①報告セグメントの変更について
当社グループは、2013年10月にグループビジョンを制定して以降、国内外においてビジネス領域の拡大を推進してまいりました。ビジネス領域の拡大を踏まえ、事業の実態をより正確に反映するべく、当連結会計年度の期首から主として以下の報告セグメント等の変更を行いました。
・「賃貸・割賦事業」は「リース事業」に変更し、従来「その他の事業」に区分されていたリースに関わ
る損益項目を集約する。
・「インベストメント事業」として、従来の「リサ事業」及びリサ・パートナーズ以外の投資ビジネスを
集約する。
上記により、連結経営におけるセグメント別損益状況をより精緻に把握し、経営管理の更なる強化を図ってまいります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、飲食業、観光業を中心に厳しい状況が続きました。またサプライチェーンの混乱に伴う半導体不足は自動車産業の減産につながり産業界全体に広く影響を及ぼす結果となりました。加えて、2022年2月に勃発したウクライナ侵攻は、原油や穀物などの商品価格の高騰を招き、世界の中央銀行は利上げを含めた金融引き締め政策で対応に追われるなど、急激に先行きの不透明感が増す状況となりました。このようなグローバルな環境変化は、資源を持たず低金利政策を続けるわが国について、円への強力な売り圧力を招いており、急激な為替変動が及ぼす今後の影響が懸念されます。新型コロナウイルス感染症の行方とウクライナ情勢の動向を踏まえ、今後の経済活動の見通しについてはこれまで以上に注視していく必要があると考えております。
当社グループの属するリース業界においては、業界全体の2021年4月から2022年3月累計のリース取扱高は、前期比8.1%減の4兆2,186億円となっております。(出典:2022年5月30日付公表 公益社団法人リース事業協会「リース統計」)
このような状況下において、当社リース事業の契約実行高は前期比10.8%減、成約高は同20.8%減となりました。契約実行高、成約高共に前年割れとなっておりますが、これは前期にコロナ禍におけるGIGAスクール案件特需があったことによるものであり、期初計画にも織り込み済みの水準であります。
ファイナンス事業においては、主に短期の貸付である個別ファクタリングの減少により、契約実行高、成約高共に前期を下回る結果となりました。これは主に、顧客の売掛債権等の減少に伴い、ファクタリングの対象となる債権残高が減少したことや、大型案件の減少によるものであります。
インベストメント事業においては、大型の営業投資有価証券の売却収益等を計上したことにより、売上高、営業利益共に前期を大幅に上回る結果となりました。
その他の事業においては、ヘルスケアの賃料収入や太陽光売電収益、並びにPFI手数料収益の増加等により、通期での黒字転換を果たしました。
経営成績においては、ファイナンス事業は前期比減収となるものの、リース事業、インベストメント事業を中心に伸長したことから売上高、売上総利益共に前期比増加となりました。与信関連費用の増加に伴い、販売費及び一般管理費は増加しましたが、売上総利益の増加により、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益についてはいずれも前期を上回る結果となりました。
以上により、当連結会計年度の業績は、売上高2,499億7百万円(前期比12.9%増)、営業利益104億47百万円(同75.1%増)、経常利益114億22百万円(同87.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益69億39百万円(同68.5%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。
セグメントごとの業績を示すと、次のとおりであります。以下の前期比較については、前期の数値を変更後の報告セグメントの区分に組み替えた数値で比較しております。
売上高は、営業資産残高の増加に加え、大型の賃貸資産の売却があったこと等により、前期比8.8%増の2,242億円となり、営業利益は前期比26億41百万円増加し71億20百万円となりました。
売上高は、金利収益の減少等により前期比21.6%減の52億19百万円となり、営業損益は貸倒引当金繰入額の計上等により、前期比30億54百万円減少し6億55百万円の損失となりました。
売上高は、当期にファンドによる大型の営業投資有価証券の売却があったことから、前期比140.6%増の163億66百万円となり、営業利益は前期比46億61百万円増加し53億95百万円となりました。
売上高は、ヘルスケア不動産の賃料収入や太陽光売電売上の増加等に加えて当期にヘルスケア不動産の売却があったことにより、前期比139.4%増の41億80百万円となり、営業損益は前期比3億4百万円増加し2億75百万円となりました。
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて270億36百万円減少し、1兆306億17百万円となりました。主な要因としては、営業貸付金が168億87百万円、有形固定資産の賃貸資産が56億98百万円減少したことによります。
負債は、前連結会計年度末に比べて348億91百万円減少し、9,088億76百万円となりました。主な要因としては、コマーシャル・ペーパーが340億円減少したことによります。
純資産は、前連結会計年度末に比べて78億55百万円増加し、1,217億40百万円となりました。主な要因としては、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益等により56億2百万円、為替換算調整勘定が9億66百万円、その他有価証券評価差額金が8億65百万円増加したことによります。
当社グループは、官公庁・自治体や大企業から中小企業までの幅広い顧客層に対して、主としてリース、割賦及び企業融資等のファイナンスサービスを提供している他、ファクタリング、決済・回収代行及び債権流動化等のサービスについても行っており、割賦債権、リース債権及びリース投資資産並びに営業貸付金等の営業債権を保有しております。また、営業投資有価証券、有価証券及び投資有価証券は、主に株式、債券及び組合出資金であり、純投資目的及び営業推進目的で保有しています。さらにこれらに加えて、外貨建ての海外投融資に取り組む他、当社グループの一部の連結子会社では、自己勘定やファンドを通じて、企業(株式)、貸付債権及び不動産を対象に投融資を行っております。
当社グループの資金調達は営業資産との整合を基本としており、営業資産等の増減にあわせて資金調達を行っています。具体的には、市場の状況を踏まえ、長期と短期や直接と間接等のバランスを図りつつ、金融機関からの借入れを中心に、社債やコマーシャル・ペーパーの発行並びに債権流動化といった様々な方法で資金調達をしております。
また、当社グループの主たる営業資産は、リースや割賦取引を中心とした固定金利の資産でありますが、資金調達は主に変動金利での借入を中心に行っているため、営業資産及び負債の総合管理(ALM)により、金利変動リスク及び流動性リスクの低減に努めております。その一環として、現在及び将来の獲得利鞘が変動するリスクをヘッジするために金利スワップ取引を利用しています。
なお、外貨建の営業資産の為替変動リスクについては、外貨建資産・調達の残高を両建てとする取引を行う他、通貨スワップ取引を用いてヘッジしております。
資金調達に係る流動性リスク(支払期日に支払を実行できなくなるリスク)に対しては、営業資産のキャッシュ・フローと営業負債のキャッシュ・フローの対応関係を適切に維持することのほか、資金調達手段の多様化への取組みや適正な水準の手許流動性を維持することなどによりリスクの低減を図っております。なお、金融環境の変化に対応した財務戦略を実施した結果、当連結会計年度末の現金及び預金は377億11百万円となりました。また、複数の金融機関との間で締結しているコミットメントライン等契約の当連結会計年度末時点における未使用総額は3,003億23百万円となっております。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下資金という)は、374億67百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果によって得られた資金は468億15百万円(前期は287億70百万円の支出)となりました。これは主に営業貸付金の減少額174億7百万円及び賃貸料等前受金の増加額145億87百万円があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果によって使用した資金は5億1百万円(前期は66億99百万円の支出)となりました。これは主に投資有価証券の償還による収入108億74百万円があったものの、投資有価証券の取得による支出124億49百万円があったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果によって使用した資金は469億32百万円(前期は309億56百万円の収入)となりました。これは主に長期借入れによる収入1,032億98百万円があったものの、長期借入金の返済による支出1,029億9百万円及びコマーシャル・ペーパーの減少額340億円があったことによります。
「特定金融会社等の開示に関する内閣府令」(1999年5月19日 大蔵省令第57号)に基づく、当社の貸付金(営業貸付金)の状況は次のとおりであります。
①貸付金の種別残高内訳
2022年3月31日現在
②資金調達内訳
2022年3月31日現在
③業種別貸付金残高内訳
2022年3月31日現在
④担保別貸付金残高内訳
2022年3月31日現在
⑤期間別貸付金残高内訳
2022年3月31日現在
当連結会計年度の期首より、報告セグメントを「賃貸・割賦事業」「ファイナンス事業」「リサ事業」及び「その他の事業」から、「リース事業」「ファイナンス事業」「インベストメント事業」及び「その他の事業」に変更しております。
前連結会計年度の数値については、変更後の報告セグメントの区分により組み替えて作成したものを記載しております。
①契約実行高
当連結会計年度における契約実行高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、契約実行高は提出会社の取引が大半を占めているため、提出会社の状況について記載しております。
(注)リース事業については、当事業年度に取得した資産の購入金額を表示しております。
②営業資産残高
当連結会計年度における営業資産残高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.当連結会計年度よりその他の事業の営業資産残高に太陽光発電設備を含めております。
2.当連結会計年度におけるインベストメント事業の営業資産残高の内訳は、営業貸付金が16,540百万円、買 取債権が8,010百万円、営業投資有価証券が21,183百万円、販売用不動産が14,156百万円、投資有価証券が23,637百万円となっております。
③営業実績
連結会計年度における営業実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
前連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
当連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
(注) 1.セグメントの区分は、主な営業取引の種類により区分しております。
2.各セグメントの主要品目は以下のとおりであります。
①リース事業
情報通信機器、事務用機器及びその他各種設備機器等のリース・レンタル・割賦販売
リースに関連する物品売買、満了・中途解約に伴う物件売却及びリース機器の保守サービス等
②ファイナンス事業
金銭の貸付、ファクタリング及び配当収益の収受を目的とする有価証券投資等
③インベストメント事業
有価証券の売却益の収受を目的とするベンチャー企業向け投資等
株式会社リサ・パートナーズが行っているアセット、不動産及びアドバイザリーの各ビジネス
④その他の事業
エネルギー・観光・農業・ヘルスケアを領域とする新事業、PFI・PPP事業及びその他各種サービス等
(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、基本となる重要な事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。なお、当社グループは、連結財務諸表の期間比較可能性及び企業間の比較可能性を考慮し、日本基準で連結財務諸表を作成しております。IFRSの適用につきましては、国内外の諸情勢を考慮の上、適切に対応していく方針です。
当社グループの連結財務諸表に関して、認識している重要な見積りを伴う会計方針は以下のとおりです。
貸倒引当金
当社は、官公庁・自治体等や大企業から中小企業までの幅広い顧客層に対して、主としてリース、割賦及び企業融資等の営業取引を行っており、これらの営業債権の回収は、景気変動やその他の事由により延滞や倒産等が生じた場合、契約条件に従った債務履行がなされない可能性があります。そのため当社の営業債権である割賦債権、リース債権及びリース投資資産、賃貸料等未収入金並びに営業貸付金等については、顧客の契約不履行によってもたらされる信用リスクに晒されており、重要な会計上の見積りを必要とします。
当社の営業債権に関する信用リスクの管理にあたっては、社内管理規程に沿って顧客毎の状況を定期的にモニタリングし、期日及び残高を管理するとともに、財政状態の悪化等による回収懸念の早期把握や軽減を図っております。取組時において個別案件毎の与信審査、与信限度額、与信情報管理、内部格付及び成約条件の設定を行っておりますが、途上の与信管理で与信不安情報等を入手した際は与信ランクの変更をしております。
当社は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)1.貸倒引当金」に記載のとおり、営業債権の貸倒損失に備えるため、顧客の信用リスクの度合いに応じて債務者区分を決定し、債務者区分に基づき債権を一般債権、貸倒懸念債権及び破産更生債権等に分類しております。貸倒引当金は、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権及び破産更生債権等については保全による回収見込額に加え債務者の財政状態及び経営成績を考慮して個別に回収可能性を検討することにより、回収不能見込額を計上しております。
債務者区分の判定は、予め定めている債務者区分別引当基準に基づき、延滞情報を含む返済状況及び顧客の財務指標等の定量的要因並びに将来の業績見通し等の定性的要因に関連する情報を勘案して行っており、また、債務者区分の判定には、新型コロナウイルス感染症に伴う経済活動の停滞等が顧客の財政状態及び資金繰りに与える影響並びにその回復可能性の見積りに関する判断が含まれております。
当社は、当連結会計年度末時点で入手可能な情報に基づき、貸倒引当金を計上しておりますが、保有する営業債権の回収期間が中長期にわたることから、経済及びその他の事象または状況の変化や新型コロナウイルス感染症の影響の長期化に伴う顧客の経営成績・財政状態の悪化により、顧客の延滞・倒産等の不測の事態を被り、翌連結会計年度に追加の引当金の計上が必要となってくる可能性があります。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高2,499億7百万円(前期比12.9%増)、営業利益104億47百万円(同75.1%増)、経常利益114億22百万円(同87.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益69億39百万円(同68.5%増)となりました。売上高、売上総利益は、リース事業、インベストメント事業に加え、その他の事業も伸長したことから共に前期比増加となりました。与信関連費用の増加に伴い、販売費及び一般管理費は増加しましたが、売上総利益の増加により、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益についてはいずれも前期を上回る結果となりました。
以上により、「中期計画2020」で掲げた2022年3月期の当初計数目標(親会社株主に帰属する当期純利益55億円)、並びに第3四半期決算発表時に公表した上方修正値(同65億円)について、目標を達成いたしました。
「中期計画2020」は、新型コロナウイルス感染症拡大という、前例のない状況と対峙しながら事業に取り組むスタートとなりました。「中期計画2020」の2年目という観点から当連結会計年度を振り返ると、初年度に引き続き、withコロナ&afterコロナにおいて新たなニーズを捉えながら、CSV経営実現に向けた歩みを着実に進めることができたと認識しております。
「中期計画2020」では「コア領域の拡充」と「新事業の収益化」を目標に掲げています。
「コア領域の拡充」においては、強みを活かした当社らしいサービスの進化に向けて、大きく3つの観点から取り組みを進めております。
第一は「ベンダーとの新たなサービスの確立」です。当連結会計年度においては、2020年11月に買収した米国のNEC Financial Services, LLCへの役員派遣を行い、北米における新たな事業機会獲得に向けた態勢を強化しました。国内では、NECグループ連携強化による協業パートナーとのサービスモデルを創出すると共に、外資系ICTベンダーとの取引の拡充・拡大を実現しました。これらの取り組みや強固な顧客基盤を活用した営業活動により、GIGAスクール特需の一巡した当期末においても、前期末とほぼ同水準の営業資産残高を維持することが出来ました。
第二は「成長分野における専門事業の加速」です。高収益・高採算確保を重視したアセットの積み上げを図ると共に、インベストメント事業においてリサ・パートナーズは企業投資案件の早期EXIT・不動産売却により高収益を実現しました。同じくインベストメント事業に区分したベンチャー企業向け投資についても大型のIPO EXITを実現すると共に、今後の更なる収益機会拡大に向け、新ファンドの組成を行いました。
第三は「顧客基盤の拡充と営業企画・推進機能の活用」です。全社横断的な役割を担う営業推進本部の機能強化により、基盤顧客の深耕、社内連携・協業活動促進による収益機会共創を推進すると共に、デジタルアセット分野におけるプラットフォーム企業への出資参画など、新たな収益機会の創出を実現しました。
「新事業の収益化」においては、非金融を含む当社ならではの新事業の収益化に向けて、取り組みを進めております。当社が新事業として取り組みを進めている4つの領域(エネルギー、観光、農業、ヘルスケア)について、金融サービス周辺で着実に収益を獲得すると共に、ノウハウやプレゼンスを向上し、地域活性化につながる当社ならではのサービスの実現を目指しています。
当連結会計年度における取り組みとして、エネルギー領域では、従来から取り組んでいる太陽光、バイオマス、水力分野などへの取り組みを継続すると共に、前期に開始したPPA(電力販売契約)サービスの取り組み拡大を実現しました。観光領域では、民都機構や地域金融機関と連携して「アセットリノベーションファンド」を組成、築20年以上の建造物のリノベーション等を対象とした投資を実行するなど、地域経済活性化に向けた取り組みを継続推進しております。農業領域では、米の生産、加工、販売を主事業としている株式会社みらい共創ファーム秋田において、秋田の気候風土に沿った米と畑作の複合農業への取り組みに加え、鹿児島でのミニトマト栽培の継続、及び2019年の姫路市との連携協定に基づき、冷凍野菜の国産化による食料自給率の向上等を目指しシラサギファームの設立を行いました。しかしながら、観光・農業領域においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、収益貢献は限定的となりました。一方で、ヘルスケア領域ではヘルスケア施設のリート向けウェアハウジング事業の取組みを着実に進展することで収益拡大を実現し、その他事業の黒字転換に貢献しました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、日銀の異次元金融緩和政策が挙げられます。この影響により、銀行をはじめとする金融機関の競合が激化し、国内のリース市場にも影響を与えていると考えております。また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う国内外の経済の停滞や混乱は、国内設備投資の減少やリース市場へのマイナス影響にもつながる可能性があるものと想定されます。加えて、2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は、商品価格の高騰や為替変動幅の拡大など、当社事業に影響を与える要因となりうるものと考えております。
当社グループの当連結会計年度における資本の財源及び資金の流動性について、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー共に、問題ない状態と考えております。外貨調達に関しては年度末にかけてFRBの金融政策の変更もあり、今後の動向を注視する必要があると考えておりますが、当社の外貨建てアセットについては、変動金利アセットとなっていることから、米国金利が上昇したとしてもその損益影響は軽微であります。一方で、円貨調達においては、日銀の金融緩和政策の継続に伴い、会計年度を通じて安定した調達を行うことができました。
なお、当連結会計年度においては、特筆すべき資本的支出はありません。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
リース事業
リース事業の営業状況におきましては、リース業界全体の国内リース取扱高は前期比8.1%減少となり、当社グループにおいても契約実行高及び成約高は前期比で減少しました。これは、前期にあったGIGAスクール(小中学校向け端末配備事業)の需要が一巡した影響であり、期初から想定していたものとなります。なおこの水準は、前々期のWindows10の更新、前期のGIGAスクール案件などの特需のなかった2018年3月期、2019年3月期に比較すると、着実に伸長している実績値であり、営業活動の実態はプラス成長であると考えています。こうした営業活動の成果により、年度末の営業資産残高を維持すると共に、資産売却などを加えて、リース事業の売上高は前期比8.8%増、売上総利益は同16.8%増、営業利益は同59.0%増と前年を大幅に上回ることができました。なお、来期以降の見通しは、Windows10の更新やGIGAスクール案件のような特需を想定できないことから、大幅な資産の積み上げは難しい状況ではありますが、当社ならではの強みを活かし、5G対応やコロナ禍における民間のICT需要、デジタル庁創設に伴う官公庁自治体のICT化推進の需要等を着実に取り込むことで、安定的な成長を実現していきたいと考えております。
ファイナンス事業
ファイナンス事業においては、短期の貸付である個別ファクタリングの減少により、契約実行高、成約高共に前期を下回る結果となりました。これは主に、顧客の売掛債権等の減少に伴いファクタリングの対象となる債権残高が減少したことや、大型案件のボリューム減少によるものであります。このような営業状況から営業資産残高は減少し、売上総利益は前年割れとなりました。加えて、ファイナンス事業においては第4四半期において追加で大型の引当を計上したことにより、通期の営業損益は赤字となりました。与信関連費用の状況が落ち着けば営業損益は黒字化すると想定していますが、来期以降の見通しは、リース事業のような差別化が難しいなか、厳しい事業環境が継続するものと考えております。このような状況を踏まえ、コロナ禍における手元資金確保に向けた需要増などを取り込むべく諸施策を講じながら、収益性を重視した事業活動を推進してまいります。
インベストメント事業
インベストメント事業においては、リサ・パートナーズにおいて大型の営業投資有価証券の売却等を計上したこと、加えてベンチャー企業向け投資についても大型のIPO EXITを実現し、売上高、営業利益共に前年を大幅に上回る結果となりました。来期以降の見通しは、2021年度に前倒しで取り込んだリサ・パートナーズの不動産収益等があることから、2022年度にその反動は織り込まざるを得ない状況ではあるものの、既に投資した案件のバリューアップ及び回収最大化、インカムゲインの獲得など多様な収益の組み合わせにより、利益の最大化を図っていく予定です。なお、当社グループが株式会社リサ・パートナーズを連結対象としてから当連結会計年度で11年が経過し、暖簾の償却も完了いたしました。株式会社リサ・パートナーズは、リスク管理を強化しながら資産の入れ替えを進めた結果、毎期安定的に期首計画を達成する高い収益力を確保できるようになっております。
その他の事業
その他の事業においては、ヘルスケアの賃料収入や太陽光売電収益、並びにPFI手数料収益の増加等により、通期での黒字転換を実現しました。エネルギー、ヘルスケア領域については、引き続き安定的な収益確保が可能と考えていますが、観光、農業領域においてはコロナ禍の影響を大きく受け、収益化に向けては厳しい状況が続いています。足元のオミクロン株の感染拡大などもあり、来期以降の見通しについても慎重に見極める必要があると考えております。
c. 目標とする経営指標の達成状況等
経営方針・経営戦略等又は経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、当社は「中期計画2020」において、連結ROAを公表しております。これはアセットビジネスを中心とした当社のビジネス特性から、中計3ヶ年における収益性の向上を測るうえで適切な指標であると判断したためであります。当連結会計年度の連結ROAは1.2%(連結経常利益÷連結営業資産残高平残)であり、これは前年差+0.5%、「中期計画2020」において最終年度(2023年3月期)の目標とした1.3%に迫る結果となりました。現状取り組みを進めている各種施策の着実な遂行を通して、中計最終年度の連結ROA目標を達成できるよう努力していく所存であります。
d. 気候変動への対応について
事業等のリスクにおいても記載した通り、地球規模の気候変動に係るリスクが、中長期的な将来のものではなく、今そこにある危機として認識されるようになってきました。工場等の製造設備を持たない当社にとって、気候変動への対応は自社の環境負荷軽減活動以上に、事業活動を通した環境負荷軽減活動が重要になってくると考えております。当社はこれまでも「リースは循環型産業である」という考え方のもと、各種取り組みを進めてまいりましたが、こうした状況を踏まえ、TCFDの枠組みに準拠したPDCA体制を構築し、気候変動に係るリスクに対応していく所存です。
2022年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に加え、ウクライナ情勢の動向による影響を受けるものと想定されます。新型コロナウイルス感染症については、変異株による国内外の感染再拡大が懸念されるなど、先行きに対する不透明感は残るものの、ワクチン接種の進展や「ニューノーマル」に向けたICTインフラの整備等により、徐々にwithコロナ、afterコロナへの適応が出来つつあると考えられます。一方で、2022年2月に勃発したロシアのウクライナ侵攻は、原油や穀物などの商品価格の高騰を招き、世界の中央銀行は利上げを含めた金融引き締め政策で対応を図っています。このようなグローバルな環境変化は、資源を持たず低金利政策を続けるわが国について、円への強力な売り圧力を招いており、わが国の金融政策の変更がない場合、今後も円安基調は継続するものと想定されます。
こうした新たな状況を踏まえながら、当社は2020年7月に公表した「中期計画2020」の方針に沿って、2022年度の事業展開を行ってまいります。2020年1月下旬以降、全世界に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症は、ビジネスや日常生活の在り方に大きな影響を与え、且つ、今後もその影響は継続していくものと想定されます。既存ルールの破壊や既成概念のパラダイムシフトによって社会全体に不可逆的な変化が起きるなか、当社の事業活動においては、様々なリスクが想定される一方、新たな社会価値を創出する機会とすることも可能と考えております。例えば、非接触、非対面、三密回避など、withコロナ、afterコロナにおける社会課題の解決には、NECグループの金融サービス会社として当社がこれまでに蓄積してきたノウハウが、大きな力を発揮できるものと考えております。当社はwithコロナ、afterコロナの事業環境を前提に「中期計画2020」で掲げた「金融とICTで社会の変革を先導していく企業」を目指し、社会課題の解決を図りながら着実な成長を実現してまいります。
上記方針のもと、2023年3月期の通期連結業績予想は、リース事業の持続的な成長と新事業の収益化を図るものの、インベストメント事業における収益計上の前倒しにより、経常利益は当期比3.7%減の110億円、親会社株主に帰属する当期純利益は当期比6.3%減の65億円といたしました。2023年3月期については前期比減の計画となりますが、中期計画2020で掲げた3か年累計の利益計画については、当初目標を達成するものとなっております。
また、配当予想につきましては、安定配当の維持を基本方針とする当社の配当政策を前提に、上記利益予想を踏まえ、当期と同様の1株当たり年間74円の配当(うち中間配当37円)を実施する予想としております。
なお、以上の文中における業績見通し等の将来に関する記述は、当社が当連結会計年度末現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
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