業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績、及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当期における世界経済は、新型コロナウイルス感染症拡大からの回復を目的とする各国の大規模な財政出動や行動制限の緩和が経済活動を後押しし、2021年の実質GDPは前年同期比6.1%増(IMF2022年4月時点報告値)と全体的に高い成長率となりました。また、前期末までに取り組んだ船隊整備計画により強化された収益構造のもと年度末にかけて加速した円安が追い風となり、当期は2010年当社合併以降、過去最高益を達成することができました。

外航海運事業において、ドライバルクにつきましては、経済回復に伴う世界的な荷動き増加、限定的な新造船竣工量に加え、感染症拡大に起因する滞船と船員交代難航による船腹の不稼働が増加したことから、ドライバルク市況は10月にはBDI(バルチック・ドライ・インデックス)が5,600を超え、約13年ぶりの高水準を記録しました。VLGC(大型LPG運搬船)につきましては、第2四半期のLPG需要の減退や第4四半期のバンカー価格高騰が収益の押下げ要因となりました。

内航海運事業につきましては、製造業や建設部門における鉄鋼原料輸送需要の回復により、原料輸送部門の輸送量は当初の計画を上回る一方、半導体不足に伴う自動車生産の停滞により鋼材輸送部門の輸送量が当初の計画を下回るなど、強弱が入り混じる結果となりました。

燃料油価格につきましては、当期の外航海運事業の平均消費価格は、高硫黄C重油がトン当たり上期約406ドル、下期約481ドル、期中平均で約443ドルと、前年同期比では約163ドル高、適合燃料油がトン当たり上期約522ドル、下期約589ドル、期中平均で約558ドルと、前年同期比で約189ドル高となりました。また対米ドル円相場は日米金利差を背景に円安が加速し、上期平均109円33銭、下期平均113円67銭、期中平均で111円50銭と前年同期比5円33銭の円安となりました。

このような事業環境の下で、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前年度末に比べ41億11百万円増加し2,748億71百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前年度末に比べ176億76百万円減少し1,566億82百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前年度末に比べ217億87百万円増加し1,181億89百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高1,959億41百万円(前年同期比41.5%増)、営業利益267億11百万円(前年同期比296.5%増)、経常利益266億6百万円(前年同期比380.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は235億82百万円(前年同期比284.6%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

<外航海運事業>

ケープ型撒積船(18万重量トン型)市況は、世界経済の回復に伴い鉄鋼原料の荷動きが増加したことにより、期初は2万ドルであった主要5航路平均用船料率は上昇を続け、10月初旬には一時8万ドル後半まで達しました。しかしながら11月以降は中国の環境規制強化により粗鋼生産量が減少へ転じ、年明けからはブラジルで天候不順により鉄鉱石の出荷が滞ったこともあり用船市況は調整局面を迎え、一時は1万ドルを割り込む水準まで下落しました。このような状況下、当社では主要荷主の日本製鉄株式会社をはじめとする国内外顧客向け中長期輸送契約により安定収益を確保し、また積極的に三国間配船の集荷に努めた結果、当初の計画を大幅に上回る収益を達成することができました。

パナマックス型撒積船(7~8万重量トン型)市況は、景気回復に伴う石炭需要の増加、中国が豪州との政治的対立を背景に石炭調達先をシフトしたことに伴う輸送トンマイルの増加、また堅調な中国向け穀物輸送需要により当期を通して高水準で推移しました。主要5航路平均用船料率は10月に3万ドル台後半まで上昇の後、インドネシアの石炭輸出制限等により、2月に市況は1万ドル台半ばまで下落しましたが、その後は堅調な穀物輸送需要とウクライナ情勢に伴うエネルギー資源確保の動きにより再び上昇に転じました。このような状況下、国内外顧客向けの契約履行に際し、当社支配船舶に加え市場からのスポット用船を利用したことに伴い費用が増加しましたが、当初の計画を達成することができました。

ハンディ型撒積船(2~6万重量トン型)市況は、荷動きの増加やサプライチェーンの混乱により船腹需給が逼迫したことから、当期を通して堅調に推移しました。鋼材やセメントをはじめとしたマイナーバルクの輸送量増加や、コンテナ船のスペース逼迫による代替輸送需要等に加え、中国と豪州の政治的対立及びウクライナ情勢に起因する資源調達先シフトによる輸送トンマイルの増加が、市況の押上げ要因となりました。このような状況下、当期を通して好調な市況に加え中長期貨物の獲得と効率配船の徹底により安定収益を積み重ね、当初の計画を大幅に上回る収益を達成することができました。

近海水域における小型船(1.6万重量トン型以下の船型)市況は、中国の環境規制強化により中国国内の粗鋼生産量が抑制され、日本から中国及び東南アジア向けの輸出需要に支えられたことで鋼材輸送量は前年同期比で増加しました。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う中国をはじめとする各港の滞船も市況の高止まり要因となりました。このような状況下、バイオマス燃料輸送を含むバルク輸送が順調に拡大したことに加え、鋼材と一般バルク貨物の往復航効率配船に努めたことで、当初の計画を大幅に上回る収益を達成することができました。

VLGC(大型LPG運搬船)は、全て定期貸船契約により安定収益を確保しておりますが、一部市況連動契約となっている船舶については、第2四半期のLPG需要の減退、第4四半期のバンカー価格高騰により収益が低下したため、当初の計画を達成することができませんでした。

以上の結果、外航海運事業全体としては、売上高は1,722億19百万円(前年同期比47.5%増)、セグメント利益(営業利益)249億35百万円(前期は49億43百万円のセグメント利益)と、前期に比べ増収増益となりました。

 

<内航海運事業>

ドライバルクにつきましては、鉄鋼関連貨物は、製造・建設セクターの回復により原料輸送部門の輸送量が当初の計画を上回る一方で、鋼材輸送部門の輸送量は半導体不足による自動車生産停滞から当初の計画を下回りました。またセメント関連貨物は、建設需要の増加、荷主の調達先多様化により輸送量は当初の計画を上回りました。電力関連貨物につきましても、夏季の電力需要増加や資源価格インフレが進む局面での安定供給のため輸送量は当初の計画を上回りました。

タンカーにつきましては、LNG輸送、LPG輸送ともに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により減退していた需要が下期から回復に転じ、輸送量は当初の計画を上回りました。このような状況下、効率配船、効率運航に努め、当初の計画を上回る収益を達成することができました。

以上の結果、内航海運事業全体としては、売上高は237億22百万円(前年同期比9.2%増)、セグメント利益(営業利益)は17億72百万円(前期は17億69百万円のセグメント利益)と、前期に比べ増収増益となりました。

 

<その他>

特記すべき事項はありません。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、328億81百万円の収入(前年同期比102億27百万円の収入増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益及び減価償却費の計上等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、1億39百万円の収入(前年同期は250億12百万円の支出)となりました。これは主に、船舶の取得による支出54億95百万円と船舶の売却による収入51億62百万円があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、299億15百万円の支出(前年同期は100億51百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入れによる収入と長期借入金の返済による支出の差引258億51百万円の支出によるものです。

 

 以上に現金及び現金同等物に係る換算差額を加味した現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前年度末と比較して36億2百万円増加し、312億15百万円となりました。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

自己資本比率(%)

39.8

36.7

35.6

43.0

時価ベースの自己資本比率(%)

25.0

13.2

16.4

36.1

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

5.7

8.1

6.6

3.8

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

11.4

11.3

15.7

24.4

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

(注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

(注4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

③生産、受注及び販売の実績

 当社グループ(当社及び連結子会社。以下同じ。)が営んでいる事業に「生産、受注」に該当する事項はありません。当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期増減率(%)

外航海運事業(百万円)

172,219

47.5

内航海運事業(百万円)

23,722

9.2

 報告セグメント計(百万円)

195,941

41.5

その他(百万円)

195,941

41.5

 (注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

    2.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対す

      る割合は次のとおりです。

 

 

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

比率(%)

金額(百万円)

比率(%)

日本製鉄㈱

65,685

45.3

90,111

42.0

 (注)上記の売上高には、商社等を経由したものが含まれております。

また、売上高には、賃積船の運賃が含まれております。

なお、上記以外に総売上高の10%以上を占める相手先はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

a.経営成績等

1)財政状態

 当連結会計年度末における総資産は2,748億71百万円となり、前年度末比41億11百万円増加しました。このうち流動資産は主として有価証券の増加により194億53百万円増加しました。固定資産は主として船舶の減少により、153億41百万円減少しました。

 負債合計は前年度末に比べ、176億76百万円減少の1,566億82百万円となりました。このうち流動負債は主として短期借入金の減少により、17億76百万円減少しました。固定負債は主として長期借入金の減少により、158億99百万円減少しました。

 純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上と配当金の支払の差引による利益剰余金の増加、繰延ヘッジの増加によるその他の包括利益累計額の増加等により、前年度末に比べ217億87百万円増加し、1,181億89百万円となりました。

 これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末の35.6%から当年度末は43.0%に増加しました

 

2)経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高1,959億41百万円(前年同期比41.5%増)、営業利益267億11百万円(前年同期比296.5%増)、経常利益266億6百万円(前年同期比380.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は235億82百万円(前年同期比284.6%増)と、前期に比べ増収増益となりました。

 なお、当社グループの事業構成は海上輸送業がほぼ全体を占めており、連結売上高に占める外航海運事業の割合は8割強、内航海運事業の割合は2割弱となっております。

 セグメント別の経営成績については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

3)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、為替・燃料油価格・海運市況などの外部要因が挙げられます。当期においては、経済回復に伴う世界的な荷動き増加、限定的な新造船竣工量に加え、新型コロナウイルス感染症拡大に起因する滞船と船員交代難航による船腹の不稼働が増加したことから、ドライバルク市況は高水準で推移しました。当社におきましても、長期契約に基づく安定収益に加え、フリー船隊が市況上昇を享受できたことにより、2010年当社合併以降、過去最高益を達成いたしました。また、日米金利差を背景に加速した円安が追い風となりました。燃料油価格は当期を通して上昇傾向にありましたが、運賃への転嫁やヘッジ対応により影響は限定的となりました。

 新型コロナウイルス感染症の感染状況によっては船舶の円滑な運航への影響が懸念されることや、今後のウクライナ情勢によってはエネルギー価格など広範におよぶ資源価格が高止まりすることで世界経済が減速し、海上荷動きに影響を与える恐れがあります。当社ではかかる事業上のリスクに対し細心の注意を払い、事業運営を行って参ります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

1)資金需要

 当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは当社グループの外航海運事業と内航海運事業に関わる船費、借船料、運航費等と各事業についての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては船舶投資に加え、情報処理システムのための無形固定資産投資等があります。

 当連結会計年度に実施した設備投資の総額は55億64百万円で、その主なものは船舶であります。また当連結会計年度末における船舶の新設に対する投資予定額は135億96百万円(既支払額19億38百万円を含む)であります。

 

2)財務政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、内部資金の活用及び国内金融機関からの借入により安定性を重視した資金調達を行っております。

 当社グループの主要な事業資産である船舶の調達に当たっては、財政状態のバランスを図る観点から、船主からの用船も考慮に入れ、当社グループ全体の有利子負債を過度に増加させることなく、低コストかつ安定的な船隊の整備を行っております。当年度末の有利子負債残高は1,236億95百万円となりました。

 また突発的な資金需要に対しては迅速かつ確実に流動性資金を確保すべく、複数の国内金融機関と複数年にわたり総額90億円のコミットメントラインを設定しており、流動性を補完しております。

 

3)キャッシュ・フロー

 「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 外航海運事業は、為替・燃料油価格・海運市況などの外部要因によって期間損益が左右されることに加え、他産業と比べて相対的に設備投資額が大きいという構造的な課題を抱えています。当社では、こうした業種特有の課題を強く意識した経営指標として、営業利益・ROE(株主資本利益率)・ネットD/Eレシオ(実質負債資本倍率)の3つに着目しています。営業利益は事業収益の規模感の、ROEは株主資本に対しての収益効率性の、ネットD/Eレシオは財務健全性の目安としています。2021年度はドライバルク市況の大幅な上昇もあり通期営業利益267億円、ROEは22.0%となりました。また2021年度末時点でのネットD/Eレシオは0.78倍となり、2023年度の目標水準である営業利益100億円以上、ROE10%以上、ネットD/Eレシオ1.0倍以下を前倒しで達成することができました。引き続き上記に掲げた中期経営計画の目標の継続的な達成に向けてグループ一丸で不断の取り組みを重ねて参ります。

 

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