課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、「イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える」という使命の下、お客様に最適なソリューションを提供し、新たなビジネス価値を創造するとともに、多様化への取り組みも推進してまいりました。これからも持続的で健全な成長の実現を目指すために、以下の施策を重点的に取り組んでいく所存であります。

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

  ① 従来ビジネスの拡大

a 既存受託案件の継続的品質向上

CRM事業において当社グループが考える品質とは、コンタクトセンターにおける応対品質を指すだけではなく、カスタマーの満足度向上等、クライアント企業にとっての品質管理指標(顧客満足度等のサービス提供指標)の達成、及び当社グループにとっての生産性指標(時間あたりの受注金額とコストのバランス等)の達成を高いレベルで両立することができた状態であると認識しております。それらを実現するため当社グループは、当社標準のOP品質マネジメント基準(OPM)を設け、センター単位ではなく受託業務単位での品質をきめ細かく徹底的に向上させる体制を構築し、継続的な品質改善体制の強化を進めてまいります。これにより、クライアント企業に対し、高品質なサービスを継続的に提供することを通じ、そこから派生する新たな案件を獲得することができ、それが安定成長のための基盤になるものと考えております。

b 新規クライアント企業の積極的獲得

新規のクライアント企業を獲得し、当社グループの営業基盤を増強していくことは、当社グループの成長のために必要不可欠な、最重要課題の一つであります。当社グループは、これまでの新規クライアント企業獲得営業体制に加え、伊藤忠商事グループの国内外の広範な企業ネットワークを活用することにより、従来、アプローチをすることができなかった企業層へのアプローチが可能となることで、新たな売上機会を創出してまいります。また、カスタマーに最高の顧客体験を提供することを意図した高付加価値型CRMオペレーション手法の導入や、カスタマー接点を起点に、クライアント企業のバリューチェーンを活性化するBPOサービスの展開等、CRM事業を革新、発展させて提供することを通じ、新規クライアント企業の開拓に拍車をかける戦略も推進してまいります。

c 伊藤忠商事グループ及び凸版印刷株式会社との連携

伊藤忠商事グループ及びその取引先企業等に対し、同社のネットワークを活用してアプローチを行い、事業の拡張を図ってまいります。加えて、単に面的に事業領域の拡張を図るだけでなく、当社グループと伊藤忠商事グループとの協業によって、クライアント企業とカスタマーの接点であるコンタクトセンター事業の新たな価値を創出してまいります。

また、媒体製作やバックオフィス業務に強みを持つ凸版印刷株式会社(以下、「凸版印刷㈱」)とコンタクトセンター業務に強みを持つ当社グループの各々のソリューションや顧客基盤を活用することにより、幅広い業種の企業向けに新たなサービスを提供するとともに、AI等を用いた高度なBPOビジネスを推進してまいります。

d CRMインフラの提供

当社グループは、従来より積極的なIT投資を行ってまいりました。国内のソリューションセンターをクラウドで連携した音声系プラットフォームであるBellCloud+®や、同プラットフォームを応用し在宅コンタクトセンターサービスを可能にするBell@Home、また、お客様との対話音声をテキスト化して蓄積しリアルタイムに資産化する音声認識システムを提供しております。このような実績豊富なCRMインフラを、今後は、当社グループが受託した案件に活用する以外に、クライアント企業にCRMインフラとして提供する取り組みを強化してまいります。CRMインフラとオペレーションのノウハウを、当社グループから一括で提供することにより、クライアント企業は、初期コストを抑えたうえで高品質なコンタクトセンターを開設することが可能となります。

 

  ② 新領域での拡大

a 新技術への取り組み

将来の高効率なオペレーションを実現するため、AIを活用した顧客対話支援のモデルやデータサイエンスを活用した顧客セグメントの効率化等、先進テクノロジー領域での取り組みに注力してまいります。

b 高品質なグローバル基準のオペレーションの提供

グローバルに事業を展開する企業においては、世界各国において高いレベルでの均質的なサービスを展開するため、コンタクトセンター運営においても世界共通の多岐にわたる厳格な指標が設定されており、高水準のオペレーションが要求されております。

当社グループでは、こうしたグローバル企業の要求する高水準のオペレーションを実行するため、欧米の最先端コンタクトセンター事業会社が提供する世界基準のカスタマーサポート業務を、日本でも同様に提供できる体制を構築し、既に国内のグローバル企業において多数の実績を上げております。今後も、日本で事業展開をする外資系企業のみならず、日本企業に対してもこの高品質なコンタクトセンターサービスの提供を加速してまいります。

c ASEAN諸国をはじめとする海外での事業展開

新たな事業機会の創出を目的として、伊藤忠商事グループや凸版印刷㈱の海外ネットワークを活用し、ASEAN諸国をターゲットに見据えたコンタクトセンターの海外事業展開を目指します。当社グループが30余年で培ったコンタクトセンターの運営ノウハウを、各国の事情に合わせてカスタマイズし、高品質の現地サービスを提供してまいります。

  ③ 社員3万人の戦力最大化

a ワークスタイル・イノベーション

コロナ禍以降、テレワークが当たり前の働き方になりつつある中で、どのように組織のエンゲージメントを高め、パフォーマンスを向上させていくかが課題となってきております。当社グループでは、コロナ禍以前より総務省から「テレワーク先駆者百選」に認定される等、在宅勤務やオンライン会議を積極的に活用してまいりました。ニューノーマルの時代において、クライアント企業の信頼や事業基盤を維持・拡大し、成長し続けるために、多様な働き方の更なる拡大が不可欠と考え、「在宅コンタクトセンター」の大幅増設を進めております。時間や場所の制約を越え、従業員が安心して働ける職場環境とコミュニケーションの実現により、新たな雇用を創出、多様な人材の活躍を支援し、現場力をさらに高めてまいります。

b 品質と対応スキルの高度化

顧客ニーズの多様化、先端テクノロジーの導入により、コンタクトセンター業務は複雑化しております。このような環境下においてもクライアント企業に対し高品質なサービスを継続的に提供するために、当社グループでは専門人材の獲得・育成及び教育体系の整備により、社員3万人の人材高度化の取り組みを続けております。年間5億件超の応対実績と知見を活かしてコンサルティング機能を一層強化・拡大し、対応スキルの高度化を図ることで、高付加価値を提供してまいります。

c ダイバーシティ推進

当社グループは、企業理念に基づきダイバーシティ活動を推進しております。具体的には、各ポストにおける女性比率拡大や上級管理職への女性登用を目的とした育成プログラムの構築・実施、育児や介護・ワークライフバランス向上に配慮・理解のある上司(イクボス)の発掘・育成、男性の育児休暇取得促進、LGBTQ等の性的少数者(以下、「LGBTQ」)のコミュニティ活動支援、障がい者の雇用促進等を実行しております。このように、従業員の多様性を尊重し、あらゆる属性の人材が生き生きと働くことができる環境の整備、柔軟な人事制度の構築に引き続き注力してまいります。

 

④ 財務上の課題

 当社グループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結し多額の借入れを行っており、2022年2月期の有利子負債依存度は51.7%となっております。市場金利が上昇した場合及び財務制限条項に抵触した場合には、当社グループの存続に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、2022年2月末現在、連結財政状態計算書にのれんを949億円計上しており、総資産の53.2%を占めています。事業収益性が低下した場合等にはのれんの減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 財務上の課題につきましては、「従来ビジネスの拡大」、「新領域での拡大」及び「社員3万人の戦力最大化」の各重点施策を実現することが必要と考えております。

 「2.事業等のリスク」及び「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をあわせてご参照ください。

 

(3)経営上の目標とする経営指標

2020年度から2022年度の中期経営計画において、以下の通り目標を設定しております。

 


 

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