業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

当連結会計年度における日本経済は、製造業においては海外での新型コロナウイルス感染症に起因する経済活動の制限が緩和され、輸出が増加傾向となったものの、半導体など部品の供給制約による調達難や資源価格の高騰の影響を受け、秋口以降は景気回復が鈍化いたしました。

他方、非製造業においては新型コロナウイルスの感染拡大が8月をピークに減少に転じ、緊急事態宣言等の自粛要請が解除された10月以降年末にかけて景気は改善傾向が見られたものの、航空・運輸、観光産業や飲食業界においては依然として厳しい経営環境が続いております。

このような経済環境のなかで、当社グループの主たる事業である曳船事業を取り巻く状況につきましては、コンテナ船は世界的な港湾機能の混乱で低迷が続いておりますが、自動車専用船や大型タンカーに持ち直し傾向がみられたものの本格的な回復までには至らず、建設用の洋上風力発電交通船(CTV)の運航による要因で大幅な増収となりました。

一方、旅客船事業では、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前期の反動により増収となったものの、一昨年の水準には届いておりません。

昨年度に引き続き厳しい経済環境のなかで、当社グループは総力を挙げて業績向上に努めた結果、当社グループ全体の売上高は810百万円増加し10,699百万円(前期比8.2%増)となりました。

利益面では、原油価格は年初から上昇傾向で推移し、燃料費はグループ全体で286百万円増加いたしました。また、建設用の洋上風力発電交通船(CTV)の運航が始まったこともあり減価償却費が129百万円、用船料が122百万円増加いたしました。この結果、590百万円の営業損失(前期は621百万円の営業損失)、328百万円の経常損失(前期は340百万円の経常損失)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、曳船等を売却し固定資産売却益を計上いたしましたが、旅客船事業(カーフェリー部門)での減損損失や関係会社株式売却損等が発生し、192百万円の当期純損失(前期は94百万円の当期純損失)となりました。

 

セグメント別の業績を示すと、次のとおりです。

曳船事業

曳船事業は、横浜川崎地区では、作業対象船舶のうちコンテナ船は世界的な港湾機能の混乱による影響もあり低迷は続いておりますが、夏場以降大型タンカーや自動車専用船の入港数が持ち直し傾向となり増収となりました。作業対象船舶がコンテナ船中心である東京地区では、6月に入りオリンピックの影響で首都圏の交通渋滞を懸念し東京港への寄港を回避する動きも見られ、さらに第4四半期には入出港数の減少が顕著となり減収となりました。横須賀地区では、入出港船舶数に底打ち感は見られたもののコンテナ船の低迷が響き減収となりました。千葉地区では、LNG船、大型タンカーの減少に加え、昨年度に比較的好調であったプロダクトタンカーが減少に転じ減収となりました。

また、秋田港・能代港で建設用の洋上風力発電交通船(CTV)の運航が始まり大幅な増収となりました。

この結果、曳船事業セグメントの売上高は530百万円増加し8,648百万円(前期比6.5%増)となりましたが、燃料費や用船料が増加し0.5百万円の営業損失(前期は27百万円の営業利益)となりました。

 

旅客船事業

旅客船事業は、横浜港における観光船部門では、4月25日からのまん延防止等重点措置以降は長引く自粛要請で低迷が続いておりましたが、11月以降は徐々に客足が戻ったこともあり、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた昨年度に比べ増収となりました。

久里浜・金谷間を結ぶカーフェリー部門では、昨年度の緊急事態宣言による利用客減少の反動と、夏場に感染拡大が減少に転じたことから秋口以降一般利用客が一部戻り始め増収となりました。

この結果、旅客船事業セグメントの売上高は207百万円増加し1,605百万円(前期比14.8%増)となったものの、営業費用のうち燃料費や修繕費が増加し555百万円の営業損失(前期は580百万円の営業損失)となりました。

 

売店・食堂事業

売店・食堂事業は、昨年度は新型コロナウイルス感染症蔓延により旅行・飲食が敬遠されるなかカーフェリー部門同様にバスツアー団体客の利用が途絶え大打撃を受けましたが、今年度に入り個人客を中心に利用客が増えたことで最悪期は脱し増収に転じました。

この結果、売店・食堂事業の売上高は71百万円増加し444百万円(前期比19.2%増)となり35百万円の営業損失(前期は68百万円の営業損失)となりました。

 

 

②財政状態の概況

資産、負債及び純資産の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,911百万円増加し28,905百万円となりました。

流動資産の部では、現金及び預金は洋上風力発電交通船(CTV)のリース会社へのセール・アンド・リースバックにより1,041百万円増加し、その他流動資産が230百万円減少いたしました。固定資産の部では、曳船の代替船建造とCTVの取得により船舶が685百万円増加し、建物及び構築物が629百万円増加いたしました。

負債は、前連結会計年度末に比べ、2,127百万円増加し7,844百万円となりました。流動負債の部では、支払手形及び買掛金が77百万円増加し、その他流動負債が378百万円増加いたしました。固定負債の部では、長期借入金が228百万円増加し、CTVの取得に伴いリース債務が1,411百万円増加いたしました。

純資産は、前連結会計年度末に比べ、215百万円減少し21,061百万円となりました。これは主に192百万円の親会社株主に帰属する当期純損失と、剰余金の配当を99百万円実施したことにより利益剰余金が293百万円減少し、為替換算調整勘定が122百万円増加したことによるものです。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の75.5%から69.8%と5.7ポイント減少いたしました。

 

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,341百万円増加し6,494百万円となりました。

当連結会計年度に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりとなりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,040百万円増加し1,272百万円の資金取得となりました。資金収支の主な内訳は、税金等調整前当期純損失が109百万円となり、減価償却費が1,299百万円、法人税等の還付額が127百万円発生したことです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,752百万円支出が増加し348百万円の資金支出となりました。資金収支の主な内訳は、設備更新(曳船の代替)と洋上風力発電交通船(CTV)の建造により有形固定資産取得による支出が2,484百万円発生しましたが、有形固定資産売却による収入が1,096百万円、預入期間が3カ月を超える定期預金の払戻による収入が預入による支出を1,300百万円上回りました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,654百万円増加し1,415百万円の資金取得となりました。資金収支の主な内訳は、長期借入金を350百万円借入れ、セール・アンド・リースバックによる収入が1,497百万円、リース債務の返済が145百万円発生したことです。

 

 

④生産、受注及び販売の実績

当社グループの報告セグメントは、曳船事業、旅客船事業、売店・食堂事業であり、生産及び受注を伴う事業ではないため生産及び受注の実績については記載を省略し、販売の実績については「①経営成績の状況」におけるセグメント別の経営成績に関連付けて記載しております。

最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

東京湾海事事業協同組合

1,210,912

12.24

1,230,351

11.50

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点における当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

A.経営成績

(売上高)

曳船事業においては、曳船稼働地区の収入にバラツキが見られました。横浜川崎地区では、自動車専用船の入出港数が復調傾向となり、電力需要の増加で大型タンカーやLNG船の入港数が増加し増収となりました。

一方、横須賀地区では、新型コロナウイルス感染症の影響による世界的な港湾機能の混乱により、エスコート作業の対象となるコンテナ船の入出港数の減少が響き減収となりました。

曳船作業対象船舶がコンテナ船中心である東京地区では、6月から7月にかけてはオリンピックの期間中の交通渋滞を回避する要因で入出港数が減少し、さらに、第4四半期に入り減少傾向が顕著となり大幅な減収となりました。

他方で、今期に入り秋田港・能代港で建設用の洋上風力発電交通船(CTV)の稼働が本格化したことが増収の主な要因となりました。

旅客船事業においては、前期には新型コロナウイルスの感染拡大により一年を通じて影響を受け大幅な減収となりました。

今期はワクチン接種も進み、8月に感染のピークを迎えてから年末までは感染が落ち着き、大きく落ち込んだ前期に比べ反動増となりましたが、第4四半期に入りオミクロン株により感染再拡大(第6波)となり減収に転じました。

横浜港の観光船部門では、11月以降年末にかけては観光需要の復活の兆しが見えたのもつかの間、年初からのオミクロン株の感染拡大による自粛要請を受け、本格的な回復にはほど遠い状況となりました。

久里浜・金谷間を結ぶカーフェリー部門やカーフェリーに附随する売店・食堂事業でも同様に、秋から年末にかけて、また恒例の初日の出クルーズなどはマイクロツーリズムの効果が出はじめ、一般利用客は最悪期の前期に比べ約30%程度の増加となりましたが、第4四半期に入り南房総の花のシーズンが自粛要請期間と重なり、回復に水をさす結果となりました。

この結果、当社グループ全体の売上高は810百万円増加し10,699百万円(前期比8.2%増)となりました。

 

 

(営業利益)

営業損益は、増収とはなったものの売上原価が増加し、前期とほぼ同水準の590百万円の営業損失(前期は621百万円の営業損失)となりました。

原油価格が年初から上昇傾向となり、燃料費は当社グループ全体で286百万円増加いたしました。また、洋上風力発電交通船(CTV)の運航開始により用船料や減価償却費が増加し、売上原価は9,503百万円(前期比8.8%増)となりました。

曳船事業セグメントでは、燃料費が201百万円増加し、さらに秋田港・能代港での洋上風力発電交通船(CTV)の運航開始により用船料や減価償却費も増加し0.5百万円の営業損失となりました。

旅客船事業では、前期に比べ反動増により増収となったものの燃料費や修繕費が増加し、前期とほぼ同水準の555百万円の営業損失(前期は580百万円の営業損失)となりました。

売店・食堂事業セグメントでは、前期に比べ最悪期は脱しましたが、本格的な回復には至らず35百万円の営業損失(前期は68百万円の営業損失)となりました。

 

(経常利益)

経常損益は、持分法投資利益が99百万円となりましたが、支払利息が58百万円計上され、前期とほぼ同水準の328百万円の経常損失(前期は340百万円の経常損失)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

親会社株主に帰属する当期純利益は、曳船等を売却し固定資産売却益を286百万円計上しましたが、旅客船事業で減損損失が発生し、前期に比べ98百万円悪化し192百万円の最終損失(前期は94百万円の最終損失)となりました。

 

B.財政状態

財政状態につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、営業原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は、主要な設備であります曳船の設備更新と洋上風力発電交通船(CTV)の新規設備投資によるものです。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては自己資金及びファイナンス・リースを基本としております。

今期は、洋上風力発電交通船の新規投資資金をセール・アンド・リースバックにより総額で1,497百万円調達しております。

さらに、2022年12月竣工予定の電気推進曳船の建造計画の資金手当では、自己資金と国庫補助金により建造を進めております。

旅客船事業では、新型コロナウイルス感染拡大に伴う度重なる自粛要請で資金繰りに支障を来たし、保有する投資有価証券や関係会社株式を売却し、さらに日本政策金融公庫から200百万円の融資を受けました。

重要な設備投資等の予定及びその資金調達方法については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載しております。
 今後は、旅客船部門では老朽化した船舶や設備のリニューアルを検討していく予定です。 

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に係る会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、重要な会計上の見積り」に記載しております。

なお、新型コロナウイルス感染症に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。 

 

 

④次期の見通しについて

今後の見通しにつきましては、原油価格は新型コロナウイルス禍からの回復需要に加え、産油国ロシアのNATO諸国への供給停止により当面高値圏で推移し、為替の円安傾向も継続するとの観測です。

そのため、当社グループ全体の業績にとっては、この燃料油価格の高騰が及ぼす影響を企業努力で吸収することは非常に厳しい状況が予想されます。

曳船事業においては、需要に合わせた最適な船隊規模への縮小を進めていくと同時に、運航コストの上昇に見合った曳船作業料金の見直しを図り収支改善を進めていく計画です。

また、新型コロナウイルス変異株の感染拡大に対する中国のゼロコロナ政策やロシア・ウクライナ情勢が世界経済に与える悪影響が懸念され、海上輸送の先行きは不透明感を深めております。

旅客船事業においては、燃料油価格や食材等の仕入価格の大幅な上昇を吸収することが難しくなったため、本年4月から料金改定を実施いたしました。

これによりサービス向上を図り増収を見込んでおりますが、コストプッシュ・インフレが顕著となっており、消費マインドの冷え込みが予想されます。

通期の連結業績予想につきましては、売上高を11,511百万円、営業損失195百万円、経常損失26百万円、親会社株主に帰属する当期純利益160百万円を予想しております。

 

 

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