課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

1955年にNCの開発をスタートさせて以来、ファナックは一貫して工場の自動化を追求しています。

創業期に目指した、小柄でもしっかり根を張った巨人のごとき逞しさがある企業、技術で勝負する企業を希求し続け、「狭い路」を真っ直ぐに歩むことに努めています。

その企業像を実現するために、当社グループは基本理念として「厳密と透明」を掲げています。そこには、企業の永続性、健全性は厳密から生まれ、組織の腐敗、企業の衰退は不透明から始まる、という考えがあります。

ファナックは、基本技術であるNCとサーボ、レーザからなるFA事業と、その基本技術を応用したロボット事業およびロボマシン事業を展開しています。そして、IoT・AI技術をFA・ロボット・ロボマシンの全ての分野に積極的に適用していくことで、お客様がファナック商品をより効率的にご利用いただけるよう取り組みます。

また、生産財のサプライヤであるとの原点に立ち、お客様がファナックの商品をお使いになる限り、保守サービスを提供し続けます。

当社グループはこれらの事業活動を通じて、お客様の工場の自動化と効率化を推進することで国内外の製造業の発展に貢献し、今後も中長期的に拡大が見込まれる工場の自動化分野において、着実な成長を実現していきます。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

ファナックの商品は景気変動の影響を大きく受け易い生産財であることから、短期的な事象に左右されない、長期的な視点に立った経営を続けています。

当社グループを取り巻く経営環境につきましては、地政学的リスクの高まりや、新型コロナウイルスの感染拡大の影響等もあり、予断を許さない状況が続くものと思われます。その一方で、工場の自動化への要求は中長期的に拡大することが見込まれます。

当社グループは、「one FANUC」を合言葉に、FA・ロボット・ロボマシンが一体となったトータルソリューションの提供、およびグループ一体となった世界のお客様への対応、という当社グループならではの強みを最大限活かしてまいります。特に、CNC工作機械とロボットとの連携、ロボマシンとロボットとの連携を重要テーマの一つと捉え、商品を開発してまいります。

また、ファナックの商品は製造現場でご使用いただく生産財であるとの原点に立ち、お客様の工場におけるダウンタイムを最小にして稼働率向上を図るため、「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」ことを商品開発において徹底いたします。また、工場の自動化への要求が拡大する一方、熟練労働者の確保が難しくなる状況に対応するため、使い易さを一層重視した商品開発にも取り組んでまいります。

そして世界中のどこでもファナックのグローバルスタンダードに沿った高度な保守サービスを提供すること、お客様が使用し続ける限り保守を続ける「生涯保守」を行うこと、を基本理念とした「サービス ファースト」を実践してまいります。特に、競合会社が追随することが難しい「生涯保守」については、当社グループの大きな特長として、引き続き注力してまいります。

さらに、当社グループは、今後も競争力の高い商品を開発し市場投入していくうえで、IoT・AI技術を必要不可欠なものと考えております。これらの技術をFA・ロボット・ロボマシンの全ての分野に積極的に適用していくことで、お客様における生産の効率化を一層推進します。IoT技術についてはオープンプラットフォーム「FIELD system」などの開発も進めています。AI技術については実際の製造現場で役立つ機能の開発を進めています。当社にない技術については、引き続き他社との協業も積極的に推進して、スピーディな開発に努めてまいります。

当社グループは、長期的視点に立ち、商品競争力の強化、セールス・サービス活動の強化、工場の自動化・ロボット化の推進、業務の合理化など、より強い企業にするための施策を推し進めます。また、生産財のサプライヤとして、いかなる場合にもお客様への供給責任を果たし、サービス活動を維持することができるよう、生産拠点やサービス拠点の複数化に取り組んでいます。さらに、部品調達先の複数化、適切な部品在庫の保有など、サプライチェーンの強化にも取り組んでいます。

こうした活動の一方で、当社グループは経費と時間の削減および業務の合理化にも取り組み、強い企業体質の維持に努めています。また、中長期的な成長のためには、人材が最重要であるとの観点に立ち、社員がより働きやすい職場の実現、社員のモチベーションの一層の向上も重要課題として取り組んでまいります。

経営に当たっては、ファナックの商品はSDGsの達成にも大きく貢献することを一層意識してまいります。また、営業利益率、経常利益率、ROEなどに加えて、市場シェアも重要な経営指標と捉え、総合的に判断してまいります。

喫緊の課題として、当社グループは、お客様、お取引先、社員およびその家族の新型コロナウイルス感染予防・感染拡大防止を最優先としつつ、お客様への商品の供給とサービス活動の継続を図ってまいります。

今後もあらゆる面で当社グループは、基本理念である「厳密と透明」を徹底し、こうした諸施策をグループ一丸となって推し進めることにより、お客様の当社グループへの安心と信頼を高めるとともに、激しい環境変化に適応することで、永続的な企業となるべく努力してまいります。

 

(3)気候変動への取り組みとTCFDに基づく情報開示

COP21(第21回国連気候変動枠組条約締約国会議)で採択されたパリ協定を機に、世界的に脱炭素社会へ向けた動きが広がっています。グローバルに事業を展開している当社グループにとっても、気候変動は重要な経営課題であると認識し、取り組みを推進しています。

こうした中、ファナックは2021年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言(以下、TCFD提言)への賛同を表明しました。

今後もTCFD提言のフレームワークを活用して、継続的に情報開示の質と量を充実させるとともに、気候変動への取り組みを一層推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

[ガバナンス]

ファナックは気候変動を重要な経営課題の一つと認識しています。

代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」において、気候変動に関する重要な方針や施策について審議・決定を行い、取締役会に報告します。

取締役会は報告内容に基づいて、気候変動に関連するリスクと機会の特定と対策が適切に推進されるよう監督を行います。

 

[戦略]

ファナックは気候変動に関連するリスクと機会を特定し、それらが当社グループの事業に及ぼす影響を確認するために、FA事業、ロボット事業及びロボマシン事業について、1.5℃シナリオ、2℃シナリオ、4℃シナリオを用いて、中期(2030年)と長期(2050年)を対象にシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析にあたり、1.5℃においてはIEA NZE、IPCC RCP1.9など、2℃においてはIEA SDS、IPCC RCP2.6など、4℃においてはIEA STEPS、IPCC RCP8.5などを参照しました。各シナリオに対して、気候変動に関連するリスクと機会を洗い出し、事業への影響度を定量的かつ定性的に検証・評価しました。

このうち、事業へ大きな影響を与えるリスクとして「炭素税の導入によるコスト増」、「原材料価格の上昇によるコスト増」及び「消費者の行動変容やEV/FCV化による一部ファナック商品の需要減」を特定し、機会として「省エネ・ロボット化によるファナック商品の需要増」、「EV/FCV化によるファナック商品の需要増」を特定しました。

 


 

1.5℃及び2℃シナリオでは、脱炭素化への移行に伴う大きな社会変化が起こる世界が想定されます。炭素税の導入や原材料価格の上昇によりコストが増加する可能性がありますが、省エネ・ロボット化やEV/FCV化が拡大することにより、FA事業、ロボット事業及びロボマシン事業を拡大できると考えます。4℃シナリオでは低炭素化は推進されず、平均気温上昇等の気候変動により自然災害の激甚化が想定されます。これにより生産拠点等が被害を受け、生産にマイナスの影響が生じるとともに復旧コストが増加する可能性がありますので、事業継続計画(BCP)対応を推進し、物理面でのリスクに対応してまいります。

今回、FA事業、ロボット事業及びロボマシン事業についてシナリオ分析を行った結果、分析で使用したいずれのシナリオにおいても、これらの事業は高いレジリエンスを有していると評価しました。今後、特定したリスクへの対応と機会の実現に向けて、取り組みを一層推進してまいります。

 

[リスク管理]

ファナックは、事業の継続性、企業価値の向上、企業活動の持続的発展を阻害するおそれのあるリスクに対処するため、リスクマネジメント委員会及びリスクマネジメント規程を設け、取締役会の監督のもと、適切なリスクマネジメントを行っています。気候変動に関するリスクについても、この中に位置づけてリスク管理します。

 

[指標・目標]

ファナックは2050年までに当社グループの事業活動に伴うGHG排出量(Scope1, 2)をゼロにするという長期目標を設定しています。この長期目標の実現に向けて、2030年までに同排出量を42%削減する(2020年比)という中期目標を定めています。Scope3については販売した製品の使用による排出量を2030年までに12.3%削減(2020年比)することを目指します。

 

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