業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、早期にコロナ禍から脱却した中国に続きワクチン普及や大規模な経済対策を実行した欧米先進国では、製造業を中心に経済活動が急速に回復しました。一方、自動車やPC、データサーバーなどの生産需要に対して半導体供給が不足したり、物流停滞や東南アジアでのコロナ感染拡大などが響きサプライチェーン棄損による混乱も生じました。

このような事業環境の中で、当社及び連結子会社(以下「当社グループ」という。)においても、コロナ禍で落ち込んだ実需が急回復したことに加えて、在庫積み増し受注を取り込むことができました。結果として通期の売上高は、過去最高の447億95百万円(前期比31.3%増)となりました。損益については、半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)や太陽光発電パネルなどの製造プロセスで使用される極細線に代表される高機能・独自製品に対する需要の強さが継続したことに加え、ステンレス鋼線の販売数量の回復による粗利増加及び操業度損圧縮の効果が寄与しました。営業利益45億96百万円(同93.1%増)、経常利益45億99百万円(同76.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益31億77百万円(同74.1%増)となり、いずれも過去最高の結果となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高の相殺消去前の金額を記載しております。

 

[日本]

生産面では、新設の製品倉庫が本格稼働したほか、ばね用材の増産投資によって高機能・独自製品の上方弾力を確保しました。また、金属繊維部門では老朽化した製造装置に対するリフレッシュ投資を推し進め、安定した生産基盤の確保と品質向上を図りました。販売面では、ステンレス鋼線部門及び金属繊維部門とも需要の強さが継続しており、売上高は399億58百万円(前期比26.9%増)となりました。また、極細線や超精密ガスフィルター(NASclean®)といった高機能・独自製品の販売も堅調に推移したことから、セグメント利益は41億46百万円(同83.8%増)となりました。

 

[タイ]

電磁SUSや極細線など、高機能・独自製品の生産・販売が堅調に推移したことから、売上高は56億97百万円(前期比59.3%増)、セグメント利益は3億59百万円(同135.7%増)となりました。

 

[中国・韓国]

ステンレス鋼線、化合繊維向けナスロン®フィルターとも需要が回復し、売上高は13億11百万円(前期比39.2%増)、セグメント利益は1億39百万円(同268.1%増)となりました。

 

当連結会計年度末における総資産は512億30百万円となり、前連結会計年度末に比べ51億59百万円増加しました。流動資産は現金及び預金や受取手形及び売掛金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ50億54百万円増加しました。固定資産は有形固定資産が増加したことなどにより、1億5百万円増加しました。

負債は157億77百万円となり、前連結会計年度末に比べ26億80百万円増加しました。流動負債は支払手形及び買掛金や未払法人税等の増加などにより、前連結会計年度末に比べ26億9百万円増加しました。固定負債は環境対策引当金の増加などにより前連結会計年度末に比べ71百万円増加しました。

純資産は利益剰余金が増加したことなどにより354億52百万円となり、前連結会計年度末に比べ24億78百万円増加しました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は149億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ16億28百万円増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは44億73百万円の収入となり、前期に比べ5億8百万円増加しました。これは税金等調整前当期純利益が増加したことなどによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは17億円の支出となり、前期に比べ86百万円減少しました。これは投資有価証券の売却による収入が増加したことなどによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは13億37百万円の支出となり、前期に比べ6億34百万円増加しました。これは配当金の支払額が増加したことなどによるものです。

 

(キャッシュ・フロー指標)

なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりです。

 

 

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

自己資本比率      (%)

   71.5

   71.7

   70.7

   68.2

時価ベースの自己資本比率(%)

   47.4

   41.9

   47.2

   53.3

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

    0.2

    0.3

    0.2

    0.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

   326.1

   379.8

   769.7

   954.3

     ※ 自己資本比率:自己資本/総資産

       時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

             キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

             インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

      (注)1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

          2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数により計算しております。

                  3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フロー

                      を使用しております。

         4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を払っている負債を対象としてお

           ります。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用してお

           ります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

日   本(百万円)

37,714

30.4

タ   イ(百万円)

5,439

51.5

中国・韓国(百万円)

1,194

47.1

合計(百万円)

44,349

33.1

(注)金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)

受注高

(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

日   本

41,362

27.7

6,792

29.5

タ   イ

4,001

100.0

464

32.7

中国・韓国

1,228

50.3

322

71.3

合計

46,592

32.3

7,579

31.1

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

日   本(百万円)

39,958

26.9

タ   イ(百万円)

5,697

59.3

中国・韓国(百万円)

1,311

39.2

 消    去(百万円)

△2,171

14.2

合計(百万円)

44,795

31.3

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

 

大同興業株式会社

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

 

7,912

23.2

10,037

22.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たり重要となる会計方針については、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりです。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりです。

なお、見積り及び判断・評価につきましては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

 

②財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ51億59百万円増加し、512億30百万円となりました。負債については、前連結会計年度末に比べ26億80百万円増加し、157億77百万円となりました。

当連結会計年度は、販売が好調に推移したために売上債権(前連結会計年度末比12億61百万円増)、棚卸資産(同18億82百万円増)、買入債務(同19億76百万円増)とも増加し、運転資金が11億68百万円増加しました。一方、減価償却費以上の設備投資を実施しましたが、政策保有株式の売却もあり固定資産の増加は軽微となりました。純資産は、利益剰余金が前連結会計年度末に比べ21億25百万円増加し、354億52百万円となりました。結果として、増加運転資金を利益剰余金にて賄うとともに、現金及び預金も前連結会計年度末に比べ18億63百万円増加しました。

総資産の増加もあり自己資本比率は68.2%(前期比2.4ポイント減)に低下しましたが、ROA(経常利益/総資産)は9.5%(前期比3.7ポイント増)となりました。

 

b.経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度における売上高は447億95百万円(前期比31.3%増)となり、前連結会計年度に比べ106億86百万円増加しました。

高機能・独自製品が売上高全体に占めるシェアは63.0%(前期比2.5ポイント減)となりましたが、高機能・独自製品の売上高は前期比25.1%増加しました。高機能・独自製品の売上高増加の主な要因は、年度を通じ細径の極細線が好調に推移し、超精密ガスフィルター(NASclean®)も下期から好調な受注が継続したことによるものです。

 

0102010_004.png

(注)タイ精線は12ヵ月分に補正

 

事業部門別の売上状況は、次のとおりとなります。

 

[ステンレス鋼線]

ステンレス鋼線においては、コロナ禍からの受注急回復により2021年上半期には月あたり3,614トンと建材用ビスや自動車用途ばね用材など幅広いアイテムが堅調に推移し、下半期は長引く半導体不足や東南アジアからの部品調達難による自動車生産の回復の遅れはあったもののタイ精線の販売が増加したことから3,552トンと高水準の販売量が継続しました。結果として、通期を通じて3,583トンと過去最高の販売量となりました。また、高強度ばね用材や、太陽光発電パネルや電子部品の製造プロセスで使用されるスクリーン印刷向け極細線など高機能・独自製品の販売が堅調に推移しました。特に、太陽光パネル向けのスクリーン印刷用極細線に対する細径化ニーズが高まりました。さらにLMEニッケル価格が2020年度第1四半期から右肩上がりで推移しており、ウクライナ情勢の影響もあり2022年1~3月平均の価格についてもポンド当たり11.85ドル(10~12月平均に比してポンド当たり2.86ドル上昇)と騰勢を強めました。結果として、通期におけるステンレス鋼線全体の月平均販売数量が3,583トン(前期比23.9%増)となり、売上高371億16百万円(同32.3%増)となりました。

海外現地法人であるTHAI SEISEN CO., LTD. および大同不銹鋼(大連)有限公司についても、ステンレス鋼線の販売数量が持ち直し、売上高は前期比増収となりました。

 

[金属繊維(ナスロン®)]

金属繊維においては、半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)に対する需要の強さは継続しています。その背景には、第5世代移動通信システム(5G)の立ち上がりやデジタルトランスフォーメーション(DX)の普及により、PCやスマートフォン、データセンター向けの半導体の需要が高水準で推移していることが挙げられます。また、経済安全保障上の重要性がクローズアップされ、半導体に対する大規模な投資が世界各地で進められています。さらに、社会のデジタル化に伴いデータ処理の高速化と機器の低発熱化・省電力化が必要となり、カーボンニュートラルに向けた高性能な半導体に対する需要が高まり、超精密ガスフィルター(NASclean®)の販売が伸びました。

ナスロン®フィルターについては、高機能フィルム用途およびポリエステルフィルム用途の海外案件が堅調であったことから、前期比増収となりました。

結果として、通期における売上高が76億79百万円(前期比26.8%増)となりました。

海外現地法人である耐素龍精密濾機(常熟)有限公司については、コロナ禍で落ち込んだ衣料品販売が回復し化合繊維用途の需要が好調に推移し、売上高は前期比増収となりました。

 

(経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度における経常利益は45億99百万円(前連結会計年度比76.7%増)となり、前連結会計年度に比べ19億97百万円増加し、経常利益率は10.3%となり前連結会計年度比2.7ポイント上昇しました。結果として、親会社株主に帰属する当期純利益は31億77百万円(同74.1%増)となりました。

経常利益が前期比増益となった主な要因は、労務費や修繕費などのコスト増加はあったものの、ステンレス鋼線の数量増加による操業度損の圧縮や高機能・独自製品の極細線や超精密ガスフィルター(NASclean®)の販売増加が貢献し、経常利益は前期比19億97百万円の増益となりました。

 

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③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.資金需要

成長投資への支出については、当社グループ中期経営計画の「高機能・独自製品の上方弾力確保・拡販と持続的成長のための生産基盤強化を目指す」を実現するために、主力の製造拠点である国内工場及びタイ、中国の在外子会社における生産効率向上や増産を目的とした設備投資を図ってまいります。また、お客様のニーズに対応した新製品開発と新市場創出に向け研究開発にも注力してまいります。将来の成長に向けた戦略的な資金需要に対しては、財務健全性の維持と資本コストを意識しつつ、積極的に対応していくことを方針としております。

運転資金としては、当社グループ製品製造のための材料及び部品の購入のほか、製造費用や営業費用が必要となります。事業運営上の必要資金に加え、大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧に備えるために、後述の退職給付債務の支払い原資の控除後、月商3ヵ月分の現金及び現金同等物の流動性確保を目途としております。

株主還元への支出については、連結業績や財政状態などを総合的に勘案し、連結配当性向40%程度を目途に配当を行うことを基本としております。

なお、当社グループでは退職一時金制度のみを採用しており、退職給付債務46億72百万円(2022年3月末現在)の支払い原資を、現金及び現金同等物にて実質的に保全しております。

 

c.資金調達

当社グループの運転資金及び投資資金は、原則として営業活動により獲得したキャッシュ・フローにより充当することを基本方針としております。ただし、有事の場合など、必要に応じ銀行借入による資金調達ができるように、取引金融機関との取引関係の維持強化に配慮した財務政策に努めております。

 

 

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