(1)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月23日)現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化しているものの、鉱工業生産指数が持ち直しの動きを見せ、経済社会活動は正常化に向かっています。一方、物流を取り巻く環境については、輸出入は前期と比較し回復傾向にあるものの、世界的なサプライチェーンの混乱は収束を見通しにくい状況となっております。
こうした経済環境の中、当社グループは、『中期経営計画2017』の最終年度となる当期において、持続的成長に向けた圧倒的現場力の構築、一気通貫の統合ソリューションサービスの構築に取り組み、顧客のサプライチェーン見直しニーズに対応してきたことで、先行き不透明な環境においても収益を大きく伸ばす結果となりました。
営業の状況といたしましては、輸出入の回復に伴うフォワーディング業務及び港湾運送業務におけるコンテナ荷役の取扱量の増加に加え、海上コンテナ不足を背景とした海上輸送から航空輸送へのシフトによる取扱増加や、顧客の生産維持のための部品調達等にかかる航空輸送及び海外保管・運送業務の取扱増加等がございました。これらの結果、連結営業収益は前年同期比474億62百万円増の3,010億22百万円、連結営業利益は同82億78百万円増の259億39百万円、連結経常利益は同83億12百万円増の255億53百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同29億54百万円増の145億3百万円となり、2期連続で過去最高益を更新する結果となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(イ)物流事業
輸出入の回復に伴うフォワーディング業務及び港湾運送業務におけるコンテナ荷役の取扱量の増加に加えて、海上コンテナ不足を含むサプライチェーンの混乱に伴う海上輸送から航空輸送へのシフトや航空運賃の高騰、顧客の生産維持のための部品調達等にかかる航空輸送及び海外保管・運送業務の取扱増加があったほか、注力しているソリューション型物流業務の新規取扱開始や、ヘルスケア物流における新規業務の開始がございました。また、東京オリンピック・パラリンピック需要等を背景とした家電関連物流の取扱増加もあり、営業収益は前年同期比475億68百万円増の2,922億13百万円となり、営業利益は同87億49百万円増の237億34百万円となりました。
(ロ)不動産事業
営業収益は前年同期比46百万円減の95億74百万円、営業利益は同34百万円減の57億98百万円といずれもほぼ横ばいとなりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載の通りです。
当期末の総資産は、営業収益の増加に伴う売上債権の増加や、有形固定資産の取得により、前連結会計年度末より199億25百万円増加し、2,582億97百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により前連結会計年度末より201億1百万円増加し、886億31百万円となりました。
『中期経営計画2017』における経営上の数値目標の達成状況
|
目標(2022年3月末) |
実績(2022年3月末) |
営業利益 |
100億円 |
259億39百万円 |
有利子負債残高 |
1,300億円 |
939億96百万円 |
ネットD/Eレシオ |
2.0倍以下 |
0.89倍 |
ROE |
9.0%超 |
20.4% |
当社グループは、2027年3月期を最終年度とする5ヵ年計画『中期経営計画2022』を策定しております。
目標達成に必要な対応につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りです。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加により、前年同期比18億65百万円増加の231億23百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、当社が注力する分野のヘルスケア物流専用の新設倉庫である関東P&MセンターB棟の建設代金の一部を支払ったことから、前年同期比78億53百万円支出増加の70億49百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済及び配当金の支払いなどにより、前年同期比44億65百万円支出減少の172億18百万円の支出となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末より1億4百万円増加の228億22百万円となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下の通りです。
(イ)契約債務
2022年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
年度別要支払額(百万円) |
||||||
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超 2年内 |
2年超 3年内 |
3年超 4年内 |
4年超 5年内 |
5年超 |
短期借入金 |
2,049 |
2,049 |
- |
- |
- |
- |
- |
長期借入金 |
66,947 |
9,630 |
8,309 |
4,929 |
6,924 |
11,881 |
25,273 |
社債 |
25,000 |
- |
- |
14,000 |
- |
- |
11,000 |
リース債務 |
5,397 |
1,223 |
973 |
502 |
423 |
387 |
1,886 |
当社グループの第三者に対する保証は、従業員に対する銀行の住宅ローンに関する債務保証などであります。保証した借入金の債務不履行が保証契約期間に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があります。2022年3月31日現在、当社グループの債務保証に基づく将来における潜在的な要支払額の合計額は20百万円であります。
このほか、一部の物流施設の調達をオペレーティング・リース取引によって行っており、これに関する未経過リース料は409億64百万円(1年内88億34百万円、1年超:321億30百万円)であります。
(ロ)財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金や社債及び借入により調達することとしております。借入による調達のうち、運転資金については期限が1年以内の短期借入金であり、当社及び一部の子会社が調達しております。これに対し、倉庫施設などの長期資金は、固定金利の社債及び長期借入金で調達しております。2022年3月31日現在、長期借入金の残高は669億47百万円であり、無担保普通社債の残高は250億円であります。また、当社グループは、グループ会社が保有する資金をグループ内で効率よく活用するため、キャッシュマネジメントシステムを構築し運用しております。
当社グループは、営業キャッシュ・フローに加え、当座借越契約、コミットメントライン契約を締結し資金流動性を確保しており、当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び設備資金を調達することが可能と考えております。
『中期経営計画2022』における財務戦略については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、最適DEレシオ1.0倍を財務規律とし、適切な財務レバレッジのもとで積極的な投資と株主還元強化の両立を目指します。
投資については、設備の維持更新等の通常投資に加え、DXや新規設備投資、M&Aなど成長領域への戦略投資を積極的に行ってまいります。
株主還元については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載の通り、連結配当性向30%を基準とする業績に連動した機動的な配当を実施する方針です。
また、経営指標としてROEを設定し、目標数値を12%超とすることで、現在の高水準な資本効率の維持を目指してまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に係る会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況」に記載しております。
当社経営陣は連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、並びに報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び評価を行わなければなりません。経営陣は、棚卸資産、貸倒れ、有価証券、有形固定資産、のれんを含む無形固定資産、法人税等、繰延税金資産、財務活動、退職給付、偶発事象、訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や現在の状況に応じ、合理的と考えられる基準・要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収益・費用の報告数値についての判断基礎となります。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当期の連結財務諸表を作成するにあたり、有形固定資産、のれんを含む無形固定資産等については、会計上の見積りを行う上で将来キャッシュ・フロー、資産の回収可能性等を検討するにあたり、入手可能な外部の情報等に基づき新型コロナウイルス感染症の影響を勘案したうえで見積りを行っております。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、倉庫保管・荷役、港湾作業、国内運送及び国際輸送等の物流の各機能を有機的・効率的に顧客に提供する物流事業並びにビル賃貸業を中心とする不動産事業で構成されており、以下の2つを報告セグメントとしております。
・「物流事業」…倉庫保管・荷役、港湾作業・運送、海外における物流サービス・複合一貫輸送、航空貨物輸送、3PL、サプライチェーンマネジメント支援業務、陸上貨物運送等、様々な物流サービスを提供しております。
・「不動産事業」…ビル賃貸業を中心としたサービスを提供しております。
役務の提供を主体とする事業の性格上、生産、受注及び販売の実績を区分して把握することは困難でありますので、これに代えて、セグメント毎の主要業務の営業収益及び取扱高等を示すと、次のとおりであります。
(イ)セグメント毎の主要業務の営業収益
セグメント |
営業収益(百万円) |
前連結会計年度比増減 |
||
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
増減額(百万円) |
比率(%) |
|
物流事業 |
|
|
|
|
(倉庫保管) |
35,500 |
35,037 |
△462 |
△1.3 |
(倉庫荷役) |
31,090 |
31,603 |
512 |
1.6 |
(港湾作業) |
15,720 |
17,019 |
1,298 |
8.3 |
(運送) |
123,359 |
164,367 |
41,007 |
33.2 |
(その他) |
38,974 |
44,185 |
5,210 |
13.4 |
計 |
244,645 |
292,213 |
47,568 |
19.4 |
不動産事業 |
|
|
|
|
(不動産賃貸) |
9,621 |
9,574 |
△46 |
△0.5 |
計 |
9,621 |
9,574 |
△46 |
△0.5 |
セグメント間取引消去 |
△706 |
△765 |
△59 |
- |
合計 |
253,559 |
301,022 |
47,462 |
18.7 |
(注) セグメント間の内部振替前の数値によっております。
(ロ)セグメント毎の主要業務の取扱高等
セグメント の名称 |
業務の種類 |
取扱高等 |
||
区分 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
物流事業 |
倉庫保管 |
国内平均保管残高(千トン) |
491 |
475 |
国内貨物回転率(%) |
26.3 |
28.8 |
||
所管面積(千㎡) |
1,261 |
1,238 |
||
倉庫荷役 |
国内入庫高(千トン) |
1,544 |
1,646 |
|
国内出庫高(千トン) |
1,561 |
1,628 |
||
港湾作業 |
CT作業取扱高(TEU) |
874,892 |
946,724 |
|
運送 |
(国内運送) |
|
|
|
国内コンテナ運送取扱高(本数) |
199,564 |
221,340 |
||
(国際運送NVOCC) |
|
|
||
取扱高(TEU) |
38,608 |
50,087 |
||
(陸上貨物運送) |
|
|
||
貸切輸送(千トンキロ) |
556,532 |
539,351 |
||
取扱数量(千個) |
29,977 |
33,832 |
||
(航空貨物輸送) |
|
|
||
取扱高(トン数) |
48,290 |
68,693 |
||
(3PL) |
|
|
||
取扱個数(千個) |
131,588 |
117,621 |
||
(サプライチェーンマネジメント支援) |
|
|
||
販売物流入出庫高(千㎥) |
601.9 |
523.8 |
||
不動産事業 |
不動産賃貸 |
賃貸面積(千㎡) |
158 |
160 |
(注) 貨物回転率= |
(年間入庫高+年間出庫高)×1/2 |
× 100 |
月末保管残高年間合計 |
(2) 次期の見通し
当社グループは新たな5カ年計画『中期経営計画2022』(2023年3月期~2027年3月期)のもと、初年度である次期からは積極的な投資とともに攻勢に転じ、更なる成長を実現してまいります。
事業環境といたしましては、世界的なサプライチェーンの混乱に伴う海上輸送からのシフトによる航空輸送の取扱増加や需給逼迫に伴う運賃高騰といった特殊要因は、期末に向けて徐々に収束して行くことを見込んでおります。一方で、当期に新設したヘルスケア物流専用倉庫や、同じく当期に新設のEC・家電量販店向け物流センター通期寄与による増益を見込んでいるほか、経済社会活動の正常化が進むことを背景とした堅調な荷動きによる取扱増加を見込んでおります。また、DX投資の実行に伴う先行費用の発生もあり、これらの結果、次期の連結営業収益は2,900億円(前期比3.7%減)、連結営業利益は210億円(同19.0%減)、連結経常利益は203億円(同20.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は118億円(同18.6%減)を見込んでおります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、次期の純利益、減価償却費、のれん償却による資金の留保などから260億円を見込んでおります。現金及び現金同等物の期末残高につきましては、当期末とほぼ同水準になることを見込んでおります。
連結営業利益における当期実績および次期見通しの増減要因 (単位:億円)
2022年3月期連結営業利益 |
259 |
|
特殊要因収束 |
サプライチェーン混乱に伴う航空輸送増加、運賃高騰の収束 |
▲59 |
|
小計 |
▲59 |
戦略投資案件 |
EC・家電量販店向け新設物流センター通期寄与 |
+3 |
ヘルスケア物流専用新設倉庫通期寄与 |
+2 |
|
|
小計 |
+5 |
その他 |
堅調な荷動きによる定常的な輸送業務取扱増加 |
+11 |
DX投資に伴うシステム関連先行費用の発生 |
▲7 |
|
その他 |
+1 |
|
小計 |
+5 |
|
2023年3月期連結営業利益(予想) |
210 |
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