業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しているため、当連結会計年度における経営成績に関しては、前連結会計年度と比較しての増減額および前年同期比(%)を記載せずに説明しています。

 

① 経営成績

当期のわが国経済は、企業収益に持ち直しの動きが見られたものの、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化により、個人消費や雇用情勢は弱い動きで推移するなど、厳しい状況が続きました。また、期末にかけては、ウクライナ情勢が悪化する中、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動等による下振れに留意が必要となるなど、先行きは依然として不透明な状況となっています。

このような状況のもと、当社グループでは鉄道や百貨店、ホテル等の事業において、前期に比べ利用者数は回復傾向にあったものの、緊急事態宣言や会計方針変更等の影響を受け、営業収益は358,753百万円(前期 営業収益385,978百万円)、営業利益は6,152百万円(前期 営業損失24,190百万円)となったほか、経常利益は4,699百万円(前期 経常損失31,223百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は12,116百万円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失39,804百万円)となりました。

セグメントごとの業績は、次のとおりです。

 

ア 運輸業

鉄道事業では、輸送面において、本年3月、平日の朝方ラッシュ時間帯における着席ニーズの高まりを捉えた特急ロマンスカーの増発、運行定時性の向上や車両運用の効率化を目的とした江ノ島線の運行形態変更等、お客さまのご利用動向の変化を踏まえたダイヤ変更を実施しました。また、通勤車両5000形4編成を増備したほか、通勤車両1000形のリニューアルを引き続き実施するなど、輸送サービスの向上を図りました。

営業面では、昨年11月、子育て応援ポリシー「こどもの笑顔は未来を変える。Odakyuパートナー宣言」を策定するとともに、本年3月、全国の鉄道会社で初めて、小児IC運賃を全区間一律で50円とするなど、「子育てしやすい沿線」の実現に向けた取り組みを実施しました。また、昨年11月、観光型MaaSを推進すべく、MaaSアプリケーション「EMot(エモット)」およびデジタルチケット購入サイト「EMotオンラインチケット」において、「デジタル江の島・鎌倉フリーパス」の販売を開始し、沿線3大観光地(箱根、丹沢・大山、江の島・鎌倉)のフリーパスのデジタル化を完了しました。

施設面では、列車運行の安全性を一層高めるため、新宿駅(8、9番ホーム)および登戸駅(3、4番ホーム)でホームドアを設置したほか、大規模地震や土砂崩壊等による被害を抑制すべく、渋沢駅~新松田駅間等の橋梁での耐震補強工事や、愛甲石田駅~伊勢原駅間等での法面改修工事を実施しました。また、昨年11月、大和市と協力して2018年から実施している中央林間駅改良工事の進捗により、同駅で新設した東口改札の使用を開始するなど、駅施設の充実を図りました。

自動車運送事業では、小田急バス㈱において、昨年10月、東京都武蔵野市内のバス折返場を開発し、“暮らしの「町あい所」”をコンセプトとする、店舗兼住居を核とした新たな複合施設「hocco(ホッコ)」を開業することで、バス沿線地域の活性化に努めました。また、各社でお客さまのニーズに対応したダイヤ改正を実施することなどにより、利便性の向上を図りました。

以上の結果、二度の緊急事態宣言の影響を受けたものの、当社の鉄道事業において、定期・定期外ともに輸送人員は前期を上回ったことなどにより、営業収益は131,207百万円(前期 営業収益116,230百万円)、営業損失は5,491百万円(前期 営業損失25,937百万円)となりました。

 

(提出会社の鉄道事業運輸成績表)

種別

単位

当連結会計年度

(2021.4.1~2022.3.31)

 

対前期増減率(%)

営業日数

 

365

0.0

営業キロ

 

キロ

120.5

0.0

客車走行キロ

 

千キロ

190,124

△1.2

 

定期

千人

349,917

5.4

輸送人員

定期外

230,695

19.4

 

580,612

10.5

 

定期

百万円

35,618

3.9

旅客運輸収入

定期外

52,991

21.6

 

88,609

13.8

運輸雑収

 

3,376

5.8

運輸収入合計

 

91,986

13.5

乗車効率

 

32.3

(注) 乗車効率の算出方法

乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)/(客車走行キロ×平均定員)×100

 

イ 流通業

百貨店業では、㈱小田急百貨店の全店において、催事をはじめとする各種営業施策を積極的に展開しました。

ストア業等では、小田急商事㈱が運営するスーパーマーケット「Odakyu OX」全28店および「Odakyu OX MART」新百合ヶ丘店において、昨年8月、㈱セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド「セブンプレミアム」の販売を開始し、品揃えと商品力の強化を図りました。また、「Odakyu OX」において、相模大野店、鶴川店、千歳船橋店がリニューアルオープンするなど、利便性の向上に努めました。

以上の結果、百貨店業において、2020年4月に発出された緊急事態宣言に伴う臨時休業の反動等により利用者数は回復したものの、会計方針変更の影響により減収となり、営業収益は100,853百万円(前期 営業収益157,685百万円)、営業利益は1,695百万円(前期 営業損失1,741百万円)となりました。

 

 

ウ 不動産業

不動産分譲業では、小田急不動産㈱において、「リーフィア南大沢ガーデンズ」等の戸建住宅や、「リーフィアレジデンス橋本」をはじめとしたマンションを分譲するなど、収益の確保に努めました。

不動産賃貸業では、東北沢駅~世田谷代田駅間の地下化により創出された線路跡地「下北線路街」において、昨年6月、セレクトショップやこだわり食材のカフェ等、店主の顔が見える個性豊かなテナントを迎えた新たな施設「reload(リロード)」を開業するなど、開発計画を鋭意推進しました。また、新宿駅西口地区開発計画において、本年2月、プロジェクト価値の最大化を図るべく、東急不動産㈱を新たな共同事業者候補として選定し、ノウハウや経営資源の提供等、共同での計画推進に向けた検討を深度化することに関して同社と合意しました。このほか、小田急不動産㈱において、昨年7月、同社として初となる物流施設「小田急不動産ロジスティクスセンター印西」が竣工するなど、事業規模拡大に努めました。

以上の結果、不動産分譲業において、土地やマンションの販売が好調であったことや、不動産賃貸業において、2020年4月に発出された緊急事態宣言下での一部商業施設の臨時休業に伴う賃料減免の反動等の影響があったことから、営業収益は80,946百万円(前期 営業収益72,872百万円)、営業利益は18,570百万円(前期 営業利益16,459百万円)となりました。

 

エ その他の事業

ホテル業では、㈱ホテル小田急が運営する「ハイアット リージェンシー 東京」において、昨年11月、老舗日本料理店「なだ万」による新店舗「新宿 なだ万」をオープンするなど、事業基盤の強化に努めました。また、㈱ホテル小田急サザンタワーが運営する「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」において、高層フロアからのトレインビューや、当社線の本格運転シミュレーターが客室内で楽しめる新たな宿泊プランの販売を開始したほか、客室形態の変更を推進するなど、新しい生活様式のもとで多様化する顧客ニーズへの対応に努めました。

レストラン飲食業では、㈱小田急レストランシステムおよびジローレストランシステム㈱において、引き続きテイクアウトメニューの充実を図ったほか、新規出店や店舗の改装を実施するなど、集客力の強化を図りました。

以上の結果、二度の緊急事態宣言の影響を受けたものの、ホテル業やレストラン飲食業における利用者数の回復等により、営業収益は74,143百万円(前期 営業収益68,131百万円)、営業損失は8,668百万円(前期 営業損失13,020百万円)となりました。

② キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益23,227百万円に減価償却費等を加減した結果、48,617百万円の資金収入となり、前連結会計年度に比べ、21,438百万円の資金収入の増加となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、45,515百万円の資金支出となり、有形固定資産の取得による支出が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ、1,933百万円の資金支出の増加となりました。

この結果、これらを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは3,101百万円の資金収入となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出等により、30,573百万円の資金支出となりました。

なお、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ27,415百万円減少し、21,852百万円となりました。

③ 生産、受注および販売の実績

当社グループの主たる事業は、鉄道事業を中核とする運輸業、百貨店業を中核とする流通業、建物の賃貸、土地および建物の販売を行う不動産業およびその他の事業であり、役務の提供を主体とする事業の性格上、生産および受注の実績を金額あるいは数量で示すことはしていません。

そのため生産、受注および販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要」におけるセグメントの業績に関連付けて示しています。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成に際し、経営者は、決算日における資産・負債および報告期間における収入・費用の金額ならびに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。重要な会計方針および見積りには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当報告書提出日現在において判断したものです。

また、連結財務諸表の作成における会計上の見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等〔注記事項〕(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

ア 棚卸資産の評価

当社グループは、多くの棚卸資産を保有しており、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号 2008年9月26日)を適用しています。これらのうち、分譲土地建物については原価法(貸借対照表価額は収益性の低下による簿価切り下げの方法により算定)を採用しており、市場価格が下落した場合には、簿価の切り下げにより費用が発生する可能性があります。

イ 有価証券の減損

当社グループは、金融機関や取引先の有価証券を保有しています。これらのうち、市場価格のない株式等以外の有価証券については、時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っています。

これらの有価証券は価格変動リスクを負っているため、損失が発生する可能性があります。

ウ 固定資産の減損

当社グループは、多くの固定資産を保有しています。これらの固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等多くの前提条件に基づき算出しているため、前提条件が変更された場合には、損失が発生する可能性があります。

エ 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しています。評価性引当額は将来年度の課税所得の見込額等を考慮して計上しますが、将来の業績変動により課税所得の見込額が減少または増加した場合には、評価性引当額の追加計上または取崩しが必要となる場合があります。

オ 退職給付債務および費用

従業員の退職給付債務および費用は、数理計算上で設定される諸前提条件に基づいて算出しています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、予想昇給率等が含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付債務および費用に影響する可能性があります。

② 財政状態および経営成績

(財政状態)

総資産は、社債の償還等に伴い現金及び預金が減少したことや、投資有価証券を売却したことなどから、1,285,230百万円(前連結会計年度末比41,766百万円減)となりました。

負債の部は、社債の償還等に伴い有利子負債が減少したことなどから、935,972百万円(同38,566百万円減)となりました。

純資産の部は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したものの、投資有価証券の売却等によりその他有価証券評価差額金が減少したことなどから、349,257百万円(同3,199百万円減)となりました。

(経営成績)

ア 営業収益および営業利益

当連結会計年度は、営業収益は358,753百万円(前期 営業収益385,978百万円)、営業利益は6,152百万円(前期 営業損失24,190百万円)となりました。なお、各セグメントの営業収益および営業利益の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しています。

イ 営業外損益および経常利益

営業利益の改善に伴い、経常利益は4,699百万円(前期 経常損失31,223百万円)となりました。

ウ 特別損益および親会社株主に帰属する当期純利益

税金等調整前当期純利益は23,227百万円(前期 税金等調整前当期純損失41,261百万円)となり、ここから法人税等および非支配株主に帰属する当期純損失を控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は12,116百万円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失39,804百万円)となりました。

③ 資本の財源および資金の流動性についての分析

ア 設備投資による資本の投下

当社グループは、鉄道事業において、安全防災対策に積極的に取り組みながら、快適かつスピーディーな鉄道運行の実現に努めているほか、他の事業においても、沿線の魅力を高めることを目指して継続的な設備投資を行っています。当連結会計年度は総額64,693百万円の設備投資を実施しました。

なお、各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」の「1 設備投資等の概要」に記載しています。

イ 資金需要の主な内容と動向

当社グループの主要な資金需要は、安心・便利・快適に鉄道をご利用いただくために不可欠な設備や施設への投資や、沿線価値の向上に資する開発への投資等の設備投資の支出ですが、その他に人件費等の事業運営のための運転資金の支出があります。また、今後の動向としては、設備投資が資金需要の中で最も高い割合を占める状況が続くと考えています。

ウ 資金調達

当社グループの資金調達は、鉄道事業における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債および民間金融機関からの借入金等、市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しています。

なお、当社グループでは資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、資金繰りの波動により、短期的な資金需要が発生する場合には、極力グループ内資金を活用するほか、適宜、コマーシャル・ペーパー(CP)の発行等により緊急時の流動性を確保しています。

エ 資金の流動性

当社グループは、鉄道事業や流通業を中心に日々の収入金があることから、必要な流動性資金は十分に確保しており、これらの資金をCMSにより集中管理することでグループ内において有効に活用しています。

 

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大により資金繰りへの影響が生じていますが、社債の発行等により、手元資金は十分に確保できています。

また、今後急激に資金繰りが悪化した場合においても、迅速に追加での資金調達が可能な体制を構築しています。

 

④ 経営指標

当社グループでは、2023年度における財務健全性の回復の目安として「有利子負債残高7,000億円、有利子負債/EBITDA倍率7倍台」を掲げ、各事業における収支構造の改善施策や、投資案件のこれまで以上の選別等に取り組みます。

なお、当連結会計年度については、以下のとおりです。

 

(EBITDA・有利子負債/EBITDA倍率)

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

借入金・社債等

703,173

690,022

鉄道・運輸機構長期未払金(注1)

79,649

66,515

有利子負債計(注2)

782,822

756,537

EBITDA(注3)

26,355

55,515

有利子負債/EBITDA倍率

29.7倍

13.6倍

(注) 1 鉄道・運輸機構長期未払金は、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑤ 連結附属明細表〔借入金等明細表〕」における鉄道・運輸機構長期未払金の額とは異なり、上表では消費税等相当額を加えています。

2 リース債務および社内預金は除いています。

3 EBITDAは、営業利益に減価償却費を加えたものです。

 

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