(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べ77,954千円減少の1,715,498千円となりました。これは主に、取引先拡大により期末売上計上が増加したことによる売掛金の増加62,527千円、無形固定資産の増加75,220千円の一方で、現金及び預金の減少211,471千円等によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債は、前事業年度末に比べ126,964千円減少の249,285千円となりました。これは主に、売上債権と前受金との相殺に伴う前受金の減少37,646千円、賞与の支給に伴う賞与引当金の減少による役員賞与引当金の減少26,880千円及び賞与引当金の減少24,120千円、返済による長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)の減少30,836千円等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べ49,010千円増加の1,466,212千円となりました。これは当期純利益の計上によるものであります。
この結果、自己資本比率は85.47%(前事業年度末は79.02%)となりました。
② 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、各種政策やワクチン接種の普及に伴い、経済活動の持ち直しに向けた動きが見られましたが、新たな変異株の出現による感染症再拡大による景気回復の遅れや、ウクライナ情勢の悪化による資源価格の高騰、急激な円安の進行による金融市場の動揺など景気の下振れ要因が顕在化し、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような事業環境の中、当社は「マッチングで世界を変える」というミッションのもと、企業と企業の出会いのあり方を見直し、従来の産業構造では成し得なかった最適な出会いを提供することで、多くのイノベーションを生み出す産業のしくみを国内外に築き、産業全体の生産性を最大化するための連携のハブとなる企業を目指すために、マッチングプラットフォームの運営を中心としたビジネスマッチング事業を展開しております。
また、サービス内容としては、ニーズ起点のマッチングを手掛ける技術探索サービス「Linkers Sourcing」、シーズ起点のマッチングを手掛ける用途開拓サービス「Linkers Marketing」、調達支援サービス「Linkers Trading」、及びSaaS型の金融機関向けマッチングシステム「Linkers for BANK」と当該事業会社向けマッチングシステム「Linkers for Business」の提供による探索・マッチングサービスと、技術ニーズ・シーズの調査を手掛ける「Linkers Research」を中心としたリサーチサービスを主たるサービスとしております。
当社が展開しているビジネスマッチング事業は、主に製造業などのものづくり企業へ向けたオープンイノベーション支援を中心に企業の新規取引先探索を支援する事業であり、従来は、商社、銀行、コンサルティング会社及び展示会支援業者等が、自社のサービスの一部として実施しておりました。しかし、Webサービス発展に伴いWebを介した企業間でのマッチングサービスがそれらを代替しつつあり、特に製造業においては消費者ニーズの多様化や製品ライフサイクルの短縮化によって、自社ネットワーク外にある人材・技術を活用した素早い製品開発やサービス展開が求められております。今後は、あらゆる業種においてインターネットを介した企業間連携の増加が見込まれ、新規取引先探索サービスの需要は拡大していくと考えております。
「Linkers Research」は、研究段階における技術ニーズ・シーズの調査を手掛け、その企業が取り組むべき技術テーマや技術課題の顕在化を行います。また、「Linkers Sourcing」にて開発段階におけるニーズ起点のマッチングを手掛ける技術探索サービスを提供し、「Linkers Marketing」にてシーズ起点のマッチングを手掛ける用途開拓サービスを提供することで、多様なマッチング機会を創出いたします。
「Linkers Trading」は、量産段階におけるサプライヤー探索等の調達支援を通じて、発注企業及び受注企業の新たな商流構築を行っております。
これら一連のサービス提供を通じて、ものづくり企業の研究から開発、そして量産に至るまでの各プロセスにおける課題解決をワンストップで支援することで、ものづくり企業のイノベーションを促進する価値創出を行っております。
当事業年度においては、探索・マッチングサービスについては、前事業年度に大きな収益貢献のあった医療用アイソレーションガウンの入札案件に代替する収益基盤の転換を企図して、既存事業の拡大や新規サービスの投入等に積極的に取り組んでまいりました。
「Linkers Sourcing」並びに「Linkers Marketing」の既存事業の持続的な成長はもとより、金融機関向けマッチングシステム「Linkers for BANK」が、新たに8機関へ導入完了したことで累積導入機関数が27機関まで伸長し、事業会社向けマッチングシステム「Linkers for Business」については、2機関に導入がなされるなど、ストック収益基盤が大きく拡大いたしました。
また、「Linkers Trading」においては、新たに海外サプライヤー等の探索による調達支援サービスを開始し、政府によるカーボンニュートラルへの取組強化を背景としたアルミニウムのリサイクル素材サプライヤー探索が案件化したことから、一定の売上を確保いたしました。
リサーチサービスにおいても、昨今注目度の高いカーボンニュートラルについて企画設計したマルチクライアントリサーチに想定以上の強い引き合いがあったことから、探索・マッチングサービスの売上高減少を補完する程に「Linkers Research」が好調に推移いたしました。
以上の結果、当事業年度の売上高は、医療用アイソレーションガウンの入札案件を内包した前事業年度には及ばないまでも、その減収幅は微減に留まり、各サービスの成長強化に取り組んだ成果が現れ、1,412,575千円(前年同期比0.5%減)となりました。
一方で、「Linkers Research」の売上増によるリサーチ外注費用の増加、及び「Linkers Trading」における調達支援サービスの開始による仕入高が発生したことから、営業利益は65,489千円(同73.5%減)、経常利益は63,532千円(同74.8%減)、当期純利益は49,010千円(同73.3%減)と前事業年度を下回る結果となったものの、収益基盤の転換に取り組んだことが奏功し、黒字を確保いたしました。
なお、当社はビジネスマッチング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ211,471千円減少し、1,197,266千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果使用した資金は、63,141千円(前事業年度は631,046千円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益53,850千円、前受金の減少額37,646千円、役員賞与引当金の減少額26,880千円、賞与引当金の減少額24,120千円、売上債権の増加額63,407千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果使用した資金は、117,494千円(前事業年度は86,806千円の使用)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出116,195千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果使用した資金は、30,836千円(前事業年度は59,511千円の使用)となりました。これは長期借入れによる収入50,000千円の一方で、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)の返済による支出80,836千円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社が行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度における販売実績をサービス別に示すと次のとおりであります。なお、当社はビジネスマッチング事業の単一セグメントであるため、サービス別に記載しております。
サービスの名称 |
当事業年度 (自 2021年8月1日 至 2022年7月31日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
探索・マッチングサービス |
888,074 |
82.0 |
リサーチサービス |
462,305 |
156.4 |
その他サービス |
62,195 |
152.9 |
合計 |
1,412,575 |
99.5 |
(注)1.最近の2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
売上区分 |
前事業年度 (自 2020年8月1日 至 2021年7月31日) |
当事業年度 (自 2021年8月1日 至 2022年7月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
||
株式会社レスターホールディングス |
「Linkers Trading」 |
625,884 |
44.1 |
- |
- |
その他 |
4,640 |
0.3 |
- |
- |
|
販売実績合計 |
630,524 |
44.4 |
- |
- |
2.前事業年度の「Linkers Trading」は、医療用アイソレーションガウン入札案件に係る売上であります。
3.前事業年度の「その他」は、「Linkers Sourcing」及び「Linkers Marketing」に係る売上であります。
4.当事業年度においては、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
なお、当社が財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(固定資産の減損)
当社は、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、管理会計上の区分をもとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定については、事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フロー等の前提条件をもとに実施しておりますが、市況の変動や事業計画策定時に想定していなかった事象などにより、これらの前提条件に変更が生じた場合、減損処理が必要となり、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社は、将来の利益計画に基づいた課税所得を合理的に見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について繰延税金資産を計上することとしております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ、課税所得の見積額が変動した場合、繰延税金資産の計上額が変動し、当社の業績に影響を与える可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症による今後の影響等を含む仮定に関する情報は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当事業年度の売上高は、前事業年度に比べて6,560千円減少し、1,412,575千円(前年同期比0.5%減)となりました。これは主に、「Linkers Research」が好調に推移した一方で、「Linkers for Business」における当初予定していた導入機関への遅延があったことによるものであります。
b.売上原価、売上総利益
当事業年度の売上原価は、前事業年度に比べて158,454千円増加し、473,494千円(前年同期比50.3%増)となりました。これは主に、「Linkers Trading」における仕入高127,324千円等によるものであります。
この結果、売上総利益は、前事業年度に比べて165,014千円減少し、939,081千円(前年同期比14.9%減)となりました。
c.販売費及び一般管理費、営業利益
当事業年度の販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べて16,436千円増加し、873,592千円(前年同期比1.9%増)となりました。これは主に、業容拡大に伴う人件費の増加、及びシステム基盤強化のためのシステム関係費用の増加によるものであります。
この結果、営業利益は前事業年度に比べて181,451千円減少し、65,489千円(前年同期比73.5%減)となりました。
d.営業外損益、経常利益
当事業年度の営業外損益は、前事業年度に比べて7,519千円減少し、1,957千円の損失(前事業年度は5,562千円の利益)となりました。
この結果、経常利益は前事業年度に比べて188,970千円減少し、63,532千円(前年同期比74.8%減)となりました。
e.特別損益、当期純利益
当事業年度の特別損失は、固定資産の減損損失の計上により9,681千円の損失となりました。また、繰越欠損金の解消により繰延税金資産を4,309千円取り崩した結果、当期純利益は前事業年度に比べて134,295千円減少し、49,010千円(前年同期比73.3%減)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の資金需要の主なものは、事業拡大の基盤となる人材拡充の採用費及び人件費、並びにマッチングプラットフォームへのシステム開発に掛かる設備投資となります。運転資金の調達については、事業活動による営業キャッシュ・フローの獲得を前提としたうえで、手元流動性と安定性を目的とし、自己資金で対応する方針ですが、資金繰りが悪化した場合など有事の際のバックアップラインとして取引先金融機関と当座貸越契約を締結しております。なお、2022年7月末における現金及び現金同等物の残高は、1,197,266千円であり、十分な流動性を確保していると考えております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に変化する外部環境に留意しつつ、内部管理体制の強化、優秀な人材の確保、顧客ニーズにマッチしたサービスの提供等を通じて、経営成績に重要な影響を与える要因を分散・低減しながら、適切に対応してまいります。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
⑥ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための指標」に記載のとおり、持続的な事業拡大と企業価値向上を重要な経営目標とし、各経営課題に取り組んでおります。
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