課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「首都圏における中小企業と個人のお客さまのための金融グループとして、総合金融サービスを通じて、地域社会の発展に貢献します。」との経営理念を実現するため、お客さまの「信頼性・満足度」、「新たなビジネスやサービスを創出する能力」、「課題解決力」の向上に努めるとともに、以下の3つを経営方針に掲げ、経営目標の達成に取り組んでおります。

 

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(2)経営環境

わが国経済は、2021年度後半に向け緊急事態宣言が解除され正常化に向かい始めたものの、新型コロナウイルスのオミクロン株の流行に加えて、日米金利差の拡大による円安進行や、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化を背景とした資源価格の高騰等、様々なリスク要因により、景気の持ち直しに不透明感が広がりました。

特に宿泊・飲食サービス業等においては、新型コロナウイルス感染の再拡大が繰り返されたことにより、外食、旅行、娯楽関連を中心とした個人消費の減少やインバウンド需要の回復に見込が立たない状態が継続したことから、厳しい状況が続きました。一方で、生産活動は、デジタル化の伸展等を背景とした半導体・電子部品等の需要が拡大するなか、新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品の供給制約が徐々に解消に向かったほか、DXや脱炭素関連投資の拡大を背景とした設備投資も持ち直しの動きがみられました。

先行きについては、新型コロナウイルス感染者数の高止まりや、円安や原油高に伴うインフレ、中国景気の後退等による影響に加え、地政学的リスクの高まり等への注視が必要な状況であるものの、経済活動の正常化は伸展するものと期待されています。

 

(3)中期的な経営戦略

当社グループでは、2021年度から中期経営計画(計画期間3年)をスタートさせ、その中で掲げるビジョン(目指す姿)「お客さまの新しい価値を創造する東京発プラットフォーマーとなる」の具現化に向け、「経営基盤の拡充」と「ビジネス構造の改革」を進めるとともに、きらぼしプラットフォーム(※)の拡充を図っております。

また、グループ力を活かしSDGsの取組みを更に強化することで、地域経済及び地域社会の持続的成長に貢献するとともに、当社グループの経営体力の強化と競争力の向上を実現してまいります。

※きらぼしプラットフォームとは、さまざまなプレーヤーや事業者の皆さまに、当社グループの持つ新たなビジネスやサービスを創出する能力と課題解決力をご提供することで、共通価値やサービスを共に創造する場所です。

 

 

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また、当社グループでは、役職員全員が共通して持つべき意識・価値観・考え方として、「社会貢献、組織の発展、自己実現、自らの幸せを実現させること」を「きらぼしフィロソフィー」として策定しております。同時に、「きらぼしフィロソフィー」を実践する役職員を「きらぼしびと」と定義し、3つの行動指針(“高い志”を持つひと、「どうしたら出来るのか」を常に考えるひと、結果にコミットし、果敢に挑戦し続けるひと)のもと、中期経営計画を高い水準で実現してまいります。

 

 

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当社グループの中核企業であるきらぼし銀行や2022年1月に開業した「UI銀行」等、グループ会社が一体となり、東京発プラットフォーマーとして金融・非金融サービスを提供し、その結果として、トップライン収益の向上並びにOHRやROE等経営指標の改善を目指します。そして、収益性の向上と財務体質の強化を通じ、ステークホルダーの皆さまと共通価値を創造していくとともに、地域経済と地域社会の持続的な発展に貢献してまいります。

 

(4)目標とする経営指標及び進捗状況

2021年度における中期経営計画のKGI(財務目標)につきましては、メイン化取引を推進したことや事業性ファイナンスが増加したこと、また、それに伴う法人の役務取引等利益が堅調に推移したことに加え、経営の効率化により人件費を中心に経費削減を進めたこと等から、ROEや当期純利益、きらぼし銀行のコアOHRおよび顧客向けサービス業務利益など、概ね目標を達成する結果となりました。

 

<中期経営計画のKGI(財務目標)>

項目

2021年度

(参考)2023年度

目標

実績

目標差異

目標

当社

<連結>

ROE

3.2%

5.7%

+2.5%

5.9%

親会社株主に帰属する当期純利益

100億円

181億円

+81億円

200億円

子会社連結利益貢献額

△4億円

1億円

+5億円

23億円

自己資本比率

8.6%

8.4%

△0.2%

8.3%

きらぼし銀行

<単体>

コアOHR

67.0%

65.3%

△1.7%

57.3%

顧客向けサービス業務利益

124億円

126億円

+2億円

234億円

 

 

(5)対処すべき課題等

当社グループはこれまで、グループ会社の整備等によりグループ一体で総合金融サービスを提供するための体制を構築するとともに、店舗・人員・システムを中心とした合理化施策により経費削減を進めるなど、経営の効率化を推進してまいりました。

一方、当社グループを取り巻く経営環境は、少子高齢化やマイナス金利政策に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化していることや、ロシア・ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスク等の顕在化などから先行きの不確実性が増すとともに、生活様式や経済活動の変化に直面しております。また、デジタライゼーションの加速によるお客さまのニーズの多様化やサステナビリティへの意識の高まりを伴って、金融機関に求められる社会的使命も大きな転換期を迎えています。

こうした環境下、当社グループにおいては、ビジネスモデルの構造改革とグループ連携を通じた持続可能な成長モデルの構築が課題であるとともに、グループ統合リスク並びにコンプライアンス管理などガバナンスの強化がこれまで以上に重要になると考えております。

当社グループは、課題に対処するため、以下の項目について取り組んでまいります。

 

(プラットフォームの構築とビジネスモデルの変革)

金融機関における競争環境が変化する中で、金融サービスに加え、ビジネスマッチング等お客さまの本業に結び付く非金融面でのサービス提供に努めてまいりましたが、法人のお客さま同士が協働できる場を創造するとともに、その先にある個人のお客さまも含めたサービスを提供できるエコシステムを構築することで、お客さまの付加価値を高めることが重要になっております。

そのため、法人のお客さまに対しビジネス機会を今まで以上に提供できるプラットフォームを構築していくとともに、DXを推進し、個人のお客さまがニーズに合致した商品やサービスを体験できるビジネスモデルの構築を進めてまいります。

 

(DXの推進)

デジタルマネー「ララPay」と、スマートフォンアプリを通じて金融サービスを提供する「UI銀行」の連携などによる金融ビジネスのデジタル化をはじめ、デジタルを起点とした対面・非対面サービスの融合、金融・非金融サービスのシームレスな提供を実現してまいります。

 

(個人のお客さまへの取組み)

高齢化が進展する中、きらぼし銀行の預金取引の大半を占めるシニア層との信頼関係を次世代につなげるため、外部機関との連携等により、金融と非金融双方でシニア層のニーズへお応えしてまいります。

富裕層、オーナー層などのお客さまが抱える課題に対し、単なる「商品提案」ではなく、「お客さまのゴールを一緒に目指す提案」によるライフプランサポートを行うFD(フィデューシャリー・デューティ)営業を実践してまいります。

 

(法人のお客さまへの取組み)

創業から成長期、再生期に至るまでのお客さまの多様な課題にお応えするため、2022年4月より、更なる専門性の高度化を目的として、不動産ノンリコースローン業務等を担う「RF部」やプライベートエクイティファンド等への出資業務等を担う「PE室」、また、新規開拓に特化しファーストコール(FC)の進化を目指す「FCサービス事業部」などを設置し、体制面の強化を図りました。これまでも進めている、従来型の融資取引にとどまらないストラクチャードファイナンスやメザニンファイナンスをはじめとしたさまざまな形でのご支援に、グループ全体で取り組んでまいります。また、お客さまとのリレーションを深め、取引メイン化を促進するとともに、迅速な対応を図るため、案件検討体制や審査・リスク管理態勢を強化してまいります。

社会的な課題の一つとなっている中小企業の事業承継に対しては、グループ各社の機能を活用し、オーナーさまの意向に沿った解決策の提案を行ってまいります。

 

(サステナビリティへの取組み)

従来からのメニューによる支援(融資や事業再生・事業承継に対する支援等)に加え、SDGsに掲げられるさまざまな社会的課題の解決を新たな収益事業につなげる創造的な活動に対しても、ESG投資の観点から積極的に支援を行ってまいります。また、お客さまの課題解決手段の多様化のため、外部機関との連携強化に努めてまいります。

更に、グループ会社の連携により、医療機関への事業承継支援、資金繰りの安定化、経営支援コンサルティング等を通じた地域医療の持続的成長および社会的課題の解決に貢献してまいります。

 

(経営基盤改革とグループ経営資源配分の最適化)

ブランチ・イン・ブランチによる拠点削減等のコスト削減を進める一方、お客さまのニーズに合わせた拠点の設置、各種合理化・高度化のための前向きな投資を行っており、今後も、店舗・本部の更なる効率化による人員創出、ワークスタイルの変革、DXによる生産性の向上を進めてまいります。

 

(人材育成と人事制度改革)

「きらぼしフィロソフィー」を実践する「きらぼしびと」の育成に向け、3つの行動指針のもと、希望するキャリアデザインに基づく外部派遣制度等による「自発性」の喚起、高度な専門人材を育成する「研修制度」の充実、気づきと学びの場の提供による「自己研鑽」支援などを通じて、お客さまの課題解決につながる、より専門性の高いプロフェッショナル人材の育成や、職員のエンゲージメントの向上を図ってまいります。あわせて、チャレンジをする人、成果を出した人を評価する新たな企業文化を醸成し、市場価値の高い人材の創出に努めてまいります。

 

(グループリスク管理)

グループ事業戦略の堅確な達成を下支えするとともに、「経営ビジョン」の達成と「金融にも強い総合サービス業」への発展に資するため、グループ信用リスク・市場リスク等を的確に管理し、適切なリスクテイクを可能とするリスクマネジメント手法の高度化を図ってまいります。また、利便性と安全性の高いサービスを提供するため、価値創造とリスクマネジメントの両面からサイバーセキュリティ対応に取り組んでまいります。

今後、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化に加え、ロシア・ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスク等の顕在化による原材料価格の高騰等により、企業収益及び資金繰りへの影響が懸念されます。当社グループは、引き続き、きめ細やかな金融支援機能およびコンサルティング機能の発揮により事業支援を図ってまいります。

 

(コンプライアンス)

コンプライアンスを経営上の最重要課題の一つと捉え、コンプライアンス重視の企業風土の醸成を進めることで、業務の健全性と適切性の確保に努めております。

株主の皆さまに信認され、お客さまや社会から信頼される地域金融グループとしての社会的責任を果たしていくため、徹底したグループベースでのコンプライアンス管理態勢の構築に努め、リスクオーナーシップの確立など企業倫理が徹底・浸透できる態勢の構築を更に進めてまいります。

 

(コーポレート・ガバナンス)

コーポレート・ガバナンスを経営の最重要課題の一つとして捉え、社外役員・外部有識者の知見も活用したうえでグループ経営管理態勢や監督機能の強化を進めるとともに、業務運営に際し透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うためコーポレート・ガバナンス機能の充実を図り、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。

 

(外部環境の変化への対応)

新型コロナウイルス感染症の影響の長期化に加え、ロシア・ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスク等の顕在化による原材料価格の高騰等、先行きの不透明感がみられ、地元企業等への影響が懸念されますが、このような緊急事態の時こそ、「地元企業等の資金繰りを安定させる」という社会的使命を果たすことが地域金融グループの存在意義であると改めて強く認識し、中小企業の皆さまの資金繰りや業況の変化に対して、引き続き迅速かつ適切に対応できる支援体制の強化を図ってまいります。更に、中小企業経営のホームドクターの役割を担う地域金融グループとして、適切に金融及びコンサルティング機能を発揮してまいります。

また、職員への対応といたしましては、在宅勤務やモバイルワークの実践等により同一拠点内の同時感染リスクを軽減し、グループ職員の健康に最大限配慮した上で、業務を継続できる態勢を維持しております。

 

 

 

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