業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度末における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①経営成績の状況

当事業年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により大きく減速した前事業年度からの反動後、緩やかな回復基調となりました。しかしながら、感染力の強い変異ウイルスの出現やワクチン接種の進捗不安等から、感染拡大への警戒感が強い状況であったことに加えて、ロシアのウクライナ侵攻という極めて深刻な地政学的リスクの発生もあり、経済動向は不透明かつ流動的でありました。

米国経済は、企業業績が堅調に推移し個人消費も緩やかに拡大しましたが、欧州経済は後半に減速し、中国経済も回復から横ばいの状況に変化しました。また日本経済については、緊急事態宣言等の発出と解除にともない個人消費には波が見られたものの、企業業績の改善は緩慢な状況で推移しました。

このような経済環境の中で、当社の属するファインケミカル業界につきましては、物流網の混乱や半導体不足に伴う自動車産業等への影響懸念、加えて地政学的リスクにも起因する原材料やエネルギー価格の高騰や供給不安等もあり、売上・収益環境は極めて厳しい状況でありました。

具体的な当社の当事業年度における業績は、化学品事業では受託製造製品における収益認識会計基準等の適用による減少を考慮すれば、主力製品である紫外線吸収剤の他、大半の製品で実質的に増収となりました。ホーム産業事業では木材保存薬剤が減収となったものの、シロアリ駆除工事等の再開でその他の売上高が増収となりました。売上高全体では、収益認識会計基準等の適用による減少が817百万円ありましたが、前年同期比190百万円増の9,743百万円(前年同期比2.0%増)で着地いたしました。利益面については、紫外線吸収剤の販売復調に加え、引き続き受託製造製品等の積極的取り込みを行った結果、営業利益は552百万円(同58.3%増)、経常利益は営業外費用として生産休止費用を217百万円計上したものの264百万円(同138.8%増)となりました。税引前当期純利益については、特別損益の計上がなかったことから264百万円(同75.3%増)となりました。当期純利益については、法人税、住民税及び事業税が44百万円、法人税等調整額が40百万円となり179百万円(同0.5%減)となりました。

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

 

(化学品事業)

当事業年度の売上高は、主力製品である紫外線吸収剤が前年同期比214百万円増の5,508百万円(前年同期比4.1%増)となったことに加えて、酸化防止剤が同219百万円増の586百万円(同59.9%増)、写真薬中間体が同107百万円増の265百万円(同68.5%増)、製紙用薬剤が同44百万円増の353百万円(同14.4%増)となり、受託製造製品が同329百万円減の1,794百万円(同15.5%減)、電子材料が同20百万円減の196百万円(同9.3%減)であったものの、全体では同230百万円増の8,762百万円(同2.7%増)で着地いたしました。ただし、受託製造製品の売上高には収益認識会計基準等の適用による減少817百万円が反映されております。また、セグメント利益では934百万円(同36.9%増)を計上いたしました。

(ホーム産業事業)

当事業年度の売上高は、木材保存薬剤の売上高が前年同期比78百万円減の791百万円(前年同期比9.1%減)となる一方で、その他が同39百万円増の190百万円(同26.0%増)となったことから、全体では同39百万円減の981百万円(同3.9%減)となりました。また、セグメント利益では64百万円(同4.4%増)を計上いたしました。

 

 

品目別売上高の状況は、次のとおりです。

 

    (品目別販売実績)                                (単位:千円、%)

セグメント別

 期別

前事業年度

当事業年度

増減

 

2021年3月期

2022年3月期

     区分

金額

構成比

金額

構成比

金額

化学品事業

 紫外線吸収剤

5,294,505

55.4

5,508,939

56.5

214,434

 写真薬中間体

157,685

1.7

265,642

2.7

107,956

 製紙用薬剤

309,024

3.2

353,511

3.6

44,486

 酸化防止剤

366,720

3.8

586,403

6.0

219,683

 電子材料

216,386

2.3

196,216

2.0

△20,170

  受託製造製品

2,123,460

22.2

1,794,312

18.4

△329,148

 その他

64,092

0.7

57,006

0.6

△7,085

(小 計)

8,531,875

89.3

8,762,032

89.9

230,157

ホーム産業事業

 木材保存薬剤

870,130

9.1

791,163

8.1

△78,967

 その他

151,317

1.6

190,678

2.0

39,360

(小 計)

1,021,448

10.7

981,841

10.1

△39,606

合  計

9,553,323

100.0

9,743,874

100.0

190,550

(注)収益認識会計基準等の適用による売上高の減少は、受託製造製品において817,891千円となっております。

 

②資産、負債及び純資産の状況

当事業年度(以下「当期」という。)の総資産は、前事業年度末(以下「前期末」という。)比190百万円減少し、13,452百万円となりました。流動資産は同47百万円増加の7,921百万円、固定資産は同238百万円減少の5,531百万円となりました。

流動資産の増加の主な要因は、原材料及び貯蔵品が151百万円、商品及び製品が58百万円、未収入金が126百万円、その他の流動資産が116百万円増加した一方で、現金及び預金が226百万円、売掛金が167百万円減少したことなどによるものであり、固定資産の減少の主な要因は、リース資産(純額)が160百万円減少したことなどによるものであります。

当期の負債は前期末比240百万円減少し8,878百万円となりました。流動負債は同403百万円増加の6,373百万円、固定負債は同643百万円減少の2,504百万円となりました。

流動負債の増加の主な要因は、買掛金が116百万円、電子記録債務が124百万円、未払金が211百万円、未払法人税等が63百万円、その他の流動負債が64百万円増加した一方で、1年内返済予定の長期借入金が276百万円減少したことなどによるものであります。固定負債の減少の主な要因は、長期借入金が517百万円、リース債務が170百万円減少したことなどによるものであります。

当期の純資産は前期末比49百万円増加し、4,574百万円となりました。純資産の増加の主な要因は、当期純利益179百万円を計上した一方で、自己株式が79百万円増加したこと、配当金の支払57百万円があったことなどによるものであります。

この結果、自己資本比率は、前期末の33.2%から34.0%となりました。

 

 

③キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローにおいては1,105百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローにおいては248百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローにおいては1,082百万円の支出となった結果、前事業年度末に比し226百万円減少し、1,908百万円となりました。

当事業年度中における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は、1,105百万円(前年同期比87.9%増)となりました。

これは主に、税引前当期純利益が264百万円計上されたこと、減価償却費が495百万円計上されたこと、棚卸資産の増加額249百万円、仕入債務の増加額362百万円などの要因によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、248百万円(前年同期比11.7%増)となりました。

これは主に、生産能力の向上や生産効率の強化を目的として設備投資を行ったことに伴う、有形固定資産の取得による支出が246百万円計上されたことなどによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、1,082百万円(前年同期比814.2%増)となりました。

これは主に長期借入れによる収入500百万円、長期借入金の返済による支出1,294百万円、自己株式の取得による支出79百万円、リース債務の返済による支出150百万円、配当金の支払い57百万円が計上されたことによるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

1)生産実績

当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

 

前年同期比

(%)

化学品事業(千円)

8,604,126

104.0

ホーム産業事業(千円)

655,977

87.9

合計(千円)

9,260,104

102.7

(注)金額は販売価格によっております。

2)商品仕入実績

当事業年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

 

前年同期比

(%)

化学品事業(千円)

6,504

71.7

ホーム産業事業(千円)

296,134

117.5

合計(千円)

302,639

115.9

(注)金額は仕入価格によっております。

3)受注実績

当社は見込生産を行っているため、該当事項はありません。

4)販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

 

前年同期比

(%)

化学品事業(千円)

8,762,032

102.7

ホーム産業事業(千円)

981,841

96.1

合計(千円)

9,743,874

102.0

(注)最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

BASFジャパン㈱

2,402,453

25.1

2,368,355

24.3

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2022年3月31日)現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行っております。この見積り及び仮定設定に関しては、過去の実績や状況に応じた合理的かつ妥当な判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、当初の見積りと異なる場合があります。

なお、当社の採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。また、重要な会計上の見積りの仮定については、「第5 経理の状況 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社は、創業以来培ってきた有機化学合成の高い技術力を背景に、特定の大口取引先の協力を得ながら成長、発展してまいりました。しかしながら、主力販売製品のコモディティ化に伴うコンペティターの台頭や環境対応に関する国内外の法的規制の強化といった外部要因による停滞、産業の成熟化に伴う市場規模の成長の鈍化といった、事業環境の変化により引き起こされる数々の問題に直面しております。

このような状況下、持続的な発展を裏付ける磐石な経営を実現させるために、特定取引先との協力関係を維持する一方で、新たな柱の構築による第二の創業を目指し、当社は有機ELをはじめとする研究開発体制の強化と販売チャネルの多様化を目的とした受託ビジネスの強化を行ってまいりました。

こうした中、受託ビジネスについては取引量が徐々に増え、紫外線吸収剤をはじめとする化学品事業において取引高ベースで30%程度となるなど確かな手ごたえが出てきましたが、有機ELをはじめとする新規ビジネスについては成長の半ばであり、更なる対応が急務でございます。また、地政学的リスクに起因する原材料調達リスク等への対応は、事業活動を継続していくうえでの喫緊の課題と考えております。

上記を踏まえ、当社は今後既存製品に関しては対面にとらわれない対話を活用し、品質改善による顧客満足度の向上と生産効率の改善、適正な価格転嫁等を推進し、既存の取引先との協力関係を維持・強化していく方針であります。

受託ビジネスに関しては既存受託先との取引関係を強化する一方で、新規顧客を開拓するとともにリピート需要を取り込む等、新たなビジネスチャンスを逃さないように外部機関等も活用し、持続的な工場稼働率の向上を実現していきます。

有機ELをはじめとする新規ビジネスに関しては市場拡大局面にあり、新たなステージにおける販売シェア獲得を必達するために、既成概念にとらわれず産学協同で研究開発・製造・販売の三位一体となった変革へのチャレンジを実践していきます。

当社は以上のような取り組みを通じて企業の永続的な発展を実現し、企業価値・株主価値向上を達成し、株主の皆様のご期待に応えるよう努める所存でございます。

 

当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、受託製造製品等の販売の増加等があるものの特定販売先への依存度が高く、依然として当社の業績に影響を受ける可能性があります。

また、有機ELをはじめとする新製品については将来の成長事業に育成すべく注力しておりますが、競合各社も新規製品開発に取り組んでおり、当社が開発した製品が中・長期的に販売できないケースがあります。

さらに、当社の継続事業にかかる棚卸資産は主として将来需要および市場動向に基づく見込み生産によるものでありますので、ロシアのウクライナ侵攻をはじめとした重大な地政学的リスクや南海トラフ地震等に伴う実需および予測せざる市場動向次第では在庫増加を要因とした生産調整を実施する場合があり、それに伴う生産休止費用が業績に与える影響も無視できません。

 

当社の資本の財源及び資金の流動性については、以下の通りであります。

 

1)資本の財源

当社は、運転資金及び設備投資資金の原資につきましては、当社の財務状況を勘案して、手許現金の使用・銀行借入・リースの利用等の中から最もふさわしい方法を採ることとしております。銀行からの借入による資金調達については、短期借入金に関しては変動金利により、長期借入金に関しては主として固定金利により行っております。

 

2)資金需要の主な内容

当社の資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための引合費用等の販売費、製品競争力強化・ものづくり力強化に資するための研究開発費が主な内容であります。投資活動については、事業伸長・生産性向上を目的とした設備投資及び事業遂行に関連した投資が主な内容であります。

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う資金面での影響は今なお不透明ではございますが、成長の原資たる設備投資や研究開発投資等については当期も継続していく所存です。全体的には、将来見込まれる成長分野での資金需要も見据え、最新の市場環境や受注動向を注視しつつ、資産の圧縮及び投資案件の選別を行っていく予定であります。

 

3)キャッシュ・フロー計算書に基づく資金の流動性についての分析

当社のキャッシュ・フローにつきましては、当事業年度末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比226百万円減少し、1,908百万円となりました。当事業年度における状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要」をご覧ください。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、当事業年度は以下の通りとなりました。

売上高経常利益率            現状: 2.7%  (中長期目標:10.0%)

ROE(自己資本利益率)  現状: 3.9%  (中長期目標:10.0%)

自己資本比率                現状:34.0%  (中長期目標:40.0%)

当社といたしましては、創業以来の成長と実績を礎に上記指標を一層改善することを通じて、永続性のある更なる盤石な経営の実現を目指し、鋭意取り組んでいく所存でございます。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

化学品事業

化学品事業における販売はOEM販売や受託製造製品等の販売が主流であり、特定販売先については総売上高の約3割の依存関係となっております。既存の販売先については安定的な供給を継続しつつ、有機合成技術を駆使した高品質な新規製品による海外販売を展開することにより、直販比率を向上させることで安定収益に繋げていきます。

 

ホーム産業事業

ホーム産業事業における販売は木材保存薬剤を主力とし、ホームセンター向け塗料、室内用および業務用塗料の新規開発・販売拡大を目指して安定収益に繋げていきます。

 

 

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