(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。これに伴い、当連結会計年度における売上高においては、前連結会計年度と比較して大きく増加しております。また、営業利益、経常利益においては、前連結会計年度と比較して増加しております。経営成績または受注残高に変動のあった報告セグメントについては、以下の経営成績に関する説明において前連結会計年度比は記載しておりません。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が進展し、段階的に経済活動の制限が緩和された一方で、ロシアのウクライナ侵攻により地政学的リスクが高まり資源価格が高騰したことに加え、急激な円安の進行等もあり、景気の先行きは依然として不透明な状況で推移いたしました。
このような経済環境の中、当社グループを取り巻く市場環境におきましては、主力事業である総合建設コンサルタント事業では、甚大化する自然災害に備える国土強靭化の必要性から公共事業関係費が安定的に推移していることに加え、新型コロナウイルス感染症の影響も軽微であることから、外部環境は堅調に推移しております。
一方で、スポーツ施設運営事業および水族館運営事業のセグメントにおきましては、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、人的交流や移動の制限、インバウンド需要が低下しております。段階的に経済活動は正常化しているものの、従来株よりも感染力の強い変異株が拡大しており、施設利用会員数や水族館の来館者数が回復するまでには一定の時間を要する見通しです。
なお、当社グループでは、新型コロナウイルス感染症による業績への影響は、今後2023年7月期まで続くとの仮定の下、会計上の見積りを行っております。
これらの結果、当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度に比べ5億5千1百万円増加し、202億1百万円となり、負債合計は、前連結会計年度に比べ1億3千8百万円減少し、50億2千2百万円となりました。純資産合計では、前連結会計年度に比べ6億9千万円増加し、151億7千9百万円となりました。
また、当連結会計年度の当社グループの売上高は156億7千2百万円(前連結会計年度は137億7千4百万円)となり、損益面では、営業利益は8億8千8百万円(前連結会計年度は8億2千5百万円の営業利益)、経常利益は12億4千5百万円(前連結会計年度は10億5千7百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純利益は7億7千4百万円(前連結会計年度は7億8千4百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
なお、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益については、法人税額の税額控除の減少により法人税等が増加したため減益となっております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(総合建設コンサルタント事業)
当社グループの主力事業である総合建設コンサルタント事業におきましては、政府による国土強靭化を背景に、防災・減災対策、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた社会インフラの老朽化対策等の対応が求められており、引き続き堅調に推移いたしました。
このような状況の中、国土強靭化に係る業務を重点分野と位置付けており、土砂・洪水氾濫解析等の流域治水対策や砂防ダム、電線共同溝・無電柱化業務等の測量・調査・設計業務に注力しております。
当連結会計年度の完成業務高に占める主要な業務分野別受注では、強みとする道路土木設計が引き続き堅調に推移しており、UAVやラジコンボートを使用した3次元測量業務や人材不足を補う行政・発注者支援業務が増加しております。
一方で、前連結会計年度に大型案件や複数年業務を受注した反動で、河川・砂防基礎調査業務や橋梁点検業務が減少しております。国等から受注する大型業務案件は、1~2年毎に受注量が増減する傾向にあり、当連結会計年度は前連結会計年度比で大型業務案件が減少することとなりましたが、繰越業務は確保しており次期は改善する見通しとなっております。
また、発注者別の受注割合では、上記要因により国等の受注量が減少した一方、県からの受注量は増加し、国等・県・市町村でそれぞれ概ね3割程度の構成割合となりました。地域別では、事業基盤である中国地方ならびに九州地方の売上高が上下水道、廃棄物関連のDB(デザインビルド)業務や航空レーザ測量業務等を要因として増加した一方で、関西地方および四国地方では、河川防災分野をはじめとする技術部門の人手不足等の影響により生産能力が一部制限されたため、減少することとなりました。
今後の展開方針としては、国土強靭化関連業務に加えて、各自治体が都市計画や地域整備事業を行う際に防災の要素を取り入れたいという要望の増加に対して、インフラ整備による地域防災の推進を念頭に、自然災害発生時の災害復旧支援業務で培った実績と道路整備等の計画策定に関する知見を活かして、災害に強い地域の発展を支援してまいります。
当該セグメントにおける新型コロナウイルス感染症の影響は、発注が遅延する傾向にあるものの、受注量は堅調に推移しており、発注者とのWEB会議システムおよび遠隔臨場システムの活用や、リモート環境の整備により限定的となっております。今後も生産工程の効率化に向けて、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を行ってまいります。
また、研究開発においては、新たな事業展開や競合他社との差別化に向けて、AI(人工知能)を活用して橋梁点検を支援する技術の開発や流域治水対策として土砂・洪水氾濫解析モデルの構築、洪水浸水シナリオ体験型避難支援アプリの開発・地域での社会実験に取組んでおります。
これらの結果、当連結会計年度の総合建設コンサルタント事業の売上高は128億9千9百万円(前連結会計年度は125億1千7百万円)となりました。
損益面におきましては、営業利益は10億1千7百万円(前連結会計年度は10億3百万円の営業利益)となりました。
なお、受注高は131億4千8百万円(前連結会計年度比2.3%増)、受注残高は73億5千4百万円となりました。
(スポーツ施設運営事業)
スポーツ施設運営事業におきましては、岡山県および広島県を中心に総合フィットネスジムのエイブルを2店舗、24時間運営フィットネスジムのW-FIT24をフランチャイズ運営も含め7店舗、岡山市御津と総社市のスポーツパークの指定管理事業を展開しております。
スポーツ施設運営事業における市場環境としては、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進展する一方で、変異株の流行や若年層での感染が拡大し、依然として不透明な状況が継続しております。また、新型コロナウイルス感染症の流行が長期化したことで、運動機能の低下や健康二次被害が懸念されており、運動習慣の改善や健康促進サービスの提供が求められております。
このような状況の中、当連結会計年度における会員数は、6,439名(2021年7月期末対比14.7%増)、休会者数は152名(2021年7月期末対比44.3%減)となり、会員数および休会者数は改善傾向にありますが、新型コロナウイルス感染症が拡大する前の水準までには至っておらず、引き続き深刻な状況が継続する見通しです。
なお、当連結会計年度においては、2022年1月に島根県浜田市にW-FIT24浜田店を新規出店し、2022年4月からは岡山県総社市スポーツセンターの指定管理事業を開始いたしました。これにより、全施設の総会員数の増加に寄与しております。
業態別では、主要大型店の総合フィットネス事業の売上高は前連結会計年度比4.7%減収となった一方、24時間運営フィットネス事業は前連結会計年度比3.9%、指定管理事業等は前連結会計年度比24.8%とそれぞれ増収しております。
今後の事業展開としては、新型コロナウイルス感染症を理由とする退会者および休会者のフォローを行うとともに、広告宣伝の強化と体験プログラムの充実により新規入会者の獲得に努めてまいります。
これらの結果、当連結会計年度のスポーツ施設運営事業の売上高は、W-FIT24浜田店の新規出店や指定管理事業が増収に寄与した一方、新型コロナウイルス感染症の長期化が影響し、6億8百万円(前連結会計年度比1.5%増)に留まりました。
損益面におきましては、新規出店に伴う先行投資費用や資源価格の高騰等による燃料費等の増加により、営業損失は2千6百万円(前連結会計年度は3千1百万円の営業損失)となりました。
当連結会計年度の売上高における施設種別ごとの状況は、以下のとおりです。
(百万円)
施設種別 |
前期 |
当期 |
増減 |
主要大型店舗 |
397 |
378 |
△18 |
W-FIT24 |
107 |
111 |
4 |
その他 |
94 |
118 |
23 |
合計 |
599 |
608 |
8 |
(水族館運営事業)
水族館運営事業におきましては、香川県の四国水族館および兵庫県のアトアの主要2施設を中心として水族館に係る水槽設備の設計・製作、生物調達業務および管理・運営等の総合マネジメント業務を行っております。
水族館運営事業における市場環境としては、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、海外および県外からの観光客や団体客が減少しております。また、資源価格や生物の飼育飼料の高騰により、入場料の値上げを余儀なくされる施設もあり、依然として不透明な状況が継続しております。
このような状況の中、四国水族館およびアトアでは、期間限定の企画展示や広告宣伝の強化を行うも入館者数は計画目標数値を下回っております。
当連結会計年度におきましては、新規事業として2021年10月に兵庫県にアトアを開業し、2022年4月に静岡県の松坂屋静岡店内にスマートアクアリウム静岡を出店いたしました。アトアは、舞台美術やデジタルアートの演出による、都市と共存する次世代エンターテイメント施設として運営を行っております。また、スマートアクアリウム静岡は、44基の小規模な水槽に約100種の生物を展示し、暮らしに寄り添うスタイリッシュな水族館をコンセプトとしております。
今後の事業展開としては、スポーツ施設運営事業と同様に感染防止対策を徹底しつつ、施設利便性の向上や新たな展示企画等により付加価値の向上に努めてまいります。
これらの結果、当連結会計年度の水族館運営事業の売上高は、アトアの開業に加え、アトアおよびスマートアクアリウム静岡の開業コンサルティング業務が寄与し、18億5千7百万円(前連結会計年度は3億2千5百万円)と大幅に増収いたしました。
損益面におきましては、営業利益は9千3百万円(前連結会計年度は1千3百万円の営業利益)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1億1百万円増加し、81億1千3百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は3億9千7百万円(前連結会計年度比2億1千6百万円の収入減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益12億2千8百万円や、減価償却費3億4千万円を計上した一方で、契約資産の増加額7億2千1百万円や四国水族館等に係る匿名組合投資損益2億2千1百万円、未成業務受入金の減少額7千7百万円を計上したためです。
また、前連結会計年度比で営業活動によるキャッシュ・フローが減少した要因は、収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首より適用したことにより契約資産が7億2千1百万円増加した一方で、業務完成納品が減少したことにより売上債権の増加額が3億7百万円減少したほか、未成業務受入金の減少額が2億3千万円、四国水族館等に係る匿名組合投資損益が1億4千7百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は1千2百万円(前連結会計年度比7億5千2百万円の支出減少)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出8億1千6百万円、有形固定資産の取得による支出2億7千万円、出資金の分配による収入2億3千万円等によるものであります。
また、前連結会計年度比で投資活動によるキャッシュ・フローが増加した要因は、余剰資金の運用等を目的とした投資有価証券の取得による支出が6億7千9百万円、その他に含めております出資金の払込による支出が2億3千3百万円それぞれ減少した一方で、投資有価証券の売却による収入が2億5千8百万円、有形固定資産の売却による収入が2億5千2百万円それぞれ減少したほか、四国水族館等に係る匿名組合出資金の分配による収入が2億3千万円増加したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は2億8千3百万円(前連結会計年度比2億7千1百万円の支出減少)となりました。これは主に、配当金の支払額2億3千5百万円等によるものであります。
また、前連結会計年度比で財務活動によるキャッシュ・フローが増加した要因は、前連結会計年度において資本効率の向上および経営環境の変化に応じた機動的な資本政策の遂行を目的として、取締役会決議により、東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)を利用した自己株式の取得による支出2億7千4百万円を実施したことによるものであります。
(フリー・キャッシュ・フロー)
当社は、フリー・キャッシュ・フローを営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計として定義しております。
当社の経営者は、当該指標を安定した事業活動および健全な財務体質を維持し、企業価値向上に資する成長投資と株主還元を行うために有用な指標と考えており、以下の表のとおりフリー・キャッシュ・フローを算出しております。
(単位:千円) |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
614,338 |
397,562 |
△216,776 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△764,690 |
△12,511 |
752,178 |
フリー・キャッシュ・フロー |
△150,351 |
385,050 |
535,402 |
当連結会計年度においては、フリー・キャッシュ・フローが3億8千5百万円(前連結会計年度比5億3千5百万円の増加)となりました。これは、営業活動によるキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ2億1千6百万円減少した一方で、投資有価証券の取得による支出の減少や出資金の分配による収入などで投資活動によるキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ7億5千2百万円増加したことによるものです。
当社グループでは、引き続き事業規模に比し安定した資金を確保し、無借金経営を継続することで健全な財務体質を維持してまいります。
③資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.資金調達の基本方針
当社の経営者は、当連結会計年度の自己資本比率は75.1%であり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は81億1千3百万円となっており、リスク耐性および財務体質の健全性は引き続き高い水準にあると認識しております。当該状況に鑑み、当面は事業の運転資金および設備投資や企業価値向上に資する利益成長が見込める分野への投資は、フリー・キャッシュ・フローの創出を基本とし、手元流動性を確保しつつ、自己資金の範囲内で進めることを基本方針としております。
100%子会社については原則的には外部からの資金調達を行わず、持株会社が管理し資金効率化、流動性の確保を図っております。
b.資本の財源
当社は、事業活動を遂行するための適切な資金確保および健全な財務体質を維持し、グループ内では資金の効率化を目指し、企業価値向上に資する利益成長が見込める分野への投資の継続と株主還元のため、資金調達基本方針に従い会計年度に発生するフリー・キャッシュ・フローの創出を基本としております。その創出されたフリー・キャッシュ・フローを主な財源として、成長投資や株主還元を行ってまいります。
(1)成長投資
新規事業や既存事業での競争力強化のための技術力向上および新規技術開発のための研究開発投資を行い、将来の成長を見据えた人材の確保・育成・活用のための投資を積極的に行ってまいります。
(2)株主還元
企業体質の強化と将来の事業展開に備えるための内部留保に意を用いつつ、当社グループの業績に応じた利益配分を安定かつ継続的に行ってまいります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、総合建設コンサルタント事業の受注業務遂行のための製造原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。営業費用の主なものは従業員給料および賞与、法定福利費などの人件費であります。投資を目的とした資金需要は、主に総合建設コンサルタント事業における3次元計測機器等の設備投資および水族館運営事業への中長期的な成長に向けた出資によるものです。
c.資金の流動性
当社は無借金経営を継続しており、フリー・キャッシュ・フローおよび内部留保により流動性を維持しておりますが、主要取引銀行との間で当座貸越契約を締結することにより手元流動性も確保しております。
④受注及び販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
総合建設コンサルタント事業 |
13,148,312 |
102.3 |
7,354,041 |
- |
報告セグメント計 |
13,148,312 |
102.3 |
7,354,041 |
- |
その他 |
307,665 |
92.7 |
- |
- |
合計 |
13,455,977 |
102.0 |
7,354,041 |
- |
(注)1.スポーツ施設運営事業および水族館運営事業の受注実績は、受注生産ではないため省略しております。
2.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しているため、受注残高に関しては前年同期比の記載はしておりません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年8月1日 至 2022年7月31日) |
前年同期比(%) |
総合建設コンサルタント事業(千円) |
12,899,343 |
- |
スポーツ施設運営事業(千円) |
608,441 |
- |
水族館運営事業(千円) |
1,857,115 |
- |
報告セグメント計(千円) |
15,364,901 |
- |
その他(千円) |
307,665 |
- |
合計(千円) |
15,672,566 |
- |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しているため、前年同期比は記載しておりません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年8月1日 至 2021年7月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年8月1日 至 2022年7月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
国土交通省 |
2,532,833 |
18.39 |
2,397,359 |
15.30 |
(注)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
当社グループの連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積りの判断は、過去の実績やその時点での入手可能な情報に基づいた合理的と考えられるさまざまな要因を考慮したうえで行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
特に、次の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う会計上の見積りに与える影響は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。
a.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産を回収可能と考えられる金額まで減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を検討するにあたっては、将来の課税所得見込みおよびタックスプランニングを検討しますが、繰延税金資産の全部または一部を将来回収できないと判断した場合、繰延税金資産を取崩し、費用として計上いたします。
b.固定資産の減損会計
当社グループは、資産を用途により事業用資産、賃貸用資産および遊休資産に分類しております。また、管理会計上の区分を基準に、事業用資産は各社に属する支社・支店等の独立した会計単位、賃貸用資産および遊休資産は物件単位にグルーピングしております。
減損の対象となった固定資産は、資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った差額を減損損失としております。回収可能価額は、資産グループの時価から処分費用見込額を控除した正味売却価額と割引後将来キャッシュ・フローとして算定される使用価値のいずれか大きい方を採用しております。
c.投資有価証券の評価
その他有価証券で市場価格のない株式等以外のものについては、期末日の時価が取得原価に比べて著しく下落したものを減損の対象としております。
今後の株式相場が変動した場合には、投資有価証券評価損の計上が必要となる可能性があります。
d.総合建設コンサルタント事業の請負業務に係る実行予算の見積り
総合建設コンサルタント事業においては、測量・調査・設計等の請負業務に関する収益の計上に際して、一定の期間にわたり履行義務が充足される契約については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、一定の期間にわたり収益を認識しております。当該収益認識に係る進捗度の見積り方法は、実行予算に対する実際原価の割合(インプット法)で算出しております。実行予算の見積りは、対象となる請負業務ごとに内容や工期が異なるため個別性が強く、また、進行途上において当初想定していなかった事象の発生により業務内容の変更が行われる等の特徴があるため、今後、想定していなかった状況の変化等により実行予算の見積りの見直しが改めて必要となった場合は、売上高および売上原価に影響を与える可能性があります。
e.受注損失引当金の計上額
受注契約に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における受注のうち、発生する原価の見積額が受注額を超過する可能性が高いものについて、損失見込額を計上しております。
損失見込額の見積りは、受注契約ごとに策定した実行予算に基づき算定しております。また実行予算は、専門的な知識と経験を有する業務担当者が、個々の請負業務の特有な状況を踏まえて作業工数や外注費等を見積り、業務担当の管理者が、実行予算表を査閲、承認することで決定しております。業務の進行途上において業務内容の変更等が行われる場合には適宜実行予算の見直しを行っておりますが、今後想定していなかった状況の変化等により実行予算の見積りの見直しが改めて必要となった場合は、引当金の金額が増減する可能性があります。
②財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度に比べ5億5千1百万円増加し、202億1百万円となりました。
流動資産については、会計方針の変更(収益認識に関する会計基準等の適用)により、「未成業務支出金」が20億1千6百万円減少し、「契約資産」が23億6百万円増加したほか、「現金及び預金」が8千8百万円、「金銭の信託」が2億円それぞれ減少し、「有価証券」が3億9千9百万円増加しております。結果として、流動資産合計では前連結会計年度に比べ5億4百万円増加となりました。
固定資産については、「有形固定資産」が2千3百万円増加しております。これは、社内環境向上のための社内設備更新や、堅調に推移する3次元計測の受注に対応するため、車両積載用測量機器等の購入によるものであります。
投資その他の資産については、「投資有価証券」が売却等により9千1百万円減少した一方、水族館運営事業に係るスマートアクアリウム事業に対する出資等により「その他」に含まれております「出資金」が4千9百万円、利便性の向上を目的とした事務所移転等により「その他」に含まれております「敷金」が2千9百万円それぞれ増加しております。結果として、固定資産合計では前連結会計年度に比べ4千7百万円の増加となりました。
(負債の部)
当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度に比べ1億3千8百万円減少し、50億2千2百万円となりました。
流動負債については、仕入高の増加に伴い「業務未払金」が1億8千9百万円、増益等に伴う課税所得の増加により「未払法人税等」が2億3千2百万円それぞれ増加しております。「未払法人税等」については、当連結会計年度では前連結会計年度に発生した保有不動産の売却による減損損失の減算認容や、連結子会社の税額控除に伴う税金費用の減少が無いため、増益額以上に「未払法人税等」が増加しております。一方、会計方針の変更(収益認識に関する会計基準等の適用)により、同一業務における「契約資産」と「未成業務受入金」の相殺を行ったため、「未成業務受入金」が6億7千5百万円減少しております。結果として、流動負債合計では前連結会計年度に比べ1億6千5百万円減少しております。
固定負債については、スポーツ施設運営事業において新店舗出店等により「リース債務」が7百万円増加したほか、投資有価証券の時価評価額の増加により「繰延税金負債」が1千3百万円増加しております。結果として、固定負債合計では前連結会計年度に比べ2千6百万円増加しております。
(純資産の部)
当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度に比べ6億9千万円増加し、151億7千9百万円となりました。これは、「利益剰余金」が剰余金の配当により2億3千5百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により7億7千4百万円増加したことに加え、収益認識会計基準等の適用により「利益剰余金」の期首残高に調整額1億2千1百万円を加算したことによるものです。この結果、当連結会計年度末における自己資本比率は前連結会計年度末に比べ1.4ポイント上昇し、75.1%となりました。
③経営成績の分析
当社グループの経営成績は、当連結会計年度において売上高は156億7千2百万円(前連結会計年度は137億7千4百万円)、営業利益は8億8千8百万円(前連結会計年度は8億2千5百万円の営業利益)、経常利益は12億4千5百万円(前連結会計年度は10億5千7百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純利益は7億7千4百万円(前連結会計年度は7億8千4百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症の長期化や資源価格の高騰により、スポーツ施設運営事業や水族館運営事業に影響が生じておりますが、当社グループの主力事業である総合建設コンサルタント事業においては、一部の業務において契約工期の変更等が発生しましたが、その影響は軽微なものであり、受注量・業務量ともに堅調に推移しております。
総合建設コンサルタント事業において、設計業務分野では、前連結会計年度まで全国的に学校の耐震診断関連事業の終了により売上に影響が生じましたが一方で、強みである道路土木設計部門の受注が堅調に推移したことや上水道部門で大型のデザインビルドによる浄水場設計業務などが売上に寄与いたしました。調査業務分野においては、復興支援関連業務が前連結会計年度までで終了しましたが、全国的に大規模盛土造成地の第2次スクリーニングが開始され、官公庁からの発注が増加いたしました。測量業務分野においては、全国的にUAVやラジコンボートによる3次元データを活用した測量業務の受注が増加したことや、航空測量部門において大型案件を受注したことが売上に寄与いたしました。
地域別では、設計業務において、関西地方と四国地方で大型案件業務の減少や人手不足が影響し減収となったものの、全ての分野において事業基盤である中国地方で安定した受注を確保できたことや、九州地方で3次元測量業務等が増加したこと等が主な増収要因であります。
スポーツ施設運営事業においては、24時間運営のフィットネスジムの新規出店や指定管理事業が増収に寄与し、水族館運営事業においては、アトアの開業に加え、アトアおよびスマートアクアリウム静岡の開業コンサルティング業務が売上に寄与し、大幅な増収となりました。
これらの結果、売上高は前連結会計年度に比べ18億9千8百万円増加し、156億7千2百万円(前連結会計年度は137億7千4百万円)となりました。
なお、当社グループの主力事業である総合建設コンサルタント事業の売上高の定量分析は以下のとおりです。
(単位:千円)
分野別・地域別売上高 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増 減 |
|
設計業務 (注)2 |
中国地方 |
4,873,145 |
4,966,980 |
- |
関西地方 |
3,433,131 |
3,320,243 |
- |
|
四国地方 |
1,000,959 |
955,922 |
- |
|
九州地方 |
775,446 |
860,244 |
- |
|
その他 |
292,538 |
256,476 |
- |
|
小 計 |
10,375,219 |
10,359,865 |
- |
|
調査業務 (注)2 |
中国地方 |
597,793 |
692,199 |
- |
関西地方 |
308,459 |
410,995 |
- |
|
四国地方 |
164,402 |
105,464 |
- |
|
九州地方 |
78,492 |
116,596 |
- |
|
その他 |
162,834 |
25,482 |
- |
|
小 計 |
1,311,980 |
1,350,736 |
- |
|
測量業務 (注)2 |
中国地方 |
343,992 |
434,355 |
- |
関西地方 |
142,581 |
200,264 |
- |
|
四国地方 |
3,880 |
21,356 |
- |
|
九州地方 |
58,735 |
240,490 |
- |
|
その他 |
281,425 |
292,276 |
- |
|
小 計 |
830,613 |
1,188,741 |
- |
|
合 計(注)1 |
12,517,812 |
12,899,343 |
- |
|
全 体 |
中国地方 |
5,814,930 |
6,093,534 |
- |
関西地方 |
3,884,171 |
3,931,502 |
- |
|
四国地方 |
1,169,241 |
1,082,742 |
- |
|
九州地方 |
912,673 |
1,217,330 |
- |
|
その他 |
736,797 |
574,234 |
- |
(注)1.当社グループ間取引は消去しております。
2.設計業務:河川、港湾、電力土木、道路、上水道、下水道、農業土木、森林土木、造園、都市計画、
鋼構造コンクリート、トンネル、施工管理、建設機械、廃棄物等
調査業務:地質、土質、建設環境、補償コンサルタント等
測量業務:一般測量、航空測量等
3.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から
適用しているため、前連結会計年度と比較した売上高の増減額は記載しておりません。
(単位:千円)
発注機関別の売上高 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増 減 |
国(国土交通省ほか) |
3,337,674 |
3,080,267 |
- |
都道府県 |
3,298,717 |
3,804,043 |
- |
市区町村 |
4,562,664 |
4,243,437 |
- |
その他 |
1,318,757 |
1,771,595 |
- |
合 計(注)1 |
12,517,812 |
12,899,343 |
- |
(注)1.当社グループ間取引は消去しております。
2.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から
適用しているため、前連結会計年度と比較した売上高の増減額は記載しておりません。
(営業利益)
売上原価においては、全体の売上原価率は前連結会計年度に比べ2.3ポイント増加し75.2%となりました。その主な要因としては、水族館運営事業における「アトア」の定期賃貸借契約に基づく変動賃料契約を主因とする不動産賃借料の増加によるものであります。「アトア」については、「アトア」で計上される売上から費用を控除した金額に対し、一定割合を乗じた金額を家賃として支払う契約となっているため、売上原価率および粗利益率については一定水準に留まることになります。
販売費及び一般管理費においては、前連結会計年度に比べ8千2百万円の増加となりました。これは、水族館運営事業における「アトア」の開業により各メディアにてCM等による広告宣伝活動を行ったことが主な要因であります。
これらの結果、営業利益は8億8千8百万円(前連結会計年度は8億2千5百万円の営業利益)となり、売上高に対する営業利益率は前連結会計年度から0.3ポイント減少し5.7%となりました。
(経常利益)
営業外収益は、四国水族館等の匿名組合出資に係る「匿名組合投資利益」を2億2千2百万円計上したことにより、3億7千4百万円(前連結会計年度比54.7%増)となりました。
営業外費用は、「投資有価証券売却損」が4百万円増加したことにより1千6百万円(前連結会計年度比53.5%増)となりました。
これらの結果、経常利益は12億4千5百万円(前連結会計年度は10億5千7百万円の経常利益)となり、売上高に対する経常利益率は前連結会計年度から0.2ポイント上昇し7.9%となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別損失においては、スポーツ施設運営事業において保有資産の減損を行ったことにより、「減損損失」を1千7百万円計上しております。
また税金費用については9千1百万円増加しており、当連結会計年度では前連結会計年度に発生した保有不動産の売却による減損損失の減算認容や、連結子会社の税額控除に伴う税金費用の減少が無いため、税金等調整前当期純利益の増益額以上に税金費用が増加しております。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は7億7千4百万円(前連結会計年度は7億8千4百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
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