課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 世界中で感染拡大した新型コロナウイルスは、当連結会計年度においても、新たな変異株の感染が拡大しました。さらに、昨年末以降は、地政学リスクの顕在化や、原油価格の一段高、米国の金融政策の変化など、当社を取り巻く経営環境の不透明感は一層強くなっています。

 一方で、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた新しいビジネスや、非対面・非接触・遠隔といったキーワー

ドにつながる事業、DX化による効率化を推進する事業などの投資先の強い追い風にもなっています。

 世界的な規模で産業構造の大転換をもたらす「デジタル革命」は、既存産業の仕組みを根本から変え、新たな産

業が生まれています。日本でも有望なスタートアップが本格的に出現し、次世代を担う若い起業家が台頭してい

ます。ベンチャーキャピタルの投資ステージも、シードやアーリーステージが大きな割合を占めています。

 当社は創業以来、時代をリードする起業家とともに歩んできました。当社には、経験を積み重ねてきた多くのベ

ンチャーキャピタリストに加え、企業成長を促進するための豊富なリソースとネットワークの蓄積があります。

単なる投資家としてではなく、「CO-FOUNDER」として、事業の構想段階から経営に関与します。起業家とともに事業の成長にコミットし、企業価値を高めていきます。

 2018年からパートナーシップモデルを導入し、トップキャピタリストとしてファンドの運用責任を負うパートナーを中心としたフラットな組織作りを行っています。

 直近ファンドのSV6ではパートナーと従業員が当社とともに出資しており、個人としても運用リスクを負いながら、ファンドパフォーマンスと個人の貢献に連動した成果報酬を享受していきます。従来からの当社の強みである組織力にも磨きをかけており、投資先への経営関与を通じて、ファンドパフォーマンスの一段の向上を目指し

ます。

 

(1)会社の経営の基本方針

①当社のミッション

「新事業の創造にコミットし、ともに未来を切り開く」

 当社は創業以来、様々な革新的製品やサービスを起業家と生み出してきました。世の中に必要とされる新事業の創造にコミットすることで、ステークホルダーの皆様とともに新しい時代を切り開くことが当社のミッションです。

②ミッション実現に向けた方針と戦略

 当社は、ファンドを通じたベンチャー投資とバイアウト投資によりミッションの実現を図ります。

 新たな事業に挑戦する起業家や、ファンド出資者に対するコミットメントをより明確にするべく、創業以来培ってきた組織力に磨きをかけるとともに、個人としても運用責任を負うパートナーシップモデルを導入することで、競争力を一層高めていきます。

 当社の事業の本質はESG投資の考え方に強く合致するものです。社会課題を解決する有望企業の発掘、投資後の対話を通じた成長支援、そしてEXITに至るまでの過程にESGの観点を取り入れていきます。投資先の事業成長を通じてサステナビリティの実現に貢献し、当社の競争力と企業価値を高めていきます。

 ミッションの実現に向け、当社は下記の取り組みを進めます。

・厳選集中投資と経営関与

 新事業を創造するために、ポテンシャルの高い投資対象を絞り込み、大胆に投資を行います。投資先企業に対し影響力のあるシェアを確保し、投資先の経営に深く関与することで、企業の成長を促進します。

・ファンドパフォーマンスの持続的向上

 十分な投資資金を獲得するには、ファンドパフォーマンスを向上させ、外部出資者を確保することが不可欠です。また当社は自己資金をファンドに出資し、出資者とともにその収益を享受します。厳選集中投資と経営関与により良質なポートフォリオを積み上げ、ファンドパフォーマンスの持続的向上を目指します。

・「CO-FOUNDER」としてのジャフコ

 事業の立ち上げ局面では、投資家である以上に「CO-FOUNDER≒共同創業者」であることが求められます。当社が創業来獲得してきた精神や知識、経験を継承・発展させ、当社及び個々の従業員が
「CO-FOUNDER」として活躍できる組織を目指します。

 

(2)会社の対処すべき課題

 当社が現在取り組んでいる対処すべき課題は以下の5つであります。

①厳選集中投資と経営関与により新事業を創出

 2022年4月以降の新しい役員等の体制でも、これまでの厳選集中投資という方針に変更はありません。新事

業を創造するために、ポテンシャルの高い投資対象を絞り込み、大胆に投資を行います。投資先に対し影響

力のあるシェアを確保し、投資先の経営に深く関与することで、企業の成長を促進します。

②良質なポートフォリオの積み上げとファンドパフォーマンスの持続的向上

 当社は、グロス倍率(売却金額(未売却投資先の評価金額を含む)÷投資金額)2.5倍以上、ネット倍率((分配金累計額+純資産額)÷払込済出資金額)2.0倍以上をファンドパフォーマンスの具体的な目標としていま

す。今後も魅力的な会社への投資を行うことで、ファンドパフォーマンスの持続的向上を目指します。

③次期基幹ファンドの募集

 現在組み入れ中のSV6ファンドに続く、次期基幹ファンドを2023年3月期に募集することを計画しています。

④多様な人材の採用と育成

 新卒採用に加え、中途採用も積極的に行い、多様な人材が活躍できる組織づくりを進めています。加えて、

起業家のいちばん近くで事業の構想段階から経営に関与していく人材の育成に取り組んでいます。

⑤自己資本の充実と株主還元のバランスを重視

 2021年2月に公表した「今後の株主還元についての方針」に則り、事業環境や当社の財務状況の変化に応じ

て自己資本の充実と株主還元のバランスを図っていきます。

 

 また、「CO-FOUNDER」というアイデンティティーを確立し、「新事業の創造にコミットし、ともに未来を切り開く」というミッションの実現に向けて、下記に掲げる五つの姿勢を堅持していきます。

・経験知を受け継ぎ成功を再現する

・次世代を追求し事業をつくりだす

・グローバルに展開しローカルに集中する

・起業家と真摯に企業価値を高める

・先駆者として規律と透明性を守り抜く

 なお、(1)会社の経営の基本方針 ②ミッション実現に向けた方針と戦略 に記載した通り、当社の投資活動の本質は、ESG投資の考え方に強く合致しています。

 投資活動の最初の段階となる有望企業の発掘では、E(environment=環境)やS(social=社会)、SDGsの側面からのリスクや社会のニーズを加えて事業ポテンシャルの評価を行なっています。その評価をもとに、サステナブルな成長実現のための課題についても、投資候補先企業の経営陣と議論し、投資実行の判断をしています。当連結会計年度において、主にE(environment=環境)の観点では、カーボンニュートラル社会の実現に向け、核融合エネルギーの実用化につながる先端技術の研究開発を行っている会社に投資を行いました。S(social=社会)の観点では、共働きの世帯向けの手作り料理配達サービスの会社に投資しました。女性の家事負担の軽減と社会進出を後押しし、豊かな生活をもたらすサービスの実現を目指しています。

 投資活動の次の段階は、対話による課題解決と経営関与による成長支援です。事業進捗の状況把握に加え、投資先の資金管理や法令順守状況を定期的に確認しています。投資先企業の事業の立ち上げは最優先としつつも、管理体制の整備を並行して進めることが重要です。経営陣とは対話を通じて課題を共有し、その解決を図っています。また、成長の段階に応じて、人材採用を含め、営業体制、開発体制、管理体制の構築をサポートします。投資先企業のG(governance=内部管理)構築は、経営陣に伴走しながら支援します。

 こうした取り組みを通じ、将来的に大きな社会的インパクトを生み出す企業を輩出し、サステナビリティの実現に貢献しています。

 

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