(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、前半は、ワクチン接種の進展に伴う経済正常化を受けて急回復を遂げてきましたが、その後の変異ウイルスの出現や世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱、各国におけるインフレの高進に加え、2月に発生したロシアによるウクライナ侵攻とそれに対する各国制裁の影響が、世界景気の下振れ要因として懸念されます。
米国経済は、大型経済対策と経済正常化に伴う需要の急増により世界経済の回復を牽引していますが、労働市場のひっ迫や供給網の混乱などにより物価上昇に歯止めがかからず、インフレ抑制を優先した急ピッチでの金融引き締め局面に入ったことから、景気の先行きについては注視が必要な状況です。
欧州においても、経済の正常化が進められてきましたが、相次ぐ変異株の拡大による行動制限が足かせとなる中、ウクライナ危機と、それによるエネルギー供給不安などが回復の勢いを減速させてきました。
中国においては、電力供給の制限や不動産市場への規制に加え、「ゼロコロナ政策」によるロックダウン(都市封鎖)により景気回復に急ブレーキがかかりつつある上に、供給網の停止が日本をはじめ世界経済へも影響を与えつつあります。
日本経済は、度重なる緊急事態宣言とそれに伴う行動制限に加え、部品・部材不足や原材料高、ウクライナ危機以降は一段の資源高・穀物高も影響し、主要国経済の中ではもっとも鈍い回復に留まっています。
このような環境のもと、当連結会計年度の当社グループの業績は、次のとおりとなりました。
市況上昇を受けた畜産事業や食糧事業、原油価格上昇により原油・石油製品取引高が増加したエネルギー事業を中心にほぼすべての事業において増収となりました。官公庁向け契約の端境期となった航空宇宙事業や手数料収入が減少したモバイル事業では減益となった一方、増収の畜産事業やICTソリューション事業、鋼管事業で増益となりました。
その結果、収益は、前連結会計年度比1,188億21百万円(18.3%)増加の7,679億63百万円となり、売上総利益は、前連結会計年度比102億86百万円(10.1%)増加の1,118億1百万円となりました。営業活動に係る利益は、販売費及び一般管理費は増加したものの売上総利益の増加により、前連結会計年度比57億12百万円(24.2%)増加の293億47百万円となりました。また、営業活動に係る利益の増加などにより、税引前利益は、前連結会計年度比51億85百万円(22.0%)増加の287億65百万円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比26億71百万円(20.1%)増加の159億86百万円となりました。これにより、親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)に対する親会社の所有者に帰属する当期利益率(ROE)は、10.5%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、営業活動によるキャッシュ・フローが153億82百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが105億47百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが42億45百万円の収入となりました。これらに、現金及び現金同等物に係る換算差額を調整した結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は914億20百万円となり、前連結会計年度末比103億75百万円の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、営業収入の積上げなどにより、153億82百万円の収入(前連結会計年度は369億84百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社の取得や持分法適用会社への追加出資などの事業投資の実行により、105億47百万円の支出(前連結会計年度は99億27百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加や社債の発行などにより、42億45百万円の収入(前連結会計年度は374億97百万円の支出)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
(ⅰ) 生産実績
生産は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
(ⅱ) 受注実績
受注は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
(ⅲ) 販売実績
「(1) 経営成績等の状況の概要」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記6 セグメント情報」に記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債、偶発資産・偶発負債の開示および報告期間における収益・費用の金額を認識する際に、必要に応じて会計上の見積りおよび仮定を用いることが必要となります。この会計上の見積りや仮定は、決算日時点で入手可能な合理的な情報等に基づき設定しておりますが、不確実性を伴うため、その変動により将来の実績との間で差異が生じる可能性があります。
当社グループにおける重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記2 作成の基礎」および「同 注記3 重要な会計方針」に記載しております。
なお、当連結会計年度末における非金融資産の減損判定においては、将来の利益計画に対して新型コロナウイルス感染症の影響を加味したうえで回収可能価額の見積りを行っております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。
収益
収益は、食料セグメント、鉄鋼・素材・プラントセグメントを中心に好調に推移し、前連結会計年度比1,188億21百万円増加の7,679億63百万円となりました。
売上総利益
売上総利益は、電子・デバイスセグメント、鉄鋼・素材・プラントセグメントを中心に前連結会計年度比102億86百万円増加の1,118億1百万円となりました。
営業活動に係る利益
営業活動に係る利益は、販売費及び一般管理費は増加したものの売上総利益の増加により、前連結会計年度比57億12百万円増加の293億47百万円となりました。
税引前利益
税引前利益は、金融収支の悪化があったものの、営業活動に係る利益の増加や持分法による投資損益の良化により、前連結会計年度比51億85百万円増加の287億65百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益
税引前利益から法人所得税費用82億6百万円を控除した結果、当期利益は205億59百万円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比26億71百万円増加の159億86百万円となりました。
財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比769億61百万円増加の6,344億56百万円となりました。
有利子負債については、短期借入金の増加などにより、前連結会計年度末比212億95百万円増加の1,434億52百万円となりました。現預金を差し引いたネット有利子負債は、前連結会計年度末比107億22百万円増加の512億42百万円となりました。なお、有利子負債にはリース負債を含めておりません。
資本のうち、親会社の所有者に帰属する持分については、親会社の所有者に帰属する当期利益の積上げおよび円安に伴うその他の資本の構成要素の増加などにより、前連結会計年度末比155億58百万円増加の1,594億84百万円となりました。
その結果、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は25.1%、ネット有利子負債資本倍率(ネットDER)は0.3倍となりました。
親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)に対する親会社の所有者に帰属する当期利益率(ROE)
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)1,594億84百万円に対して、親会社の所有者に帰属する当期利益159億86百万円となったためROEは前連結会計年度末比0.8ポイント上昇の10.5%となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
電子・デバイス
収益は電子機器・電子材料事業や半導体部品・製造装置事業の増収により前連結会計年度比293億54百万円増加の2,554億63百万円、営業活動に係る利益はICTソリューション事業や半導体部品・製造装置事業の増益により14億89百万円増加の190億64百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は5億40百万円減少の79億44百万円となりました。
営業活動に係る利益についての概況は、次のとおりであります。ICTソリューション事業は、ネットワークセキュリティ関連のほか、ストレージ関連案件の増加などもあり好調に推移しました。モバイル事業は、ショップへの来店者数は回復するものの、コロナ禍での店舗支援金など手数料収入が減少したため低調に推移しました。半導体部品・製造装置事業は、旺盛な需要を背景に車載向け半導体部品や半導体装置などの出荷が伸長し順調に推移しました。
食料
収益は畜産事業や食糧事業の増収により前連結会計年度比406億67百万円増加の2,852億84百万円、営業活動に係る利益は畜産事業、食品事業の増益により20億43百万円増加の35億41百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は10億24百万円増加の25億19百万円となりました。
営業活動に係る利益についての概況は、次のとおりであります。畜産事業は、畜産物全般の価格が大きく上昇し、外食関連販売で苦戦した前期からの反動により大幅増益となりました。食糧事業は、第4四半期での相場急騰による評価損などにより低調に推移しました。食品事業は、リテール市場向け商材の取引が伸長し順調に推移しました。
鉄鋼・素材・プラント
収益はエネルギー事業や鋼管事業の増収により前連結会計年度比511億62百万円増加の1,479億93百万円、営業活動に係る利益は鋼管事業や工作機械・産業機械事業の増益により22億12百万円増加の40億52百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は11億99百万円増加の32億59百万円となりました。
営業活動に係る利益についての概況は、次のとおりであります。鋼管事業は、エネルギー需要の回復を受け堅調に推移しました。工作機械・産業機械事業は、新型コロナウイルスの影響を強く受けた前期の事業環境から回復し順調に推移しました。一方、エネルギー事業は、先物評価損が先行したため低調に推移しました。
車両・航空
収益は航空宇宙事業の減収により前連結会計年度比52億59百万円減少の658億27百万円、営業活動に係る利益は航空宇宙事業の減益により3億92百万円減少の16億63百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は40百万円減少の14億57百万円となりました。
営業活動に係る利益についての概況は、次のとおりであります。航空宇宙事業は、官公庁向け契約の端境期にあたり低調に推移しました。一方、車両・車載部品事業は、コロナ禍からの市況回復と円安により車載部品取引が順調に推移しました。
その他
収益は前連結会計年度比28億98百万円増加の133億95百万円、営業活動に係る利益は3億13百万円増加の10億9百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は85百万円増加の4億65百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容および資本の財源および資金の流動性についての分析
キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
資金調達
当社グループは、6ヵ年の中期ビジョン「future 135」の中で掲げている「持続的な成長」を実現するために必要な、低コストで安定的な資金調達を基本方針として資金調達活動に取り組んでおります。
当社グループの資金調達については、メインバンク、地銀、生損保等の金融機関との良好な関係を背景とした間接金融をベースに、長期資金の調達手段の一つとして普通社債を発行し、資本市場からの調達も実施しております。当連結会計年度では、当社にて100億円の普通社債を発行し、連結有利子負債に占める直接金融からの負債調達割合は14%となりました。
これらの円滑な資金調達を行うため、㈱日本格付研究所(JCR)、ならびに㈱格付投資情報センター(R&I)の2社から格付けを取得しており、当連結会計年度末の当社グループに対する格付け(長期)は、JCRが前回からワンノッチ格上げとなるA-(安定的)、R&IがBBB+(安定的)となっております。
加えて、手元流動性の確保を図るため、十分な規模の現金及び現金同等物を保有するほか、主要金融機関においてコミットメントラインを設定しております。
また、連結ベースでの効率的な資金調達を実施するために、国内主要関係会社の資金調達を親会社に集中したうえで、資金需要に応じて配分を行うキャッシュマネジメントシステムを導入しております。当連結会計年度末では、連結有利子負債に占める当社の有利子負債の割合は66%と、約7割の資金調達を親会社に集中しております。
このような資金調達活動の結果、当連結会計年度末におけるグロス有利子負債残高は1,434億52百万円で、前連結会計年度末と比べ212億95百万円増加いたしました。また、当連結会計年度末におけるネット有利子負債残高は512億42百万円となり、前連結会計年度末に比べ107億22百万円増加いたしました。その結果、ネット有利子負債資本倍率(ネットDER)は0.3倍と、健全な財務体質を維持しております。
また、当連結会計年度末の有利子負債残高に占める社債および長期借入金(1年以内に返済予定の社債および長期借入金を含む。)の比率は63%(当社では90%)であり、資金調達の状況は安定しております。
配当性向(総還元性向)
当社グループは、6ヵ年の中期ビジョン「future 135」の中で、安定した収益基盤の事業分野において持続的成長を実現するとともに、規模の拡大や付加価値の獲得のための事業投資により、連結当期利益の一段の伸長を目指しております。
このために、毎年持続的に創出される営業キャッシュ・フローおよび金融機関や資本市場から調達する財務キャッシュ・フローを重点分野への成長投資に充てるとともに、安定的かつ継続的に株主還元を実施し、資本の効率性にも目を配って参ります。
具体的には、過去平均して100~200億円程度の実績がある営業キャッシュ・フローを原資に成長投資を実行するとともに、株主還元については中期ビジョン「future 135」の目標である30~35%の配当性向(総還元性向)の実施を目指して参ります。単年の営業キャッシュ・フローを超えるような多額の事業投資については、健全な財務体質による追加調達余力を活かして機動的に資金調達を実施し、連結当期利益目標200億円の達成を目指して参ります。
なお、当連結会計年度における配当性向(総還元性向)は34.0%となりました。
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