(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当社が属するECの国内市場規模は、経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)(2021年7月公表)」によりますと、BtoC市場が2020年で19.3兆円(前年比0.4%減)、BtoB市場が334.9兆円(前年比5.1%減)、CtoC市場が1.9兆円(前年比12.5%増)となっています。このような状況の下、当社はプラットフォーム型ビジネスの展開を事業コンセプトに据え、決済ソリューション事業として、BtoC取引向けサービスの「NP後払い」、「atone」及び「AFTEE」、並びにBtoB取引向けサービスの「NP掛け払い」のサービス構築及び普及に力を注いでまいりました。
営業活動におきましては、新規加盟店の獲得を目的に、大手EC事業者及び他決済プラットフォーマーとのサービス連携を積極的に推進してまいりました。また、BNPL(Buy Now Pay Later)以外の決済・他金融、リテール等の分野で国内トップクラスのネットワークを有するパートナーとのアライアンスを戦略の主軸に据え、提携の拡大に取り組んでまいりました。ディープラーニングを活用した即時に与信判断が可能な与信システムを開発したことで、新規案件の獲得は順調に進んでいます。
当社グループでは、経営上の重要指標として、年間取扱高(GMV:当社グループ決済サービスの流通取引総額)を掲げており、過去2年間におけるサービス別の年間取扱高の推移は以下の通りです。
(サービス別年間取扱高)
サービスの名称 |
第3期連結会計年度 (自2020年4月1日 至2021年3月31日) |
第4期連結会計年度 (自2021年4月1日 至2022年3月31日) |
|
BtoC取引向け サービス |
取扱高(百万円) |
362,871 |
374,606 |
前年同期比(%) |
120.0 |
103.2 |
|
BtoB取引向け サービス |
取扱高(百万円) |
75,281 |
97,982 |
前年同期比(%) |
127.1 |
130.2 |
|
当社グループ 全体 |
取扱高(百万円) |
438,152 |
472,589 |
前年同期比(%) |
121.1 |
107.9 |
当社グループの加盟店数は数万社にわたるため、特定加盟店への依存度が低い一方で、マクロ環境の変化を通じたEC・決済市場への影響を受けやすい事業構造となっています。
BtoC取引向けサービスにつきましては、当社加盟店が主に属する美容・健康・衣料関連業界において、前期に新型コロナウイルス感染症の影響を受けたEC消費の大幅増加がございましたが、当期においてはその反動により一時的な消費の鈍化が生じました。加えて当期下半期において、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の一部改正に伴い美容・健康関連業界の加盟店が新規広告出稿を急速に抑制したため、当社取扱高の成長が一時的に鈍化しました。
BtoB取引向けサービスにつきましては、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の影響を受けた業界の加盟店の取引は一時的に停滞したものの、成長著しいIT・ベンチャー企業等での取引が順調に拡大しました。
上記の結果、当期における当社グループ全体の年間取扱高は472,589百万円(前期比7.9%増、34,436百万円増)となりました。
かかる状況下において、当社グループでは与信・督促業務の改善及び効率化に努め、各種取引費用及び貸倒関連費用の抑制に取り組んだ結果、当期における売上総利益(non-GAAP指標)は7,469百万円(前期比10.6%増、716百万円増)となりました。また、当社株式の東京証券取引所への新規上場を好機とし、広告宣伝及びその実行に必要となる人材採用・業務委託等の先行投資を本格化しました。新規上場に伴う上場準備費用として当期に272百万円を計上しています。更に、金利負担及び財務制限条項の緩和軽減を目的として、借入金のリファイナンスを当期末に完了しています。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は18,665百万円(前期比3.1%増、559百万円増)、営業利益は897百万円(前期比34.7%減、477百万円減)、税引前利益は630百万円(前期比27.8%減、243百万円減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は235百万円(前期比59.1%減、339百万円減)の増収減益となりました。
EBITDA(non-GAAP指標)は2,246百万円(前期比12.4%減、316百万円減)となりました。EBITDAに上場準備費用及びマーケティング関連費用を足し戻した調整後EBITDA(non-GAAP指標)は3,000百万円(前年同期比8.3%増、230百万円増)となりました。
当社は投資家にとって当社グループの業績を評価するために有効であると考える指標として、当社が適用する会計基準であるIFRSにおいて規定されていないnon-GAAP指標を追加的に開示しています。
non-GAAP指標 |
指標の内容 |
GMV |
当社グループ決済サービスの流通取引総額 |
売上総利益 |
売上収益より、営業費用のうち貸倒関連費用及び請求にかかる費用(印刷代、収納代行費用、郵便料金)等を減じた額 |
EBITDA |
営業利益+減価償却費・償却費+株式報酬費用+固定資産除却損+減損損失-減損損失戻入益 |
調整後EBITDA |
EBITDA+上場準備費用+マーケティング費用※ |
※マーケティング費用 |
販売促進費(代理店手数料を除く)+広告宣伝費 |
なお、当社グループは決済ソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしていません。
② 財政状態の状況
a.資産
当連結会計年度末における資産合計は、53,037百万円(前連結会計年度比8,117百万円増加)となりました。
流動資産は34,631百万円(同6,894百万円増加)となりました。これは主に、当期の財務活動に伴い現金及び現金同等物が3,814百万円増加したこと、また取扱高の増加等に伴い営業債権及びその他の債権が2,861百万円増加したことなどによるものです。
非流動資産は18,405百万円(同1,222百万円増加)となりました。これは主に、貸倒引当金の増加等に伴い繰延税金資産が648百万円増加したこと、また本社オフィス等に関する賃貸借契約の更新に伴い使用権資産が増加したことにより有形固定資産が578百万円増加したことなどによるものです。
b.負債
当連結会計年度末における負債合計は、34,394百万円(前連結会計年度比15百万円減少)となりました。
流動負債は29,039百万円(同996百万円増加)となりました。これは主に、取扱高の増加等に伴い営業債務及びその他の債務が2,971百万円増加した一方で、負債性金融商品の償還等によりその他の金融負債が2,070百万円減少したこと、またタームローンの返済により短期借入金が500百万円減少したことなどによるものです。
非流動負債は5,354百万円(同1,012百万円減少)となりました。これは主に、リファイナンスの実施により長期借入金が1,310百万円減少したことなどによるものです。
c.資本
当連結会計年度末における資本の残高は、18,642百万円(前連結会計年度比8,132百万円増加)となりました。これは主に、第三者割当増資の実施等に伴い、資本金が3,995百万円増加、資本剰余金が3,867百万円増加し、また当期利益の計上により利益剰余金が235百万円増加したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ3,814百万円増加の12,119百万円となりました
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は951百万円(前連結会計年度比5,397百万円減少)となりました。
これは主に、営業債務及びその他の債務の増加額2,971百万円(前年同期比1,798百万円減少)が前連結会計年度と比較して低水準に留まった一方で、資金の減少要因となる営業債権及びその他の債権の増加額2,861百万円(前年同期比2,038百万円増加)及び法人所得税の支払額890百万円(前年同期比888百万円増加)については前連結会計年度と比較して増加したためです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は767百万円(前連結会計年度比126百万円減少)となりました。
これは主に、無形資産の取得による支出799百万円(前年同期比105百万円増加)及び差入保証金の回収による収入52百万円(前年同期比49百万円増加)等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、獲得した資金は3,625百万円(前連結会計年度比5,519百万円増加)となりました。
主な増加要因としては、株式の発行等による収入7,854百万円(前年同期比1,953百万円増加)及びリファイナンスに伴う長期借入金による収入5,000百万円(前年同期比1,855百万円減少)によるものです。主な減少要因としては、リファイナンスによる長期借入金の返済による支出6,855百万円(前年同期比1,000百万円減少)、負債性金融商品等の取得による支出1,994百万円(前年同期比299百万円増加)、リース負債の返済による支出379百万円(前年同期比11百万円増加)等によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しています。
b.受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しています。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は以下の通りです。なお、当社グループは決済ソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしていません。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
決済ソリューション事業 |
18,224 |
103.7 |
(注) 上記の金額には消費税等は含まれていません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、本提出日現在において判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループは第1期連結会計年度(2018年7月2日から2019年3月31日)より従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しています。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断していますが、判断時には予期し得なかった事象等の発生により、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表 注記3.重要な会計方針及び注記4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載していますが、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、以下の会計方針は連結財務諸表における重要な見積りの判断に影響を及ぼすものと考えます。
(貸倒引当金)
当社グループは、主に将来の債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率等を勘案して必要額を、貸倒懸念債権等の特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上していますが、ユーザーの支払が遅延、その支払能力が低下した等の場合には追加の引当金が必要となる可能性があります。
(のれんの減損)
当社グループは、のれんの減損の判断をする際に、のれんが配分された資金生成単位について、回収可能価額の見積りが必要となります。使用価値の見積りにあたり、資金生成単位により生じることが予想される将来キャッシュ・フロー及びその現在価値を算定するための割引率を見積っています。仮に、資金生成単位により生じると予想したキャッシュ・フローが減少した場合又は現在価値を算定するための割引率が上昇した場合には減損損失が発生又は増加する可能性があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(財政状態)
第4期連結会計年度における財政状態とそれらの要因につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載しています。
(経営成績)
第4期連結会計年度における経営成績とそれらの要因につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しています。
(キャッシュ・フロー)
第4期連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
(資本の財源及び資金の流動性)
a.資金需要
当社グループにおける主な資金需要は、決済関連事業の拡大に伴い増加する運転資金やシステム開発費等によるものです。
b.財務政策
主に、手元資金に加えて、運転資金については金融機関からの借入により必要な資金を調達しています。資金調達については事業計画に基づく資金需要・金利動向等の調達環境を考慮の上、調達の規模・手段について資金計画を作成し、状況を適宜判断し実施しています。
(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループでは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、年間取扱高及び購入者による未払い率を掲げています。それぞれについて以下の通り記載します。
a.年間取扱高
第4期連結会計年度末におけるBtoC取引向けサービスの年間取扱高は374,606百万円(前期比3.2%増)、BtoB取引向けサービスの年間取扱高は97,982百万円(前期比30.2%増)となりました。主な増加要因は、BNPL以外の決済・他金融、リテール等の分野で国内トップクラスのネットワークを有するパートナーとのアライアンス戦略を主軸に据え、大手EC事業者及び他決済プラットフォーマーとサービス連携を行うことに加え、ディープラーニングを活用した即時に与信判断が可能な即時与信システムを開発することでコンペにおける新規案件獲得増加に寄与したことによるものです。今後は再構築した営業体制の強化及びアライアンス先等の外部資産の活用、マーケティング投資の実行等を引き続き行うことにより、更に取扱高を拡大してまいります。
b.未払い率
NP後払いサービスに係る未払い率(18か月を超えて未払いとなった取引額の割合(貸倒処理前のものを含む))は0.52%(前期は0.65%)となりました。主な減少要因は、与信・督促業務の改善によるものです。今後は一層の与信・督促業務の改善を講じることにより、更なる低減を図ってまいります。
(参考情報)
当社グループは、経営成績の推移を把握するために、以下の算式により算出されたEBITDA、調整後EBITDAを重要な経営指標として位置づけており、各指標の過去2期間における推移及び今後の見通しは以下の通りです。
(単位:百万円)
決算期 |
第3期連結会計年度 |
第4期連結会計年度 |
(自2020年4月1日 至2021年3月31日) |
(自2021年4月1日 至2022年3月31日) |
|
営業収益 |
18,106 |
18,665 |
営業利益 |
1,374 |
897 |
+減価償却費・償却費 |
1,242 |
1,315 |
+株式報酬費用 |
13 |
8 |
+固定資産除却損 |
26 |
25 |
-減損損失戻入益 |
△93 |
- |
EBITDA |
2,563 |
2,246 |
(調整額) |
|
|
+上場準備費用(注4) |
15 |
272 |
+マーケティング費用(注5) |
190 |
481 |
調整額小計 |
205 |
753 |
調整後EBITDA |
2,769 |
3,000 |
対営業収益比率 |
15.3% |
16.1% |
(注)1.EBITDA=営業利益+減価償却費・償却費+株式報酬費用+固定資産除却損-減損損失戻入益
2.調整後EBITDA=EBITDA+上場準備費用(注4)+マーケティング費用(注5)
3.EBITDA、調整後EBITDAはIFRSにより規定された指標ではなく、当社グループが、投資家にとって当社グループの業績を評価するために有用であると考える財務指標です。当該財務指標は、上場後には発生しないと見込まれる費用や非経常的損益項目(通常の営業活動の結果を示していると考えられない項目、あるいは競合他社に対する当社グループの業績を適切に示さない項目)の影響を除外しています。分析手段としては重要な制限があることから、IFRSに準拠して表示された他の指標の代替的指標として考慮されるべきではありません。当社グループにおけるEBITDA、調整後EBITDAは、同業他社の同指標あるいは類似の指標とは算定方法が異なるために、他社における指標とは比較可能でない場合があり、その結果、有用性が減少する可能性があります。
4.上場準備アドバイザリー費用、上場のためのIFRS導入・適時開示体制構築に関する費用、上場準備に関する弁護士報酬等の上場関連の一時的な費用です。
5.マーケティング費用=販売促進費(代理店手数料を除く)+広告宣伝費
当社グループでは、2022年3月期以降、新規加盟店の獲得を主な目的とした大規模なマーケティング施策を段階的に実施していく計画を有しています。当該マーケティング施策については、2022年3月期以降に見込む費用規模が2021年3月期以前の実績値と比較しても大きく、また当該施策が営業収益の獲得に結びつくまでに一定の期間を要する先行投資の要素を持つ施策であると当社グループでは認識しています。そのため、当該施策の影響を除外した評価指標を提供することを目的に、調整後EBITDAの調整項目にマーケティング費用を含めています。
お知らせ