文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、創業の精神「飛脚の精神(こころ)」のもと、
一.お客様と社会の信頼に応え 共に成長します
一.新しい価値を創造し 社会の発展に貢献します
一.常に挑戦を続け あらゆる可能性を追求します
を企業理念とし、お客様から「安心」「満足」「信頼」をいただけるサービス・品質向上を図っております。今後も社会の変化・顧客のニーズに迅速に対応し、トータルなソリューションの提供を実現させ、一層社会に必要とされる企業体を目指してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
現在の我が国における物流事業環境は、コロナ禍に端を発した新たな生活様式の浸透により、eコマース(以下「EC」という)市場は急速に拡大し、宅配便に対する社会のニーズがますます高まっております。マクロ環境におきましては、気候変動による激甚災害が世界的に増加する中、企業における脱炭素の取組みがより一層求められております。また、少子高齢化を背景に労働需給が一段とひっ迫する中、長時間労働の是正や同一労働同一賃金を目的とした働き方改革関連法が順次施行されております。
このような環境の中、当社グループは、2023年3月期から2025年3月期までの中期経営計画「SGH Story 2024」を新たに策定し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(中期経営計画の経営戦略)
① 総合物流ソリューションの高度化
② 競争優位創出につながる経営資源の拡充
③ ガバナンスの更なる高度化
(2025年3月期計数目標)
営業収益 |
1兆6,500億円 |
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営業利益 |
1,600億円 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
1,050億円 |
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中期経営計画「SGH Story 2024」では、「持続可能な成長を実現する次世代の競争優位性創出」を基本方針に掲
げ、次の経営戦略に取り組んでまいります。
① 総合物流ソリューションの高度化
・脱炭素をはじめとした社会・環境課題解決に向けたサービスの推進
世界的な気候変動問題への意識は一層高まりを見せており、日本国内においても政府による削減目標の引き上げ、コーポレートガバナンス・コード改訂による気候変動対応の開示等への対応が必要となってまいります。
このような環境下において、当社グループが提供する物流ソリューションを通じて、お客様にとってより効率的なサプライチェーンの構築、社会・環境課題の解決に貢献していくことを目指してまいります。加えて、車両のEV化や再生可能エネルギー創出への施設投資など、自社の取組みを進めることによりお客様の温室効果ガス削減にも寄与してまいります。
・TMS・3PLネットワークの拡充と周辺ソリューションの高度化
EC貨物の増加を背景に国内の宅配便市場は成長が続き、お客様のサービス差別化において物流は大きな役割を担っており、運送事業者に求めるロジスティクス高度化への要求は高まりを見せております。
佐川急便株式会社を中心とした当社グループの顧客基盤と、グループ横断の営業チーム「GOAL」を強みとして、TMS・3PLソリューションによりお客様のサプライチェーン全体へと提案領域を広げてまいります。より最適な物流提案を実現し、お客様の抱える物流課題の解決を図ってまいります。
・国際・海外向けサービスの強化
国際サービスでは、日本国内の営業リソース及び集配ネットワークを強みに、国際通販・国際TMS・国際エクスプレス等、日本発着貨物の獲得を強化してまいります。また、海外サービスでは、アジア発のフォワーディング事業を中心に新規レーンの拡大と既存顧客のウォレットシェア拡大により、取扱貨物量の増加に取り組んでまいります。
・宅配便のサービス向上と効率化による収益性向上
宅配便サービスは、新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」という)に端を発したEC化の加速により、取扱個数は今後も増加すると想定しております。一方で、低価格帯のポストインサービスの急伸、大手ECプラットフォーマーの自社配送網拡大及び異業種からの新たな参入など、競争の激化が見込まれます。
このような環境下において、市場成長を見据えたキャパシティ向上への投資、業務効率化を実現するDX投資を加速させ、サービス向上と収益性向上による宅配便の安定的事業成長を目指してまいります。
② 競争優位創出につながる経営資源の拡充
・アライアンスを含めた国内外輸配送ネットワークの強化
宅配便以外の収益拡大に向けたネットワークの強化においては、自社の力だけではなくパートナーとのアライアンスを積極的に進めることで、多様で高品質なサービスの提供とネットワークの強化による拡販を目指してまいります。
宅配便におきましては、市場成長による取扱個数増加への対応として、中継センターの拡充、営業所への最適投資及びアライアンス企業の増加による戦力増強に取り組んでまいります。
・人的資本への投資及びエンゲージメントの向上
次世代の競争優位を創出するための「人材」への投資として、グローバルやDX等の専門人材の獲得及び育成に注力してまいります。また、各種制度や教育の充実を図り、新しいことに挑戦できる企業風土を醸成してまいります。
・DXへの投資による競争優位の創出
社会・顧客の課題解決を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目的に、「デジタル基盤の進化」、「業務の効率化」、「サービスの強化」の3つの施策に取り組んでまいります。また、R&Dによる新たな事業モデルの研究等、将来の競争優位を高めるための取組みも同時に進めてまいります。
・オープンイノベーションなどによる新たな価値の創造
スタートアップや異業種企業が持つ革新的アイデア、テクノロジー及びITソリューションなどのノウハウと、当社グループが持つリソースを融合し、新たな価値の創造を目指してまいります。
③ ガバナンスの更なる高度化
・グローバル化に対応したガバナンスの構築
事業規模が急拡大した当社の連結子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS PLCにおきましては、J-SOX対応等、管理体制を高度化してまいります。また、海外現地法人のガバナンスの一層の強化に取り組み、内部統制の定着化を推進してまいります。
・コンプライアンスの継続的な高度化
不正不祥事(ハラスメント含む)の発見から対応、再発防止までのサイクルを高度化するとともに、コンプライアンス意識向上への教育等、コンプライアンス体制の更なる強化に取り組んでまいります。
(3)経営環境と対応方針
① 全般
現在の我が国経済は、感染症拡大に伴う経済活動の制限等による停滞からの回復は続いているものの、依然として感染症の収束は見えておらず、原材料価格上昇の影響等から一部には持ち直しの動きに弱さもみられます。非製造業の経済活動は前連結会計年度の経済活動制限下での弱含み傾向から持ち直しているものの、複数回に及ぶ感染症再拡大に伴う緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置適用の影響もあり、たびたび停滞を強いられております。製造業では、中国向けを中心とした輸出により持ち直しの動きが続いておりましたが、中国経済の停滞や半導体不足の影響を受け、回復が鈍化傾向にあります。物流業界におきましては、巣ごもり消費を契機に急拡大したEC市場は新たな生活様式の定着とともに成長を続けており、個人向けを中心とした宅配便の取扱個数は堅調に増加しております。
今後の我が国経済の見通しにつきましては、感染症の拡大防止と社会経済活動の両立を図る政府の総合経済対策を円滑かつ着実に実施すること等により、経済が感染症拡大前の水準に回帰することが見込まれる一方で、感染症の収束が未だ見えないことや、国際情勢の不安定化がみられる中、原材料価格の上昇や供給面の制約等の下振れリスクもあることから、先行きは不透明な状態が続いております。
当社グループの主力事業である国内におけるデリバリー事業や、ロジスティクス事業におきましては、EC市場の拡大を背景に成長トレンドが続いておりますが、足元では日本経済の持ち直しの動きに一部で弱さもみられることから、先行きの不透明感は継続しております。国際物流におきましては、感染症の影響による世界的な海上コンテナ不足に伴うサプライチェーンの混乱は徐々に解消し、需給の緩和により、高騰した海上・航空運賃の正常化が見込まれる一方で、米国西海岸港湾での労使交渉や地政学リスクの拡大等もあり、先行きの見通しが難しい状況が続いております。また、当社グループとして中長期的に対応すべき外部環境として、国内の労働人口減少、物流業界としての長時間労働問題への対応、AI・IoT技術や物流ロボティクスといったテクノロジーの進化、さらに、2050年カーボンニュートラルに向けたGHG削減目標のコミットなどを想定しており、今後もこのような社会・経済環境の変化はスピードを増していくものと考えております。
このような状況のもと、当社グループにおきましては、社会インフラの一部を担う物流企業グループとして、持続可能な社会の実現に貢献するため、2030年に向けた長期ビジョン「Grow the new Story. 新しい物流で、新しい社会を、共に育む」を掲げ、社会に必要とされ続ける物流を創ることに挑んでまいります。
② デリバリー事業
緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置の適用が繰り返されたことで経済活動が制限されたものの、新たな生活様式が定着し、物販系EC化率が更に上昇したことにより、2022年3月期の宅配便の取扱個数は、前期比1.4%増の1,423百万個となりました。
当社グループでは、労働力不足や燃料費の高騰等リソースの制約の厳しさが増す中で、次世代型大規模物流センター「Xフロンティア」を代表とする中継センター等、物流施設の最適化やデジタライゼーションによる業務効率化、多様な働き方への対応等、生産性の向上や労働環境の改善に積極的に取り組み、経営基盤の強化を進めてまいりました。また、「GOAL」による総合物流ソリューションの取組みにより、「TMS」や越境EC等、かねてより開拓に注力してきた分野の成果が出始めております。今後も「TMS」や3PLといった物流ソリューションの拡充や、越境EC等、国際・海外向けサービスの強化、脱炭素を始めとした社会・環境課題解決に向けたサービスの推進、また、増加が見込まれる宅配便の需要に対するサービス向上と効率化等に取り組み、総合物流ソリューションの高度化を進めてまいります。
特に、宅配便に次ぐ第二の主力商品と位置付けている「TMS」につきましては、中期経営計画「SGH Story 2024」(2023年3月期から2025年3月期)の3年間において、営業収益を7割増とするなど高い目標を掲げ、お客様の輸送ニーズに幅広く対応していくとともに、新しい収益の柱として成長させていきたいと考えております。
③ ロジスティクス事業
世界的な感染症拡大を契機とした海上コンテナ不足や、旅客機の減便等によるグローバルサプライチェーンの混乱が継続しております。地政学リスクの拡大もあり先行きが不透明な中、当社の連結子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS PLCでは、安定的にコンテナスペースを確保し、顧客の旺盛な需要に対応いたしました。
国内におきましては、「GOAL」による包括的なソリューション提案により、3PL等の案件受託も増加しております。また、デリバリー事業と連携した越境ECや日本発着の国際物流に関しても、本格展開に向けた体制強化を進めております。
今後、アライアンスを含めた更なるグローバルネットワークの拡充や、EXPOLANKA HOLDINGS PLCと国内で展開する事業とのシナジーの創出などにも注力してまいります。
④ 不動産事業
日本のEC化率は、中国や欧米に対し未だ低い水準にあることから上昇が継続すると考えられ、宅配便の取扱個数は今後も緩やかに増加することが見込まれます。また、サプライチェーンの複雑化やテクノロジーの進化に伴い、企業物流も高度化していくことが予想されます。このような宅配便の需要増や、高度化する物流ニーズに対応するため、当社グループの輸送ネットワークにおける適切なキャパシティの確保や安定的な稼働・効率化を実現する物流施設の開発・改修に努めるとともに、不動産を含めた総合物流ソリューションの提供を進めてまいります。
⑤ その他
その他の事業は、効率的な物流ソリューションを提供するための基盤となる様々な機能で構成されております。高度化する物流ニーズや生産年齢人口の減少が続く中、効率的で安定的な物流を実現するために、デジタル化による生産性の向上や顧客の利便性の向上に取り組んでおります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、次のとおりです。
(連結業績見通し) |
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(単位:百万円) |
|
2023年3月期 業績予想 |
前期比(%) |
営業収益 |
1,650,000 |
103.9 |
営業利益 |
142,000 |
91.2 |
経常利益 |
143,000 |
89.2 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
96,000 |
89.9 |
(セグメント別業績見通し) |
|
(単位:百万円) |
|
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2023年3月期 業績予想 |
前期比(%) |
|
営業収益 合計 |
1,650,000 |
103.9 |
|
|
デリバリー事業 |
1,067,000 |
102.3 |
ロジスティクス事業 |
510,000 |
106.9 |
|
不動産事業 |
23,000 |
203.7 |
|
その他 |
50,000 |
87.9 |
|
営業利益 合計 |
142,000 |
91.2 |
|
|
デリバリー事業 |
99,000 |
106.2 |
ロジスティクス事業 |
27,000 |
55.7 |
|
不動産事業 |
9,000 |
136.1 |
|
その他 |
4,000 |
85.9 |
|
調整額 |
3,000 |
108.3 |
(注)営業収益は外部顧客に対する売上高を示しております。
2023年3月期の連結業績予想
当社グループの2023年3月期連結業績予想は、主力のデリバリー事業の取扱個数については当期と同程度の数量とセールスミックスを前提とし作成しております。
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