業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナウィルスの流行によるまん延防止等重点措置の適用により個人向けサービス消費の回復は軟調であり、年後半にはウクライナ危機の緊迫化を背景とした資源価格の上昇が企業業績の重石となりました。海外経済は、米国では、堅調な雇用推移と設備投資により高水準での成長が継続しましたが、中国では脱炭素政策の影響による一部地域での停電やゼロコロナ政策による行動制限強化などにより景気は減速しました。

海運市況は、大型原油船(VLCC)の傭船市況につきましては、ワクチン接種の増加により中国や米国、欧州などを中心に経済活動の正常化が進み、第1四半期に一時的に需要回復の兆しが見えましたが、その後もコロナ禍による原油需要の低迷は続いており、OPECプラスの協調減産も段階的に増産されているものの、原油供給量が絞られた状態が続きました。そのような状況下において既存隻数が800隻を超え、また解撤数が少ないため、引き続き船腹需給は緩んでおり、冬場の輸送需要も盛り上がることなく低迷を続けました。2月にロシアがウクライナに侵攻したことにより市場参加者に緊迫感が増し、心理的な要因でWS50台まで上昇しましたが、市場のファンダメンタルズは変わらないまま短期的な上昇に止まりました。

石油製品船(LR2やMR)も、一部で石油製品の需要が回復に向かいつつありましたが、既存隻数が多い中コロナ禍の影響でジェット燃料を始めとする石油製品需要の低下が続き、船腹過剰も深刻化しており、VLCCと同様、市況は低迷しました。第4四半期に入ってもしばらく市況に変化はありませんでしたが、ロシアのウクライナ侵攻によりVLCC同様に市況が高騰しました。その後徐々に下落したものの、ロシアに対する欧米諸国の制裁への抵触を懸念する多くの船主、トレーダーがロシア出しの貨物を避けてトレーディングパターンが変化したこと、一方でロシア出しの貨物輸送運賃にプレミアムが付くなど、ロシア・ウクライナ情勢の影響を大きく受けた市況展開となりました。

大型LPG船(VLGC)の傭船市況は、春の不需要期による荷動きの減少や米国出しの輸送需要の減少などにより夏場まで下落しましたが、中国向けの化学品原料としての需要やインドも含めた民生需要が底堅く、また、パナマ運河の滞船による船腹需給引き締め効果もあり、第3四半期まで好調な市況展開となりました。第4四半期になり一時的に下落しましたが、ロシアのウクライナ侵攻の影響を受けることもなく全般的に堅調に推移しました。

ばら積船につきましては、中国の経済活動の再開や、鉄鉱石価格の上昇、北米や南米からの穀物輸送が活発となったことに加え、コロナウィルスの影響により船員交代に時間が掛かるなど、滞船の長期化も市況上昇の追い風となり、好調な市況展開となりました。第3四半期に入りますと、中国が冬季北京五輪に向けて環境政策を優先させ、粗鋼生産を始めとした経済活動を縮小させたことや、長期化していた中国主要港での滞船も改善が見られた影響で市況は下落しました。第4四半期に入り、例年通り中国の旧正月及び今年度は冬季北京五輪にかけて市況は低迷、特にケープサイズバルカーでは主要航路平均が一時6千ドル台を記録するなど大きく下落しましたが、その後回復し、ロシアのウクライナ侵攻の影響も見られず、小幅の上昇と下落を繰り返しながら堅調に推移しました。

こうした経営環境の中、当社グループは大型タンカーを中心とする長期傭船契約を主体に安定した経営を目指しており、前期11月にVLCC“TENZAN”、当期9月にVLCC“TOKIWA”並びに2月にはLPG船“MARIE”が竣工致しました。その一方で、当期8月及び9月に石油製品船2隻を売却するなど、船隊構成の整備・拡充に取り組んでまいりました。

また、各船の運航効率の向上と諸経費の節減にも全社を挙げて努めた結果、当連結会計年度の経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 資産の部は、前連結会計年度末に比べて46億2千7百万円増加し734億9千6百万円となりました。流動資産は、現金及び預金が増加したことなどにより23億5千5百万円増加し54億9千8百万円となりました。固定資産は、LR2タンカーを2隻売却した一方で新造VLCC1隻と小型LPG船1隻が加わったことから22億7千1百万円増加し679億9千8百万円となりました。

 負債の部は、借入金の増加などにより前連結会計年度末に比べ34億1千1百万円増加し583億8千万円となりました。

 純資産の部は、利益剰余金の増加などにより前連結会計年度末に比べ12億1千6百万円増加し151億1千6百万円となりました。

 

b.経営成績

 海運業収益は、石油製品船2隻の売却がありましたが、前期と当期でVLCCを1隻ずつ取得したことなどにより、121億4千1百万円(前期比4億7千1百万円増)となりました。営業利益は、海運業収益の増加はありましたが、船舶の取得により海運業費用が増加したことなどにより、4億2千万円(前期比3億6千2百万円減)、経常利益は1千7百万円(前期比2億8千6百万円減)となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、特別利益に石油製品船2隻の売却益12億4千3百万円、及び当該2隻の次回入渠に向けて引き当てていた特別修繕引当金を売却に伴って取り崩した利益1億2千7百万円を計上したことなどにより、8億8千2百万円(前期比7億2千1百万円増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金収支は、税金等調整前当期純利益の計上などにより、60億2千5百万円の収入となりました。(前期は43億3千2百万円の収入)

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金収支は、船舶の売却代金の収入はありましたが、船舶等の固定資産の取得による支出などにより56億1千5百万円の支出となりました。(前期は71億7百万円の支出)

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金収支は、船舶の建造に伴う長期借入による収入などにより26億2千3百万円の収入となりました。(前期は29億9百万円の収入)

 

この結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、期首に比べて30億5千3百万円増加し、44億9千2百万円(前連結会計年度比212.3%増)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

当社グループは、外航海運業の単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の実績につきましては、当社グループの区分別に記載しております。

a.運航船腹

区分

2021年3月末

2022年3月末

隻数

載貨重量屯数(M/T)

隻数

載貨重量屯数(M/T)

所有船

油槽船  当社持分

11

2,053,528

11

2,152,534

 (他社持分)

(187,235)

(187,235)

ばら積船

4

302,320

4

302,320

合計

15

2,355,848

15

2,454,854

 

b.海運業収益実績

 

区分

 

第91期

自 2020年4月1日

至 2021年3月31日

第92期

自 2021年4月1日

至 2022年3月31日

千円

千円

貸船料

11,628,085

99.6

12,141,402

100.0

その他海運業収益

42,062

0.4

-

-

合計

11,670,148

100.0

12,141,402

100.0

 

c.主要な相手先に対する海運業収益

 

相手先

 

第91期

自 2020年4月1日

至 2021年3月31日

第92期

自 2021年4月1日

至 2022年3月31日

千円

千円

日本郵船㈱

6,245,581

53.5

5,520,248

45.5

コスモ石油㈱

3,779,745

32.4

4,676,939

38.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(海運業収益)

当連結会計年度の海運業収益は121億4千1百万円(前年同期比4.0%増)となりました。貸船料につきましては、石油製品船2隻の売却はありましたがVLCC1隻が竣工したこと、短期の定期傭船で運航しているばら積船の市況が上昇したこと、また為替が円安に振れたことなどにより前連結会計年度に比べ5億1千3百万円増加しました。運賃につきましては、航海傭船契約が今年度はありませんでしたので前連結会計年度に比べ4千2百万円減少しました。

(海運業費用)

当連結会計年度の海運業費用は108億7千3百万円(前年同期比8.1%増)となりました。船費はVLCC1隻が竣工したこと、また入渠費用が増加したことなどにより前連結会計年度に比べ7億6千万円増加しました。また、借船料(損益配分)は、共有船の損益が改善したことから前連結会計年度に比べ1億2千2百万円増加しました。運航費は、航海傭船契約が今年度はありませんでしたので前連結会計年度に比べ3千1百万円減少しました。

(営業利益)

当連結会計年度の営業利益は、4億2千万円(前年同期比46.3%減)となりました。一般管理費は前年度とほぼ同水準となりましたが、上記の通り海運業収益の増加はありましたが、それ以上に海運業費用が増加したことから、海運業利益が減少し、営業利益を減少させました。

 

(経常利益)

当連結会計年度の経常利益は、1千7百万円(前年同期比94.2%減)となりました。営業外収益は、為替差益はありましたが、受取保険金が減少したことなどにより前連結会計年度に比べ1億3百万円減少しました。営業外費用は、支払利息の減少などにより前連結会計年度に比べ1億8千万円減少しました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、8億8千2百万円(前年同期比446.4%増)となりました。特別利益は、石油製品船2隻の売船益の計上があり前連結会計年度に比べ11億6千3百万円増加しました。特別損失は、減損損失がなく前連結会計年度に比べ2億8千2百万円減少しました。

法人税等合計は、税金等調整前当期純利益13億8千8百万円の36.43%に当たる5億5百万円を計上しました。

(新型コロナウィルスの影響について)

船員の交代費用は航空機の減便、各国の渡航制限、入国制限、隔離期間の設置などにより費用が増加しました。入渠については、入港制限、作業員不足による作業遅延等があり、不稼働期間が増加し、収入を減少させました。特に中国の各ヤードが厳しい入港制限を設けたことにより、周辺のドックが混み、作業が更に遅延し、修繕費も増加しました。

2023年3月期には7隻の入渠を予定しておりますが、費用の増加を加味し、引当額の見直し(船費の増加)を行いました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フローの収入や、長短借入による財務活動によるキャッシュ・フローの収入、及び船舶の売却によるキャッシュ・フローの収入があり、当連結会計年度に竣工したVLCCやLPG船への投資活動はありましたが、前連結会計年度に比べ30億5千3百万円増加の44億9千2百万円(212.3%増)となりました。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、船舶修繕費をはじめとする船費並びに環境規制に対応するために必要なバラスト水処理装置等の購入、設置費用、及び一般管理費等であります。投資を目的とした資金需要は船舶の建造、購入等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの当座貸越契約の融資枠等による短期借入金を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入金を基本としております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は533億9千3百万円となっております。

 

(契約債務)

2022年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(千円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

4,240,000

4,240,000

-

-

-

長期借入金

49,153,237

9,092,588

11,025,599

11,391,490

17,643,560

上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年以内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。

(財政政策)

当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については、長期借入金及び当座貸越契約の融資枠などによる金融機関からの借入金で調達しております。また、船舶などの設備投資資金につきましては、傭船期間の残年数等から短期または長期借入金で調達しております。

当連結会計年度末において、借入金の残高は533億9千3百万円であります。また、当連結会計年度末において、取引金融機関との間で合計30億円の当座貸越契約を締結しております。(借入実行残高0円、借入未実行残高30億円)

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的と判断される前提に基づいて実施しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

特別修繕引当金の見積もりにつきましては、実施する検査や工事内容、対象船のコンディション、船齢、同船型の実績、各ヤードからの見積もり等を基に行っています。加えて、新型コロナウィルスの影響は今後1年間継続するとみなし、当該期間中に入渠を予定する7隻につき、引当額を見積もっております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項 及び(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

 

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