(業績等の概要)
<当連結会計年度における事業環境>
当連結会計年度における世界の経済情勢は、第3四半期までは米中貿易摩擦の影響等により緩やかな減速基調で 推移いたしましたが、第4四半期より、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が急拡大し、WHOからはパンデミック (世界的大流行)が宣言され、主要国において緊急事態宣言の発令や入出国制限等の対策が実施されたことなどに より、経済活動が大きく制限され、急速に景況感が悪化いたしました。
<当連結会計年度における施策>
当連結会計年度における当社グループは、2021中計(2019年10月発表)のとおり、重点事業(環境・エネルギー、 モビリティ、ライフ、販売金融)への注力や付加価値の向上など、当社が掲げる社会価値創造の実現に向けた取り 組みを着実に実行してまいりました。
また、当社子会社である日立商業保理(中国)有限公司にて2018年度に発生したファクタリング取引における不正常取引を受けて、2019年度を「基盤強化の年」と位置付け、グローバル事業の総点検を行い、その抜本的な見直しを実施いたしました。そして、再発防止を徹底するため、より強固なグローバルにおける与信関連規定の整備や運用、海外グループ会社と本社部門のより密接な連携、さらには、従業員に対する新たな与信関連規定の教育などを実行し、オペレーショナルリスク管理態勢と詐欺行為に対するリスクマネジメントの一層の強化に努めてまいりました。
(重点事業におけるおもなトピックス)
「環境・エネルギー」
・2019年7月 当社子会社(津軽風力発電株式会社)が青森県五所川原市、中泊町にて「十三湖風力発電所(34.5MW)」を
竣工
・2019年9月 当社子会社(よこはま風力発電株式会社)が運営する「横浜町雲雀平風力発電所(32.2MW)」において、
再生可能エネルギーによる特定電力供給を開始
・2020年2月 当社子会社(日立グリーンエナジー株式会社)が「岡山県新見市太陽光発電所(36.4MW)」の運転を開始
これらの取り組みにより、当社グループの発電容量(累計)は593MWに拡大いたしました(2020年3月末現在)。
「モビリティ」
・2019年10月 オランダ王国においてMaaS事業を展開するMobility Mixx B.V.に出資
・2019年10月 当社オランダ子会社(Hitachi Capital Mobility Holding Netherlands B.V.)がベルギー王国において
モビリティサービスを展開するMobilease Belgium NVを買収
・2020年3月 当社ポーランド子会社(Hitachi Capital Polska Sp. z o.o.)がチェコ、スロバキア、ハンガリーの
3カ国に支店を新設
これらの取り組みにより、欧州大陸におけるモビリティ事業は8カ国に拡大いたしました(2020年3月末現在)。
「ライフ」
・2019年9月 熊本県熊本市の商業施設「SAKURA MACHI Kumamoto」にデジタルサイネージソリューションを導入
・2019年10月 滋賀県新県立体育館整備事業の事業者に決定
・2019年11月 Green Earth Institute株式会社と食品残渣や農業残渣等を原料とした「健康」に寄与する
有用化学品の共同開発を開始
・2019年12月 当社子会社(日立キャピタルコミュニティ株式会社)と大和ハウスグループのPT Daiwa Manunggal
Logistik Propertiがインドネシア共和国に不動産賃貸事業を行う新会社を設立
・2020年3月 旭化成ホームズ株式会社、シャープ株式会社とくらしに関するさまざまなサービスを包括した
Life as a Serviceモデルの構築をめざして、住まいのIoT化実証実験を開始
「販売金融」
・2019年4月 当社英国子会社(Hitachi Capital (UK) PLC)がオランダ王国・アムステルダムに販売金融を手掛ける
Hitachi Capital European Vendor Solutions B.V.を設立
・2020年3月 横河電機株式会社、アムニモ株式会社と産業向けIoT分野における包括連携協定を締結
<当連結会計年度の業績>
税引前当期利益は、重点事業の強化や大口ファクタリング事業の収束など、事業戦略の着実な実行で、概ね期初計画通りに推移したものの、新型コロナウイルス感染症の影響による貸倒引当金(2,600百万円)の計上により、42,526百万円(前年同期比30.0%増)となりました。
なお、2021年3月期前半(概ね6カ月程度)は日本事業、グローバル事業ともに信用リスクが悪化するという想定のもと、貸倒引当金を計上しております。
<経営上の目標の達成状況>
当連結会計年度の業績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(日本:アカウントソリューション)
売上収益は、環境・エネルギー事業等が順調に推移したことにより、前年同期比4.1%増の238,740百万円となりました。
税引前当期利益は、電子デバイス事業における戦略的な在庫調整に伴う半導体製造設備の販売減少や新型コロナウイルス感染症の影響による貸倒引当金を計上したこと等により、同11.1%減の20,188百万円となりました。
(日本:ベンダーソリューション)
売上収益は、情報通信機器等の取扱高が堅調に推移したことにより、前年同期比0.9%増の25,173百万円となりました。
税引前当期利益は、事業構造改革により販売費及び一般管理費が減少したものの、新型コロナウイルス感染症の影響による貸倒引当金を計上したことにより、同13.0%減の5,435百万円となりました。
(欧州)
売上収益は、欧州大陸のモビリティ事業等が好調に推移したことにより、前年同期比4.3%増の132,590百万円となりました。
税引前当期利益は、為替の円高影響や新型コロナウイルス感染症の影響による貸倒引当金の計上等があったものの、英国事業が堅調に推移したこと等から、同1.5%増の18,533百万円となりました。
(米州)
売上収益は、2019年2月に実施したGlobal Technology Finance, LLCの事業買収、さらには、カナダ事業が好調に推移したこと等により、前年同期比9.3%増の29,447百万円となりました。
税引前当期利益は、大口ファクタリング事業の収束や新型コロナウイルス感染症の影響による貸倒引当金を計上したこと等により、同37.0%減の3,212百万円となりました。
(中国)
売上収益は、大口ファクタリング事業やシンジケートローン等の収束により前年同期比34.5%減の12,189百万円となりました。
税引前当期利益は、売上収益の減少や新型コロナウイルス感染症の影響による貸倒引当金の計上があったものの、2018年度に計上したファクタリング取引における不正常取引に対する引当金(20,665百万円)が減少したことにより、1,956百万円となりました。
なお、日立商業保理(中国)有限公司にて2018年度に発生したファクタリング取引における不正常取引に対して、外部専門家の協力を得て再発防止策を策定し、その内容が確実に実行されていることを確認済みです。
(ASEAN)
売上収益は、マレーシア、インドネシアの事業が順調に推移し、前年同期比0.4%増の17,601百万円となりました。
税引前当期利益は、シンガポールの事業において、個別債権に対する貸倒引当金を計上したことに加え、新型 コロナウイルス感染症の影響による貸倒引当金を計上したこと等により、同53.0%減の702百万円となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
① 営業活動に関するキャッシュ・フロー
営業活動に関するキャッシュ・フローは、130,021百万円の資金流入となりました。この主な内訳は中国と米州における大口ファクタリング事業の収束等による売掛金及びその他の営業債権の減少169,386百万円、オペレーティング・リース資産の取得214,207百万円、およびオペレーティング・リース資産の売却43,759百万円等です。
② 投資活動に関するキャッシュ・フロー
投資活動に関するキャッシュ・フローは、15,741百万円の資金流出となりました。この主な内訳は、その他の有形固定資産の取得13,859百万円、有価証券の売却及び償還並びに定期預金の払戻12,302百万円、その他の無形資産の取得4,720百万円、および有価証券の取得及び定期預金の預入4,459百万円等です。
③ 財務活動に関するキャッシュ・フロー
財務活動に関するキャッシュ・フローは、65,623百万円の資金流出となりました。この主な内訳は、長期借入債務による調達810,516百万円、長期借入債務の返済及び償還715,579百万円、および短期借入債務の減少151,080百万円等です。
これらの結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて45,604百万円増加し、265,463百万円となりました。また、営業活動に関するキャッシュ・フローと投資活動に関するキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べて347,055百万円増加し、114,279百万円の収入となりました。
当社は、市場環境を考慮した手元流動性管理を行うほか、金融資産の到来期限を考慮した返済期限の管理、さらには、資金調達手段及び調達先金融機関の多様化により、流動性リスク発生による影響を抑えるべく管理を行っております。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、顧客からの支払猶予の要請、市場の混乱による資金調達の不安定化等による資金繰りへの影響も想定されますが、十分な手元流動性を維持するとともに、複数の金融機関と当座貸越契約及びコミットメントライン契約(当連結会計年度末時点 総額318,084百万円)を締結し、流動性リスク対策の強化を行っており、事業運営上十分な流動性が確保されていると認識しております。
(販売の状況)
当連結会計年度における取扱高実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 取扱高合計に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における売上収益実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 売上収益合計に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。当社は、連結財務諸表を作成するに当たり、重要な判断や見積りを行っております。これらの見積りは、実際の結果と異なる場合があります。当社グループの会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.主要な会計方針についての概要」に記載のとおりであり、新型コロナウイルス感染症の影響については(追加情報)を追記しております。
(2) 当連結会計年度末の資産、負債及び資本の状況
当社グループの当連結会計年度末の資産、負債及び資本の状況は、次のとおりです。
① 資産
当連結会計年度末の総資産残高は、米州および中国において、売掛金及びその他の営業債権が減少したこと等により、前連結会計年度末に比し53,310百万円減少の3,719,474百万円となりました。
② 負債
当連結会計年度末の負債残高は、米州および中国において短期借入金が減少したこと等により、前連結会計年度末に比し58,905百万円減少の3,323,460百万円となりました。
③ 資本
当連結会計年度末の資本残高は、IFRS第16号の適用による期首利益剰余金193百万円の減少、親会社の所有者に帰属する当期利益30,693百万円を計上したことによる増加、剰余金の配当を10,750百万円実施したことによる減少、およびその他の包括利益累計額が16,262百万円減少したこと等の結果、前連結会計年度末に比し5,594百万円増加の396,013百万円となりました。
(3) 当連結会計年度の経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、次のとおりです。
① 売上収益
重点事業の拡大や大口ファクタリング事業の収束など、事業戦略の着実な実行により、売上収益は前年同期比2.4%増の464,020百万円となりました。
② 親会社の所有者に帰属する当期利益
新型コロナウイルス感染症の影響による貸倒引当金(2,600百万円)の計上により、親会社の所有者に帰属する当期利益は30,693百万円(前年同期比58.5%増)となりました。
③ 親会社の所有者に帰属する1株当たり当期利益
上記の結果、親会社の所有者に帰属する1株当たり当期利益は前年同期比58.5%増の262.67円となりました。
(4) 経営成績に重要な影響を及ぼす要因について
経営成績に重要な影響を及ぼす要因についての分析は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
(5) 経営戦略の現状と見通し
当期における当社グループは、2021中計(2019年10月発表)のとおり、重点事業(環境・エネルギー、モビリティ、ライフ、販売金融)への注力や付加価値の向上など、当社が掲げる社会価値創造の実現に向けた取り組みを着実に実行してまいりました。
また、当社子会社である日立商業保理(中国)有限公司にて2019年3月期に発生したファクタリング取引における不正常取引を受けて、2020年3月期を「基盤強化の年」と位置付け、グローバル事業の総点検を行い、その抜本的な見直しを実施いたしました。そして、再発防止を徹底するため、より強固なグローバルにおける与信関連規定の整備や運用、海外グループ会社と本社部門のより密接な連携、さらには、従業員に対する新たな与信関連規定の教育などを実行し、オペレーショナルリスク管理態勢と詐欺行為に対するリスクマネジメントの一層の強化に努めてまいりました。
今後の見通しにつきましては、「(7)経営者の問題認識と今後の方針について」をご参照ください。
(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度における資本の財源及び資金の流動性についての分析は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フロー」に記載しております。
(7) 経営者の問題認識と今後の方針について
<問題認識>
当社グループを取り巻く事業環境は、世界的な金融緩和の継続や、ポピュリズムを背景とした英国のEU離脱問題、保護主義の台頭、及び米中における貿易摩擦等、先行きはさらに不透明な環境が続く見通しです。また、地政学リスクや金融市場におけるシステミックリスク等により、世界的な景気減速懸念が顕在化しつつあります。加えて、AI、IoT、ロボティクス等、テクノロジーの進展とさらなる5Gの普及により、さまざまな分野でイノベーションや産業構造の大きな変化が見込まれます。
そのようななか、外部環境に左右されない事業ポートフォリオの構築やリスク管理の高度化、さらに、金融ビジネスからの脱却をめざし、付加価値の高い事業への選択と集中、及びより効率的な経営体質への変革、また、それらを実現するための明確な戦略の立案とその着実な実行が必要不可欠となっております。
<今後の方向性>
今後、当社グループは、様々な社会課題やお客様の経営課題の解決と持続的成長を両立させるべく、事業モデルシフトを加速してまいります。具体的には、単なるファイナンス会社からの脱却を図り、コア事業(ファイナンス・サービス・事業化)を有機的に結びつけた組合せ事業の推進を加速し、付加価値の高い事業モデルを拡大させてまいります。また、効率的且つ生産性の高い経営に向け、より一層の業務プロセスの効率化とリソース配置の最適化に取組み、フロント・ミドル・バックオフィスにおいて、先進的なテクノロジーの積極的な活用に努めていきます。さらに、メガトレンドからみた将来成長が見込まれる事業分野への経営資源のシフトを行うとともに、デジタライゼーションに向けた研究開発投資とM&Aの活用により、企業価値向上と社会から絶えず必要とされる企業をめざしてまいります。
「特定金融会社等の開示に関する内閣府令」(平成11年5月19日 大蔵省令第57号)に基づく、提出会社個別に
おける営業貸付金の状況は以下の通りです。
① 貸付金の種別残高内訳 2020年3月31日現在
(注) 事業者向貸付残高には、関係会社向け貸付359,111百万円が含まれております。
② 資金調達内訳 2020年3月31日現在
(注) 当事業年度における貸付金譲渡金額は7,999百万円です。
③ 業種別貸付金残高内訳 2020年3月31日現在
④ 担保別貸付金残高内訳 2020年3月31日現在
⑤ 期間別貸付金残高内訳 2020年3月31日現在
(注) 期間は約定期間によっております。
「特定金融会社等の会計の整理に関する内閣府令」(平成11年5月19日 総理府・大蔵省令32号)第21条第2項に基づく、前事業年度末及び当事業年度末現在における、提出会社個別の営業貸付金にかかる不良債権の内訳は以下の通りです。
本項目における数値は、日本会計基準により作成しています。
(注) 1 破綻先債権とは、元本又は利息の支払の遅延が相当期間継続していることその他の事由により元本又は利息の取立て又は弁済の見込みがないものとして未収利息を計上しなかった貸付金(以下、「未収利息不計上貸付金」という。)のうち、法人税法施行令第96条第1項第3号のイからホまでに掲げる事由が生じているものです。
2 延滞債権とは、未収利息不計上貸付金であって、破綻先債権及び債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として利息の支払を猶予したもの以外のものです。
3 3ヶ月以上延滞債権とは、元本又は利息の支払が、約定支払日の翌日から3ヶ月以上遅延している貸付金で、破綻先債権及び延滞債権に該当しないものです。
4 貸付条件緩和債権とは、債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取決めを行った貸付金で、破綻先債権、延滞債権及び3ヶ月以上延滞債権に該当しないものです。
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