当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
世界経済は、オミクロン変異株の発生により2022年以降の経済の拡大は鈍化しているものの、ワクチンの普及に伴い、新型コロナウイルス感染症による落込みからは回復しつつあります。一方、ロシア・ウクライナ情勢に関連した急激な円安の進行、原材料価格やエネルギー価格の上昇により、依然として先行き不透明な状況が続くことが見込まれます。
このような状況下であるものの、世界的なバイオ化の潮流も受け、国策としてのバイオファウンドリ事業を執行中であり、また、国内大手企業とのバイオ樹脂原料にかかる研究開発契約の締結や新たなアミノ酸のライセンス契約の締結に至っております。
一方で、円安や物価高等による世界経済の先行きの不透明感から、パートナー候補企業が新規の研究開発の先延ばしや契約を断念するという状況や、収益認識が翌期へ期ずれする等が一部のパイプラインにおいて発生しました。
以上の結果、当事業年度は売上高585,161千円(前年同期比16.4%増)、営業損失99,065千円(前期営業損失63,373千円)、経常損失113,873千円(前期経常損失63,779千円)となりました。当期純損失については、固定資産の減損損失を計上したこと等により、234,324千円(前期当期純損失74,135千円)となりました。
なお、当社はバイオリファイナリー事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
当事業年度末における流動資産は3,384,305千円となり、前事業年度末に比べ2,339,138千円増加いたしました。これは主に有償一般募集及び有償第三者割当増資により現金及び預金が1,896,484千円、バイオファウンドリ事業における設備投資のうちNEDOの所有分により立替金が379,775千円、並びに仕掛品が114,186千円増加したことによるものであります。固定資産は0千円となり、前事業年度末に比べ80,737千円減少いたしました。これは研究開発設備の購入(リース資産の期間満了時の買取りを含む。)により、機械及び装置等の増加があった一方、研究開発設備の減損損失の計上により、建物、建物附属設備、機械及び装置並びにソフトウエア等が80,737円減少したことによるものであります。この結果、総資産は3,384,306千円となり、前事業年度末に比べ2,258,400千円増加いたしました。
当事業年度末における流動負債は974,846千円となり、前事業年度末に比べ847,769千円増加いたしました。これは主にバイオファウンドリ事業における設備投資等費用の概算払いにより仮受金が871,608千円増加した一方、未払金が53,340千円減少したことによるものであります。固定負債は191,686千円となり、前事業年度末に比べ6,430千円減少いたしました。これは主に借入金の返済により長期借入金が4,070千円減少したことによるものであります。
当事業年度末における純資産合計は2,217,772千円となり、前事業年度末に比べ1,417,060千円増加いたしました。これは有償一般募集及び有償第三者割当増資、また新株予約権行使による新株式を発行したことにより資本金が823,172千円、資本準備金が823,172千円増加した一方、利益剰余金が234,324千円減少したことによるものであります。この結果、自己資本比率は65.5%(前事業年度末は71.1%)となりました。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、本項目において「資金」という。)については、前事業年度末より1,913,899千円増加し、2,740,969千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フロー状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果、獲得した資金は337,564千円(前事業年度においては205,153千円の支出)となりました。これは主にバイオファウンドリ事業における設備投資等費用の概算払いによる仮受金の増加額871,608千円及び受取手形及び売掛金の回収に伴う売上債権の減少額77,189千円、並びに減損損失109,628千円等の増加要因があったものの、同事業における設備投資のうちNEDOの所有分による立替金の増加額379,775千円、主として売上高に紐づく研究開発活動にかかる仕掛品を含む棚卸資産の増加額113,803千円、税引前当期純損失223,569千円及び未払金の減少額53,676千円の減少要因によるものであります。
投資活動の結果、支出した資金は36,477千円(前事業年度においては26,145千円の支出)となりました。これは主に定期預金の満期による収入17,415千円の増加要因があったものの、有形固定資産の取得による支出46,316千円の減少要因によるものであります。
財務活動の結果、獲得した資金は1,612,812千円(前事業年度においては634,251千円の資金獲得)となりました。これは主に有償一般募集及び有償第三者割当増資により新株式を発行したことによる、資本金の増加額823,172千円及び資本準備金の増加額823,172千円の増加要因によるものであります。
当社は生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
当社が提供する役務の性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当事業年度における販売実績は次のとおりであります。なお、当社はバイオリファイナリー事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。
注1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりであります。
また、次の文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
当社の財務諸表は、日本において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については、過去の実績や市場動向を勘案し、合理的に判断しておりますが、不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる可能性があります。
当社の財務諸表にかかる重要な会計方針の詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
特に次の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
(固定資産の減損処理)
当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当社の将来の事業計画を基に、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。
将来の事業計画や市場環境の変化により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失を計上する可能性があります。
(繰延税金資産)
繰延税金資産については、当社の将来の課税所得見込みや想定実効税率等、現状入手可能な将来情報に基づき、合理的に将来の税金負担を軽減する効果を有し、回収可能性があると考えられる範囲内で計上することとしております。
繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額に影響する可能性があります。
当事業年度における売上高については、前事業年度より82,602千円増加し、585,161千円となりました。これは主にバイオリファイナリー事業のインフラ整備を目的として受託しているバイオファウンドリ事業等の国のプロジェクト、並びに石油資源の枯渇、CO2削減又は使い捨てプラスチックにかかる法的及び業界の規制を見据えた企業の、石油由来の化学品からバイオマス由来の化学品への転換の需要の伸長による、研究開発契約及びライセンス契約の締結によるものであります。
当事業年度における売上原価については、前事業年度より63,987千円増加し、255,414千円となりました。これは主に当事業年度において、バイオファウンドリ事業を始めとする研究開発契約に紐づき発生する外注費及び間接原価が前事業年度と比較して増加した一方、仕掛品の計上による売上原価の減少が生じたことによるものであります。
当事業年度における販売費及び一般管理費については、事業規模の拡大に伴う増員及び増員に伴う各種経費の増加の結果、前事業年度より54,306千円増加し、428,812千円となりました。以上の結果、営業損失は99,065千円となりました。
当事業年度における営業外収益については、前事業年度より7,314千円増加し、12,466千円となりました。また、営業外費用については、前事業年度より21,717千円増加し、27,274千円となりました。これは主に売掛金にかかる為替差益の増加及び上場関連費用によるものであり、以上の結果、経常損失は113,873千円となりました。
当事業年度においては、固定資産売却益20千円の特別利益、並びに固定資産の減損損失109,628千円及び固定資産除却損87千円の特別損失が発生しました。また、法人税、住民税及び事業税10,754千円を計上した結果、当期純損失は234,324千円となりました。
キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社は、自らは製品の生産設備を保有せず、研究開発に必要な設備のみを有し、技術を提供する事業形態であることから、資金需要の主なものは、菌体及びバイオプロセスの基礎開発にかかる研究開発費その他人件費等の事業活動費でありますが、2022年9月期より、バイオファウンドリ事業において、インフラ整備のための新たな研究施設の建設、発酵槽や自動化機器等の研究開発設備への大規模な追加投資を行っております。ただし、これらの固定資産は事業期間中においては、NEDOが所有するものとなり、事業終了後に簿価買取となります。
運転資金については、2020年9月期においては新型コロナウイルス感染症による経済の低下の可能性を鑑み、融資により60,000千円を調達しており、前事業年度においても100,000千円の融資及び第三者割当増資による株式発行により550,000千円を調達しております。
さらに、当事業年度においては上場に伴う株式発行の有償一般募集及び有償第三者割当により1,617,875千円を調達しております。
上述の大規模投資についてはバイオファウンドリ事業の事業予算及び上場に伴う株式発行による調達資金を充当いたします。なお、それ以降は現時点において大規模な資金需要の計画はなく、基本的に流動性の高い銀行預金により賄う方針であります。
当社は、新興市場であるバイオリファイナリー業界においては、当面、売上高の拡大が同業界における企業成長を示すものと考えており、目標とする経営指標として売上高を掲げております。
売上高実績については、国等のプロジェクトの契約の締結による受託収入、並びに研究開発契約の締結による研究開発収入及びライセンス契約の締結によるライセンス一時金等の計上により、前事業年度は502,559千円(2020年9月期比50.3%増)、当事業年度は585,161千円(前年同期比16.4%増)であります。売上高は、現時点において上述の方針どおりの進捗となっており、堅調に推移しているものと認識しております。
当社は、当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、経済動向、世界市場を対象としたライセンス契約による製品の市場展開、特定の第三者の技術を基盤とする事業展開、技術の損失、漏洩及び知的財産権の侵害等によるリスクを認識しております。
これらのリスクに対応するため、当社は、製品の市場動向を見据え、ライセンシーとの密な提携により、予算や各種計画の精度を上げるとともに、研究開発活動への投資を拡大して、当社単独による特許権の取得や多様な製品を対象とした研究開発を推進し、併せて情報セキュリティの拡充を含む内部統制の向上により、情報資産の管理、保全に取り組んでまいります。
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