文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「ファンドの力で日本の今を変える」をミッションに掲げ、3つの経営理念「クロスボーダー(国の壁、心の壁、世代の壁を超えて)」、「世界に冠たる投資グループへ」、「5年後の常識」の下、経営に取り組んでおります。
「クロスボーダー(国の壁、心の壁、世代の壁を超えて)」では、あらゆる垣根を超え、日本の強みを基盤として世界に広がる成長分野や成長可能性への投資を中心に、産業界・投資業界の幅広いネットワークを通じ、ユニークな投資機会を見出すことを目的としております。
「世界に冠たる投資グループへ」では、オルタナティブ(代替)投資でのアルファ(超過利得)の獲得を追求し、投資資金が有効に使われて循環することで、ファンドの投資家のみならず、投資先並びに当社グループの株主をはじめ様々なステークホルダーの皆様にリターンを分配する、世界に冠たる投資グループを目指します。
「5年後の常識」では、今は意識されていないけれども、5年後には当たり前になっている、そういった分野に取り組み開発していくことが、当社グループの将来を切り開いていくものと考えます。
(2)中長期的な経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、東京証券取引所への上場時及び市場変更時の新株発行により調達した自己投資資金を活用し、新たにバイアウト投資戦略及びキャッシュ・フロー投資戦略を策定するとともに、当該戦略に基づく新規ファンドを組成することで、マルチストラテジーのファンド運用会社の基盤を確立してまいりました。
当該実績を踏まえ、今後の5年間は、①上場前後に組成した基幹ファンドからの成功報酬最大化を図るとともに、②新ファンド組成による管理報酬の底上げを図る期間と位置付け、5年後の最終連結会計年度において、5年平均当期純利益を20億円以上、及び自己資本を2018年12月末の1.5倍とすることを目標としております。
具体的には当社グループの基幹ファンド(コアファンド)であるバイアウトファンドにおけるファンドレイズ、Spring REITにおける新規資産の組入、資産投資分野におけるエネクス・インフラ投資法人やインフラ・ウェアハウジングファンド等の新たな基幹ファンド(コアファンド)の組成及びファンドレイズに注力します。加えて、外部パートナーとの連携による、その他のアセットクラスを含めた取り組みとして、事業法人の戦略投資に対応したソリューション事業(BizTechファンド事業やタイを含むASEAN地域への投資管理サポート事業)、航空機リースファンド事業(事業会社に航空機投資の機会を提供)、太陽光開発ファンド事業(海外インフラ事業への展開)、インバウンド不動産投資ファンド事業、債権ファンドやバリュー投資ファンド事業等の新規企画事業(既存プロダクトからの横展開を含む)も推進することにより、成功報酬の最大化、管理報酬の底上げ及び自己投資の拡大を図っていく方針です。
(単位:億円)
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2017年12月期 |
2018年12月期 |
2019年12月期 |
2020年12月期 |
2021年12月期 |
5年平均当期純利益 |
8.3 |
10.2 |
11.2 |
11.0 |
11.9 |
自己資本 |
104.3 |
115.2 |
121.7 |
119.1 |
151.1 |
(注)1.5年平均当期純利益は、5年平均の親会社株主に帰属する当期純利益であり、当社の事業サイクル及び成功報酬等が損益へ与える影響を考慮した結果、単年度損益よりも5年間の平準化された損益が、当社業績の実態を把握する指標として有用と考えております。
2.自己資本は、株主資本及びその他の包括利益累計額の合計額であり、親会社株主に帰属する当期純利益の積み上げであることから、ファンド運用会社としての安定性を把握する指標として有用と考えております。
3.2014年12月期以降の連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき有限責任 あずさ監査法人により監査を受けておりますが、2013年12月期以前につきましては監査を受けておりません。このため、2017年12月期の5年平均当期純利益は、一部監査を受けていない数値をもとに算定しております。
4.当社は、2021年7月1日に単独株式移転により株式会社マーキュリアインベストメントの完全親会社として設立されたため、株式会社マーキュリアインベストメントの連結財務諸表をもとに算定しております。
(3)経営環境及び対処すべき課題
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、国内外経済の下振れリスクや金融市場の変動など、先行き不透明な状況が続いております。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う産業構造の変化というマクロ環境の大きな変化に加えて、東京証券取引所の市場区分の見直しも予定されています。
このような環境を踏まえ、当社グループでは中長期的な成長を目指し、既存ファンドにおいては投資リターンの向上による成功報酬の最大化を図るべく、引き続き投資先企業の支援やモニタリングの強化に努めていくとともに、新規ファンドにおいては、管理報酬の底上げを行うべく、マクロ環境に沿った投資戦略に基づく事業企画を行い、投資家層を拡大することで基幹ファンド化を進めることが必要であると考えております。併せて、今後の事業拡大を見据え、業務運営の効率化、上場会社及び金融商品取引業者としての法令遵守、リスク管理、投資家とのコミュニケーションを図るための経営管理体制の充実が必要であると考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、常態化するとの想定により、現時点においては、営業投資有価証券及び営業貸付金の評価を通した短期的な業績への影響はあるものの、長期的な業績への影響は限定的であるものと判断しております。
①事業機会の機動的な獲得による更なる成長機会の追求
当社グループは設立以来、①成長投資戦略、②バリュー投資戦略、③バイアウト・承継投資戦略、④不動産投資戦略及び⑤キャッシュ・フロー投資戦略等の多様な投資戦略を、その時々のマクロ環境に応じて策定し、それに基づくファンドを組成・運用してきた結果、現在のマルチストラテジーのファンド運用会社としての基盤を確立しました。
2016年の東京証券取引所への上場以降は、①人口の高齢化にともなう事業承継や上場企業による事業の選択と集中ならびに支配構造の変化を支援することを目的に、株式会社日本政策投資銀行及び三井住友信託銀行株式会社を主要投資家として組成した「マーキュリア日本産業成長支援投資事業有限責任組合(バイアウト1号ファンド)」、②不動産・物流分野でテクノロジーを切り口とした事業成長を促進することを目的に伊藤忠商事株式会社とともに組成した「マーキュリア・ビズテック投資事業有限責任組合」、③脱炭素のために開発の加速が期待されている再生可能エネルギー発電設備等を対象に、資産規模の拡大と安定したキャッシュ・フローの創出を目的として、伊藤忠エネクス株式会社、三井住友信託銀行株式会社、マイオーラ・アセットマネジメントPTE. LTD.と共同で組成した「エネクス・インフラ投資法人(東京証券取引所インフラファンド市場上場)」などの新ファンドを順調に展開してきたほか、④中国北京市の中心的なオフィスビル等へ投資を行う「Spring Real Estate Investment Trust(香港証券取引所上場)」等の既存ファンドの運用も安定的に行っております。
2022年12月期は、日本における高齢化が継続する中、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により加速した中堅・中小企業の事業承継問題に対応するバイアウト2号ファンドの組成やインフラファンドの経験を海外に拡げた台湾太陽光発電開発ファンドの組成を進める計画ですが、これらの計画を着実に実行することに加えて、ポストコロナで予想されるマクロ的な産業構造の変化において、新たな切り口で事業機会を機動的に獲得することが、当社グループの更なる成長に向けた重要な経営課題と考えております。
これらの課題に対処するために、事業パートナーとの連携やM&A等の可能性を視野に入れ、持株会社プラットフォームを一層強化することによって、迅速かつ柔軟な経営判断やグループ内の経営資源を機動的に活用できる体制を整備することが必要不可欠と考えております。
②オルタナティブ資産投資に対する理解の促進
当社グループはマルチストラテジーのファンド運用会社ですが、ファンドにおける主たる投資対象はプライベート・エクイティ、インフラストラクチャー、不動産等のオルタナティブ資産になります。オルタナティブ資産は、国内外の株式、債券という伝統的な市場金融商品に対して、長期の投資期間を必要とし、流動性は劣りますが、投資対象を適切に管理することにより高いリターンが見込まれます。
欧米を中心とする海外では、オルタナティブに対する理解が進み、投資家のポートフォリオにおけるオルタナティブ資産の割合が高まっておりますが、日本では海外と比較して、オルタナティブ投資に対する理解が進んでおらず、社会的には、事業承継などのオルタナティブ投資資金へのニーズが高まっているにも関わらず、機関投資家に対するオルタナティブ投資の浸透は依然として低い水準にあります。今後の当社グループが事業拡大を図り、投資家層を拡大する上においては、日本の構造変化に対して当社グループのようなオルタナティブファンドマネージャーが果たしている役割に対する社会や市場からの理解を高めることが重要な経営課題であると考えております。
これらの課題に対処するために、当社グループはオルタナティブ投資における国内のリーディングカンパニーとして、IR/PR活動において、ニュースリリース、セミナー等を通じてオルタナティブ投資に対する理解を促進するための積極的な情報発信を行うとともに、Spring REITやエネクス・インフラ投資法人に続く投資戦略を投資機会として提供し続けるべく、「ファンドの力で日本の今を変える」という当社グループのミッションの達成のために、当社グループの活動に対する社会的認知を促進していくことが必要不可欠と考えております。
③プライム市場の上場維持基準適合へ向けて
当社は2022年4月より予定されております東京証券取引所の市場再編において、プライム市場を選択しましたが、現在においてはプライム市場の上場維持基準である流通株式時価総額100億円以上の基準を充たしていない状況にあります。今後、当社が中長期的な企業価値の向上を図る上においては、その前提として当社がプライム市場の上場維持基準を充足することが重要な経営課題になるものと考えております。
これらの課題に対処するために、プライム市場の上場維持基準の適合に向けた計画書の中では、①成功報酬の最大化、管理報酬の積み上げ、自己投資収益の拡充による中期目標の達成、②ミッション及び経営理念を基礎としたIR/PRの充実による市場評価の浸透、③持株会社をプラットフォームとした機動的な資本政策による成長基盤の確立を図ることを公表しております。
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