(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度におけるわが国経済は、前連結会計年度より引き続き新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が継続しております。加えて、原材料価格高騰の影響も大きく広がっており、景気の先行きについては依然不透明な状況が続いております。
葬儀業界におきましては、高齢者人口の増加に伴って潜在需要を示す死亡者人口が2040年まで年々増加すると推計されており、今後の葬儀件数増大が見込まれていますが、一方で核家族化の進展等により簡素な葬儀の需要が高まるなど葬儀単価は中長期的に低下傾向にあります。COVID-19を契機として葬儀の小規模化の流れは一気に加速し、従来の一般葬から家族葬へのシフト、更には直葬や火葬式といったより簡素な葬儀の比率が増加し、業界全体で葬儀単価は大きく下落しております。
かかる事業環境の構造的な変化の中でも当社グループは、従前から不特定多数の参列者との接触を最小限にとどめる「一日一組」の「家族葬」を提供するなど、社会の変容に合致した形態のサービスを提供することで生活者の変容する葬儀需要に着実に対応してまいりました。
当連結会計年度におきましては、積極出店方針を継続し10ホールの新規出店を行い、グループ直営ホール数は109店舗となりました。また、当社独自のオーダーメイド型葬儀である「オリジナルプラン葬儀件数」を業績向上につながる重要業績評価指標(KPI)と位置付け、当該数値を向上させる施策を通じて、葬儀件数の増加及び葬儀単価の向上に取り組んでまいりました。特に第3四半期においては、広告宣伝投資の強化が件数大幅増加に繋がり、第4四半期においてもその好調を維持することができました。
その結果、葬儀件数は10,752件(前期比1,644件の増加)、仲介件数も含めた葬儀取扱件数は11,919件(前期比1,641件の増加)となりました。うちオリジナルプラン件数は2,361件(前期比352件の増加)、葬儀件数に占めるオリジナルプラン件数の比率は22.0%となり、新しい生活様式下においても多くのお客様からのご支持を頂きました。なお、葬儀単価は、COVID-19の影響長期化により、前期比17千円減の801千円となりました。
(売上収益)
当期の売上収益は前期比1,239百万円増加し、9,270百万円(前期比15.4%増)となりました。これは主に、前期にオープンした直営の15ホールや、M&A(㈱備前屋)3ホールの売上収益が通期寄与したこと、当期にオープンした10ホールの売上収益が寄与したことが要因であります。
(売上原価、売上総利益)
当期の売上原価は前期比596百万円増加し、5,625百万円(同11.9%増)となりました。これは主に、増収に伴い売上収益に比例する直接原価が増加したことや、ホール数増加に伴い労務費、減価償却費等が増加したことが要因であります。
以上の結果、売上総利益は前期比643百万円増加し、3,645百万円(同21.4%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、その他の収益、その他の費用、営業利益)
当期の販売費及び一般管理費は前期比292百万円増加し、2,557百万円(同12.9%増)となりました。これは主に、人員数増加に伴い人件費が増加したことや、ホール数増加に伴い広告宣伝費が増加したことが要因であります。
以上の結果、営業利益は前期比338百万円増加し、1,072百万円(同46.2%増)となりました。
(金融収益、金融費用、税引前当期利益)
当期の金融費用は前期比6百万円増加し、175百万円(同4.0%増)となりました。
以上の結果、税引前当期利益は前期比332百万円増加し、897百万円(同58.8%増)となりました。
(法人所得税費用、当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益)
当期の法人所得税費用は前期比92百万円増加し、298百万円(同45.1%増)となりました。
以上の結果、当期利益及び、親会社の所有者に帰属する当期利益は、いずれも前期比239百万円増加し、598百万円(同66.6%増)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における資産、負債及び資本の状況は次のとおりであります。
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末に比べ328百万円増加し、1,675百万円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が306百万円増加したためであります。非流動資産は、前連結会計年度末に比べ2,060百万円増加し、21,597百万円となりました。これは主に、新規出店により有形固定資産が327百万円、使用権資産が1,573百万円増加したためであります。その結果、資産は、前連結会計年度末に比べ2,389百万円増加し、23,273百万円となりました。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べ489百万円増加し、3,043百万円となりました。これは主に、一年内返済長期借入金が200百万円、リース負債が99百万円増加したためであります。非流動負債は、前連結会計年度末に比べ1,300百万円増加し、15,683百万円となりました。これは主に、長期借入金が250百万円減少した一方で、リース負債が1,536百万円増加したためであります。その結果、負債は、前連結会計年度末に比べ1,789百万円増加し、18,726百万円となりました。
(資本)
資本は、前連結会計年度末に比べ599百万円増加し、4,547百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加によるものであります。
当期末における現金及び現金同等物は、前期比306百万円増加し、1,362百万円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による収入は2,080百万円(前期比326百万円増)となりました。これは主に、税引前当期利益が897百万円(前期比332百万円増)であったことや減価償却費及び償却費1,325百万円(前期比149百万円増)を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による支出は849百万円(前期比262百万円減)となりました。これは主に、新規ホール等の有形固定資産の取得による支出728百万円(前期比154百万円減)によるものであります。なお、前期は子会社株式の取得による支出176百万円を計上しております
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による支出は924百万円(前期比824百万円増)となりました。これは主に、リース負債の返済による支出863百万円(前期比95百万円増)及び、長期借入金の返済による支出651百万円(前期比180百万円増)があった一方、長期借入金による収入591百万円(前期比548百万円減)があったことによるものであります。
(注) 1.売上収益は千円未満切り捨てにより表示しております。
2.総販売実績に対する割合が10%を超える相手先はありません。
3. 当社グループは、葬儀事業の単一セグメントであるため、収益計上区分別の売上収益(IFRS基準)を記載しております。
d.葬儀請負の状況
(注)ネット集客業における仲介件数とは、当社グループのウェブサイトから葬儀の申込を受け、提携葬儀社及び代理店に仲介し、葬儀の施行が完了した件数であります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績)
当連結会計年度における経営成績は、前連結会計年度対比1,239百万円の増収、営業利益において338百万円、当期利益において239百万円の増益となりました。
増収の主な要因は、葬儀件数が前期比1,644件増加し、10,752件(前期比118.1%増)となったことであります。前期出店ホール(15ホール)の通期寄与590件、前期M&A (3ホール)の通期寄与355件、当期出店ホール(10ホール)の寄与450件に加え、既存ホールにおいても、家族葬市場の拡大やドミナントの高密度化による広告宣伝効果の向上等により258件の増加となりました。その一方で、葬儀単価については前期比17千円低下し、801千円(前期比2.1%減)となったことにより、増収幅が抑制される結果となりました。葬儀単価低下の要因は、COVID-19の影響継続に伴い葬儀の簡素化や参列者数の減少傾向が継続したことであります。
増益の主な要因は、件数増加に伴い増収であったこと、内製化率向上や広告宣伝効率向上に努めたこと等であります。これらの要因により、出店によるイニシャルコストや、労務費・減価償却費等の間接コストの増加を抑えることとなりました。
当社グループへの葬儀のご依頼は、ウェブサイトでの検索、近隣でのホールの存在、過去の当社顧客による再度の依頼など複数の理由に依りますが、このうち当社の自助努力で葬儀件数や葬儀単価を向上させられる手段として、「来館からのご依頼数」、「ウェブからの事後入電数」、「オリジナルプラン葬儀件数」の3つを重要業績評価指標(KPI)とし、これらの数値を向上させる施策を通じて、葬儀ご依頼件数の増加及び葬儀単価の維持・向上に取り組んでおります。
特に、オリジナルプランについては、お客様のお気持ちに耳を傾け、ご家族の故人に対する弔いの心情を理解し、お客様ごとに異なる想いを表現する「ご家族の意向を汲んだ、ご家族のためのご葬儀」を提供しており、高い付加価値を実現しております。市場全体の葬儀単価が下落傾向にあり、当社グループもその影響を受けているなかで、当社グループでは「生活者目線」に立ったご葬儀を行うことで葬儀の付加価値を高め、葬儀単価の維持・向上を図ってまいります。
オリジナルプランにて施行した葬儀件数の推移は、次のとおりであり、コロナ下においてもオリジナルプラン葬儀件数は増加トレンドを継続しております。
(注)1.オリジナルプラン葬儀件数は、葬儀施行業の葬儀件数に含まれております。
(財政状態)
当連結会計年度における財政状態は、自己資本額(親会社の所有者に帰属する持分合計(新株予約権を除く))が当期利益の蓄積により前期比598百万円増の4,518百万円となり、自己資本比率(自己資本額÷負債及び資本合計)は19.4%となりました。自己資本比率は同業他社等と比較して十分に高い水準とは言えないものの、将来的なのれんの減損リスクや事業リスクを考慮しても適切な水準を維持しているものと考えております。
借入金は前期比50百万円減の4,548百万円となりました。出店による新規借入591百万円を実施したものの、営業キャッシュ・フローを原資とした約定弁済も進行したため、借入残高は減少しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(資本の財源)
当社グループの所要資金は、主に新規出店に伴う設備投資資金であります。
設備投資資金については、連結の営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とし、多額の設備資金については長期借入金にて調達しております。また今後、多額の設備投資や既存葬儀社の買収を実施する際には、金融機関からの借入又は株式発行による調達を予定しております。
(資金の流動性)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,362百万円と、月商の約1.8ヶ月分でありますが、当社グループの平均的な売上債権の回収サイトが約1~2週間である一方、仕入債務の支払サイトが約1ヶ月であるため、多額の手元資金を必要としておりません。また、資金の流動性を確保しておくため、取引金融機関と総額500百万円の当座貸越契約を締結しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表等は、IFRSに基づき作成されております。IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行うことが義務付けられております。実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。
重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記3.重要な会計方針、4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
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