当社グループの経営成績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性があるリスクには以下のようなものがあります。しかし、以下の記載が事業等のリスクをすべて網羅するものではありません。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
① 政治・経済情勢
グループの中核である新造船事業におきまして、新造船の需要は海運市況に大きく左右されるため、世界経済の悪化や地政学的リスクの高まりなどの影響により海運市況が低迷した場合、新造船需要が後退し、受注の確保が難しくなります。また、修繕船事業や鉄構・機械事業におきましても、国内外の政治・経済情勢の動向を受けて受注環境が変化します。
② 事業環境・競争環境
世界の新造船需要は好調な海運市況を背景に回復基調にあり、新造船の受注価格も上昇が続き為替も円安に進行しておりますが、資機材価格の高騰懸念やウクライナ紛争の世界経済に与える悪影響など不安要素も多く、引き続き緊張感を持った事業経営が求められます。
新造船事業においては、受注から竣工引渡しまで通常およそ2~3年の期間を要します。厳しい受注環境下において仕事量確保のためやむを得ず受注する場合や将来を見据えて戦略的に受注する場合などは赤字受注となることもあり、受注時点で工事損失引当金を計上する場合があります。船価の建値はほぼ米ドルであり、売上高及び工事損失引当金の計上額は、為替レート変動の影響を受けます。
当期におきましても、戦略的な受注活動を行い、当連結会計年度末の工事損失引当金は10,821百万円となり、前期末と比較して271百万円増加しております。
厳しい新造船市場の環境下、当社グループ建造船の性能面や品質面での差別化を図るとともにコスト合理化策を進め、損失をミニマイズするように努めてまいります。
③ 環境規制
地球温暖化が世界的な問題であることに対応して、船舶から排出される硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、二酸化炭素(CO₂)などに対して、国際海事機関(IMO)は年限で具体的な排出制限目標を定めております。そのため今後建造される船舶に関しては、本船に新たな機器の据付や舶用燃料の切り替えなどの対策を施す必要があり、設計部隊と営業部隊と共同で海運会社を訪問し、排出制限に伴うニーズや顧客の要望事項を的確に情報収集し、複数の具体的な船型開発に取り組んでおります。また、自動運航等の次世代技術の適合を目指す研究開発は急務となっており、規制に対応するための技術革新や船型開発・設計等を中心として製造コストが大幅に上昇しております。
研究開発体制および生産体制をより一層強化する一方で効率化を図るとともに、関連する舶用機器メーカーの協力も得つつ、コストダウンにつなげてまいります。
④ 為替動向
新造船事業は輸出比率が高く、受注の大半は米ドル建ての契約であり、売上高および入金額や工事損失引当金は為替レートの変動の影響を受けます。
当連結会計年度における売上計上の米ドル額はグループ全体の連結売上高の約68%を占めており、その平均レートは1米ドル当たり112円12銭であります。
為替レート変動の影響を軽減する対策として、為替動向を考慮しながら取締役会で定めた一定の方針に基づき計画的に為替予約を実施しております。しかしながら、急激な円高が生じた場合には、業績および財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 個別受注契約
新造船事業では受注から竣工引渡しまでの期間が長期間に亘るため、その間の経済情勢の変化の影響を受けて、当初見積りより建造コストが増加する可能性があります。また、建造船は、顧客ごとの仕様要求に応じた受注生産となっているため、受注契約時に十分な事前検討を行っておりますが、当初予期されなかった事柄が後日発生し設計変更や工程遅延等により、建造コストが増加する可能性があります。
また、当社は受注に際して顧客の信用力や風評について情報を収集し、案件によっては商社を主契約者として顧客の信用リスクを軽減するなど、個別の対応を行っております。
⑥ 資材調達
主要な原材料・資機材において、価格の急激な変動、国際情勢の急変や災害等による供給不足の問題が生じた場合、製造原価が上昇するのみならず、調達品の納期遅れによる工程遅延等の問題が発生する可能性があります。
特に新造船事業においては主要原材料である鋼材価格の動静が製造原価の大きな変動要因になっており、当連結会計年度においては鋼材価格の高騰により多額の工事損失引当金の積み増しを余儀なくされております。新造船の主材料である鋼材の価格は短期的には上昇圧力が強まっており、さらにはロシアによるウクライナ侵攻の影響で、鉄鋼原料および製品、原油に加え、銅やニッケルなどの非鉄金属の価格も急騰し、調達コストは上昇傾向にあることや中国における物流混乱の影響も懸念されます。
このような状況下、資機材の確実な調達と情報収集のために大阪本社と東京事務所に資材部員を常駐させ、調達部門と営業部門・設計部門やグループ各社との連携を強化し、各種合理化策、VA/VE活動等を一層深化させることで最大限の調達コスト削減を目指すとともに、従来の取引実績には拘らない内外サプライチェーンの見直しと再編に積極的に取り組んでまいります。
⑦ 人材確保・育成
当社グループにおいて人材は重要な経営資源であり、将来を担う人材の採用・育成と円滑な技術・技能の伝承に努めておりますが、労働市場の動向によっては計画通りの人材確保ができず、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 品質保証
当社グループは、品質や安全に関する法令等を遵守し、製品の品質向上に常に努めておりますが、性能に起因する大規模な事故や不具合が発生した場合、損害賠償や訴訟費用等により多額の費用が発生し、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 労働安全衛生
当社グループは、事業所及び建設工事現場等における労働安全衛生管理に様々な対策を講じていますが、不測の事故等により重大な労働災害や健康被害が発生した場合には、生産活動に支障をきたし、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 災害
当社グループは、大規模な地震や風水害等の自然災害や火災・その他の災害等の発生に備えて設備の点検、訓練の実施、連絡体制の整備などを進めておりますが、このような災害等による生産設備の損壊、物流機能の麻痺等の直接的な被害や、電力不足が解消されないこと等の間接的な被害が発生した場合、当社グループの事業活動に支障をきたし、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 情報セキュリティ
当社グループは、事業を通じて入手した取引先等の機密情報や当社グループの設計・技術・営業等に関する機密情報を保有しており、これらの情報の保護に努めておりますが、コンピュータウィルスの感染や不正アクセス等によりこれらの情報が流出あるいは消失した場合、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 投資有価証券の減損
当社グループが保有する投資有価証券のうち、時価のあるものについては時価が著しく下落した場合に、時価のないものについては実質価額が著しく低下した場合に、投資有価証券評価損を計上することがあります。
保有する投資有価証券については継続保有に資するかを毎年検討しており、保有の意義・合理性が乏しくなったと判断される株式については、適宜、縮減を図ってまいります。
⑬ 固定資産の減損
当社グループが保有する固定資産について、経営環境の変化等により将来キャッシュ・フローの見通しが低下した場合等に減損損失を計上することがあります。
当連結会計年度においては、連結子会社において98百万円の減損損失を特別損失として計上しております。
新造船事業を取り巻く環境は厳しい状況が続いておりますが、グループの事業構造の改革を強力に推し進め、収益力向上と将来キャッシュ・フローの改善につなげてまいります。
⑭ 感染症の蔓延によるリスク
新型コロナウイルスなどの感染症の蔓延により当社グループの事業活動に支障をきたし、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
これら感染症の感染拡大防止のため、当社グループではテレワーク・時差出勤の拡大や国内外の出張禁止・自粛、工場における検温の実施等の感染症対策を実施しております。
⑮ 重要事象等
当社グループは、中核である新造船事業において、世界的な需給ギャップから生じた競争環境の激化と市場価額低迷、環境規制強化への対応、新型コロナウイルス感染症の影響などにより新造船事業を取り巻く環境は非常に厳しく推移し、当連結会計年度まで6期連続の営業損失を計上しました。
このような状況下、2021年3月に中期経営計画を見直し、2021年度から2024年度までの4ヶ年の事業再構築計画を策定しております。当社グループは、事業ポートフォリオの最適化・経営資源再配分による収益安定化を図るため修繕船事業を中心に新造船の需要変動に対応する船主業への取組みや鉄構・機械事業など非造船事業の強化を図るとともに新造船事業における勝ち残り戦略を策定し、受注戦略とコスト競争力向上を柱に品質・調達や研究開発等においても強化する方針です。経営資源の「選択と集中」により、グループの事業構造の改革を強力に推進するため、佐世保重工業株式会社の新造船事業を2022年1月 に最終船の引渡し完了 をもって休止し、 修繕船事業および機械事業への経営資源の再配分を実施しております。
世界の新造船需要は好調な海運市況を背景に回復基調にあり船価の上昇も続き円安に進行している状況にもありますので、今後は事業再構築計画を確実に実施することで早期の業績回復に努めてまいります。
なお、当連結会計年度末の資金残高の状況および今後の資金繰りを検討した結果、十分な現預金を確保しており、国内金融機関とシンジケート方式によるコミットメントライン契約を更新するなど取引金融機関とは良好な関係が維持されており、翌連結会計年度を含めて当面の資金繰りに懸念はないものと判断しております。
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