この「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」は、当行グループ(当行及び連結子会社)の経営成績等(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況)に重要な影響を与えた事象や要因を経営者の視点から分析・検討したものです。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当行グループが判断したものであります。
(1)財政状態
① 預金等(譲渡性預金を含む)及び預り資産
預金等(譲渡性預金を含む)は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う消費自粛の影響等により個人預金が増加したことから、当年度中291億円増加し、当年度末残高は3兆4,440億円となりました。個人預金については相続による県外流出への対策等も課題となりますが、当行店舗ネットワークの優位性やデジタルチャネルの拡充等により、当面は現状レベルの水準を維持していくものと考えております。
預り資産は、新型コロナウイルスの影響により低迷していた市場環境の回復により、投資信託の販売額、預り残高が増加したほか、円建て保険が一部販売再開となったことや海外金利上昇に伴う積立利率の上昇により保険販売額が増加したことから、当年度中267億円増加し、当年度末残高は3,793億円となりました。人口減少によるマーケットの縮小基調が顕在化している中、20歳~40歳の資産形成層との取引拡充が今後の課題と認識しております。長期の資産形成に向けたバランス型ファンドや株式型ファンドの充実を図ることで積立投信の推進を図っているほか、当年度は投信口座Web開設申込サービスの導入により投資信託については口座開設から申込、換金まで来店不要となりました。引き続き資産形成層との取引拡充・裾野拡大に対するより一層の取組みを行ってまいります。
(単位:億円)
② 貸出金
貸出金については、前年度に新型コロナウイルス関連融資が増加した反動により中小企業向け貸出が減少した一方、県内住宅投資が増加基調で推移したことを背景に住宅ローンを中心に個人向け貸出が増加したことから、当年度中446億円増加し、当年度末残高は1兆9,431億円となりました。岩手県内の貸出金は増加基調にあるものの、コロナ禍の長期化に加え、ウクライナ情勢、原油価格の上昇等により地域経済の見通しは不透明な状況が続いているほか、他行との競合から利回りの低下が続いております。事業性理解に基づく本業支援を強化していくことで、収益性とボリュームのバランスのとれた取組みを行ってまいります。
(単位:億円)
③ 有価証券
有価証券については、国内低金利環境の長期化により債券利息収入の減少が続くなかで、海外資産も含めた投資効率の良好な資産への分散投資を通じてリスク対比期待リターンの高いポートフォリオの構築を目指してきました。この方針に基づき、国内債の償還金等の再投資にあたっては時間分散やリスクバランスに配慮しつつ海外資産等の組入・入替を慎重に進めた結果、有価証券残高は当年度中378億円減少し、当年度末残高は1兆1,499億円となりました。2022年度以降についても、これまで取り組んできた中長期的な方向性に変わりはありませんが、足許で米国をはじめとする海外の多くの地域においてインフレ対応のため利上げが開始されていることを踏まえ、当面は各国の金融政策の動向を見極めながらより慎重なスタンスで有価証券運用を行っていく方針であります。
(単位:億円)
④ 自己資本比率
当行の資本政策は、リスクと収益のバランスをとりながら、安定した自己資本を確保する方針としております。自己資本比率は、貸出部門のリスクテイクなどによりリスクアセットが増加したことから、連結自己資本比率が前年度末比0.21ポイント低下し11.62%、単体自己資本比率が同0.14ポイント低下し11.30%となりました。「健全経営に徹する」という経営理念のもと、連結自己資本比率を中期経営計画の主要計数目標の一つとしておりますが、中期経営計画最終年度(2022年度)目標10%以上に対して十分な水準を維持していると評価しております。
(連結) (単位:億円、%)
(単体)
(2)経営成績
① 概要
経常収益は、預り資産関連手数料の役務取引等収益が増加したものの、債券の償還を主因として有価証券利息配当金などの資金運用収益が減少したほか、海外金利の上昇や原油価格高騰の影響を受け、株式などの有価証券売却益が減少したことから、前年度比10億39百万円減収の442億79百万円となりました。
経常費用は、前年度に新型コロナウイルス感染症の影響等を含む将来見込みを加味した引当を実施した反動から、貸倒引当金繰入額が減少したほか、グループ会社の再編や行内メール便の便数見直しをはじめとする「コスト構造改革」の効果として営業経費が減少したことから、前年度比26億52百万円減少の365億10百万円となりました。
この結果、経常利益は前年度比16億12百万円増益の77億68百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前年度比12億30百万円増益の41億26百万円となりました。
2022年度の業績見通しにつきましては、経常利益は69億円、親会社株主に帰属する当期純利益は50億円を予想しております。経常収益については、貸出金利回りの低下やコロナ資金返済が本格的に進むことが予想され、貸出金利息の減少や、債券償還を主因とした有価証券利息配当金の減少を見込んでおります。一方、経常費用については、お客さまの利便性向上及び事務の効率化を目的とした新営業店システムの更改に伴う減価償却費の増加が見込まれますが、コスト構造改革による削減効果や時間外手当削減などにより減少を見込んでおります。
なお、現時点で想定される新型コロナウイルス感染症の影響による貸倒引当金の追加繰入などを考慮して業績を予想しておりますが、状況が変化した場合には今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。今後業績予想の変更が必要となった場合には速やかに公表いたします。
また、セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
経常収益は、有価証券利息配当金などの資金運用収益が減少したほか、株式などの有価証券売却益が減少したことから、前年度比10億83百万円減収の391億24百万円となったものの、貸倒引当金繰入額が減少したほか、営業経費が減少したことから、セグメント利益は同25億82百万円増益の81億24百万円となりました。
リース業については、リース業務及び電算機処理受託業務を行う連結子会社「いわぎんリース・データ株式会社」で構成しております。
経常収益は、リース部門が増収となったことから前年度比1億74百万円増収の47億39百万円となったものの、リース部門における貸倒引当金繰入額の増加などにより経常費用が増加した結果、セグメント損失は4億63百万円(前年度は32百万円のセグメント損失)となりました。
○クレジットカード業・信用保証業
クレジットカード業・信用保証業については、クレジットカード業務及び信用保証業務を行う「株式会社いわぎんディーシーカード」及び「株式会社いわぎんクレジットサービス」の連結子会社2社で構成しております。
経常収益は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う消費自粛によるカード関連手数料の減収や受入保証料の減収のほか、前年度に住宅ローンなどの個人再生債務者に対する債務者区分の見直しに伴う保証債務損失引当金の戻入を計上した反動から、前年度比2億13百万円減収の15億58百万円となりました。この結果、セグメント利益は同1億62百万円減益の7億16百万円となりました。
その他の業務については、コンサルティング業務を行う「いわぎんコンサルティング株式会社」(2022年4月1日付で「いわぎんリサーチ&コンサルティング株式会社」に社名変更)及び、地域商社業務を行う「manordaいわて株式会社」の連結子会社2社で構成しております。
経常収益は、М&A業務が計画対比マイナス実績となったものの、他の4業務(事業承継・経営支援・民事信託・人材紹介)で計画を上回る実績を上げた結果、前年度比1億80百万円増収の3億78百万円となりました。また、セグメント利益は42百万円増益の42百万円となりました。
② 経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
a.与信関係費用
貸倒引当金の計上や、不良債権の処理等により発生する与信関係費用は、一般貸倒引当金繰入額及び個別貸倒引当金繰入額の減少により、前年度比26億40百万円減少の14億16百万円となりました。
なお、当年度においては、DCF法の適用先を破綻懸念先のうち非保全額が一定以上の大口債務者も対象とし、追加で17億56百万円の貸倒引当金を計上しております。
(単位:百万円)
b.有価証券関係損益
有価証券の売却や償還、または時価の著しい下落等から生じる有価証券関係損益は、海外金利の上昇や原油価格高騰の影響を受け、株式等売却益が減少したことなどから、前年度比11億14百万円減少の15億43百万円となりました。
(単位:百万円)
(3)キャッシュ・フローの状況
① 概要
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度は2,400億18百万円のプラスでしたが、当年度は432億34百万円のプラスとなりました。これは、預金等の流入や借用金による資金の増加が前年度を下回ったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度は276億64百万円のプラスでしたが、当年度は225億90百万円のプラスとなりました。これは、有価証券運用において、前年度、当年度ともに、売却・償還による収入が取得による支出を上回ったことによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度は11億73百万円のマイナスでしたが、当年度は15億65百万円のマイナスとなりました。これは、配当金の支払等のほかに、当年度においては自己株式の取得を行ったことによるものであります。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、当年度中642億71百万円増加し、7,005億91百万円となりました。
② 資本の財源及び資金の流動性
当行では、適切な水準の流動性を維持することが事業活動において極めて重要であると認識しており、お客さまから預入れいただいた預金を主な源泉とし、地域の中小企業等向け融資を中心とした貸出金及び有価証券への運用を行うなかで、円滑な決済等に必要な水準の流動性を確保しております。
また、当面の設備投資及び株主還元等は自己資金で対応する予定であります。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当行グループの財政状態、経営成績およびキャッシュフローの状況に重要な影響を及ぼす会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(5)生産、受注及び販売の実績
「生産、受注及び販売の実績」は、銀行業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。
資金運用収支は、有価証券利息配当金等の資金運用収益が減少したことから、前連結会計年度比6億82百万円減の264億98百万円となりました。内訳を見ますと、国内業務部門が前連結会計年度比6億20百万円減の256億81百万円、国際業務部門が前連結会計年度比61百万円減の8億17百万円となりました。
役務取引等収支は、預り資産関連手数料が増加したことなどにより、前連結会計年度比5億19百万円増の53億61百万円となりました。
その他業務収支は、国債等債券損益の減少などにより、前連結会計年度比2億73百万円減の△5億2百万円となりました。
(注) 1 国内業務部門とは当行及び連結子会社の円建取引、国際業務部門とは当行及び連結子会社の外貨建取引であります。ただし、当行の円建対非居住者取引、特別国際金融取引勘定分等は国際業務部門に含めております。
2 資金調達費用は金銭の信託運用見合費用(前連結会計年度2百万円、当連結会計年度2百万円)を控除して表示しております。
3 資金運用収益及び資金調達費用の合計欄の上段の計数は、国内業務部門と国際業務部門の間の資金貸借の利息であります。
資金運用勘定の平均残高は、有価証券は減少したものの、貸出金等の増加により前連結会計年度比3,342億円増の3兆5,975億円となりました。また、利回りは、有価証券および貸出金の利回り低下を主因として、前連結会計年度比0.10ポイント低下し0.73%となりました。この結果、資金運用利息は、前連結会計年度比7億15百万円減の264億23百万円となりました。
資金調達勘定の平均残高は、預金の増加等により前連結会計年度比2,438億円増の3兆5,666億円となりました。資金調達利息は、前連結会計年度比95百万円減の7億41百万円となりました。また、利回りは、前年同期並みの0.02%となりました。
(注) 1 国内業務部門とは当行及び連結子会社の円建取引であります。ただし、当行の円建対非居住者取引、特別国際金融取引勘定分等は国際業務部門に含めております。
2 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度143,531百万円、当連結会計年度48,163百万円)を、資金調達勘定は、金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度8,400百万円、当連結会計年度10,706百万円)及び利息(前連結会計年度2百万円、当連結会計年度2百万円)を控除して表示しております。
3 ( )内は、国内業務部門と国際業務部門の間の資金貸借の平均残高及び利息(内書き)であります。
資金運用勘定の平均残高は、有価証券の減少等により前連結会計年度比86億円減の1,211億円となりました。資金運用利息は、前連結会計年度比78百万円減の8億61百万円となりました。また、利回りは、前連結会計年度比0.01ポイント低下し、0.71%となりました。
資金調達勘定の平均残高は、前連結会計年度比86億円減の1,211億円となりました。資金調達利息は、前連結会計年度比17百万円減の43百万円となりました。また、利回りは、前連結会計年度比0.01ポイント低下し、0.03%となりました。
(注) 1 国際業務部門とは当行の外貨建取引であります。なお、当行の円建対非居住者取引、特別国際金融取引勘定分等は国際業務部門に含めております。
2 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度8百万円、当連結会計年度7百万円)を控除して表示しております。
3 ( )内は、国内業務部門と国際業務部門の間の資金貸借の平均残高及び利息(内書き)であります。
4 国際業務部門の国内店外貨建取引の平均残高は、月次カレント方式(前月末TT仲値を当該月の外貨建取引に適用する方式)により算出しております。
(注) 1 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度143,540百万円、当連結会計年度48,171百万円)を、資金調達勘定は、金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度8,400百万円、当連結会計年度10,706百万円)及び利息(前連結会計年度2百万円、当連結会計年度2百万円)を控除して表示しております。
2 国内業務部門と国際業務部門の間の資金貸借の平均残高及び利息は、相殺して記載しております。
役務取引等収益は、預り資産関連手数料の増加などにより、前連結会計年度比5億44百万円増の87億80百万円、役務取引等費用は、住宅ローン関連手数料の増加などにより、同24百万円増の34億18百万円となりました。
内訳を見ますと、役務取引等収益は国内業務部門が前連結会計年度比5億40百万円増の87億44百万円、国際業務部門が同4百万円増の36百万円となりました。役務取引等費用は国内業務部門が前連結会計年度比22百万円増の33億96百万円、国際業務部門が前連結会計年度比2百万円増の21百万円となりました。
(注) 国際業務部門には、当行の外国為替業務等に関する収益、費用を計上しております。
(注) 1 流動性預金=当座預金+普通預金+貯蓄預金+通知預金
2 定期性預金=定期預金+定期積金
3 国内業務部門とは当行及び連結子会社の円建取引、国際業務部門とは当行の外貨建取引であります。ただし、当行の円建対非居住者取引、特別国際金融取引勘定分等は国際業務部門に含めております。
該当ありません。
(6) 国内・国際業務部門別有価証券の状況
(注) 1 国内業務部門とは当行及び連結子会社の円建取引、国際業務部門とは当行の外貨建取引であります。
2 「その他の証券」には、外国債券及び外国株式を含んでおります。
(参考)
自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(2006年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
なお、当行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
(単位:億円、%)
(単位:億円、%)
(参考)
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(1998年法律第132号)第6条に基づき、当行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(1948年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
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