(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大による停滞状況から、ワクチン接種が進展したことにより経済活動に回復の兆しが見え始めているものの、地政学リスクの顕在化、世界的な物流の混乱、原油価格の高騰等を背景とした原材料価格の上昇など景気の先行きは不透明な状況となっております。
また、当社を取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の拡大による外来患者の減少、手術の延期などの影響から医療現場の逼迫した状況が継続し、手術件数等に影響が出ておりましたが、ワクチン接種の普及拡大、感染防止策の定着による医療現場の正常化から回復基調で推移いたしました。
今後も感染防止対策を徹底しながら医療提供体制の確保には最善の努力が継続される中、新たな変異株の出現等により深刻な医療逼迫の状況が生じる可能性もあり、依然として先行きは不透明な厳しい状況が続いております。
各医療機関の経営環境はより一層厳しさが増してきており、医療現場においてより効率的で効果的な医療サービスを提供できるような製品供給体制が望まれております。
このような状況のもと、当社は、高品質製品の常時安定供給を優先事項と掲げ、医療現場と密着した営業活動の推進、品質を確保しながらもコスト競争力をもった生産体制の構築並びに独創的な製品の研究開発活動の強化に取り組んでまいりました。
これらの結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べて167百万円増加し、10,920百万円となりました。
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べて95百万円減少し、4,474百万円となりました。
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べて263百万円増加し、6,446百万円となりました。
b.経営成績
当事業年度の経営成績については、次の通りです。
売上高 8,540百万円 (前期比増減 678百万円増 (前期比 8.6%増) )
営業利益 1,150百万円 (前期比増減 229百万円増 (前期比24.9%増) )
経常利益 1,152百万円 (前期比増減 195百万円増 (前期比20.4%増) )
当期純利益 831百万円 (前期比増減 155百万円増 (前期比23.1%増) )
なお、経常利益の前事業年度との増減内容は次のとおりです。
販売代理店在庫に対する売上値引引当金の計上(前期) +179百万円
販売単価下落による売上総利益の減少 △90百万円
販売数量増による売上総利益の増加 +270百万円
その他製造原価増減等による減少 △35百万円
販管費の増加 △95百万円
助成金収入等の減少 △34百万円
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べて347百万円増加し、2,518百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社の事業は、医療機器等の製造販売及びこれらの付随業務の単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の実績につきましては、当社の製品群別に記載しております。
a.生産実績
当事業年度における生産実績を製品群別に示すと、次のとおりであります。
製品群 |
生産高(千円) |
前期比(%) |
吸引器関連 |
3,077,242 |
+9.7 |
注入器関連 |
1,268,878 |
△1.5 |
電動ポンプ関連 |
112,173 |
+12.0 |
手洗い設備関連 |
257,485 |
△0.7 |
その他 |
224,283 |
△3.2 |
合計 |
4,940,063 |
+5.4 |
(注)1 金額は、製造原価により算定しております。
2 当事業年度から一部の製品について属する製品群を変更したため、前期比につきましても、変更後の区分に組み替えて記載しております。
b.受注実績
当社は、見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績を製品群別に示すと、次のとおりであります。
製品群 |
販売高(千円) |
前期比(%) |
吸引器関連 |
5,515,682 |
+7.6 |
注入器関連 |
1,860,612 |
+10.0 |
電動ポンプ関連 |
210,260 |
+15.9 |
手洗い設備関連 |
571,238 |
+4.4 |
その他 |
382,648 |
+21.7 |
合計 |
8,540,443 |
+8.6 |
(注) 当事業年度から一部の製品について属する製品群を変更したため、前期比につきましても、変更後の区分に組み替えて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末(2022年3月31日)現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
このうち重要な会計上の見積りとして「変動対価(売上取引に係る未確定の値引額)の額の見積り」があります。当社の顧客が当社製品をユーザーに販売した後、値引の請求を当社が受ける場合がありますが、同一製品であっても顧客がどのユーザーに販売するかによって値引額は変動することとなります。そのため、事業年度末において顧客からユーザーへの販売がまだ行われておらず、顧客からの値引請求額が未確定の部分について、顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分であり、変動対価に該当します。当社は、当該変動対価の額を見積り、売上高に反映させています。
なお、顧客が保有する製品をどのユーザーに販売するかは事業年度末時点で未確定であることから、顧客が過去実績と同一の販売比率でユーザーに販売するという仮定の下、主要な顧客や製品群ごとの過去一定期間の実績値引率に基づいて、変動対価の額を見積っております。
その他の重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)及び(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大が会計上の見積りに与える影響については、感染症拡大による影響が限定的であると想定していることから、現時点においては軽微なものと判断しております。
② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べて167百万円増加し、10,920百万円となりました。
流動資産は、前事業年度末に比べて299百万円増加し、6,572百万円となりました。これは主として、売掛金が174百万円、受取手形が77百万円減少したものの、現金及び預金が347百万円、電子記録債権が95百万円、製品が81百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
固定資産は、前事業年度末に比べて132百万円減少し、4,348百万円となりました。これは主として、有形固定資産が105百万円、差入保証金が12百万円、無形固定資産が6百万円それぞれ減少したこと等によるものです。
(負債合計)
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べて95百万円減少し、4,474百万円となりました。
流動負債は、前事業年度末に比べて195百万円減少し、3,151百万円となりました。これは主として、電子記録債務が405百万円、未払法人税等が101百万円それぞれ増加したものの、支払手形が391百万円、売上値引引当金が179百万円、1年内返済予定の長期借入金が106百万円それぞれ減少したこと等によるものです。
固定負債は、前事業年度末に比べ99百万円増加し、1,323百万円となりました。これは主として、長期借入金が102百万円増加したこと等によるものです。
(純資産合計)
前事業年度末に比べて263百万円増加し、6,446百万円となりました。これは主として、利益剰余金が剰余金の配当により574百万円減少したものの、当期純利益を831百万円計上したこと等によるものです。
2)経営成績
(売上高)
売上高は、8,540百万円(前年比8.6%増)となりました。これは主として、新型コロナウイルス感染症の拡大による外来患者の減少、手術の延期などの影響から当社主力製品の吸引器、注入器関連製品の販売量の減少が顕著であった前年同期に対して、主力製品の販売量が回復基調で推移したこと等によるものです。
(営業利益)
営業利益は、1,150百万円(前年比24.9%増)となりました。これは主として、売上高の増加により売上総利益が増加したこと等によるものです。
(経常利益)
経常利益は、1,152百万円(前年比20.4%増)となりました。これは主として、営業利益が増加したこと等によるものです。
(当期純利益)
当期純利益は、831百万円(前年比23.1%増)となりました。これは主として、経常利益が増加したこと等によるものです。
3)キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前事業年度末に比べて347百万円増加し、2,518百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は1,133百万円(前期比524百万円増)となりました。これは主として、法人税等を218百万円支払い、売上値引引当金が179百万円減少したものの、税引前当期純利益を1,151百万円、減価償却費を314百万円それぞれ計上したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は196百万円(前期比115百万円減)となりました。これは主として、有形固定資産の取得により、202百万円支出したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は589百万円(前期比97百万円増)となりました。これは主として、配当金を574百万円支払ったこと等によるものです。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の経営に影響を与える大きな要因として、医療費抑制政策をはじめとする国による社会保障政策への動向があります。医療費の抑制に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大により各医療機関の経営環境はより一層厳しさが増してきており、国内外メーカーとの競争激化等当社の経営環境は依然として厳しい状況で推移するものと認識しております。
このような状況の中、当社の強みである医療現場と密着した製品開発、営業活動にもとづく新たな医療サービスを提供できる独創的な新製品開発と生み出された新製品の販売推進により他社の追随を許さないトップメーカーとしての地位の確保と新市場創出、開拓を推進してまいります。
当社の主力製品の状況は次のとおりです。
(吸引器関連)
主に手術室で使用される吸引器であるフィットフィックスについては、1990年の発売から約30年経過しておりますが、手術件数の伸びとともに、販売数量も増加する傾向にあります。しかしながら、医療費抑制政策による医療機関の経営環境の変化から競合他社との競争が激化しており、販売単価の下落が顕著になっております。
当社は、吸引器の国内トップシェアメーカーとして現状の市場環境の変化に対応するべく医療現場のニーズに合致した独創的なアイデアによる次世代吸引器の開発を進め、完成した新製品「バイロン(製品名)」のデモ活動から拡販を進める予定にしておりましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大によりデモ中止又は延期が相次ぎ発生ししたため、本格的なデモ活動は次年度以降となります。
次に、病棟で使用されるキューインポットについては、院内感染防止と看護師の業務負荷軽減を目的として急速に普及が進んでおります。
当社は手術室で培ったノウハウをもとに300床以上の急性期の大手病院への納入から始まり、現在では300床未満の中小病院、さらには慢性期の病院への展開にも注力しております。特に、院内感染防止等の観点からニーズは非常に高く、300床未満の中小病院、慢性期の病院への納入が顕著に増加しており、今後も伸びが期待できる市場環境にあります。
このような状況のもと、当事業年度におきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大による外来患者の減少、手術の延期などの影響から販売量の減少が顕著であった前年に対して、手術室で使用される吸引器であるフィットフィックスの販売量が回復基調で推移したこと、病棟用の吸引器であるキューインポットの販売が好調に推移したことにより、吸引器関連の年間売上は5,515百万円となりました(前期比7.6%増)。
引き続き、競合他社との競争は厳しく、販売単価下落の影響はあるものの、病棟で使用されるキューインポット及び新製品バイロンの拡販、市場拡大に注力することで増収確保に向けた取り組みを進めております。
(注入器関連)
手術後の疼痛管理目的で使用されるディスポーザブル持続注入器であるシリンジェクター、バルーンジェクターについては、麻酔手技の変化と医療経済性の観点から医療現場のニーズに変化が見られます。
医療現場のニーズ変化に対応すべく、製品ラインナップ強化に向けてマイクロポンプを使用したより流量精度が高く、医療従事者が管理しやすい持続注入器の新製品開発を進め、完成した新製品「エイミーPCA(製品名)」について拡販を進めてまいりました。新型コロウイルス感染症の拡大によるデモ見合わせ等の影響があったものの、当初想定していた急性期の医療機関での需要に加えて、在宅市場などをはじめとして多方面からの引き合いも増加してきており、そのポテンシャルは当社事業領域拡大の余地を大きく含んでおります。
このような状況のもと、当事業年度におきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大による医療逼迫の状況から減少が顕著であった前年に対して、手術件数が回復に転じたことにより、注入器関連の年間売上は1,860百万円となりました(前期比10.0%増)。
新製品投入により、差別化された圧倒的な製品力とトップシェアメーカーである営業力を発揮し、市場シェアのさらなる拡大を進め、増収確保に向けた取り組みを進めております。
上記に記載した主力製品が当社事業の大半を占めるため、その売上進展及びその収益性が当社の営業利益、経常利益、当期純利益に大きく影響することとなります。
新型コロナウイルス感染症の拡大が当事業年度の経営成績に与える影響については、「2 事業等のリスク (9)新型コロナウイルス感染症に関するリスク」にも記載いたしました通り、新型コロナウイルス感染症の拡大の第1波から第2波の期間においては、外来患者の減少、手術の延期などの影響から医療現場の逼迫した状況が継続し、手術件数等に影響が出ておりましたが、ワクチン接種の普及拡大、感染防止策の定着による医療現場の正常化から当事業年度においては、回復基調で推移しております。
今後も感染防止対策を徹底しながら医療提供体制の確保には最善の努力が継続される中、新たな変異株の出現等により深刻な医療逼迫の状況が生じる可能性もあり、そのような状況が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社といたしましては、医療に従事するメーカーとして人命の安全を確保しながらも製品の安定供給を果たすための生産・供給体制の構築を経営課題と認識し、取り組んでおります。
また、「医療現場第一主義」の研究開発型メーカーとして当社の特徴でもある独創的な製品を開発し、供給することにより医療現場が抱える課題解決を図っていくことを第一に考えながら、新製品については、国内のみならず海外での販売拡大をめざし、海外販売比率を高めることで事業規模の拡大とさらなる経営基盤の強化・確立を図ってまいります。
c.資本の財源及び資金の流動性
(資金需要)
当社の事業活動における運転資金需要につきましては、製品を製造するための国内外の仕入先からの部材仕入、製造経費、営業管理費や荷造運賃などの販売費及び一般管理費があります。
設備資金需要につきましては、製品製造にあたっての設備の維持・金型の更新投資や新製品開発にあたっての設備や金型の新規投資があります。さらには、インフラとして生産効率や事務効率の向上を目的とした投資等があります。
(財務政策)
当社の事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入による資金調達を行っております。基本的に、経常的な設備投資については、減価償却費の範囲内にとどめ、一定程度のキャッシュポジションを維持した上で余剰資金については有利子負債の削減に充当しております。
また、過度に金利変動リスクに晒されないよう短期借入と長期借入のバランスを図りつつ、タイミングをみて長期借入へシフトするなど、資金調達コストの低減・安定にも努めております。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社は、医療機器製造と医療機器販売が事業のほとんどであるため、売上高総利益率と売上高経常利益率が本業の収益性を明確に図るための有用な指標であると考えております。当事業年度における「売上高総利益率」は、43.1%(前期比0.4ポイント好転)であります。また、「売上高経常利益率」については、13.5%(前期比1.3ポイント好転)であります。
主要2指標の好転の主要因は、国策である医療費削減策の強化及び競合他社との競争激化により、当社の主力製品について販売単価下落傾向はあるものの、製造原価や固定費の圧縮、活動費の見直し等の費用削減に努めたと同時に、売上高の回復とともに固定費率が減少したためであります。
当面の中期的な経営目標指標として2027年3月期に売上高110億円、経常利益18億円、当期純利益12.6億円、1株当たり当期純利益43.8円を目指しております。
当該経営目標数値の達成に向けた計画骨子として、下記3点の重点施策を実施してまいります。
1.既存事業の成長
病棟用吸引器であるキューインポットのさらなる拡販に取り組んでまいります。
急性期病院から慢性期病院への拡販を積極展開し、潜在市場への普及拡大を図ります。
2.生産性の向上と原価改善
新製品開発が主体であったリソース配分を見直し、原価改善に向けたリソースの適正化を実施の上、下記3点の項目に集中的に取り組み、コストダウンを図ることで粗利益増加、粗利率の改善を図ります。
①設計変更による部品と工数のスリム化
②生産設備改善による省力化
③サプライチェーンの更なる適正化
3.中長期的成長エンジンとなるマイクロポンプ関連製品の投入と開発
マイクロポンプ関連製品の第1弾製品として上市したエイミーPCAの拡販を進めてまいります。
当社の主戦場である急性期の医療機関への拡販に本腰を置きながらも潜在的にニーズの高い在宅市場やクリニックへの展開も積極的に推進してまいります。
さらには、マイクロポンプをキーデバイスとした注入器分野での派生商品の開発にも着手しており、早期上市、拡販に向けた取り組みを進めております。
当社といたしましては、医療現場のニーズを汲み取った改良品の上市や既存製品の拡販により競争力強化を図ること、新製品の上市により新たな事業の柱を創出することにより、特定製品に依存した収益構造からの脱却を図り、売上高総利益率の改善に努めるとともに、生産効率の改善や固定費削減にも取り組み収益性の改善に努めてまいります。
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