課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

社名のアンビスは、Ambitious Vision(大志ある未来像)の造語であります。当社グループは、医療やヘルスケアの進歩に貢献したい、そして、その恩恵をあまねく多くの人々が享受できる社会の実現に貢献したいと考えています。また、サイエンスやテクノロジーではなく、仕組みをイノベーションすることで社会課題を解決し、かつ利益をあげることを実現します。その第一歩として、慢性期と終末期の病床から医師の機能をアウトソーシングするというアイデアをもとに、ホスピス「医心館」という独自の事業を提案、実践し、都市部から過疎地域まで広く展開、どの地域でも事業化し最期まで医療(療養)を得られる暮らしを提供できる可能性を示したことで医療介護業界に「ホスピス」という事業領域を確立しました。

わが国では、これまで永らく病院に医療資源を集中させる構造をとってまいりました。従来の急性期患者を対象とした「病院完結型」から、高齢者や慢性疾患患者の機能維持・向上を対象とした「地域完結型」の社会保障体制(地域包括ケアシステム)への移行改革が行われようとする今、その構造による体制硬直が改革の障壁となっております。この現状を打破するべく推進される在宅医療は、医療を人々のくらしに還し、病院と地域を親和させるといった医療のパラダイムシフトをもたらすことを期待するものであります。

2013年の創業以来、当社グループは、住み慣れた地域で在宅療養を得られずに困っている高齢者ほかのニーズに応えるべく、医心館事業を提案し、実直に取り組むことを続けてまいりました。結果、医心館はこの展開地域で在宅療養を含めた地域包括ケアシステムや「地域医療」のプラットフォームとして受け入れられているものと認識しております。今後、医心館事業を拡大展開していくにあたり、当社グループとその事業に期待される役割はますます重要かつ大きなものになっていくと見通しております。

当社グループでは、「世界で最もエキサイティングな医療・ヘルスケアカンパニーへ」をビジョンに掲げ、医心館事業に続く第二、第三の事業を創生し100年続くカンパニーを目指してまいります。そして、大志ある未来像を見据え、重要で本質的な価値を創出するために、時には常識も疑い、斬新な解決策を模索するハングリーなチャレンジャーであり続けます。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループでは、主な経営指標として、企業の事業活動の成果を示す営業利益、EBITDAやその推移のほか、収益性の判断指標では営業利益率とEBITDAマージンの推移を、財務の安定性判断の指標では自己資本比率とNet Debt/EBITDA倍率を用い、これら指標の向上に意識をおき、バランスよく、かつ持続的に企業価値を拡大していくことを目指しております。また、企業価値を測る指標として、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益及びEBITDAの前年比増による成長性並びに、営業利益率とEBITDAマージンを重視しています。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループの中長期ビジョンは以下の3点であります。

① ホスピス事業(医心館事業)を長期安定的な収益基盤として確立

② 在宅医療・看護のリーディングカンパニーになり、医療・福祉分野で新たな潮流を創生

③ 世界で最もエキサイティングな医療・ヘルスケアカンパニーとして100年続く企業となり、人々の幸せを実現

 

 

これらビジョンをふまえて、当社グループが設定した中長期戦略は以下の2点であります。

(a) 医心館事業規模(開設数)の拡大

当社グループは、今後も医心館事業を積極的に展開します。

展開地域では、より厚い信頼(質)とより高いシェア(量)の両方を獲得し維持することを目指します。

具体的な行動方針はつぎのとおりであります。

 

 ・強固な看護体制及び本社集約型管理体制の構築

当社グループは、がん患者・神経難病患者に対する幅広いケアに対応可能な強固な看護体制のもとで医心館を運営することで、「医療依存度が高い患者を病院から受け入れる」という医心館のコアバリューを発揮し続ける方針です。また、病院に搬送することなく医心館で最期を迎える入居者割合を高い水準で維持することにより、地域医療のプラットフォームとしての医心館の立場を確立することを目指します。さらに、各事業所に施設長を置かず、本社所属の看護師が中心となり、運営、コンプライアンス、採用等を一括管理することで、現場従業員がサービス提供に集中できる環境を構築しておりますが、本社機能の強化・充実により、事業規模のさらなる拡大に対応する方針です。

 

 ・首都圏エリアのドミナント展開の加速

当社グループは、医心館の開設・運営を推進するに当たり、高齢者人口当たり療養病床数など様々な医療資源が乏しく、切迫度の高い東日本から展開する方針としています。一方で、首都圏は高齢者人口の増加とともに、医療依存度が高く適切な療養先の確保が必要な方々が急増している問題が生じております。当社グループはこの問題にいち早く対応するため、首都圏におけるドミナント展開を加速する方針です。

 

 (b) 地域医療再生事業等への取組

前述のとおり、医療過疎地では、病院の多くが医師の慢性的な不足と経営赤字という課題を抱え、病床の休廃止や廃院の危機に瀕しております。そこには、それらの病院に勤務する医師らは、病棟管理から救命対応までのすべてを少ない人員で行わざるを得ない結果としての過密な労働環境があります。医心館事業の本質は、病院の機能を大胆に切り分け、医師を外部化し、質の高い看護体制を事業所に整え、慢性期・終末期の患者を対象としたケアに特化して運営することにあります。これは医師の労働環境を、及び地域における病院(病床)の存在を危機から救う方策であります。当社グループの創業者であり代表取締役の柴原慶一は、研究者から事業家へと転身した際には、この「本質」を地域医療再生へのアプローチのひとつとして構想し、当初はこれをそのまま事業目的化することになりました。地域の医療機関や医療従事者の専門性や役割を活かした連携によって地域医療を支える仕組みであり、それぞれが役割に特化することで一層の機能強化を促し、地域では医療資源が効果的かつ効率的に利用される姿を期待するものであります。

当社は地域医療が抱える経営赤字や医師の慢性的不足といった課題解決の一歩として、また既存の医心館事業とのシナジー効果を図りつつ地域医療再生事業に一層注力してまいりたく、2020年3月に医療機関及び介護施設の経営に関するコンサルティング等を目的とした連結子会社「株式会社明日の医療」を設立いたしました。株式会社明日の医療は、医療機関や介護施設の運営に関する総合的な支援を行います。診療報酬・介護報酬債権の早払いサービス(ファクタリング)等により、医療機関や介護施設の運営資金を確保し、その上で、長年の医心館事業で培った医療機関等とのネットワークにより、地域医療のプラットフォーム形成、病棟の転換、医療従事者の組織づくりといった病院の経営改善に必要な対策をアドバイスしています。また医心館との連携をはかることで入退院調整が有効に行われるようサポートしています。

中長期的には、医療機関との連携として、「医心館 名張」で病院(病床)を再活用したように、病院の空床スペースを有効活用した医心館もしくは訪問看護ステーションの開設や、同一敷地内での医心館開設による入退院調整の連携強化を視野に入れております。また、介護施設との連携として、医療依存度の程度に応じた入居者の相互紹介や、当社で育成をした経験豊かな看護職員・介護職員の人材支援、撤退を検討している介護施設の譲り受けもしくはM&A等を視野に入れております。地域医療の需要と供給に係る体制や質量の急激な変化を緩衝し、地域医療が安定的かつ持続的に運営存続できるよう当社グループが一丸となって対応していく方針であります。

 

(4) 会社の優先的に対処すべき課題

医療過疎地をはじめとした「地域」の医療を強化再生するプラットフォーマー(プラットフォームホルダー)として、またパイオニアとして、好循環を維持強化するための各種戦略を選択できる競争優位と先駆者の優位性をもって、安定的かつ持続的な成長、そして長期的利益へと繋げることを目的としております。このために、既存の医心館事業を一層深耕し、業務効率を改善させ、人材の採用や教育に注力していくなど、積極的な事業展開を図ります。これらを実現するための当社グループの対処すべき課題は以下のとおりと考えております。

 

① サスティナビリティ経営の実施

(a) 医療の地域間格差のない社会の実現

医心館は、“医師機能のアウトソーシング”、地域の医師等が集う“シェアリング病床”という発想に基づく新しいコンセプトの施設です。病院から諸機能を落として大幅なコスト圧縮を実現したモデルでもあり、過疎化が進む地方を含め、地域特有の医療ニーズに柔軟に対応することができます。開設に当たっては、各地域の問題点を把握し、その問題解消に努めるべく地域の医療・介護従事者へのヒアリングを丁寧に行っています。
 また、医師機能をアウトソーシングしているので、医心館を開設しても地域の重要な“医療インフラ”である医師の配置を分散させることはありません。
 医心館の開設・運営を進めることで、医療の地域間格差の是正、医療機関の在院日数短縮化に貢献し、地域医療にとって欠かせないプラットフォームとなることを企図しています。

 

(b) 自然と調和したオペレーションの実現

省資源活動の一環としてペーパーレス化を推進し、クラウド会計システムや電子契約を導入しました。また、電子帳簿保存法の対応を促進しています。
 さらに、食品ロスの削減にも取り組んでおり、施設で提供する食事は必要量に応じて調理しやすいクックチル方式を導入しています。
 気候変動への対応に関しては、CO2の排出量を可視化するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けて、2050年までに排出量0を目指します。排出量削減のため、照明のこまめなスイッチオフやエリアごとの空調管理などを実施しています。

 

(c) ひとりひとりが生き生きと働ける職場の実現

組織の力を最大限に発揮するために、多様なバックグラウンドを持つ個々人を尊重し受容します。具体的には、障がいのある人を直接雇用したり、既に全従業員の約85%を占めて活躍している女性が経営会議でも力を発揮するように経営会議での女性比率50%の目標を定めたりすることで、報酬や教育、昇進機会等について、性別・国籍・障がいの有無等によらず平等に機会を提供します。
 また、各人のライフステージに合わせて幅広い世代の看護師が働ける環境を整備し、本社看護介護部、地域連携部、コンプライアンス部、採用部など、医心館の現場以外でも看護師が活躍できる場を設け、潜在看護師予備軍の受け皿として機能しています。
 さらに、働きやすい環境づくりの一環として、リモートワーク制やフレックスタイム制を活用したワークライフバランスの確保、従業員の声を聞くためのアンケートや面談といったフォロー体制の整備、必要な資格取得に向けた受講料や受験料の補助等の能力開発のための取り組みも実施しております。

 

 

(d) 社会・地域からのさらなる信頼獲得の実現

社会・地域から信頼される企業となるために、企業倫理を強化し、法令遵守を徹底します。具体的には、取締役会、監査役会、経営会議とは別に、指名報酬委員会と特別委員会を設置しております。指名報酬委員会は、取締役の指名、報酬等に関する手続きの公正性、透明性、客観性を強化し、コーポレート・ガバナンスの充実を図ることを目的とした、取締役会の諮問機関です。特別委員会は、支配株主との間に発生する取引の内容及び条件の妥当性について、その公正性および合理性を確保し、当社の少数株主の利益保護に資するための機関です。
 また、コンプライアンスの観点では、法令基準の遵守や業務の質向上等を目的とした研修、入職時のインサイダー研修を実施して周知し、ホットライン・システムを構築して悩みや問題を抱え込まない組織づくりに努めるとともに、反社会的勢力との関係を遮断するために「反社会的勢力に対する基本方針」を定め、これに従い全社的に行動しています。

 

② 医心館事業の規模の拡大

当社グループは、引き続き医心館事業を積極的に展開し、展開地域では、より厚い信頼を獲得し維持することを目指します。中長期計画「Amvis 2025」においては、医心館事業のさらなる規模の拡大を企図し、需要の高い首都圏、参入障壁の高い地方都市への新規開設を並行して行い、「Amvis 2023」で設定した中長期目標を上回る水準で規模を拡大する方針であります。

 

③ 事業ポートフォリオの基本方針と見直し

現在の当社グループは医心館事業の単一セグメントから構成され、当社グループの業績は当該市場環境の影響を強く受けるものと考えております。当社グループでは、医心館事業とのシナジー効果を図りつつ、医療機関及び介護施設の経営に関するコンサルティング等を目的とした連結子会社「株式会社明日の医療」による事業ポートフォリオの多様化に取組み、特定環境の影響を過度に受けないための施策に注力しております。

 

④ 財務健全性の確保

当社グループが今後も持続的に医心館事業を運営・展開していくためには、財務健全性の維持が不可欠であるため、着実な利益剰余金の積み上げとキャッシュ・フローの創出、有利子負債の管理を通じて財務基盤の強化に取り組んでまいります。

 

(5) 新型コロナウイルス感染症に関する対応

当社グループは、医心館の運営をサポートする本社の「看護介護部」に専門知識を持つ看護師からなるICT(Infection Control Team)本部を置き、新型コロナウイルス感染症の対応方針策定やマニュアルの作成、全事業所従業員への指示、教育、24時間体制の相談窓口を一括して行う体制を整備し、現場従業員に対応方針の検討や決定を委ねないトップダウンの体制を確立しております。また、 平常時よりも多くの従業員を採用するとともに、サージカルマスクやフェイスシールド、アルコール消毒液などの衛生材料の十分な確保に努めております。今後も新型コロナウイルス感染症に対する対策を適時適切に実行してまいります

 

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