(1)経営方針
当年度は、長期化するコロナ禍のなかで、中核事業である国内百貨店は売上の回復が鈍く2期連続の営業損失となりました。コロナ禍や景気動向の変化などに左右されない、安定した利益確保のためには、時代の変化や消費者のニーズを的確に捉え、迅速に品揃えを見直し、百貨店の強みや特徴を発揮できるよう組織と意識の変革が必須であると考えております。
こうしたなか、次年度は、厳しい環境下における当社グループの生き残りと将来成長を目指し「百貨店の構造改革と営業力強化」「業務改革、従業員の意識・組織風土の変革」「グループ会社の収益強化と事業拡大への基盤構築」「グループESG戦略の推進」に取り組んでまいります。
グループ経営においては、グループ各社の強みの発揮による利益の最大化、将来の更なる事業拡大に向けた既存事業強化や新規事業開発の着手に向け、グループ内で経営資源の有効活用を進め、組織体制の強化や人材育成を通じた専門性の向上など、更なる事業基盤の強化を進めてまいります。
尚、企業活動にあたり、その根幹をなす「コンプライアンスの徹底」は何よりも優先すべきことです。グループ全体のリスクマネジメント体制の強化と、重要性が高まるグループガバナンス向上を図るための内部統制システムの充実、取締役会の更なる機能強化に取り組んでまいります。
[経営目標]
「新しい百貨店の運営モデル構築※」と「グループ利益の最大化」
~ ヒト・モノ・カネのトランスフォーメーション ~
※経費構造の改革とMDを中心とした営業力の強化
[経営課題]
①百貨店の構造改革と営業力強化
②業務改革、従業員の意識・組織風土の変革
③グループ会社の収益強化と事業拡大への基盤構築
④グループESG戦略の推進
(2)経営戦略等
(2-1)グループ経営戦略
当社グループは、経営目標を達成するための具体的行動計画として、2023年度の連結営業利益300億円を目標とする「髙島屋グループ3カ年計画」を策定しました。初年度(2021年度)に引き続き、2022年度以降もPDCAサイクルに基づいて着実に実行してまいります。
当社グループは引き続き、グループ総合戦略「まちづくり」を基本とし、国内百貨店、国内グループ、海外事業とのシナジー効果の発揮に努めます。まちづくり戦略には2つの考え方があります。1つは、拠点開発によるまち全体の流れを作るアンカーとしての役割発揮、もう1つは、事業開発による館の魅力の最大化です。
●まちづくり戦略の概念図
百貨店を中核とするまちづくりで成長領域を拡大
(2-2)サステナビリティへの取り組み
当社のグループ経営理念「いつも、人から。」は、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」社会の実現と強く結び付くものです。2006年には、経営理念をもとにCSR活動領域を策定し、現在もそれに即した経営の推進や情報の開示を行っています。活動領域には、事業活動を通じて得た利益をさまざまな人々に還元する「経済的役割」や「コンプライアンス(法令遵守)」といった基本的な活動に加え、「企業倫理」に基づく行動や新しい価値の創造、社会問題の解決など「社会的役割」の実現といった活動があります。
こうした従来のCSR経営にSDGsの概念を融合し推進しているのが、「グループESG経営」であり、「すべての人々が21世紀の豊かさを実感できる社会の実現」に貢献していくことを目指しています。これにより、「環境に優しいより豊かな生活・文化」「多様な価値観への対応、多様な人材の活用」「お客様視点に立った経営」など、当社ならではの価値提供を通じ、ステークホルダーの皆様からの共感を獲得していきます。
ESG経営の重点課題につきましては、「脱炭素化推進RE100」や「ダイバーシティ推進」をはじめとする10の項目を設定しています。そのためには従来型のビジネスモデルから脱却し、時代や社会の要請に合わせて変革していくことが重要であり、結果として社会課題の解決はもちろんのこと、事業成長の好機にもつながるものと考えます。
当社がグループ総合戦略として位置づける「まちづくり」(以下、まちづくり戦略)も、コミュニティやサステナビリティの観点からESG経営と密接な関係にあります。「街の賑わいを創出し、地域との共生を図る」「商品や環境、サービスを通じて新しい価値を提案・提供する」ことは、さまざまな社会問題の解決に応用・発展させていくことができます。さらに当社は百貨店を中核に国内外で各グループ事業を展開しており、また優良な顧客基盤や店舗の立地、お取引先とのネットワークを有していることから、地球上のさまざまな問題にアプローチできる強みやポテンシャルを持ち合わせています。まちづくり戦略を推進する中で、短期的・中長期的両方の視点で社会課題の解決に取り組むことで、グループのさらなる成長を目指すと共に、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
{グループESG経営概念図}
{重点課題とKPI}
{TCFD提言への賛同}
当社は、グループ経営理念体系の「5つの指針」のひとつに「地球環境を守るためのたゆまぬ努力」を掲げています。また「髙島屋グループ環境方針」においても、地球温暖化の防止やCO2排出量の削減に重点を置くなど、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
このグループ環境方針は、ESG経営で掲げる環境課題を解決につなげる基本的姿勢でもあります。お客様やお取引先、地域社会など、多くの人々との直接的な接点をもつという事業特性を生かしながら、環境方針に基づくさまざまな活動に取り組んでいます。
しかし一方で、近年は気候変動や資源の枯渇、生物多様性の減少といった環境問題がより深刻化しており、環境問題への取り組みの重要性や緊急性が高まっています。特に中核事業である百貨店事業では、化石燃料などの地下資源による電力の大量消費や、プラスチックや食品ごみの大量廃棄、衣料品の過剰在庫など、現行のビジネスモデルが環境負荷を前提としていることをリスクと捉えています。
そこで当社は、従来型のビジネスモデルから、地球資源を再生・修復するビジネスモデルへと変革し、環境課題解決と事業成長の両立に取り組みます。また、TCFD提言に賛同し、TCFD提言が推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理とリスクに対する取り組み」「指標と目標」の4つの開示項目に基づき情報開示のさらなる拡充を図ってまいります。
{TCFD提言が推奨する開示項目に沿った情報開示}
TCFD提言が推奨する4つの開示項目<ガバナンス><戦略><リスク管理><指標と目標>と、項目毎の具体的な開示内容に基づき、当社グループは、気候関連情報を開示しています。
a)ガバナンス(環境課題に関するガバナンス)
①取締役会が気候関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象
髙島屋グループでは、グループESG経営で掲げる環境課題への取り組みを通じ、企業価値の向上や持続的成長を図り、お客様や株主・投資家をはじめとしたステークホルダーの皆様からのご期待に応えるためには、コーポレート・ガバナンスの強化は経営上の重要な課題と認識しています。
グループESG経営を組織内に浸透させ、当社がお客様や株主などステークホルダーの皆様との信頼関係を深め、社会的責任を重視した経営を持続的に推進するうえで、その支えとなるのが内部統制システムであると考えています。内部統制システムに関わる主な会議としては、社長を委員長とする「髙島屋グループCSR委員会」及び「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」を設置しています。
「グループCSR委員会」は、当年度より半期に一度開催し、コンプライアンス経営の徹底に加えて内部統制の状況や、新しい社会課題に対するCSR領域への取り組み状況をグループ横断的に検証し、強化する体制を整えています。
「グループリスクマネジメント委員会」は、必要に応じ都度開催し、主管部門が各部門と連携し、案件ごとにラインを通じて内部統制の強化を図っています。コンプライアンスリスク・自然災害リスク等の予防、極小化に向けグループ横断的に統制を図っています。また、新たなビジネスへのチャレンジ等、事業戦略上発生するリスクに対しては、リターンとのバランスを考慮しながら的確にコントロールし、グループ全体のリスクマネジメント体制の確立に取り組んでいます。
さらに、ESG経営を組織内に浸透させ、設定した重点課題に対する取り組みを確実に推進していくため、グループ視点での方針管理、進捗管理を充実させる「グループ環境・社会貢献部会」を四半期毎に開催し、より一体的でかつ実効性が発揮できる体制を整えています。
②経営者の気候関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス(委員会等)、モニタリング方法
取締役会は、当社の業務執行がグループ全体として適正かつ健全に行われるために、取締役の職務執行状況を適切に監督すると共に、実効性あるグループ全体の内部統制システムの基本方針に基づく運用状況や課題について定期的に確認しています。
社長が委員長を務める「グループCSR委員会」は、ESG重点課題の進捗状況を報告し、改善点に対しては速やかに次年度の活動へ反映するなどPDCAサイクルを徹底し、毎年度モニタリングを行っています。その内容については取締役会に報告し、取締役会による監督体制のもと、環境課題の取り組みに対するガバナンスの強化に努めています
また、社長が委員長を務める「グループリスクマネジメント委員会」は、当社の業務執行に伴うさまざまなリスクを抽出し、リスク発生時の損失極小化に向けた対応等、協議された内容については、取締役会へ報告を行っています。
●内部統制システム体制図
●ESG重点課題 推進体制図
b)戦略(気候関連シナリオ分析)
①短期・中期・長期のリスク・機会の詳細
当社は、将来の気候変動が事業活動に与えるリスクと機会、財務影響を把握するため、従業員選抜型ワークショップを開催し、TCFDが提唱するフレームワークに則り、シナリオ分析の手法を用いて、2050年時点における外部環境変化を予測し、分析を実施しました。気候変動に伴う自然環境の変化や資源の枯渇等は、長期間にわたり当社の事業活動に大きな影響を与えるため、百貨店のみならずグループ事業全体において、従来型のビジネスから、地球資源を再生・修復するビジネスへと変革していくことが必要であると認識しています。当社が目指す将来社会を見据え、環境・社会領域におけるESG重点課題10項目は、2030年時点の達成目標(中長期)や、年度毎の数値目標(ロードマップ)を設定し、PDCAサイクルにて進捗管理を行っています。
②リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度
TCFDが推奨する気候変動関連リスクを移行リスク・物理的リスクの2つのカテゴリーに分類し、当社の事業活動に甚大な影響を及ぼす可能性がある主要なリスク項目を特定しました。また、「2℃以下シナリオを含む、様々な気候変動関連シナリオに基づく検討」を行うため、当社は、IPCCやIEA等のシナリオを参考に、事業活動や財務に及ぼす影響を分析し、持続可能な成長に向け、その対応策を検討・推進しています。当社のシナリオ分析は、パリ協定の目標である「2℃未満」と、CO2排出量削減が不十分な「4℃」の2つのシナリオを想定し、TCFDが推奨する典型的な気候関連リスクと機会を参考に分析を行いました。
想定シナリオ |
|
2℃未満 シナリオ |
気候変動対応の厳しい法規制施行による事業運営コストの増加 エネルギーコストや商品価格の高騰に伴う、商品調達リスクの拡大 消費者の環境意識の高まりによる新たなマーケット獲得 |
4℃ シナリオ |
自然災害の多発・激甚化に伴う店舗被災、サプライチェーンの断絶など、営業機会の損失 エネルギー価格の高騰や資源不足に伴う商品調達リスクの拡大 環境負荷を前提としたビジネスモデルから脱却できない企業に対する市場からの淘汰 |
髙島屋グループのリスク・機会の概要と事業及び財務への影響
リスク・機会 の分類 |
髙島屋グループ 気候変動関連リスク・機会の概要 |
事業及び |
|||
+2℃未満 |
+4℃ |
||||
リスク |
移 行 リ ス ク |
市場と 技術 |
* 再生可能エネルギーへの転換に伴う調達コスト増加 * 環境マーケット需要の獲得遅れに伴う競争力低下 |
〇 大きい |
大きくなる |
評判 |
* 環境課題への対応遅れに伴うステークホルダーからの信用失墜、ブランド価値の毀損、組織会員離反 |
◎ 非常に 大きい |
非常に 大きくなる |
||
政策と 法 |
* 炭素税の導入、プラスチック循環促進法への対応など、規制強化に伴う事業運営コストの増加 |
〇 |
軽微 |
||
物理的 リスク |
* 大規模自然災害の発生に伴う店舗閉鎖や、サプライチェーン断絶に伴う営業機会損失 |
◎ |
|
||
機会 |
エネルギー源 |
* 省エネ推進に伴う電力使用コスト削減 * 災害に備えた事業活動のレジリエンス確保 |
〇 |
|
|
市場 |
* ESG経営の推進によるステークホルダーからの共感獲得、企業価値向上 * 高まる環境意識に対応した商品・サービスの提供によるマーケット獲得 |
〇 |
|
③シナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス
2030年時点を想定した2つのシナリオにおける事業及び財務への影響に関し、規制強化に伴う炭素税の導入や、再生可能エネルギー由来の電力調達コストが財務に影響を及ぼすものと考え、2℃未満シナリオにおける財務影響を試算しています。
当社への財務影響
2030年時点を想定した財務影響 |
||
炭素税導入 |
約△25億円 |
※EUの炭素税価格(約11千円/t-CO2)を基準に、当社 2019年時点のCO2排出量(約230,516t)より算出 |
再エネ由来の 電力調達 |
約△16億円 |
※現状の調達電気との料金格差(約4円/kwh)に、当社 2019年時点の電力使用量(約392,824mwh)より算出 |
当社は、気候変動関連リスクに対する事業活動や財務に与える影響などを踏まえ、持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、社会課題解決と事業成長の両立を図る「グループESG経営」を推進しています。その一環として、2019年、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力で調達することを目指す国際的イニシアチブ「RE100」に参加し、「2050年までに事業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギーに転換すること」を目標とし、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しています。また、店舗ごとに設備を省エネ効率の高い機器へと順次更新すると共に、既存照明をLED照明へ変更することにより、使用電力及びCO2の削減に努めています。国内百貨店では2011年~2019年までで、15万4千台のLED照明を導入し、約10,000tのCO2排出量削減を図りました。
さらに当社は、グループ総合戦略「まちづくり」(以下、まちづくり戦略」を通じ、「街のアンカーとして役割発揮」「館の魅力最大化」に取り組み、環境に配慮した商品やサービス、店舗施設の提供など、新しい価値を提案する次世代商業施設づくりを推進し、新たなマーケット獲得に取り組んでいます。グループ経営においても、これまで百貨店に集中していた経営資源をグループ内で有効活用し、既存事業の収益強化と将来の成長に向け事業規模の拡大や新規事業の開発を進めるなど、気候変動関連リスクの抑制に努めると共に、マーケット変化に積極的に対応し、新たなビジネス機会獲得に取り組んで参ります。
c)リスク管理とリスクに対する取り組み
①気候関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法
当社は、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある気候関連リスクとして、「気候変動」や「自然災害(地震・台風・洪水等)」、「ESG経営への取り組みの遅れ」、「サプライチェーンの破綻」等を事業等のリスクとして特定しています。これらのリスクに適切に対応するため、当社は、社長を委員長とする「髙島屋グループCSR委員会」及び「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」を設置し、コンプライアンス経営の徹底に加え、内部統制の状況や新しい社会課題に対するCSR領域への取り組み状況等をグループ横断的に検証しています。
「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」では、「グループの成長戦略の実行を阻害する事象」又は「事業活動継続と持続的成長を阻害する事象」を重要リスクであると定義し、気候変動に伴う重要リスクを特定、最終的に取締役会へ報告しています。
②重要な気候関連リスクの管理プロセスの詳細、優先順位付けの方法
気候関連リスクと機会は、当社の事業活動に大きな影響を及ぼすため、「髙島屋グループ環境・社会貢献部会」や「髙島屋グループCSR委員会」において、グループESG経営重点課題で掲げた環境課題に対し、年度計画に基づく取り組み内容や進捗状況を確認し、取締役会へ報告しています。
「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」で特定した気候関連リスクは、「発生頻度・可能性」・「事業への影響度」を評価基準にリスクマップを策定し、その重要性を評価しました。
当社は、リスク管理体制を含む内部統制システムの整備に取り組み、気候関連リスクの予防・極小化に向け、グループ横断的に統制を図ると共に、新たなビジネスへのチャレンジ等、事業戦略上発生するリスクに対しては、リターンとのバランスを考慮しながら的確にコントロールするなど、グループ全体のリスクマネジメント体制の確立に取り組んでいます。
③全社リスク管理への仕組みの統合状況
気候変動関連リスクは、当社の事業活動に甚大な影響を及ぼす可能性があり、当社は、「髙島屋グループCSR委員会」及び「髙島屋グループリスクマネジメント委員会」を通じ、リスク発生時の対応やリスク管理体制の強化に努めています。リスクに対する取り組みとして、脱炭素社会の実現に向けた「RE100」や「EV100」の推進、廃棄プラスチックや食品ロスの削減、循環型ビジネスの構築等に取り組むと共に、自然災害の激甚化に伴う営業機会損失を最小限に抑制するため、店舗や施設のレジリエンスを高める設備投資や、EC事業・グループ経営の強化等に取り組んでいます。
d)指標と目標
①気候関連リスク・機会の管理に用いる指標
当社は、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3温室効果ガス排出量、及び事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率を指標として定めています。
②温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)
百貨店事業を中核に位置付ける当社は、環境負荷を前提とした現行のビジネスモデルをリスクと捉え、環境課題の解決に向けて取り組んでいます。2019年、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力で調達することを目指す国際的イニシアチブ「RE100」に参加し、脱炭素化推進に取り組んでいます。当社の2020年度Scope1・2温室効果ガス排出量は、約17.9万t-CO2、国内百貨店におけるScope3温室効果ガス排出量は、約249.6万t-CO2排出しています。
●温室効果ガス排出量
③気候関連リスク・機会の管理に用いる目標及び実績
当社は、「RE100」に参加後、2020年にグループ会社の東神開発株式会社が運営する玉川エリア7施設、流山エリア1施設を再生可能エネルギー由来の電力に転換し、2021年度では、NAGAREYAMAおおたかの森アゼリアテラスや、髙島屋大宮店、日本橋三丁目スクエア、流山TXグランドアベニュー等に再生可能エネルギー由来の電力を導入・転換いたしました。
当社は、「2030年度にScope1・2温室効果ガス排出量30%以上削減」、「2050年度までにScope1・2温室効果ガス排出量ゼロ」を目標として設定し、毎年度の数値目標を設定したロードマップに基づき、脱炭素社会の実現に向け、取り組んでいます。
当社は、2019年度Scope1・2温室効果ガス排出量を基準に、中長期の温室効果ガス排出量削減目標とRE達成目標を設定し、脱炭素化を推進しています。
Scope1・2 |
単位 |
2019年度 |
2025年度 |
2030年度 |
2050年度 |
温室効果ガス排出量 |
t-CO2 |
230,516 |
208,961 |
161,361 |
0 |
削減量(19年度比) |
― |
△21,555 |
△69,155 |
△230,516 |
|
温室効果ガス削減目標 |
|
― |
△9.4% |
△30%以上 |
△100% |
RE達成率 |
% |
0% |
8.6% |
30%以上 |
100% |
(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
「髙島屋グループ3カ年計画(2021~2023年度)」における2023年度の連結経営目標は以下の通りです。
〇総額営業収益 8,500億円 ( 2019年度比 △691億円 )
〇営業利益 300億円 ( 同 + 44億円 )
〇自己資本比率 36.8% ( 同 △ 0.4% )
〇ROE(当期純利益/自己資本) 4.8% ( 同 + 1.2% )
〇ROA(経常利益/総資産) 2.6% ( 同 + 0.5% )
※自己資本比率、ROE、ROAの各指標につきましては、その計算の前提となる2023年度における総資産及び純資産、並びに経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益の予測値を、2022年度から適用する収益認識会計基準による影響等により見直したことに伴い、前年度に公表しました数値から修正を行っております。
(4)経営環境及び対処すべき課題
先行き不透明な経済への不安感や、感染防止のための行動制限が長期化する中、これを契機として消費者の意識や行動は大きく変容しています。感染予防を心掛けた行動やデジタル化の進展に伴う非接触・非対面志向の拡大、働き方改革の進展に伴う外出機会の減少など新たな生活様式が広まりました。対面でのサービス提供が主であった百貨店は、防疫体制を継続しつつ、新たな生活様式と新しい消費需要に対応するための情報発信手法の研究、非接触・非対面サービスの拡充などに取り組むことの重要性が更に高まっています。
こうした中、次年度は、厳しい環境下における当社グループの生き残りと将来成長を目指し「百貨店の構造改革と営業力強化」「業務改革、従業員の意識・組織風土の変革」「グループ会社の収益強化と事業拡大への基盤構築」「グループESG戦略の推進」に取り組んでまいります。
グループ経営においては、グループ各社の強みの発揮による利益の最大化、将来の更なる事業拡大に向けた既存事業強化や新規事業開発の着手に向け、グループ内で経営資源の有効活用を進め、組織体制の強化や人材育成を通じた専門性の向上など、更なる事業基盤の強化を進めてまいります。
企業活動にあたり、その根幹をなす「コンプライアンスの徹底」は何よりも優先すべきことです。グループ全体のリスクマネジメント体制の強化と、重要性が高まるグループガバナンス向上を図るための内部統制システムの充実、取締役会の更なる機能強化に取り組んでまいります。
また、近年、気候変動、資源の枯渇、生物多様性の減少など環境問題は深刻化しており、環境問題への取り組みはより緊急性を増しています。当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同し、そのフレームワークに則って気候変動が事業活動や財務に及ぼす影響の分析と、持続可能な社会の実現に貢献するための対応策を検討・推進してまいります。循環型ビジネススキームの構築や食品廃棄物の削減などの取り組み過程において、イノベーションを起こすことで新たなビジネスチャンスを創出します。更に、グループ全体で社会課題の解決に取り組むことで、ステークホルダーからの信頼・共感を獲得し、グループのブランド価値を高め、持続的成長を可能とする事業基盤の強化を進めてまいります。
<百貨店業>
百貨店は売上の減少や、商品利益率の低下、営業費の高止まりによって、利益の確保が難しくなっています。次年度は大型5店(大阪・京都・日本橋・横浜・新宿)の構造改革によって、新しい百貨店の運営モデルを構築し、当社グループのブランド価値の源泉である百貨店の営業力強化と収益安定化を図ってまいります。まず、営業力強化に向けては、最優先課題である、「魅力ある品揃え」を実現するために、仕入体制の強化を図ってまいります。仕入担当者は魅力ある品揃えとモノづくりに生かすための体制を構築し、新規お取引先を含めたネットワークと情報収集力を強化してまいります。販売担当者は、適切な商品提案を行うための商品知識やお客様とのコミュニケーション能力を磨きあげてまいります。
収益安定化に向けては、お客様が生涯を通じて髙島屋をご利用いただくことで得られる価値を示す「ライフタイムバリュー(LTV)」の向上など、顧客づくりに関する施策の横断的な実施や、業務の重複、無駄を排除するために組織運営体制を再設計いたします。また、売場運営を支える基盤業務の内製化を進めて、経費の削減及び当社グループの経営資源である人材の有効活用を進めてまいります。
成長領域であるEC事業部は、事業部内に仕入機能を持ちEC独自商品の開拓を行う一方、化粧品を皮切りにEC専用倉庫出荷を開始します。商品発送までの日数短縮による顧客利便性の向上や業務の集約化により、ネットビジネスの利益拡大を実現します。また、店頭とECの相互送客など、リアル店舗を持つ強みを最大限発揮することで、既存顧客の深耕と新たな顧客層の獲得に取り組んでまいります。
飲食の分野においては、株式会社アール・ティー・コーポレーションが商品力・サービスの向上やSNSの活用により、既存店売上の増大に取り組むと共に、物流・食材調達の内製化による収益基盤の強化と、核ブランドである「鼎泰豊」「リナストアズ」の新規出店により店舗網、売上の増大を図ってまいります。
海外店舗につきましては、各国共にコロナ影響の長期化が懸念されます。海外旅行客数の回復が期待できない中、各店は顧客ニーズの変化に対応したMD再編、新規顧客の獲得と既存顧客の深耕、現地法人との連携強化を進めて、収益の確保を図ってまいります。
<商業開発業>
商業開発業では、東神開発株式会社が、国内既存事業において、コロナ禍で傷んだ事業基盤を迅速に修復するため、グループの最大の強みである百貨店・専門店の連携を更に強化してまいります。また、SCとしての持続性を確保するため、特に次年度はローコスト運営モデルの構築、デジタル化の推進など業務の効率化と高度化に注力すると共に、コミュニティ戦略の推進、新たなコンテンツ開拓など来店動機を多面的に作り出すことに取り組むことで、次世代型SCへの転換を図ってまいります。一方、国内新規事業においては、多様化するライフスタイルへの対応を企図し、住宅・オフィス・ヘルスケアなどの非商業施設を取り込むことと合わせて、中長期的視点で安定した事業ポートフォリオへのシフトを進めてまいります。
海外事業では、ベトナムを中心に成長市場への経営資源を傾斜配分し、全体としての投資効率を高めます。また、急速な事業拡大に対応するため、現地法人を設立すると共に、ガバナンスと組織力の強化を図ってまいります。
<金融業>
金融業は、グループ全体でお客様の「ライフタイムバリュー(LTV)」を向上させ、グループの優良な顧客基盤を盤石なものにしていく重要な役割を担っております。日本橋・横浜・大阪の3拠点を中心に、百貨店売場との連携による集客策や、外商との連携による重点ターゲット顧客対策を推進いたします。また、コンサルティング強化や商品メニューの充実により、継続的に顧客満足度の向上に取り組むほか、カード積立投資やカード団体保険、ポイント経済圏を活用した資産形成サービスの開発など、カード事業と金融事業の相乗効果を図ります。加えて、融資事業スキームを構築するなど、お客様のニーズに基づき金融事業の機能を進化・充実させることにより、新たな事業拡大戦略を推進してまいります。
<建装業>
建装業におきましては、髙島屋スペースクリエイツ株式会社が、お客様の企画・開発段階に入り込んだソリューション営業を推進すると共に、外部企業とのアライアンスや徹底したマーケティングなどを通じデザイン力を強化します。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)や協力会社との連携により、ものづくりにおける生産性や品質の向上を図ります。加えて、多様なスキルを持った専門人材が存分に力を発揮できるよう、人事制度やシステムなどのインフラ整備にも取り組んでまいります。
<その他の事業>
その他の事業におきましては、当社グループにおいて広告宣伝事業を担う株式会社エー・ティ・エーが、デジタルを駆使したクリエイティブ力・企画営業力を強化することにより、当社グループ外からの売上増大につなげてまいります
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