当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、経営方針・経営戦略等の内容については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
収益認識会計基準等の適用が財政状態及び経営成績に与える影響の詳細については、「第5 経理の状況 注記事項 (会計方針の変更)、(収益認識関係)及び(セグメント情報等)」をご参照ください。
日本向け売上高は、需要の増加に加え、収益認識に関する会計基準を適用した結果、建設用クレーンが増加したものの、車両搭載型クレーン・高所作業車は調達環境の悪化による出荷遅れもあり減少し、 929億8千3百万円(前連結会計年度比99.7%)となりました。海外向け売上高は、中南米を除く全ての地域で増加したものの、欧州において部品調達の遅滞に伴う生産の遅れ等の影響もあり、1,126億7千8百万円(前連結会計年度比121.5%)となりました。この結果、総売上高は2,056億6千1百万円(前連結会計年度比110.5%)、海外売上高比率は54.8%となりました。
売上の増加に加え、欧州事業再生手続きの効果による固定費の圧縮に伴う売上原価率の改善と販売費及び一般管理費の圧縮等により、 営業利益は52億5千1百万円(前連結会計年度は41億9千6百万円の損失)、経常利益は54億5千4百万円(前連結会計年度は46億8千3百万円の損失)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、欧州事業再生関連収益等を計上した結果、130億9千6百万円(前連結会計年度は129億8千7百万円の損失)となりました。
さて、2018年1月19日に公表しました米国排ガス規制の緩和措置に関する自己申告について、2021年1月、米国当局(環境保護庁・司法省)から当社グループによる違反とそれに伴う民事制裁金(Civil Penalty)4,050万USドル及びその他の合意条件について提案を受け、2021年3月期に4,050万USドルを引当計上いたしました。当局との協議を継続する中、追加費用が発生する見込みが高くなったため、第3四半期に1,176万USドルを追加で引当計上いたしました。なお、当局との協議は継続中であり、最終的に確定した段階において、改めてお知らせいたします。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。セグメント別の売上高については、セグメント間の取引を含めて記載しております。なお、セグメント別とは、当社及び連結対象子会社の所在地別の売上高・営業利益であり、仕向地別売上高とは異なります。
①日本(4月~3月)
調達環境悪化の影響が比較的少なかった建設用クレーンは、需要の増加に加え、収益認識に関する会計基準を適用した結果、売上が増加しました。一方、車両搭載型クレーン・高所作業車は調達環境の悪化とトラック登録台数の減少による出荷遅れもあり減少したものの、 売上高は1,367億5千1百万円(前連結会計年度比109.3%)、営業利益は122億4千1百万円(前連結会計年度比148.0%)となりました。
②欧州(1月~12月)
市場マインドは改善したものの、調達環境の悪化による生産の遅れ等の影響もあり、建設用クレーンの需要は前期を下回る中、売上確保に注力した結果、 売上高は625億9百万円(前連結会計年度比101.1%)、営業損失は固定費の圧縮により94億8千9百万円(前連結会計年度は125億5千7百万円の営業損失)となりました。
③米州(1月~12月)
建設用クレーンの需要が、年度後半から順調に回復し前期を上回る中、 売上高は474億9千3百万円(前連結会計年度比126.4%)、営業利益は16億6千4百万円(前連結会計年度は2億3千8百万円の営業損失)となりました。
④その他(1月~12月)
建設用クレーンの需要が拡大した豪州・アジアを中心に売上が増加し、売上高は215億5千5百万円(前連結会計年度比157.2%)、営業利益は7億5千2百万円(前連結会計年度比352.5%)となりました。
主要品目別の状況は次のとおりです。
①建設用クレーン
日本向け売上は、需要の増加に加え、収益認識に関する会計基準を適用した結果、427億2千5百万円(前連結会計年度比107.8%)となりました。
海外向け売上は、中南米を除く全ての地域で増加し、877億3千6百万円(前連結会計年度比125.7%)となりました。
この結果、建設用クレーンの売上高は1,304億6千1百万円(前連結会計年度比119.2%)となりました。
②車両搭載型クレーン
日本向け売上は、トラック登録台数の減少が車両搭載型クレーンの販売にも影響し、168億1千5百万円(前連結会計年度比93.8%)となりました。
海外向け売上は、14億3千6百万円(前連結会計年度比103.1%)となりました。
この結果、車両搭載型クレーンの売上高は182億5千1百万円(前連結会計年度比94.5%)となりました。
③高所作業車
高所作業車は、トラックをはじめとした調達環境の悪化による出荷遅れと機種構成の変化により、売上高は161億7千1百万円(前連結会計年度比86.5%)となりました。
④その他
部品、修理、中古車等のその他の売上高は、407億7千7百万円(前連結会計年度比105.7%)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(提出会社)
(タダノ・ファウンGmbH、タダノ・デマーグGmbH)
(タダノ・マンティスCorp.)
(注) 生産金額は販売価格で表示しております。
②受注実績
当社グループは、受注見込による生産方式をとっているため、該当事項はありません。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
新型コロナウイルス感染症は、経済及び事業活動に広範な影響を与える事象であり、本感染が広がり始めた頃から、収束に1年、回復に1年の、計2年間を要すると想定しておりました。
しかしながら、足許では国内・海外共にワクチン接種の広がりや経済対策等が追い風となり需要は回復基調にあるものの、一方で本感染状況の収束は見通せず、部品調達遅滞・原材料高騰等が生産・出荷に与える影響も不透明な状況にあります。そのような状況の中、当社グループの業績及び財務状況への影響を最小限にすべく、引き続き対応に注力してまいります。
なお、現時点での当社グループへの主な影響は、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境」に記載のとおりであります。
(資産)
総資産は、3,447億1千9百万円(前連結会計年度比207億9千9百万円増)となりました。主な要因は、現金及び預金の増加152億8千6百万円やその他流動資産の増加24億4千3百万円があったことによるものです。
(負債)
負債は、1,844億6百万円(前連結会計年度比58億9千万円増)となりました。主な要因は、欧州事業を中心に退職給付に係る負債の減少87億2千3百万円があったものの、支払手形及び買掛金の増加54億6千万円や短期借入金の増加31億8千5百万円に加え、未払法人税等の増加29億8千5百万円や前受金の増加28億5千4百万円があったことによるものです。
(純資産)
純資産は、1,603億1千3百万円(前連結会計年度比149億9百万円増)となりました。主な要因は、利益剰余金の増加120億8千2百万円や為替換算調整勘定の増加23億9千3百万円があったことによるものです。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ122億円増加し、1,151億9千6百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によって得られた資金は173億3千2百万円(前連結会計年度比31億1千6百万円減)となりました。主な要因は、減少要因として退職給付に係る負債の減少91億6千4百万円があったものの、増加要因として税金等調整前当期純利益の計上162億円や減価償却費の計上55億4千1百万円に加え、仕入債務の増加45億7千7百万円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によって使用された資金は70億8千4百万円(前連結会計年度比33億5千2百万円減)となりました。主な要因は、定期預金の増加30億5千6百万円や有形固定資産の取得25億9千6百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によって使用された資金は4億7千1百万円(前連結会計年度比295億1千万円減)となりました。主な要因は、増加要因として短期借入金の増加16億3百万円があったものの、減少要因として配当金の支払額7億6千万円や非支配株主への配当金の支払額4億5千万円に加え、その他の支払10億9千8百万円があったことによるものです。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは次のとおりであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 4.会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
この連結財務諸表は、収益及び費用、資産及び負債の測定にあたり、経営者の見積りや仮定を含んでおります。これらの見積りや仮定は、過去の実績や決算日において合理的であると考えられる様々な要素を勘案し、経営者が判断した結果に基づいております。加えて、継続的な見直しも行なっております。しかしながら、実際には、これらの見積りや仮定とは異なるものとなる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えると考えられる見積りや仮定を含む項目は以下のとおりであります。なお、それ以外の重要な会計上の見積りとして、排ガス規制関連損失引当金を計上しております。その内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 4.会計方針に関する事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
また、新型コロナウイルス感染症が、当社グループの会計上の見積りに与える影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 4.会計方針に関する事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
(有形固定資産及び無形固定資産)
当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産について、減損の兆候がある場合に減損の判定を行っております。減損判定の契機としては、過去の業績や事業計画と比較して業績の大幅な悪化が見込まれる場合、市場や業界トレンドに大きな変動がある場合、資産の用途やそれらを用いる事業の見直しを行う場合等があります。減損については、公正価値と帳簿価額を比較し、公正価値が帳簿価額を下回っている場合に減損損失を計上しておりますが、公正価値の評価にあたり用いる見積りや仮定が将来的に変化した場合には、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。
(法人税等)
当社グループは、財務諸表上の資産及び負債の計上額と税務上の金額との間に生じる差異について、将来発生すると見込まれる課税所得の範囲において、その差異が解消されると見込まれる期間に適用される法定実効税率を使用し、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の解消については、将来の課税所得の見積りによるところが大きく、その課税所得の見積りが変動する場合には、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。
(退職給付)
当社グループでは、当社、国内子会社及び一部の海外子会社で確定給付型の退職給付制度を設けております。確定給付制度の債務について、その現在価値や関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定しており、割引率や長期期待運用収益率等、基礎率についての見積りが必要になります。当社グループでは、外部の年金数理人からの意見も踏まえ、適切な見積りと判断を行っておりますが、将来の経済状況によりその仮定が変動する場合には、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績)
当連結会計年度の経営成績については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」に記載のとおりであります。
(財政状態及びキャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度の財政状態の状況については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)財政状態」に記載のとおりであります。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。
③資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入及び社債の発行等により、資金調達を行うことを基本方針としております。自己資本比率やD/Eレシオ等の財務健全指標、ROEやROICなどを注視する一方で、資金調達コストの低減や金利変動のリスクも勘案した上で、最適な調達方法を選択しております。また、日本国内の各拠点においては、グループ内の余剰資金を活用するために、キャッシュマネジメントシステムを導入し、資金効率の向上に努めております。加えて、金融機関とはコミットメントライン契約を結んでおり、高水準な現預金と併せて、流動性を確保しております。
今後も「LE世界No.1」を目指し、「四拍子そろったメーカー(商品力・製品品質・部品を含めたサービス力・中古車流動性)」になるための設備投資・投融資等に手元資金を活用し、持続的成長と企業価値向上を図ってまいります。また、複雑・高速・極端に変化する時代にあるとの認識に立ち、不測の事態への備えも意識しながら、引き続き資金の流動性を確保してまいります。
④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するために、3年毎に中期経営計画を策定しております。 2020 年4月には「中期経営計画 (20-22) 」を発表しましたが、コロナ禍での経営環境の変化が収束後も大きな影響を与えることを見据え、「中期経営計画(21-23)」として見直し、2021年4月より新たなスタートを切りました。
「中期経営計画(21-23)」では、『誇れる企業を目指して、赤い矢印に集中』『「目の前の闘い」と「時代との闘い」を同時に制する』を基本方針として、5つの重点テーマ実現のために、9つの戦略に取り組んでまいります。5つの重点テーマと9つの戦略につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標と対処すべき課題」に記載のとおりであります。
なお、その進捗を計る指標として、売上高、営業利益、営業利益率、海外売上高比率、 ROIC (投下資本営業利益率)を定めております。「中期経営計画(21-23)」の最終年度、20 23 年度(第 76 期)においては、売上高は 2,750 億円、営業利益は 275 億円、営業利益率は 10.0% 、海外売上高比率は 66.9 %(海外売上高 1,840 億円)、 ROIC は 8.0% 以上を、それぞれ数値目標として掲げております。
各指標の推移は以下のとおりです。
※ROIC:税引後営業利益/投下資本
投下資本:純資産+有利子負債(各年度の前年度末及び当年度末を平均して算出)
お知らせ