(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい状況が続く中、夏頃には新規感染者数が大幅に増加する状況となったものの、令和3年9月の終わりに緊急事態宣言が解除されて以降は感染状況も落ち着き、社会・経済活動の平常化や海外経済の回復を背景に、持ち直しの動きが期待される状況となりました。しかしながら、変異ウイルスなど感染症は依然として収束しておらず、また原油を始めとする原材料価格の上昇が物価や消費に与える影響にも注意が必要であり、予断を許さない状況は続いております。
不動産業界におきましては、リモートワークを始めとする各種の感染対策を働き方や日常生活に取り入れた新しい生活様式の広まりにより、戸建住宅に対する需要の拡大など底堅い動きがみられるものの、競争環境は激化が続いております。また、令和3年春頃からウッドショックと呼ばれる世界的な木材不足と価格の高騰が生じ、建築コストや工期などへの影響が懸念されるなど、事業環境の厳しさは強まる状況となっております。
このような環境の中、当社グループでは、お客様のニーズに即した魅力的な住宅造りに注力し、健全な財務体質の維持と企業価値の向上に取り組んでまいりました。
戸建事業のうち主力の戸建分譲では、収益性の回復と在庫状況の健全化・強化に取り組んでまいりました。前連結会計年度においては、収益性の回復を優先課題として分譲用地の仕入を一層厳選して行ってきたことで、当連結会計年度の期首の時点では仕掛在庫が縮小する状況となっておりました。こうした状況に対して、今後の売上となる在庫を確保することが重要となるため、当連結会計年度には完成在庫の販売を進める一方、仕入業務を強化し、厳選した仕入を継続しつつ仕入棟数の増加に取り組んでまいりました。また、建築コストの適正化にも継続して注力し、収益性の回復に向けて、仕様や設備の見直し・協力業者の選定や交渉などを進めてまいりました。しかしながら、ウッドショックによりプレカット材などの価格が大幅に上昇したため、プレカット材の安定した調達経路の確保と価格上昇への対応にも努めました。連結子会社のアオイ建設株式会社では、戸建分譲の販売棟数が順調に拡大しており、令和3年8月には更なる事業拡大を目指して厚木支店(神奈川県厚木市)を新設いたしております。請負工事につきましては、京都府八幡市の大規模な当社分譲地にZEHなどの高性能住宅をローコストで実現したモデルハウスを設置し、新しい生活様式を取り入れた顧客ニーズに対応するプランにも取り組んでまいりました。なお、当該モデルハウスにつきましては、同分譲地の販売が好調に進んだため、当連結会計年度末には保有目的を販売目的に変更し、たな卸資産へ振替を行っております。
マンション事業では、建築中の賃貸マンション1棟が令和3年6月に完成し同年7月から供用を開始した他、中古マンション1棟の取得等を行い、賃貸収益の拡大を徐々に進めております。また、収益機会の拡大を図るべく、区分所有単位で取得した中古マンションのリノベーション販売にも取り組んでまいりました。なお、当連結会計年度には、販売目的で保有していた中古マンション1棟他の保有目的を変更し、たな卸資産から固定資産への振替を行っております。
特建事業につきまして、前連結会計年度には木造集合住宅1棟の引渡しを行ったのに対し、当連結会計年度には引渡し実績はありませんでしたが1棟の受注を行っております。
これらの結果、当連結会計年度における経営成績は、売上高426億31百万円(前連結会計年度比 2.2%減)、営業利益35億42百万円(同 34.0%増)、経常利益34億97百万円(同 35.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益22億85百万円(同 36.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(戸建事業)
戸建事業のうち主力の戸建分譲について、当連結会計年度における販売棟数は1,343棟(うち、戸建住宅 1,231棟、土地分譲 112区画)(前連結会計年度比 9.9%減)となり、売上高は401億26百万円(同 2.7%減)となりました。当社では、引き続き完成在庫の早期販売に注力するとともに、新規の分譲用地仕入の強化に取り組んでまいりましたが、前連結会計年度に比べて在庫棟数が大幅に減少しているため、当社における販売棟数は1,180棟(同 15.0%減)と前連結会計年度を下回る結果となりました。しかしながら、これまで滞留期間の長くなった完成在庫の削減や厳選した分譲用地の仕入など、在庫状況の改善を進めてきた成果により、平均販売単価が上昇するとともに、収益性についても大きく改善する状況となっております。また、アオイ建設株式会社では、建売方式による戸建分譲や土地分譲が順調に増加し、販売棟数は163棟(同 58.3%増)となり、前連結会計年度を大きく上回る実績となりました。請負工事におきましては、景気の厳しさや不動産業者からの受注も伸び悩んだことで、当連結会計年度における販売棟数は70棟(同 6.7%減)となり、売上高は12億93百万円(同 16.0%減)となりました。戸建事業に関するその他の売上高は1億77百万円(同 15.2%減)となりました。
これらの結果、戸建事業全体の売上高は415億97百万円(同 3.3%減)となり、セグメント利益は42億59百万円(同 22.7%増)となりました。
(その他)
その他の事業セグメントのうち、マンション事業について、賃貸収益による売上高は6億1百万円(前連結会計年度比 18.4%増)となりました。当連結会計年度においては賃貸用不動産1物件が完成した他、中古マンション1物件の取得や賃貸用不動産建築用地の取得を行うなど、安定的な収益の確保と経営の強化に向け、着実に賃貸収益を拡大しております。マンション分譲については、当連結会計年度には、前連結会計年度に固定資産からたな卸資産へ振替えた区分所有マンション1戸を含む合計18戸(同 1,700.0%増)のリノベーションマンションを販売し、売上高は4億24百万円(同 1,618.5%増)となりました。特建事業では、前年同期には木造集合住宅1棟の請負工事を行いましたが、当連結会計年度には売上高はありませんでした。
これらにマンション事業に関するその他の売上高を加え、その他の事業セグメント全体の売上高は10億27百万円(同 75.3%増)となり、セグメント利益は2億83百万円(同 116.9%増)となりました。
b.財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は509億11百万円(前連結会計年度末比 7.0%増)となり、前連結会計年度末に比べて33億46百万円増加いたしました。その主な増減の要因は、現金及び預金の増加59億42百万円、たな卸資産の減少35億60百万円及び有形固定資産の増加8億92百万円であります。当連結会計年度におきましては、戸建事業において完成在庫の早期販売に引き続き注力するとともに、分譲用地の仕入については厳選した仕入を継続しつつ仕入棟数の増加に取り組んでおり、完成在庫が減少する一方、仕掛在庫は少しずつ増加する状況となっております。その結果、前連結会計年度末に比べて、販売用不動産は55億34百万円減少し、仕掛販売用不動産は15億1百万円、未成工事支出金は4億72百万円、それぞれ増加いたしました。また、有形固定資産の増加につきましては、主にマンション事業における賃貸用不動産の建築、取得並びにたな卸資産からの振替によるものであります。
負債合計は146億58百万円(同 11.6%増)となり、前連結会計年度末に比べて15億21百万円増加しております。その主な増減の要因は、支払手形・工事未払金の増加8億18百万円、短期有利子負債の増加7億9百万円、未払法人税等の増加3億6百万円及び長期有利子負債の減少3億1百万円であります。支払手形・工事未払金及び短期有利子負債の増加につきましては、主に仕掛中のたな卸資産の増加に伴うものであり、未払法人税等の増加につきましては税金等調整前当期純利益の増加に伴うものであります。
また、純資産は362億53百万円(同 5.3%増)となり、前連結会計年度末に比べて18億24百万円増加いたしました。その主な増減の要因は、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益22億85百万円に対して配当金の支払5億97百万円を行ったこと等により、利益剰余金が16億88百万円増加したことであります。
これらの結果、自己資本比率は69.1%となり、前連結会計年度末に比べて1.2ポイント低下いたしました。当社グループでは、今後も健全な財務体質の維持、向上に努めてまいります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、238億70百万円(前連結会計年度末比 33.1%増)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは68億24百万円の収入(前連結会計年度比 42.5%減)となりました。主な収入の要因は、税金等調整前当期純利益35億13百万円、たな卸資産の減少額33億81百万円及び仕入債務の増加額6億79百万円であり、主な支出の要因は、法人税等の支払額8億79百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは6億87百万円の支出(前連結会計年度比 16.0%減)となりました。主な収入の要因は、関係会社株式の売却による収入66百万円であり、主な支出の要因は、有形固定資産の取得による支出7億87百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは1億94百万円の支出(前連結会計年度比 94.3%減)となりました。主な収入の要因は、短期借入金の純増加額7億37百万円及び長期借入れによる収入1億90百万円であり、主な支出の要因は、長期借入金の返済による支出5億6百万円及び配当金の支払額5億97百万円であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 令和2年11月1日 至 令和3年10月31日) |
前年同期比(%) |
|
件数 |
金額(千円) |
||
1.戸建事業 |
|
|
|
(1)戸建分譲 |
1,147 |
33,868,167 |
△19.1 |
(2)請負工事 |
70 |
1,293,725 |
△16.0 |
戸建事業 計 |
1,217 |
35,161,893 |
△19.0 |
2.その他 |
|
|
|
(1)マンション分譲 |
24 |
7,171,493 |
+20,832.1 |
(2)特建事業 |
- |
- |
△100.0 |
その他 計 |
24 |
7,171,493 |
+8,101.4 |
合計 |
1,241 |
42,333,386 |
△2.7 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
3.件数欄については、戸建分譲は棟数又は区画数、請負工事は棟数又は契約数、マンション分譲は戸数、特建事業は棟数を表示しております。
b.受注実績
当社グループは主に見込み生産を行っており、請負工事等、一部には受注生産も行っておりますが、その多くが短期間で販売するものであるため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 令和2年11月1日 至 令和3年10月31日) |
前年同期比(%) |
|
件数 |
金額(千円) |
||
1.戸建事業 |
|
|
|
(1)戸建分譲 |
1,343 |
40,126,628 |
△2.7 |
(2)請負工事 |
70 |
1,293,561 |
△16.0 |
(3)その他 |
- |
177,353 |
△15.2 |
戸建事業 計 |
- |
41,597,543 |
△3.3 |
2.その他 |
|
|
|
(1)マンション分譲 |
18 |
424,355 |
+1,618.5 |
(2)不動産賃貸 |
- |
601,894 |
+18.4 |
(3)特建事業 |
- |
- |
△100.0 |
(4)その他 |
- |
1,682 |
+2,335.0 |
その他 計 |
- |
1,027,932 |
+75.3 |
セグメント計 |
- |
42,625,476 |
△2.2 |
事業セグメントに帰属しない売上高 |
- |
6,515 |
+33.0 |
合計 |
- |
42,631,991 |
△2.2 |
(注)1.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
2.件数欄については、戸建分譲は棟数又は区画数、請負工事は棟数又は契約数、マンション分譲は戸数、特建事業は棟数を表示しております。
3.戸建分譲における地域別の販売実績は、次のとおりであります。なお、地域別の分類は、物件の属する地域によって分類しております。
地域 |
件数 |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
埼玉県 |
46 |
1,659,652 |
△9.5 |
千葉県 |
30 |
955,163 |
△32.8 |
東京都 |
64 |
2,284,930 |
+111.9 |
神奈川県 |
113 |
3,742,587 |
+32.4 |
愛知県 |
215 |
6,386,059 |
+2.3 |
滋賀県 |
50 |
1,261,211 |
+25.0 |
京都府 |
100 |
2,570,241 |
+23.0 |
大阪府 |
268 |
8,356,654 |
△10.6 |
兵庫県 |
272 |
7,885,808 |
△11.3 |
奈良県 |
86 |
2,033,954 |
△24.6 |
広島県 |
56 |
1,678,177 |
△14.5 |
福岡県 |
43 |
1,312,185 |
△29.4 |
合計 |
1,343 |
40,126,628 |
△2.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」及び「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。これらの指標に関して、当連結会計年度における実績は、売上高経常利益率 8.2%(前連結会計年度は5.9%)、賃貸等不動産に関する資産、負債及び利益を除いた自己資本当期純利益率 7.4%(同 5.7%)、棚卸資産回転率 年2.5回転(同 年2.1回転)となっております。各利益率につきまして、前連結会計年度においては滞留期間の長くなった完成在庫の販売を販売価格の見直しなどにより積極的に推進したことが主な要因となって、収益性が低下する状況となっておりましたが、当連結会計年度におきましては、こうした完成在庫が大幅に減少したことや厳選した分譲用地の仕入に注力してきた成果によって平均販売単価が上昇し、各利益率は前連結会計年度より改善いたしました。翌連結会計年度においてはウッドショックによる建築コストの上昇に対応し、収益性の維持・向上に取り組んでまいります。また、棚卸資産回転率につきましては、前連結会計年度より売上原価が5.0%減少した一方、販売用不動産が前連結会計年度に比べて48.3%減少したことが主な要因となってたな卸資産の合計は前連結会計年度より19.9%減少しており、その結果、当連結会計年度における棚卸資産回転率は前連結会計年度より向上いたしました。引き続き年3回転を目標として、工程管理の強化、業務効率の向上を図り、回転率の向上に努めてまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきまして、当社グループの資金需要のうち主なものは、分譲用地の仕入資金及び収益物件の購入資金等であり、主に内部留保資金又は当座貸越契約を含む金融機関からの借入により調達しております。なお、当連結会計年度末における社債、借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は79億31百万円(前連結会計年度末比 5.4%増)となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は238億70百万円(同 33.1%増)となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
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