業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.業績等の概要

(1)業績

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による影響の長期化により、東京2020オリンピック・パラリンピックが無観客での開催になる等、外出自粛が常態化したことにより回復に向けた動きは鈍く、依然として先行き不透明な状況が続いております。

一方、当社グループの属するスポーツアパレル業界においては、2021年3月期と比較して、首都圏、関西圏等の都市部での一斉休業がなかったことや、昨年11月後半以降の記録的寒波の到来によって防寒衣料が堅調に推移する等、わずかではありますが好転の兆しも見られました。

当社グループにおいても、THE NORTH FACEを中心に顧客から選ばれる魅力のある商品づくり、安定したサプライチェーンの構築、直営店に加え、卸先、EC売上等のバランスのとれた販売チャネルの構築等によって、コロナ禍にあっても業績は堅調に推移し、当連結会計年度の業績は、売上高98,235百万円(前期比8.6%増)、営業利益16,501百万円(前期比11.2%増)、経常利益20,285百万円(前期比26.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は14,350百万円(前期比33.7%増)となりました。

 

 

(2)キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は25,036百万円となり、前連結会計年度末より4,748百万円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られたキャッシュ・フローは18,049百万円(前連結会計年度比10,647百万円の収入増)となりました。主な要因は、法人税及び住民税の支払6,728百万円があったものの、税金等調整前当期純利益20,131百万円および仕入債務の増加3,447百万円があったためであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用したキャッシュ・フローは1,567百万円(前連結会計年度比1,694百万円の支出減)となりました。これは主に、固定資産の取得による支出1,722百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用したキャッシュ・フローは11,853百万円(前連結会計年度比11,691百万円の支出増)となりました。これは主に、借入金の純減少額5,557百万円、配当金の支払3,520百万円および自己株式取得による支出2,140百万円によるものであります。

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

平成30年3月期

平成31年3月期

令和2年3月期

令和3年3月期

令和4年3月期

 自己資本比率(%)

49.6

51.0

56.8

57.8

63.9

 時価ベースの自己資本比率(%)

205.5

470.3

331.4

351.4

283.6

 債務償還年数(年)

1.1

0.5

0.3

1.3

0.2

 インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

72.5

105.4

148.8

57.1

223.8

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

債務償還年数:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注1)各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

(注2)株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

(注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

(注4)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている短期借入金、長期借入金(1年以内返済分を含む)および社債(1年以内返済分を含む)を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

当社グループは、製品の種類、性質、製造方法および販売市場等の類似性から判断して、同種・同系列のスポーツ用品を専ら製造販売しているため、生産および販売の実績についての記載を省略しております。また、受注状況についても一部の特殊商品のみ受注生産を行っておりますが、全体に占める割合が僅少であるため、記載を省略しております。

 

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されておりますが、その中で以下に掲げる重要な会計方針および見積りにつきましては特に、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因になっていると考えております。

なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に関する影響は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

①  売上高の計上基準

当社グループの売上高は、取引先との契約により、先方に対して製品が出荷された時点、あるいは取引先または当社グループの運営店舗が消費者に売り上げた時点で計上されるのが基本であります。

 

②  製品・商品・原材料の評価

棚卸資産のうち、製品・商品についてはあらかじめ設定された販売適用時期を過ぎたものについて、過去の販売実績に基づき開発年度ごとに算定した評価率を乗じて時価(正味売却価額)を算出し、その時価の見積り額と原価との差額を評価減しております。

原材料は生地等の今後の使用可能性とともに、一定の滞留期間を経過したものについて、処分価格を基準として評価減しております。

 

③  固定資産の減損処理

固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたっては、主として営業店舗等を基本単位とした資産のグルーピングを行っております。業績不振により収益性が著しく低下したグループについては、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損処理しております。

 

④  有価証券の減損処理

市場価格のある有価証券については、基本的に連結会計年度末の市場価格が取得原価を50%以上下回ったものは全て、下落率が30%以上50%未満のものは、回復可能性を一定の基準で判定し減損処理を行っております。また、市場価格のない会社への投資については、当該会社の1株当たり純資産額が取得原価を30%以上下回った場合に、回復可能性を一定の基準で判定し減損処理しております。

(2)財政状態の分析

①  流動資産

当連結会計年度末における流動資産の残高は55,486百万円となり、前連結会計年度末と比べ4,318百万円増加いたしました。その主な要因は、商品及び製品の減少1,881百万円があったものの、現金及び預金の増加4,870百万円、受取手形及び売掛金の増加1,750百万円があったためであります。

・売上債権(受取手形及び売掛金、電子記録債権)

当連結会計年度末の売上債権回転月数につきましては、前連結会計年度末1.65ヵ月から当連結会計年度末1.69ヵ月となりました。

・棚卸資産(商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品)

当連結会計年度末の棚卸資産は13,423百万円となり、前連結会計年度末と比べ1,730百万円減少いたしました。棚卸資産回転月数につきましては、前連結会計年度末2.01ヵ月から当連結会計年度末1.64ヵ月となりました。

 

②  固定資産

当連結会計年度末における固定資産の残高は43,598百万円となり、前連結会計年度末と比べ3,390百万円増加いたしました。その主な要因は、投資有価証券の増加2,451百万円等によるものであります。

・投資有価証券

投資有価証券には、関連会社の株式18,912百万円のほか、長期・安定的な取引関係維持のために所有している主要取引金融機関や主要仕入先等の株式が含まれております。当連結会計年度末における投資有価証券の残高は24,060百万円となり、前連結会計年度末と比べ2,451百万円増加いたしました。

 

③  負債(流動負債および固定負債)

当連結会計年度末における負債合計の残高は35,673百万円となり、前連結会計年度末と比べ2,785百万円減少いたしました。主な要因は、電子記録債務の増加2,092百万円、支払手形及び買掛金の増加1,360百万円があったものの、借入金の減少5,557百万円があったためであります。

 

④  純資産

当連結会計年度末における純資産合計の残高は63,411百万円となり、前連結会計年度末と比べ10,494百万円増加いたしました。主な要因は、剰余金の配当金3,520百万円があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上14,350百万円があったためであります。

 

・自己資本比率

当連結会計年度末の自己資本比率は63.9%となり、前連結会計年度末と比べ6.1ポイント上昇いたしました。

・ROE

当連結会計年度末のROEは24.7%となり、前連結会計年度末と比べ3.1ポイント上昇いたしました。

 

(3)資本の財源および資金の流動性に係る情報等

①  キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末より4,748百万円増加し、25,036百万円となりました。

これは、営業活動の結果得られた収入18,049百万円に対し、固定資産の取得等の投資活動による支出が1,567百万円あったことおよび借入金の返済等の財務活動による支出が11,853百万円あったことによるものです。

当社グループは、運転資金および設備投資について、営業活動から獲得する自己資金ならびに金融機関からの借入による調達を行うものとしております。

なお、手元現預金等に加え、主力銀行を中心とした取引金融機関の協力も得て、資金の充分な流動性を確保しており、当社の当面の資金繰り、及び財務の安定性に懸念はございません。

 

②  財務政策

現在、当社グループの財務政策の重点課題として、「グループキャッシュ・フロー重視経営の徹底」を掲げております。有利子負債の削減を目的としてキャッシュ・フロー管理の徹底を図り、ブランド事業ごとの収益基盤の強化および社内カンパニー制度を推進し、財務体質を強化いたします。また、財務の健全性を高めるため、長期安定資金の比率を高めるとともに総資産の圧縮を進めます。

主たる経営指標としては、自己資本利益率(ROE)の向上を目標とし、収益性・効率性の高い経営を目指しております。

具体的には、引き続きキャッシュ・フロー重視の経営を推進することで、ROE18%以上の維持を目標として取り組みます。

また、積極的に投資を推進する方針でありますが、経営の健全性を保つために有利子負債比率(D/Eレシオ)は0.3倍以下の維持を目指して取り組んでまいります。

 

(4)経営成績の分析

①  売上高

当連結会計年度においても引き続き、直営店のみならず、大型スポーツ量販店等の卸店舗とブランドの持つ価値観を共有した実需型ビジネスを推進したことで、幅広いお客様にTHE NORTH FACEを中心とした当社製品のブランド価値のさらなる訴求が進みました。

また、主力のメンズに加えてキッズやレディースにつながるファミリー層をメインターゲットとした郊外型店舗での販売が好調に推移したことに加え、直営店とEC販売との連携を強化したことで顧客利便性を大幅に向上させることができました。

特に昨年10月には、登山用のテクニカル商品を中心としたECサイト「THE NORTH FACE MOUNTAIN ECサイト」をオープンする等、直営店との連携をさらに進めたことで、コロナ禍で不透明な状況が続く中ではあるものの、中期経営計画でのKPIとして設定したEC売上高比率は、当連結会計年度で13.4%、自主管理売上高61%と初年度の目標を上回る推移を示しております。

これらの結果、コロナ前の令和2年3月期に記録した過去最高を2年ぶりに更新し、当連結会計年度の売上高は98,235百万円(前期比8.6%増)となりました。

 

②  売上総利益

当連結会計年度の売上総利益は売上高の増加により、51,743百万円(前期比7.8%増)となりました。また、直営店やeコマース販売等の自主管理型売上が拡大したこと、さらに発注流動管理強化による販売ロス削減、プロパー販売比率改善等により売上総利益率は52.7%となりました。

 

③  営業利益

自主管理売上比率の上昇により、当連結会計年度の営業利益は16,501百万円(前期比11.2%増)となりました。販売費及び一般管理費につきましては、期初予想では、広告宣伝費を中心に増加を見込んでおりましたが、コロナ禍によって集客を伴ったイベント開催の多くを中止したことに加えて、SNS等を活用するなど投資対効果を重視すべく経費負担抑制に取り組んだ結果、35,241百万円(前期比6.3%増)となりました。

 

④  経常利益

営業利益の増益に加え、韓国における持分法適用関連会社であるYOUNGONE OUTDOOR Corporationの業績が堅調に推移したことで、経常利益は20,285百万円(前期比26.9%増)となりました。

 

⑤  親会社株主に帰属する当期純利益

上記経常利益の増益により、法人税等が増加したものの、親会社株主に帰属する当期純利益は14,350百万円(前期比33.7%増)となりました。

 

(5)目標とする経営指標の達成状況

当社グループでは、5年先の将来を見据えた中期経営計画として、計画最終年度の令和8年3月期の売上高125,000百万円、営業利益21,000百万円とした目標を設定しました。当該中期経営計画では、事業と環境における2つのサスティナビリティの両立を目指すべく、その実現に向けて、新製品の研究開発に加えて、基幹システムや物流システムのインフラ整備への投資を行うとともに、環境負荷低減への取り組みも同時に行ってまいります。このように、将来の成長に向けた積極的な投資に伴い、新中期経営計画2年目となる令和5年3月期の業績予想につきましては、売上高は前期比7.9%増収となる106,000百万円を見込むものの、営業利益は前期比3.0%増益となる17,000百万円、経常利益は前期比5.5%増益となる21,400百万円を予定しております。

(単位:百万円)

 

平成31年

3月期

(実績)

令和2年

3月期

(実績)

令和3年

3月期

(実績)

令和4年

3月期

(実績)

令和5年

3月期

(予想)

令和8年

3月期

(予想)

連結売上高

84,934

97,899

90,479

98,235

106,000

125,000

連結営業利益

18,612

17,480

14,838

16,501

 17,000

 21,000

連結経常利益

12,982

16,375

15,984

20,285

 21,400

 22,500

ROE

24.7%

25.0%

21.6%

24.7%

18.0%以上

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