNDM®技術の確立及び各プログラムで上げた成果について、2022年5月に米国ワシントンDCで開催のASGCT(米国遺伝子細胞治療学会)の年会で報告の予定です。遺伝子制御技術のリーダーとして技術の課題とその解決策、そして治療への応用を共有し、業界のさらなる発展に寄与していく所存です。

なお、当連結会計年度の経営成績等において新型コロナウイルス感染症による影響は限定的と考えております。

 

また、当社大株主の有価証券上場規程及び有価証券上場規程施行規則に基づく確約書に違反して制度ロックアップ期間中に当社株式を売却したことに関し、当該事項の対応策として、当社は受取賠償金として特別利益485,881千円を受領しております。

 

以上の結果、事業収益は1,100千円(前期比99.7%減少)、営業損失は1,239,444千円(前期は営業損失398,351千円)、経常損失は1,231,299千円(前期は経常損失439,549千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は738,956千円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失448,407千円)となりました。

 

なお、当社グループは、遺伝子治療薬開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

(流動資産)

当連結会計年度末の流動資産の残高は、前連結会計年度末に比べて381,502千円減少し、5,067,043千円となりました。これは主に、現金及び預金が485,282千円減少したためであります。

(固定資産)

当連結会計年度末の固定資産の残高は、前連結会計年度末に比べて173,622千円増加し、1,002,093千円となりました。これは主に、建物が76,793千円及び工具、器具及び備品が96,072千円増加したためであります。

(流動負債)

当連結会計年度末の流動負債の残高は、前連結会計年度末に比べて122,451千円増加し、180,717千円となりました。これは主に、未払金が89,248千円及び未払費用が8,528千円増加したためであります。

(固定負債)

当連結会計年度末の固定負債の残高は、前連結会計年度末に比べて327,313千円増加し、339,207千円となりました。これは主に、長期前受金が285,559千円増加したためであります。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ657,644千円減少し、5,549,212千円となりました。これは主に、新株予約権の行使に伴い資本金及び資本剰余金がそれぞれ37,127千円増加したものの、親会社株主に帰属する当期純損失発生に伴い利益剰余金が738,956千円減少したためであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて485,282千円減少し、当連結会計年度末には4,936,193千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、使用した資金は747,466千円(前連結会計年度使用した資金は376,575千円)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失745,417千円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、獲得した資金は171,563千円(前連結会計年度使用した資金は830,310千円)となりました。これは主に、特許実施権負担金受入による収入329,670千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、獲得した資金は72,633千円(前連結会計年度獲得した資金は2,777,992千円)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入72,731千円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社グループは生産を行っておりませんので、記載を省略しております。

 

b.受注実績

当社グループの事業による共同研究は受注形態をとっておりませんので、記載を省略しております。

 

c.販売実績

当社グループは、遺伝子治療薬開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

遺伝子治療薬開発事業

1,100

△99.7

合計

1,100

△99.7

 

(注) 1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

第5期連結会計年度

(自 2020年1月1日

至 2020年12月31日)

第6期連結会計年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

アステラス製薬株式会社

335,000

98.0

1,100

100.0

 

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

(2)  経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とする箇所があります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表の作成における重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 及び (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響の仮定に関する情報は「第5 経理の状況 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績及び財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金の状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループは、事業上必要な資金を手許資金で賄う方針でありますが、事業収益から得られる資金だけでなく、株式市場からの必要な資金の獲得や銀行からの融資、補助金等を通して、安定的に開発に必要な資金調達の多様化を図ってまいります。資金の流動性については、資産効率を考慮しながら、現金及び現金同等物において確保を図っております。資金需要としては、継続して企業価値を増加させるために、主に継続した研究開発や必要な設備投資資金となります。

 

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