文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、2022年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画(以下、「現中期経営計画」という)等において発表の通り、既存ビジネスであるパソコンやモニタ、その他周辺機器等の事業拡大に引き続き注力しつつも、「取扱うハードウェアの多様化」に加え「ハードウェアに関連する各種サービス事業への進出」の2軸での成長を長期的な経営ビジョンとして掲げております。
(2)目標とする経営指標
当社は、2022年5月13日に公表した中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)において、持続的な企業価値の向上につながる収益性の管理に加え、積極的な事業投資と財務の健全性の両立及び利益成長に応じた株主還元の強化を図るべく、6つの指標を経営上重要視する指標として位置づけております。これらの指標管理を通じて、既存及び新規事業における収益性管理、投下資本に対するリターン、資本効率を意識した経営を行い、既存事業及び新規事業・投資に係る事業ポートフォリオ管理を行うとともに、持続的な株主還元の強化を図ってまいります。
(3)経営環境及び対処すべき課題
パソコンを含むハードウェア全般を取り巻く環境は、ユーザーニーズの多様化を始めユーザーにとっての選択肢の充実やハードウェアに参入する企業の多様化等により、以前よりも複雑化しております。
そのような中、当社グループとしましても、パソコン市場のみの動向にとらわれず、パソコンをハードウェアの一部として捉え、多様化・複雑化するハードウェア市場全般に如何に対応していくかを考える必要があると認識しております。
また、コンテンツやソフトウェア等の利用用途により必要とされるハードウェアの種類や形態が変化する動きもある中で、ハードとソフトの相互依存関係はこれまで以上に高まっております。そのため、当社グループはハードウェア全般の動きを注視するとともに、関連するコンテンツやソフトウェアの動向にも今まで以上に注意を払うべきであると考えております。
そのような経営環境認識に基づき、当社グループは今後の長期的な事業の方向性として、当社グループにて取扱うハードウェアの種類の拡充による既存のパソコンを中心とするハードウェア事業の強化及びハードウェアと親和性の高い新規領域であるコンテンツ等のサービス分野の強化を掲げ、ハードウェア及びサービス分野双方からの相乗効果による企業価値の最大化を目指しております。
「現中期経営計画」においては、国内においては「Windows 7」更新需要が一巡後、欧州においては英国のEU離脱問題の交渉の行方や進捗を鑑みて、その事業を取り巻く環境が以前よりも悪化することを想定し、「着実な事業拡大に向け、成長と投資のバランスを図るフェーズ」として位置づけ、「前中期経営計画において高まった既存事業の収益性の維持と収益基盤の強化」及び「高めた収益を将来の成長の為の基盤作りに投資する」ということを事業運営の指針として経営に邁進してまいりました。
しかしながら現中期経営計画初年度である2020年3月期第4四半期より顕在化した新型コロナウイルス感染症の影響により、事業環境の前提や当社グループを取り巻く事業環境に大きな変化が生じた為、中長期の経営ビジョンや目指す方向性の修正は無いものの、以降においては「不確実性への対応」を優先し、大型M&Aや新規事業への参入等、多額のキャッシュアウトを伴う活動や投資に対する想定されるリターンの時間軸が長期に亘る活動を一旦休止するとともに、既存リソースを活用した既存事業の基盤強化に加え、来期以降の成長の芽を育てるべく既存事業内におけるユーザーの囲い込み施策や新製品・サービスの投入に加え、より長期における経営基盤の強化を目的とし、当社グループとしてのESG活動に係る方針の策定や実行等の活動を行ってまいりました。
今後につきましては、事業環境を慎重に分析しつつも、既存事業の成長基盤を強固なものとし、事業環境に関わらず着実に稼ぐ力の確立を図るとともに、将来の成長を支えるための営業網や社内システム等の各種基盤整備に加え、新たな成長軸の確立及び長期的な経営ビジョンの達成を念頭に「製品・サービス軸」の強化及び「バリューチェーン軸」の強化、並びに新規事業という3つの切り口において、日本のみならず、既に事業基盤のある欧州や東南アジア地域をはじめ、グローバルな視点でM&Aやアライアンス戦略を駆使してグループとしての成長を模索してまいります。
そのような目指す事業の方向性及び実行手段を鑑みた際に、当社グループとして重点的に取り組む課題は、以下のとおりとなります。
① 経営管理全般に係る課題
当社は、個々の事業会社の集合体としての側面と事業会社を束ねる持株会社としての側面の両方を兼ね備えており、前者においては収益性の管理を、また後者においては既存及び新規の事業ポートフォリオ管理を如何に効率的に行うかという、両側面でのバランスを取ることが求められます。そのため、当社は持続的な企業価値の向上につながる収益性の管理に加え、積極的な事業投資と財務の健全性の両立及び利益成長に応じた株主還元の強化を図るべく、6つの指標(営業利益率、ROIC、ROE、配当性向、総還元性向、DOE)を経営上重要視する指標(以下、「重要指標」という)として採用しております。これらの指標管理を通じて、既存及び新規事業における収益性管理、投下資本に対するリターン、資本効率を意識した経営を行い、既存事業及び新規事業・投資に係る事業ポートフォリオ管理を行うとともに、持続的な株主還元の強化を図ってまいります。
そのために、グループ各社の収益性管理の更なる強化、適切なバランスシートマネジメント、将来を見据えた資本政策に加え、今後立案・実行するM&A等においても、中期経営計画等に掲げる戦略的方向性を前提としつつ、重要指標を念頭に置いた綿密な計画に基づく実行及び管理の下に推進してまいります。
② 事業環境等に係る課題
当社グループは日本、欧州及び東南アジアにおいて事業を展開しており、日本及び展開している各国及び地域の景気や企業業績、個人消費動向等の経済環境の他、各国における自然災害等が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度及び現時点においても新型コロナウイルス感染症の影響により目まぐるしく変化する事業環境への対応や、世界的な原材料・部材不足、サプライチェーンの混乱や物価上昇圧力に係る影響、ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスクへの対応等、事業規模及び事業展開エリアの拡大とともに世界各国における様々な経済環境・自然災害等の影響への対処がより一層求められております。
このような事業環境の悪化を受けても、迅速な経営の意思決定を通じてその影響を最小限に抑え、尚且つその中においても将来の事業拡大の糧となりうる活動についてはできる範囲で継続し、「守り」である短期的な対処策と、「攻め」である長期的な目線の双方のバランスをとりつつ、事業運営を行ってまいります。
③ 中長期ビジョンの実現に向けたM&A・ベンチャー投資等のアライアンス戦略に係る課題
当社グループの既存事業強化又は既存事業とシナジーを見込める企業群とのアライアンス推進にあたっては、既存事業の現在の状況及び今後の方向性に基づいた注力すべき事業領域の明確な設定に加え、対象となる企業のソーシング活動の強化、案件の見極め、既存事業との連携強化の推進、収益性・採算性管理の強化等が常に求められます。そのため当社では中期経営計画等において、向かうべき方向性やそれに基づく投資方針を明確化するとともに、各事業における課題抽出や成長機会の模索を定期的に行い、中期経営計画等の方針に沿ったテーマの設定を行うとともに、上記①において掲げる重要指標を念頭に今後のアライアンス戦略の立案等を行ってまいります。
④ 事業推進にあたっての人材の確保・育成に係る課題
当社グループが現在その事業の中核に据えるハードウェアはもとより、今後の強化領域であるコンテンツ等のサービス分野においても、その事業活動は国内にとどまらず、競争環境やイノベーションの芽はグローバルレベルで考慮する必要があります。
そのような中、グローバルな事業展開及び情報収集を支えるためのグローバル人材の確保・育成に注力するとともに、多様な人材がより一層活躍できる環境と体制の整備を進めてまいります。
また、当社の事業領域が今後も拡大していくことを鑑みて、併せて次世代を担う経営人材の強化・育成にも注力してまいります。
⑤ 各セグメントにおける課題・取組み
<パソコン関連事業>
パソコン関連事業においては、ユーザーニーズや技術・価格動向をいち早く察知する情報収集能力、そしてそれらの情報を瞬時に製品に反映する経営のスピード感と柔軟性が求められます。
また、パソコンのコモディティ化が進む現状においては、ユーザーニーズ等の見極めに加え、他社製品との明確な差別化が必須であり、製品面、ブランド面の双方において認知度の向上による顧客層の拡充やマーケットシェアの拡大にも、積極的に取り組む必要があると認識しております。
加えまして、コロナ禍において特に物不足や入手までの時間軸の長期化が顕著となりつつあるパソコン製造に係る原材料及び関連するパーツにつきましても、タイムリーな調達や適正価格による調達に加え、販売動向を見据えた在庫管理の重要性が以前にも増して求められており、部材調達の平準化及び安定化が今後の当社グループの業績を大きく左右する要素となっており、対処するべき重要な課題であると認識しております。
(パソコン本体の製造・販売)
パソコン本体の国内販売市場は成熟化が進行し、競合他社・競合製品が依然として多いことから、パソコン製造・販売を行う子会社においては、ユーザーニーズや技術動向を常に把握するとともに、価格・性能・品質・外観に加え、顧客サポート体制の拡充といった各要素のトータルバランスを常に考慮し、競合他社・製品に対して総合的な差別化を図っていく必要があります。
当社グループのBTOメーカーとしてのメリットやこれまで培ってきた経験を最大限に活かし、調達やサプライチェーンの混乱に加え、急激なユーザーニーズの変化等にも対応し、その中で商機を掴み取るべく機動的で柔軟な原材料調達や在庫管理の強化を行いつつも、革新的な製品、ユーザーニーズにあった製品をタイムリーに投入する体制を今後も維持・強化してまいります。
(パソコンパーツの卸売・販売)
パソコンパーツは技術革新が早く、市場投入後、時間の経過とともに価値が減少していく傾向があるため、市場動向を見極め、必要な商材をタイムリーに、かつロスなく調達するとともに、各販売先とのリレーションを密にし、鮮度の高い時期により多くの数量を販売できる体制を確保する必要があります。
各種販売ツールの提供や販売イベント等、各販売先における取扱商材の訴求力向上を支援するとともに、法人顧客をはじめとする安定的な販売先の獲得、粗利率の向上に向け、営業努力を重ねてまいります。また、価格競争を避けるべく、本事業においては独自製品の開拓・販売が重要な要素となっていることから、継続して新規商材の発掘に注力してまいります。
(モニタの開発・販売)
モニタ市場においても、パソコン本体と同様に成熟化が進行していることから、価格・性能・品質・外観等のトータルバランスを考慮しつつ、競合他社・製品に対して総合的な差別化を図る必要があります。
また、欧州地域においては、欧州経済の動向や地政学的なリスクを十分に考慮し、各地域における需要動向及びトレンドを見極めながら事業を展開していく必要があります。
ブランド認知度の更なる向上を目指しつつ、汎用モニタをはじめ、産業用タッチパネルモニタ及びデジタルサイネージ製品の販売網を拡大するとともに、原材料調達の強化や適正な在庫管理の徹底を通じて引き続き収益の安定化、多様化を図ってまいります。
<総合エンターテインメント事業>
総合エンターテインメント事業においては、主に「aprecio」ブランドで、複合カフェ店舗の運営や「MIRA fitness」ブランドによる24時間フィットネスジムの運営等を中心に店舗型ビジネスの運営を行っております。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、行政からの休業・時間短縮営業の要請に加え、外出の自粛気運の強まりや余暇の過ごし方の変化を受け、提供するサービスの利用人数に大きな影響が出ております。
主力となるいわゆる「ネットカフェ」業界は新型コロナウイルス感染症の拡大以前より縮小傾向にあり、競合他社との差別化や、集客数の安定的確保が課題となっています。
各地域や店舗ごとに顧客の年齢層やニーズが異なるため、会員情報に基づくマーケティング活動を効果的に実施し、地域特性や店舗立地に応じたサービスの展開や顧客属性に即したコンテンツの拡充を行うこと等で顧客満足度の向上を促し、新規顧客の獲得及び会員顧客のリピート率向上に繋げてまいります。
また、その一方で引き続き24時間フィットネス事業等、自社の持つ強みである会員ビジネスに係るノウハウや店舗運営能力を活かした新規事業の模索による新たな収益源の確立に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、より一層のコスト管理の徹底にも注力してまいります。
上記の他、当社及び当社グループの事業運営上想定されるリスク要因を常に考慮し、迅速な意思決定に基づく効率的経営を行い、当社グループの企業価値の最大化に向けて邁進してまいります。
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