課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループでは、2022年4月に経営理念体系を刷新し、パーパス(存在意義)として「金融の力を解き放つ」を、ミッション(使命)として、「金融に倫理を、人生に自由を」を掲げております。金融商品の流通を担うプレイヤーとして、お客様に最適な金融商品を提供するだけでなく、お客様の想い=ライフプランを実現するための一連のコンサルティングプロセスの品質及びお客様の金融リテラシー向上に資する様々な金融知識及び情報提供が価値提供の源泉であると考えております。

当社グループでは、自らを「フィナンシャルパートナー」と位置づけ、一つの業態にとらわれずに金融サービスを開発し、真にお客様にとって最適なサービスを提供してまいります。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、企業価値向上のため、売上高及び営業利益の継続的な成長を目指してまいります。

指標設定の理由は以下のとおりです。

a.売上高

 当社グループでは、個人顧客を中心とした顧客数の拡大によって事業の成長を図ってまいります。顧客数の拡大は経営成績上では売上高に反映されるため、売上高を重要な経営指標として設定しております。

 

b.営業利益

 当社グループの本業はフィナンシャルパートナー事業であり、本業の収益性を注意深く追っていく必要があると考えております。従って、段階利益の中で営業利益を重視し、経営指標として設定しております。

 

c.営業利益率

 売上高の成長に伴う形で営業利益の継続的かつ安定的な成長を目指しており、売上高営業利益率を重要な経営指標として設定しております。

 

d.自己資本利益率

 当社グループでは、株主にとっての投資価値の観点から、利益の成長を通じた中長期的な企業価値の向上と資本効率向上の両立を目指しており、自己資本利益率を重要な経営指標として設定しております。

 

(3)経営環境及び中長期的な経営戦略

①経営環境

 我が国では少子高齢化の進展に伴い、「人生100年時代」と呼ばれる高齢化社会を迎えようとしており、パーソナルファイナンスの領域においては、資産形成に向けた自助の必要性が高まっております。

 このような環境の下、金融サービス事業者が採択すべき原則として「顧客本位の業務運営に関する原則」がありますが、2020年9月に公表された改訂案では、顧客に相応しいサービスの提供(原則6)として、顧客のライフプラン等を踏まえた業横断的な商品の提案及び商品提供後のフォローアップの実施について追加されました。

 また、2021年11月の金融サービス仲介業の創設により、単一の認可で保険・証券・銀行代理業に係る商品の取扱いが可能となりました。顧客は単独の仲介業者から業横断的にワンストップサービスを受けられるようになるため、金融サービスの利用にあたり顧客の利便性は高まるものと考えております。現在、金融サービス仲介業の登録者数は3社ですが 注1、今後もIT企業やフィンテック企業等の参入が想定され、各社独自のデジタルサービス等と関連付けながらサービス提供することが考えられます。他方で当社グループでは既に保険・証券・銀行代理業に係る商品を取り扱っている他、一連の金融サービス提供プロセスにおいて、コンサルティングサービス提供部分については人(コンサルタント)の価値が発揮されるものであると当社グループでは考えており、フィンテック企業等が提供すると考えられるサービスとは異なるものと推測していることから、本書提出日時点においては金融サービス仲介業への登録の予定はありません。当社グループではこれまでライフプランニングを土台に顧客の想いに寄り添いながらコンサルティングサービスを提供してまいりましたが、今後も金融サービスにおける人(コンサルタント)の価値を高めることで金融サービス仲介業者とは異なる価値提供を図ってまいります。

 以上のように、金融サービス仲介業の創設により業界全体で健全な競争が促されるものと想定されますが、顧客の中でワンストップサービスに対する理解が浸透し、当社グループの事業コンセプトの認知も高まる可能性があるものと考えております。

 他方、当社グループのメインターゲットとなるのは世帯年収が300万円以上2,000万円未満(世帯所得では約200万円以上1,200万円未満)の世帯(一般的な勤労者世帯)であり、我が国の全世帯の中で70%以上(推定約4,200万世帯)注2にのぼると推測されます。当該世帯層に対しては、保険・証券・住宅ローンの各専業仲介業者がメインプレイヤーとしてサービスを提供しているものと考えられますが、各業者が専業の範囲内でサービスを提供していることから家計全体に対して包括的なニード喚起を受ける機会は必ずしも多くなく、当世帯層の顧客の多くは金融商品に対するニーズが潜在化しているものと考えられます。これにより当社グループのサービスの提供余地は多く残されており、当社グループの事業は高い成長性を有していると考えております。

注1.金融庁/金融サービス仲介業者登録一覧(2022年3月29日現在)

注2.厚生労働省/国民生活基礎調査(2019年)所得の分布状況 及び総務省/住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(日本人住民及び複数国籍/令和3年1月1日現在)より世帯年収ベースとして当社推計

 

②中長期的な経営戦略

 これらの環境を背景に、当社グループでは「ライフイベントに最適な金融ソリューションを提供する」という事業コンセプトに沿って、より付加価値の高いサービスの提供を目指してまいります。具体的には次のとおりです。

a.健全な組織拡大及びアポイント収益性の向上によるフィナンシャルパートナー事業の基盤強化

 新型コロナウイルス感染症の影響下において、オンライン面談によるコンサルティング体制を早期に構築したことを受け、2022年3月期の新規相談受付件数は23,953件と過去最高となりました。ライフプランニングの実施の他、家計の見直しや保障・投資といった分野での金融サービスに対するニーズが高まっていることを受け、コンサルタントを中心とした人材の採用及び育成に積極的に投資し、今後も増加が予想されるご相談に対し、コンサルティング体制の強化を図ってまいります。

 同時に広告宣伝活動及び広報活動の強化を通じ、より収益性の高い当社グループ単独での見込み客獲得量を増加させることにより、アポイントの収益性向上も図ってまいります。

 これら双方の取組みによりフィナンシャルパートナー事業の収益基盤の強化を図ってまいります。

 

b.再販機会創出による顧客のライフタイム・バリュー(LTV)の向上

<サービスアクセス環境の整備>

 当社グループの主要顧客層は20代から40代のファミリー層でありますが、当該世代はITに親しく、日常的な消費行動の多くがスマートフォン等の情報端末を通じて行われており、金融サービス領域においても同様の行動が今後増加すると考えられます。

 当社グループでは、当社で開発したライフプランニングに関するWebサービス「マネパス」及びオンライン面談システム「broadtalk」に代表されるデジタルプロダクトを活用し、顧客接点を形成することでサービスに常時アクセスできる環境を整備し、顧客の任意のタイミングで最適なソリューションを提供する体制を整えてまいります。

 

<顧客データの活用によるアフターフォロー体制の強化>

 2022年3月期末における保有顧客数は71,947世帯となり、今後も顧客データは増加し続けることが見込まれます。当社グループでは自社でコールセンター機能を有しておりますが、保有顧客の契約データやライフプランデータを活用し、新商品情報の提供等も含めたアフターフォロー機能を強化してまいります。

 

<多様な金融ニーズに対応するための提案力の強化>

 当社グループの主要顧客層の多くは、ライフステージの特性上、保障性商品を中心とした生命保険の契約により顧客関係が開始されます。他方、既存顧客が年齢を重ねることで今後50代以上のリタイアメント準備層及びリタイアメント層の増加が見込まれることから、全ての年代の金融ニーズに対応することが必要となると考えております。

 当社グループでは、リタイアメント準備層及びリタイアメント層で高まると予想される資産運用及び資産保全ニーズや、セカンドライフ以降で希望するライフスタイルの実現に適したソリューションの提案力を高めてまいります。

 他方で一定水準以上の収入や資産を保有する顧客においては、一般的なファミリー層とは異なる金融ニーズが存在します。相続や事業承継等が代表的なテーマとなりますが、当該テーマ等に付随する一連の課題に対し、当社グループのソリューションを統合することによるコンサルティングを強化する他、当該顧客層との接点形成も同時に強化してまいります。

 

c.当社グループの強み・資産を活かした新領域へのチャレンジ

 当社グループでは、ワンストップサービスの提供を通じて保険・証券・住宅ローン・不動産といった金融商品に関する幅広い知見を有している他、税や社会保障制度、金融経済知識等の付随する知識・情報を顧客に提供してまいりました。加えて顧客に対する深い洞察や、これらを統合・体系化した上で「コンサルタント教育」に応用する知見も同時に有しております。

 今後、このような当社グループの強みや「broadtalk」や「マネパス」に代表されるデジタルプロダクトを統合し、「金融リテラシーの向上」、「金融サービス事業者向けの課題解決」といったテーマを中心にBtoC向け・BtoB向けの新規事業開発を目指し、新たな収益モデルの確立を図ってまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①当社グループのサービスの認知度向上

 当社グループでは1人でも多くのお客様と接点を持つことが継続的な課題であり、消費者及び提携先等からの認知度を高める必要があると考えております。当社グループの提供価値は、パーソナルファイナンスの領域において、今後も我が国ではより一層求められるものだと考えております。そこで、当社グループの提供価値を、広く適切に伝える必要があると考えております。具体的な対応策として、Webプロモーションを中心とした広告宣伝活動に注力する他、広報活動を強化してまいります。

 

②優秀な人材の確保及び育成

 営業部門組織の質・量の拡大を目的に優秀な人材の確保及び育成が継続的な課題であり、採用市場の変化を捉えながら採用手法の多様化を進めることで候補者との接点拡大を図る他、当社グループ事業の独自性や職場としての魅力を訴求することで採用効率の向上及び定着を図ってまいります。

 

③サービスのデジタル化に向けての体制構築

 マーケティングやコンサルティング、アフターフォローといった価値提供プロセスのデジタル化が中長期的な戦略の実行を加速させるための重要課題であり、ITやテクノロジーに対し深い知見を有する社外リソース等も柔軟に活用しながら、サービス開発体制の構築を図ってまいります。

 

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