当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の普及による行動制限の緩和に伴う経済活動の進展や、各国の金融・財政政策の実施により、景気の回復がみられました。一方で、長期化する半導体をはじめとする部品供給不足や原油・原材料価格高騰などサプライチェーンの混乱に加え、ウクライナ情勢の悪化や、各国のインフレ高進と政策金利引き上げ、中国での「ゼロコロナ政策」の長期化が、さらに不確実性を招き、先行きは不透明な状況となりました。我が国経済においては、新型コロナウイルス感染者数が減少し、景気の持ち直しがみられたものの、新たな変異株による感染拡大や、長期化するサプライチェーンの混乱、円安の進行など、依然として不透明な状況となりました。
このような経営環境の下、当社グループは、2021年6月に開示した「東京計器ビジョン2030」における中期事業計画の基本方針である「事業領域の拡大」、「グローバル化の推進」、「既存事業の継続的強化」に取り組んでまいりました。
「事業領域の拡大」につきましては、防衛・通信機器事業において、当社のコア技術の一つであるマイクロ波応用技術により開発した、国産小型SAR衛星に搭載するマイクロ波増幅器の量産を進めました。
「グローバル化の推進」につきましては、防衛・通信機器事業において、沿岸監視用高分解能半導体レーダーSeaKuを海外向けとして欧州に初めて納入・設置しました。更に、この納入に続き欧州向け河川監視用のリバーレーダーでも採用が決まるなど、海外への販売を推進しました。
「既存事業の継続的強化」につきましては、船舶港湾機器事業において、在来船市場での売上増・シェアアップのための戦略製品となる新型電子海図情報表示装置(ECDIS)の開発を進め、2022年度期初からの販売を開始しています。
以上の結果、当社グループの当連結会計年度における業績につきましては、船舶港湾機器事業、油空圧機器事業、流体機器事業、その他の事業が増収であったものの、防衛・通信機器事業において、防衛事業が当期まで案件の谷間であったことから大きく減少となり、全体として売上高は減収となりました。一方で、主要事業において原価率が改善したことを主因に、営業利益は前期比で大きく増加し、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も大幅な増益となりました。
当連結会計年度の業績結果は以下のとおりです。
(単位:百万円)
セグメントの業績は、次のとおりであります。
〔船舶港湾機器事業〕
(単位:百万円)
<売上高の状況>
国内商船市場及び東アジアを主とした海外市場で、新造船向け機器販売と保守サービスが堅調に推移した結果、売上高は前期比で増収となりました。
<営業利益の状況>
原価率の改善及び為替が円安に推移したことより、営業利益は前期比で増益となりました。
<新製品の状況>
商船市場向けに、センサー部に定期交換の必要な可動部分が無い、光ファイバージャイロコンパスTF-900を、市場投入しました。
〔油空圧機器事業〕
(単位:百万円)
<売上高の状況>
自動車関連設備需要が回復したプラスチック加工機械市場が好調に推移したほか、国内外、特に中国で需要が回復した工作機械市場、国内需要が回復基調の建設機械市場と海外市場が堅調に推移した結果、売上高は前期比で増収となりました。
<営業利益の状況>
原材料価格高騰の影響を受けましたが、生産増に伴い原価率が改善し、損失額が前期比で大幅に縮小しました。
<新製品の状況>
油圧装置向けに国産初となる高精度円ギア容積流量計 GMシリーズや、バルブ制御の調整が容易かつ再現性が高い特長を持つ比例弁コントローラVAシリーズを、市場投入しました。
〔流体機器事業〕
(単位:百万円)
<売上高の状況>
官需市場は、主力の超音波流量計の販売が好調に推移しました。消火設備市場は、立体駐車場向けに加え、「ガス系消火設備の容器弁の安全性に係る点検」に基づく部品販売及び交換工事も好調に推移した結果、売上高は前期比で増収となり、過去最高となりました。
<営業利益の状況>
売上高の増加により営業利益は前期比で増益となり、過去最高となりました。
<新製品の状況>
主に官需市場向けの戦略製品として、高精度かつメンテナンスが容易な高精度超音波流量計UFR-300のシリーズ品を拡大し、市場投入しました。
〔防衛・通信機器事業〕
(単位:百万円)
<売上高の状況>
半導体製造装置向け機器の納入が増加するとともに、海上交通機器の海上保安庁向けVTSシステムの納入があったものの、防衛事業が案件の谷間で戦闘機用レーダー警戒装置や哨戒ヘリコプター用逆探装置の納入が減少した結果、売上高は前期比で減収となりました。
<営業利益の状況>
売上高の減少により、営業利益は前期比で減益となりました。
<新製品の状況>
海外向け戦略製品として、沿岸監視用高分解能半導体レーダーを欧州市場向けにシリーズ品を拡大し、市場投入しました。
〔その他の事業〕
(単位:百万円)
<売上高の状況>
鉄道機器事業で主力の超音波レール探傷車の納入が減少したものの、検査機器事業の更新需要が当期に回復基調となった結果、売上高は前期比で増収となりました。
<営業利益の状況>
鉄道機器事業の機器納入の減少による原価率の悪化により、営業利益は前期比で減益となりました。
<新製品の状況>
鉄道保線市場向けに従来機より小型軽量化した分岐器検査装置SPG-7を、検査機器市場向けにフィルム素材の傷などを判別する能力を向上させた素材検査装置M-CAP V2を市場投入しました。
財政状態の状況は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(資産の部)
減収により受取手形、売掛金及び契約資産や電子記録債権が減少したものの、部材の早期確保や受注増加に伴う在庫の積み増しにより原材料及び貯蔵品や仕掛品が増加したことで、前期末に比べ2,473百万円増加し、56,018百万円となりました。
(負債の部)
在庫の積み増しにより支払手形及び買掛金が増加したことで、前期末に比べ1,064百万円増加し、22,671百万円となりました。
(純資産の部)
親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金を計上する一方で、配当金の支払が行われたことで、前期末に比べ1,409百万円増加し、33,348百万円となりました。
総資産は増加したものの純資産も増加したことで、自己資本比率は前期末から変わらず58.7%となり、引き続き健全な財務基盤を維持しております。
(単位:百万円)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は12,208百万円と前期比620百万円(5.4%)増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
営業活動の結果獲得した資金は2,256百万円(前期は7,068百万円の獲得)となりました。その主な収入要因は、税金等調整前当期純利益1,980百万円、仕入債務の増加1,457百万円及び減価償却費1,073百万円、支出要因は、棚卸資産の増加2,297百万円によるものです。
投資活動の結果使用した資金は572百万円(前期は928百万円の使用)となりました。その主な要因は、固定資産の取得による支出786百万円によるものです。
財務活動の結果使用した資金は1,120百万円(前期は2,247百万円の使用)となりました。その主な要因は、長期借入金の返済による支出702百万円及び配当金の支払410百万円によるものです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
3 上記生産高のほか、各報告セグメントに配分していない全社生産高23百万円があります。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記受注高のほか、各報告セグメントに配分していない全社受注高1百万円があります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記販売高のほか、各報告セグメントに配分していない全社販売高1百万円があります。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は船舶港湾機器事業、油空圧機器事業、流体機器事業、その他の事業が増収であったものの、防衛・通信機器事業において、防衛事業が当期まで案件の谷間であったことから大きく減少となり、全体として前期に比べ1.4%減収の41,510百万円となりました。
売上原価は、主要事業において原価率が改善したため売上原価率が前期に比べ1.2ポイント好転し30,527百万円となりました。営業利益につきましては、売上高の減少により前期に比べ145百万円減少したものの、原価率の好転により461百万円増加したことなどの結果、前期に比べ30.8%増益の1,635百万円、経常利益は前期に比べ32.1%増益の1,926百万円、また、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ58.1%増益の1,493百万円となりました。
当社グループが経営指標として掲げております当連結会計年度の連結営業利益率につきましては、前期と比べ0.9ポイント好転の3.9%となりました。また、自己資本利益率(ROE)につきましては、前期と比べ1.5ポイント好転の4.6%となりました。ROEは過去3年間では、4.9%、3.1%、4.6%と推移した結果、3年間平均では4.2%となりましたが、5年平均では4.7%となりました。今後につきましては、リスク管理を強化しながら更なる事業収益の改善と財務基盤の強化に注力するとともに、2031年3月期までに連結営業利益率10%、ROEにつきましても株主資本コストを上回る10%以上を安定的に創出することを目指してまいります。
当連結会計年度の当社グループの経営成績に重要な影響を与えた要因としては、内外経済の変動、自然災害・疫病や素材・部品調達があります。
素材・部品調達につきましては、油空圧機器事業において、部品入手難や原材料価格の高騰の影響により、営業損失となりました。
当社グループは、運転資金及び設備資金を内部資金及び金融機関からの借入金によって調達しており、2022年3月末日現在の連結借入金残高は10,239百万円となっております。財務政策は営業キャッシュ・フローの改善による資本の財源の獲得を最優先事項と考えており、不足分は借入金により資金調達することとしております。
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