(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスのワクチン普及および大型経済対策により欧米では個人消費等が持ち直しに向かいましたが、変異株の感染拡大による供給面での制約が重しとなり、全体としては緩やかな回復となりました。
わが国におきましては、輸出や設備投資の持ち直しが見え始めたものの、変異株の感染が夏および冬に拡大したことなどから、景況は総じて停滞基調となりました。
そのような環境下、エレクトロニクス市場におきましては、中国、米国を中心とした自動車販売の回復や巣ごもり需要を背景に、電子機器生産および電子部品需要は好調な推移となりました。
こうした状況のなかで、当社グループにおきましては、付加価値率の高い新分野への拡販を図る一方、生産効率の改善を進めました。
その結果、当連結会計年度の経営成績は、自動車向けを主体に受注が回復基調で推移したことから、売上高40,448百万円(前期比+23.2%)、営業利益2,075百万円(同+262.5%)、経常利益2,548百万円(同+288.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益1,949百万円(同+335.5%)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
・電子部品
自動車関連向け受注の回復を主因に、モジュール、センサ、コンポーネント部品等各品種売上が増加し、売上高39,508百万円(前期比+23.6%)、営業利益3,022百万円(同+107.6%)となりました。
・金型・機械設備
機械設備の外部顧客への売上が振るわなかったことを主因に、売上高680百万円(同+3.7%)、営業利益17百万円(同△9.1%)となりました。
・その他
商品仕入及び不動産業等に係る事業であり、売上高655百万円(同+50.5%)、営業利益94百万円(同△1.5%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,444百万円減少し、5,404百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は909百万円となりました。これは、税金等調整前当期純利益2,501百万円、減価償却費1,069百万円に対し、売上債権が2,402百万円、棚卸資産が2,712百万円、仕入債務が1,360百万円それぞれ増加したことが主因であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,064百万円となりました。これは、固定資産の取得による支出1,153百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は23百万円となりました。これは、借入金の純増537百万円、配当金の支払い251百万円などによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
電子部品(百万円) |
39,898 |
25.1 |
金型・機械設備(百万円) |
425 |
11.1 |
合計(報告セグメント)(百万円) |
40,323 |
24.9 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の報告セグメントに属していない「その他」に含まれる商品仕入実績を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
その他(㈱大泉製作所商品仕入) (百万円) |
397 |
121.4 |
(注)金額は販売価格によっております。
c.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
電子部品 |
45,934 |
30.1 |
15,987 |
67.2 |
金型・機械設備 |
537 |
40.4 |
132 |
1,545.3 |
報告セグメント計 |
46,471 |
30.2 |
16,120 |
68.4 |
その他 |
558 |
70.0 |
50 |
182.1 |
合計 |
47,030 |
30.5 |
16,170 |
68.7 |
(注)為替換算による差額等は、受注高に含めて調整しております。
d.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
電子部品(百万円) |
39,508 |
23.6 |
金型・機械設備(百万円) |
412 |
△23.5 |
報告セグメント計(百万円) |
39,921 |
22.8 |
その他(百万円) |
526 |
64.6 |
合計(百万円) |
40,448 |
23.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
無錫夏普電子元器件㈲ |
5,035 |
15.3 |
6,766 |
16.7 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(事業全体の経営成績)
・売上高
売上高は、自動車向けを主体に受注が回復基調で推移したことから、前期に対し7,622百万円増加(前期比+23.2%)し、40,448百万円となりました。
・売上原価
売上原価は、売上高の増加に伴い、前期に対し5,694百万円増加(同+20.5%)し、33,486百万円となり、売上原価率は付加価値率の高い新分野への拡販および生産効率の改善を主因に、82.8%と、前期(84.7%)に対し低下しました。
・販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費におきましては、前期は休業を実施していたこと、増収に伴う物流費等の増加などから、前期に対し425百万円増加(同+9.5%)し、4,885百万円となりましたが、販管費率としては、12.1%と、前期(13.6%)に対し低下しました。
・営業外損益(営業外収益及び営業外費用)
営業外損益の純額は472百万円の益(前連結会計年度は82百万円の益)となりました。当期は前期計上した貸倒懸念債権の回収に伴う貸倒引当金戻入益や雇用調整助成金などはありませんでしたが、為替差損益が、前期が為替差損128百万円に対し、当期は為替差益392百万円となりました。
・経常利益
営業利益の増加および為替差損益の良化を主因に、前期に対し1,892百万円増加し、2,548百万円(前期比+288.7%)となりました。
・特別損益(特別利益及び特別損失)
特別損益の純額は46百万円の損(前期は96百万円の損)となりました。前期は特別損失として投資有価証券評価損197百万円、特別利益として保険解約返戻金135百万円を計上しましたが、当期は特段の計上はありませんでした。
・税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)
税金等調整前当期純利益は、2,501百万円となり、前期に対し1,942百万円増加(前期比+347.5%)し、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合算した税金費用合計としては、前期に対し440百万円増加(同+395.9%)し、552百万円となりました。
税金等調整前当期純利益に対する税金費用合計の比率は、前期19.9%に対し、当期22.1%と親会社の法定実効税率30.5%に対し2期連続で大きく下回りました。前期は投資有価証券評価損および貸倒引当金の減算に伴い、それらの繰延税金資産に対する評価性引当額が減少したことが主因でしたが、当期は収益力の改善に伴い、退職給付引当金や税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産に対する評価性引当額が減少したことが主因であります。
・親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益、特別損益(損)、税金費用の計上などから、1,949百万円(同+335.5%)となり、1株当たり当期純利益金額は232.89円(前期は53.47円)となりました。
(事業全体の財政状態)
・現金及び預金
生産水準の上昇に伴い、売上債権および棚卸資産の増加が仕入債務の増加を上回り、設備投資も減価償却費を上回ったことから、現金及び預金は前期末に対し1,256百万円減少(前期比△15.2%)し、7,006百万円となりました。
・売上債権(受取手形及び売掛金)
売上高が増加基調となったことから、前期末に対し2,770百万円増加(同+33.4%)し、11,065百万円となりました。
・棚卸資産
生産水準の上昇および部材調達難を背景に、前期末に対し2,983百万円増加(同+60.5%)し、7,917百万円となりました。
・有形固定資産及び無形固定資産
減価償却費1,069百万円に対し、設備投資は1,215百万円となったことなどから、前期末に対し91百万円増加(同+1.0%)し、9,289百万円となりました。
・繰延税金資産
繰延税金資産は、法人税等調整額△155百万円(益)の計上を主因に、前期末に対し103百万円増加(同+7.2%)し、1,528百万円となりました。
・仕入債務(支払手形及び買掛金)
仕入債務は生産水準の上昇に伴い、前期末に対し1,467百万円増加(同+24.4%)し、7,491百万円となりました。
・退職給付に係る負債
勤務費用と利息費用の計上により206百万円増加し、退職給付の支払いにより352百万円減少した他、未認識数理計算上の差異が△7百万円発生(負債減)したことなどから、当期末の退職給付に係る負債は、前期末に対し151百万円減少(同△3.3%)し、4,435百万円となりました。
・有利子負債(短期借入金、長期借入金)
有利子負債は、運転資本の増加に伴う短期借入金の増加を主因に、前期末に比べ537百万円増加(同+5.8%)し、9,803百万円となりました。
・純資産の部
純資産の部の合計は、前期末に対し2,663百万円増加(同+20.0%)し、15,950百万円となりました。
純資産の部の増減の概要は次のとおりであります。
株主資本は、親会社株主に帰属する当期純利益により1,949百万円増加しましたが、剰余金の配当により251百万円減少したことなどから、前期末に対し1,715百万円増加(同+13.3%)し、14,611百万円となりました。
その他の包括利益累計額は、アジア通貨高円安により為替換算調整勘定が939百万円増加したことを主因に、前期末に対し948百万円増加し、1,338百万円(前期末は390百万円)となりました。
(セグメントごとの経営成績等)
・電子部品
自動車向け受注の回復を主因に、各品種とも前期比増収増益となりました。
・金型・機械設備
機械設備の外部顧客への売上が振るわなかったことを主因に、前期比では増収ながら減益となりました。
・その他
売上高は、㈱大泉製作所製品の受注増により、前期比では増収となりましたが、収益は若干減少しました。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループは、2022年5月10日に発表した中期経営計画におきまして、ROE10%以上を目標として掲げました。ROEは、前期は新型コロナウイルス感染拡大の影響から、3.5%に留まりましたが、当期は13.3%となりました。
当社は、自動車の電子化の進展に伴い、安定受注で、かつ高付加価値が見込めるカーエレクトロニクス分野への製品の拡販と開発に注力してきましたが、ようやく成果に現れてきました。
エレクトロニクス市場におきましては、中国のゼロコロナ政策による都市封鎖の影響や資源価格高騰に伴う貴金属等原材料価格の上昇などが懸念されますが、電子部品需要は拡大方向にありますので、当社としましては、変革する市場ニーズにマッチした製品の提案が急務と認識しており、当社のセンサ技術、回路設計技術、無線技術の融合を図ることで自動車の電子化、機器の高機能化、IoTなど技術革新が進む市場の変化への対応に取り組んでおります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが、売上債権および棚卸資産の増加を主因に△909百万円となりました。また、投資活動によるキャッシュ・フローは設備投資を主体に△1,064百万円となり、財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い251百万円、借入金の純増537百万円などにより+23百万円となったことなどから、当期末における連結ベースの現金及び現金同等物は、前期末に対し1,444百万円減少(同△21.1%)し、5,404百万円となりました。
b.財務政策
運転資金は、自己資金および金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資などの長期資金は、自己資金および金融機関からの長期借入を基本としております。
c.重要な資本的支出の予定およびその資金の調達源
当期後1年間の設備投資は、総額1,400百万円を計画しておりますが、その所要資金は主として、自己資金および金融機関からの長期借入金をもって充当する予定であります。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
2022年4月より中国における上海市などの主要都市においてゼロコロナ政策による都市封鎖が広がったことから、自動車などの生産におけるサプライチェーンの混乱に伴い、顧客からの受注が減少するとともに、当社グループの製造販売拠点につきましても活動停止による収益の減少が避けられない見通しであります。今後も同様の事態が発生するリスクはありますが、これまでの影響につきましては、一時的なものと考えております。
また、税効果会計における税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収額の算定におきまして、将来の損益計画を使用してはおりますが、業績向上により税務上の繰越欠損金自体の水準が小さくなっており、計画に対して損益が下振れした場合の影響は限定的であります。
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