研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

 

当グループでは、社会の目指す「カーボンニュートラル」達成に向けて、自動車用内燃機関のCO2低減・排ガスクリーン化に貢献すべく主要製品の開発、水素エンジンやカーボンニュートラル液体燃料の動向調査を進めております。例えば、ピストンリングでは、メカニズムの明確化を軸にした低燃費技術対応表面処理及び高機能化仕様の開発、バルブシートでは熱効率向上のための熱マネージメントに対応した材料及びバルブシステムの最適化開発、組立式焼結カムシャフトでは軽量化の開発を進め、地球環境にやさしい低炭素社会の実現に向けて研究開発活動を展開しております。

また、新興国を含む各海外市場に対しては設計・開発能力の現地化を推進し競争力の強化を図っております。ものづくりに必要な高精度化、低コスト化の課題は開発テーマとして取り上げて重点取り組みを行うとともに、新製品の量産開発では生産技術と連携したコンカレント開発を行い、課題の早期解決により、量産初期からの収益確保を図っております。

さらに、当社保有技術を活かした新分野(医療機器、エネルギー機器用部材等)における新規事業創出活動は、海外大手医療機器メ-カーとの埋込型医療機器の開発プログラム始動や産・学・官主催の異業種交流やオープンイノベーションの会合への参加等積極的に取り組んでおります。

なお、当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は1,753百万円であります。

各セグメントの研究開発活動は次のとおりであります。

 

(1) 自動車関連製品事業

当連結会計年度における自動車関連製品事業に係る研究開発費は1,263百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。

 

①次世代低燃費エンジン用ピストンリング

日米欧中等の燃費基準は2025年、さらにその先の2030年で目標値が決まり、ガソリンエンジンは一層の高熱効率化、クリーン化が求められております。エンジンは平均有効圧力、燃焼圧力の上昇や摩擦損失の低減、粒子状物質(PM)の低減への取り組み、このエンジン開発動向に対し、低摩擦で高耐久を実現するために、厚膜DLC皮膜の実用化や、低コスト化開発、過給エンジンのノック環境に耐えうる高靱性PVD皮膜の開発に取り組み、市場へ投入しております。また、エンジンシステムの高機能化における製品コストのバランス配分や効率的な製品開発への対応として、機能予測ツールの開発とそれを活用したモデルベース設計、ものづくり革新として高精度なピストンリングの開発にも取り組んでおります。また、AICEのEngine研究活動にも直接参加し、産学連携強化による日系企業の技術開発強化にも取り組んでおります。新たにカーボンニュートラル燃料に対応したエンジン開発がはじまりつつあり、それに適合したピストンリングの提案も行っております。

 

②次世代ディーゼルエンジン用ピストンリング

現在、商用ディーゼルエンジンにおいては、2025年燃費基準に適合したエンジン開発に伴い、これまで以上の低燃費技術が求められ、フリクションを低減させる合金PVD皮膜の開発及びディーゼルエンジンに適合した厚膜DLCの開発に取り組んでおります。また、低摩擦を実現させるため低張力で高い潤滑油調整機能を持つ新形状のオイルリングの開発を完了しており、クリーンな排ガスと低燃費を両立させることができる製品として市場展開しております。また、生産性向上の取組みとして加工精度の向上、素材形状の最適化をすることで、加工工程を削減した生産プロセスの展開を図っております。

 

③バルブシート

ハイブリッド専用機関等の環境に対応した内燃機関の熱効率を向上するために、熱マネージメントを考慮した開発や、代替燃料(ガス、エタノール)、高い耐摩耗性が要求される希薄燃焼ガソリン機関、カーボンニュートラル燃料等に対応可能な高機能製品の開発にも取り組んでおります。また、機能面だけでなくコスト及びコンフリクトミネラル低減を意識し、お客様にとって満足して頂ける最適仕様の製品開発にも取り組んでおり、あらゆる地域の顧客ニーズに対応することを目指し、グローバルな技術提案型営業を展開しております。

 

 

④組立式焼結カムシャフト

環境対応内燃機関の熱効率向上に寄与する軸部薄肉化による軽量化や、低燃費・高出力に対応する高面圧対応カム材の開発に取り組んでおります。また、顧客での加工取り代を削減させるため、素材精度向上の開発も継続して行っております。

 

⑤メタモ―ルド(金属粉末射出成形部品)

CASE領域の中、加速していく自動車の電動化に伴い、操舵系や駆動系関連の部品及び産業機械向け部品について多数の引き合いを受けております。メタモールドのメリットを理解して頂いた顧客からの、複雑形状をした部品の引き合いは継続して増えており、拡販に向けた活動に取り組んでおります。また、医療機器やレジャー用品関連への参入を狙い、チタン合金等の新材料のメタモールド製品の開発に取り組んでおります。

 

⑥新規焼結製品

高機能多孔質金属に関するマーケティング活動においては、具体的に様々なニーズも出てきており、そのニーズに応えるべく、基礎研究を継続しております。直近ではその製法において、金属射出成形法や3D積層造形法の展開を図るべく、工法開発に取り組んでおります。

 

(2) その他の製品

当連結会計年度におけるその他の製品に係る研究開発費は489百万円であります。

新製品の開発では、医療機器関連の開発として、生体適合性に優れたチタンタンタル合金(NiFreeT)を使用した長期体内留置部材を医療機器メーカーと協業して量産化開発を加速させております。NiFreeTはチタン合金でありながら優れたX線視認性を持ち、プラチナ合金の代替部材として開発を行っております。また骨に近い剛性であることと、弾性率を変化させることができる特性を活かして、整形インプラントへの適用を狙い、大学と共同研究を開始しております。また、大学病院のドクターにもアドバイスを頂きながらニーズをリアルタイムでキャッチし、QOL(Quality of Life)を向上させる医療機器の開発を進めてまいります。

歯科インプラントの開発・改良では、CTデータからシミュレーションした位置へ安全安心・確実にインプラント体を埋め込むためのガイド埋入システムの開発を完了させ販売を開始し、歯科医師から高い評価を得ております。今後もデジタル化が進む歯科業界のニーズに応えた製品展開により顧客満足度の向上を図ってまいります。

CASEの領域の中、電動化社会に向けた対応としては、圧粉コアを利用したアキシャルギャップ型のオリジナルモータを製作しており、オリジナルモータの特長である扁平形状且つ高トルクを生かして、電動化・脱炭素化社会に向けた成長性が高い製品市場としてロボット等の小型移動体の駆動やEV化に伴う車載用電動補機への適用を検討しております。各種ロボット向けモータについては複数の検討案件を頂いており、その中には量産化に向けて進捗しているプロジェクトもあります。また車載用電動補機モータについては圧粉コアでの開発参画を進めております。

また、当社がこれまでピストンリングで使用してきたPVDやDLCの表面処理は、機械などの摺動部品、ドリルやチップなどの切削工具、刃物、ペットボトル、時計や貴金属、人工関節・血管など様々な製品で実用化されており、今後も成長が期待されております。当社が生産しているピストンリングとは製品や用途は違っているものの、ベースとなる真空蒸着技術は同じであり、これまで自動車メーカーと共に培ってきた技術・品質を活かして新たな製品への展開を目指しております。一例として、無潤滑や特殊環境での摺動部品、加工設備の治工具の寿命延長、医療関連ではNiFreeTの付加価値付与など様々な用途への検討と既に一部では試作を納入し、顧客での評価を開始しております。

 

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