業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症対策と経済活動の両立が進展したことから高めの成長率でのスタートとなりましたが、2022年に入り、1月にはオミクロン変異株の感染急拡大、2月以降はロシアによるウクライナ侵攻により景気回復のペースは鈍化いたしました。期後半以降になると、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や経済制裁と報復の応酬によって、歴史的な高インフレ、エネルギー供給不安、サプライチェーンの混乱、急激な金融引き締めへの懸念などが絡み合い、景気見通しの不透明感が強まりを見せるようになりました。こうした中、米国においては、住宅投資や設備投資はマイナスに転じたものの、雇用環境は堅調であり、個人消費も底堅く推移しております。欧州経済は、ウクライナ侵攻がさらに長期化すると予想される中で、エネルギー供給への懸念が、企業の生産活動や家計の消費行動に重くのしかかっています。中国経済は、政府のゼロコロナ政策が経済成長の妨げとなっており、上海や深圳での都市封鎖を受け、物流の停滞、生産や消費に陰りがみられるようになってきました。一方、我が国では、個人消費の増加などにより景気は回復傾向にあるとみられているものの、資源高や日米金利差拡大を背景にした円安の進展により、食料やエネルギーを中心に輸入物価が高騰しており、外部環境が大きく悪化する中、経済活動の正常化が進むのかどうか予断を許さない状況となってきております。

このような経済環境の中、納期の長期化を見越した先行受注により受注は堅調に推移いたしましたが、一部の部材において長納期が常態化していることや物流の混乱が収まっていないことから、売上の遅延傾向が継続しております。

当連結会計年度の受注高は750億3千5百万円前期比7.6%の増加)、売上高は669億1千6百万円前期比10.1%の増加)となりました。受注残高は499億7千6百万円前期比34.4%の増加)となりました。

利益面におきましては、物流コストの上昇や欧州を中心に仕入価格の急騰に販売価格への転嫁が追い付かなかったことなどから、営業利益は55億1千3百万円前期比13.5%の減少)、経常利益は57億7千3百万円前期比12.2%の減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は40億7百万円前期比14.7%の減少)となりました。

 

   セグメントごとの業績は次のとおりであります。

 

<粉体関連事業>

当事業は、粉砕・分級装置、混合・乾燥装置及び日本市場においての大気汚染防止装置、製品捕集用集塵装置、精密空調制御装置等の製造販売、複合ナノ粒子を中心とした新素材開発とその商品化並びに微粉体受託加工サービスを提供するホソカワミクロングループの主力分野であります。

急速に進む電動化への対応のため旺盛な投資が続く二次電池用を中心とした電子材料向け、地政学リスク回避のため、製造拠点の回帰の流れがある医薬原体向けやコロナ禍を契機としたバイオ医薬系設備用の培養培地を中心とした医薬向け、さらにはSDGsで注目されるプロテインシフトや昆虫食などの食品向けなどが伸びたほか、ポリエステルフィルムのリサイクル用の粉砕システムも堅調に推移いたしました。

これらの結果、当連結会計年度の受注高は571億3千4百万円(前期比16.8%の増加)、受注残高は357億5千7百万円(前期比41.3%の増加)となり、売上高は494億6千1百万円(前期比8.4%の増加)となりましたが、受注後に想定以上の原材料価格高騰の影響を受けた案件もあったことから、セグメント利益は49億8千6百万円(前期比16.8%の減少)となりました。

 

 

<プラスチック薄膜関連事業>

当事業は、単層から多層の各種プラスチック高機能フィルム製造装置の開発・製造・販売を行っております。

 主力の米国向けはe-コマースが引き続き増加傾向にあることから、パッキング用の多層フィルム製造装置が好調であった他、欧州ではリサイクルしやすいポリエチレンのみを使用する多層フィルム製造装置や生分解性プラスチックを原料とする製造装置など、環境を意識した受注が増加傾向にありました。

これらの結果、当連結会計年度の受注高は179億1百万円(前期比14.0%の減少)と反動減となりましたが、受注残高は142億1千8百万円(前期比19.7%の増加)となり、売上高は174億5千5百万円(前期比15.5%の増加)となりました。セグメント利益は19億1千7百万円(前期比15.2%の増加)となりました。

 

② 財政状態

(1) 資産の状況

当連結会計年度の資産は、前連結会計年度に比べ、129億2千6百万円増加し、860億4千6百万円となりました。これは、主に現金及び預金が56億7千3百万円、有価証券が19億9千9百万円、機械装置及び運搬具が17億2千9百万円増加したことによるものであります。

(2) 負債の状況

当連結会計年度の負債は、前連結会計年度に比べ、51億7百万円増加し、322億8千7百万円となりました。これは、受注増加を主な要因として契約負債が24億2千9百万円、電子記録債務が13億5千万円増加したことによるものであります。

(3) 純資産の状況

当連結会計年度の純資産は、前連結会計年度に比べ、78億1千8百万円増加し、537億5千8百万円となりました。これは、主に為替換算調整勘定が45億8千9百万円増加したこと、利益剰余金が27億9千1百万円増加したことによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ、66億6千7百万円増加し、264億8千万円となりました。各キャッシュ・フローの概要は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、81億3千5百万円の資金の増加(前連結会計年度比20億4千8百万円の増加)となりました。主に税金等調整前当期純利益の計上によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、25億9千9百万円の資金の減少(前連結会計年度比1千4百万円の増加)となりました。主に有形固定資産の取得による支出によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、14億1千6百万円の資金の減少(前連結会計年度比2億7千万円の増加)となりました。主に配当金の支払額によるものであります。

 

 (1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

粉体関連事業

33,855

18.0

プラスチック薄膜関連事業

13,069

19.7

合計

46,925

18.5

 

(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。

  

 (2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

粉体関連事業

57,134

16.8

35,757

41.3

プラスチック薄膜関連事業

17,901

△14.0

14,218

19.7

合計

75,035

7.6

49,976

34.4

 

(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

 (3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

粉体関連事業

49,461

8.4

プラスチック薄膜関連事業

17,455

15.5

合計

66,916

10.1

 

(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、日本において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の計上、当連結会計年度における収益及び費用の計上に際し、現況や過去の実績に基づいた合理的な基準による見積りが含まれております。当社グループ経営陣は、過去の実績や状況に応じ、合理的と考えられる方法により見積り判断を行っておりますが、実際の結果は不確実性を含んでおり、見積りによる数値とは異なる場合があります。
 なお、連結財務諸表作成にあたって用いた重要な会計方針及び会計上の見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
 また、新型コロナウイルス感染症による影響は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 追加情報 (新型コロナウイルス感染拡大の影響に関する会計上の見積り) 」にて記載しております。

 

 ② 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び・検討内容

(1) 財政状態の分析

 当連結会計年度末の財政状態につきましては「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態」に記載のとおりであります。

 
(2) 経営成績の分析
 コロナ禍で先行き不透明な状況であったことから、当初は前連結会計年度からのスタートを予定していた新しい中期3カ年経営計画の実施を見送っておりました。その後も感染力の強い新型コロナウイルス・デルタ株の流行により、新規感染者が再び増加傾向を示すなど、世界的に新型コロナウイルスの収束には遠い状況にありましたが、世界的にワクチン接種が進展したことなどを背景に、経済再開と感染症対策の両立を目指す動きがみられるようになってきたことなどを受け、2021年10月より「Challenge To Be Global Standard ~ホソカワミクロングループの最先端技術を業界世界標準へ~」を基本方針とする第17次中期3カ年経営計画をスタートさせました。

 当連結会計年度の期初となる2021年10月から12月にかけては、新型コロナウイルス感染症対策と経済活動の両立が進展したことから、世界経済に回復の傾向がみられましたが、2022年に入り、新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株が急拡大する中、2月24日にはロシアがウクライナへ軍事侵攻したことにより、世界経済は一気に不透明感を増すこととなりました。新型コロナウイルス感染拡大に伴う人手不足や供給・物流網の停滞が長期化する中、さらに西側諸国による対ロシアの金融・経済制裁の発動など、地政学リスクが認識されたことも加わり、資源価格を中心に高騰し、インフレ圧力が一段と強まりました。その結果、インフレ対策を優先する米国では急ピッチでの利上げを行い、欧州においても2014年6月に導入したECBのマイナス金利政策を転換し、インフレと対峙するためマイナス金利から金融引き締めへの舵をきりました。

 このような中、当社グループの業績先行指標となる受注面におきましては、顧客において納期の長期化が継続するとの認識も高まり、稼働目標時期から遡って長納期を踏まえて先行的に発注するといった行動心理が強まったように見受けられました。他方、売上面におきましては、前連結会計年度と同様、一部納入部材の長期化や世界的な港湾混雑、コンテナ不足により、海上輸送を中心に混乱が続きました。また、一部の国や地域では、移動制限や都市封鎖(ロックダウン)等の措置が取られた影響も残り、客先現場での作業(据付作業や試運転調整など)の遅れから、売上検収の遅延が散見されました。このようなことから、当連結会計年度の受注高は、前連結会計年度から 7.6 %増加し 750億3千5百万円となりました。また、受注に比べ売上の遅延傾向は続いているものの、旺盛な受注及び受注残高を背景に、売上高も対前連結会計年度比10.1%増669億1千6百万円となり、受注高、売上高ともに過去最高となりました。

 主要品目別の売上高の状況及び分析は以下のとおりであります。
 コア事業と位置付ける粉体関連事業におきましては、世界的に加速しているBEV化の流れで需要が増大している二次電池用に電極材料用製造システムへの需要が高まっているほか、新型コロナウイルスを契機として注目されるバイオ医薬における培養培地製造システム、さらにロシアのウクライナへの軍事侵攻で再認識された世界的な地政学的リスクにより、製造設備の自国回帰を進める医薬品原薬などの医薬向けも増加いたしました。また、プロテインシフトや未来食として注目を集める昆虫食の分野などの食品向け、プラスチックフィルムや廃タイヤからのカーボンブラックのリサイクルなど、SDGsや環境問題を意識した案件も増加傾向にあるように思われます。

 その他の分野も総じて堅調な受注環境にあり、受注高は 571億3千4百万円(対前連結会計年度比16.8%増)となりました。売上面では、好調な受注及び積みあがった受注残高からの売上により、前連結会計年度に比べ8.4%増の494億6千1百万円となりましたが、物流の混乱や一部部材の納品遅れが継続しており、納期遅延の傾向は解消しておりません。

 もう一つの柱であるプラスチック薄膜関連事業におきましては、主力の米国向けはコロナ禍における巣篭り需要の増加に伴い通信販売品の輸送のためのパッケージング用やシッピングフィルム用、ラミネーションフィルム用多層フィルム製造装置が好調に推移いたしました。また、欧州では、環境意識の高まりに呼応し、生分解性樹脂を原料としたフィルム製造ラインやリサイクルがより容易なポリエチレンのみを使用する多層フィルム製造装置への需要が高まってきております。そのほか、中国からの受注も増加傾向にありますが、受注高は過去最高となった前連結会計年度からの反動により179億1百万円(対前連結会計年度比14.0%減となりました。しかしながら、期首の繰越受注残高が高かったことなどから、売上高は前連結会計年度と比べ、15.5%増174億5千5百万円となりました。

 当社グループでは一品一葉の受注生産体制を取っており、受注から設計、資材発注、製造、出荷/売上計上までにタイムラグがあります。特に欧州において、受注(販売契約締結)から資材発注までの間の仕入れ価格急騰を販売価格へ十分に転嫁できなかった案件が含まれていたことなどから、売上総利益率は、1.7%ポイント低下しましたが、増収効果により、売上総利益は前連結会計年度と比べ4.7%増225億8千6百万円となりました。営業利益は、新型コロナウイルス感染症の拡大による営業活動の自粛継続により販売費及び一般管理費の一部項目は低位に留まっているものの、日本本社において従業員向けインセンティブ・プランとして譲渡制限付株式報酬制度(RS信託)を導入したことなどから、労務費を中心として販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益は前連結会計年度と比べ13.5%減55億1千3百万円となりました。
 経常利益も営業利益と同様、前連結会計年度と比べ12.2%減57億7千3百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、対前連結会計年度比14.7%減40億7百万円となりました。
 
 (3) キャッシュ・フローの分析
 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては 「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
 

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

 当社グループの運転資金需要は主に、製品の製造に使用する原材料や部品の調達等の製造費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用、継続的な新製品開発に向けた研究開発費用、さらには株主各位への配当金支払等であります。また、長期性の資金需要は、粉体関連機器及びプラスチック薄膜製造装置の製造に係る工作機械等の製造設備や顧客テストに供するテストセンター機器、DX推進などのデジタル化投資、受託加工装置の増強のための設備投資等であります。

 

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、平時においては、現預金等の流動性資金は、月次連結売上高の2.0ヶ月以上を維持するよう努めておりますが、新型コロナウイルス感染症の拡大やウクライナ情勢の長期化などを要因として、全般的に顧客への納期が1.5~2.0倍になってきておりますため、通常より厚めの流動性を確保するよう努めております。

 資金の調達方針としては、短期運転資金については自己資金及び金融機関からの短期借入による調達を基本とし、設備投資や長期性資金につきましては、金融機関からの長期借入等による調達を基本としております。

 当連結会計年度末における借入金の有利子負債の残高は13億9百万円、現金及び預金の残高は256億1千7百万円となっております。

 なお、当連結会計年度末における当社グループの流動比率は 214.8% と流動性は十分な水準にあります。

 

(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

 既述のように、2021年10月1日より新たな第17次中期3カ年経営計画をスタートさせました。昨今の円安傾向を踏まえ、この中期3カ年計画の最終年度となる2024年9月期の目標を売上高710億円、営業利益71億円の達成に修正いたしました。

 一部仕入部材の納期の問題や物流の混乱の解消にはまだ時間がかかるものと思われますが、仕入部材価格高騰の影響については、客先販売価格への転嫁も進んできており、この先、さらに想定を超えるような物価の高騰がなければ、それらの案件の売上が計上される次連結会計年度以降、利益率は徐々に改善に向かうものと考えております。また、当社グループにおいて比較的汎用性の高いものについては、在庫を積み増すなど、納期の短縮にも努めております。

 

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